議会の動き

令和7年度当初予算案等に対する修正動議提案説明

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2025年2月定例会 修正動議提案説明  (2025年3月24日)
説明者:迎山 志保 議員

 私は、知事から本議会に提案されました令和6年度関係第228号議案・県立大学授業料等無償化基金条例に反対する立場から、令和6年度関係第225号議案・令和6年度兵庫県一般会計補正予算(第6号)、並びに令和7年度関係第49号議案・兵庫県県政改革方針の変更のうち県立大学授業料等無償化事業の財源にかかる部分について修正案提案に至った理由を説明いたします。

 教育は社会の礎であり、生まれてきたすべての子どもたちが均等な教育機会を得ること、そしてその先、自ら望めばさらに学びを深めていくことを保証することは政治が果たすべき責務であると考えています。教育への投資は未来への投資であり、教育予算の拡充については私たちがこれまで一貫して求めてきたことです。教育に力を入れて若者を応援するという知事の考え、理念は私たちの思いに共感いただけたものと評価をしております。しかしその中身、政策には大いに異論があります。

若者・Z世代応援パッケージの主要施策である県立大学無償化については、県政改革調査特別委員会でも議論してきましたが「兵庫県の若者を支援する事業」というには、受益者があまりにも限定的で公平性に欠けています。この事業では、大学院まで行くと500万円以上の支援を受ける若者がいる一方、同世代のその他98%の若者への支援は1円もありません。真に「兵庫県の若者を支援する」ということならば、経済的理由で学びを断念することがないように所得制限を講じたうえ、他の大学への進学者も対象とする奨学金で幅広く支援すべきでしょう。

また「大阪府と共に高等教育無償化の先鞭をつける」ことが狙いだと知事は仰いますが、いち早く高校無償化を実現し大学無償化議論を重ねてきた大阪府と並び立つのは無理筋ですし、そもそも財政力の乏しい兵庫県が担うべき役割でもありません。加えて、すでに国においては全ての大学の大学院修士課程を対象に出世払い方式の奨学金制度をスタートさせており、数年以内に学部生にも拡大する方針が示されています。これまでに全国で約330校が契約締結していますが、県立大学は未締結のようです。これら国の動きとの比較検討や機動的な対応がとれる体制は整っているのでしょうか。

県立大学無償化事業のこの納得感の無さは、多額の予算を永続的に計上する必要がある施策にも関わらず、ひとえに政策決定までの議論が拙速で独善的であり、透明性が確保されてこなかったことによります。いまだ明確な事業目標の位置づけもなく、斎藤知事が県政の目玉施策と位置付けている県立大学無償化で得られる政策効果を県民の皆さんに議会として示す自信も持てません。

私たちは4年前の行財政改革の際から、「県財政については全体像の把握を困難としている様々な要因について整理するべきものは整理して見える化を進めるべき」と訴え、行財政の透明性を高め、県民に分かりやすく説明し、県民の共感を得ながら行財政改革を推進することを強く求めてきました。県立大学無償化はそうした過去への反省や不公平感の是正が乏しく、今後も行財政改革を進めていく上で大きな懸念材料だと受け止めています。

しかしながら県立大学無償化事業は一旦スタートしてしまうと簡単には止められない事業です。それを踏まえて、立ち止まれるのは今しかないと、より公平でより多くの若者が恩恵を受ける対案を提案したのがちょうど1年前でした。その修正案は否決され、本年度から事業は開始されました。既に無償化を期待する学生が県立大学に進学しており、急な見直しは現実的ではありません。

この度の県政改革方針の変更案では、適切な成果指標の設定や効果の検証を行いつつ、5年程度ごとをめどに事業評価するとされています。であるならば、検証や評価によって必要と判断すれば県民に見える形で事業の見直しができる体制を整えておく必要があります。しかしながら今回提案された条例は、現時点で県立大学無償化を恒久措置とするかのような条例です。それこそ現時点では不要なばかりか、その目的が限定され、他の事業にも活用できない本基金では、県政改革方針の変更案で謳っている柔軟な事業見直しを阻害する可能性があります。ことによると県政改革方針の変更案は当座逃れの形だけのものなのでしょうか。疑問を感じざるをえません。

一方、最長17年の支援を行う奨学金返済制度には条例による財源の担保はありません。基金を設けるというのであれば、単独事業に限定するのではなく、若者を応援する事業全般に活用可能な基金とすべきであると考えます。

また、無償化基金の造成には決算剰余金を活用すると聞いています。目的税等の特定財源を確保するならともかく、そのような方法をとるのであれば、決算余剰を積み立てた財政基金を活用することで十分に対応可能でありますし、より適切であると考えます。県民に納得の得られる事業スキームが確立するまでの県立大学無償化の財源としては、提案のあった本事業に限定した基金設置ではなく、財政基金を活用することを提案します。

よって、兵庫県県政改革方針の変更での当該基金の記載を削除し、令和6年度2月補正時の県立大学授業料等無償化基金への積み立てを財政基金への積み立てに変更し、令和7年度予算の基金繰入金の各項明細は、県立大学授業料等無償化基金繰入金から財政基金繰入金に変更します。

そして議案ついて、

 令和6年度関係は、第228号議案「県立大学授業料等無償化基金条例」には反対を表明し、次のとおり、令和6年度関係、令和7年度関係の各々1議案の修正動議を提出します。

 まず、令和6年度関係 第225号議案 令和6年度兵庫県一般会計補正予算(第6号)について

款:総務費のうち:1項総務管理費 5,000,000千円を追加し、

款:教育費のうち:6項大学費 5,000,000千円を削除するものです。

 また、令和7年度関係 第49号議案「兵庫県県政改革方針の変更」の中の

「(5)兵庫県公立大学法人」「③高等教育の負担軽減」にかかる内容について、

「ウ 無償化事業の安定的な財源確保」の項目及び説明のすべてを削除するものです。

今もって議会においても議論百出の県立大学無償化政策です。当局と議会は引き続き議論を重ねていく必要があります。大切な公金の使い道として県民の納得を得る努力を惜しんではいけないと思いますし、軌道修正が必要とあらば、立ち止まり見直す決断も私たちには求められています。県立大学をはじめとする高等教育の就学支援は極めて重要な施策です。今後も多角的に丁寧に議論を進め、広く県民の理解を得ることで初めて安定的に持続する強靭な制度となるのではないでしょうか。

県政改革方針の変更が形だけのものではなく不断の改革を惜しまない姿勢を県民に示すものとするためにも、長期的に政策の自由度が縛られる基金の設置ではなく、柔軟な対応を可能とする既存基金を活用する修正案を提案いたします。

以上、議員お一人お一人に本修正案へのご賛同をお願いし、提案理由説明といたします。