第346回 定例県議会 一般質問
質問日 :令和元年12月9日(月)
質問者 :木戸 さだかず 議員
質問方式:分割方式
1 街路樹の景観阻害の問題について
道路の景観向上、緑陰形成のために、多くの道路で街路樹が植えられています。
街路樹については、大きく成長し都市景観向上の役目を果たしているものや、ケヤキ並木など沿道景観を美しく彩っているものも多くありますが、一方で、大きくなることで住宅や農地に日が当たらなくなることや落ち葉の問題などの苦情も発生し、伐採を余儀なくされたものも多くある状況となっています。
本年9月定例会でも、北上議員から、街路樹の伐採、撤去の検討の必要性が述べられました。当局からは、街路樹剪定は概ね2~3年に一回実施することにしており、今後、多自然地域を中心に地元住民の意見を聞いた上で街路樹を撤去するとの回答がありました。
十分な予算を確保し剪定頻度をあげることができればこのような問題は減るとは思いますが、予算が無限にあるわけではありませんので、この方向性は理解するところです。
一方で、今回質問で取り上げさせていただくのは、景観を阻害する街路樹の問題についてです。
予算が限られていることが原因か、時折、強剪定の度を越えて、棒状にされた街路樹を見受けることがあります。
これは見た目にも悪く、街路樹本来の役割と真逆の不快感しか与えないもので、結果、新芽の時期には樹木の切り口から多くの枝が発生し、見た目の悪さに加え、翌年以降の剪定作業も煩雑になることになります。
街路樹の計画的な更新もままならない状況なのは理解しますが、このように景観を阻害してしまうような街路樹を生み出すことは、本末転倒なのは言うまでもありません。
そこで、こういった景観を阻害する街路樹を生み出さないためにも、街路樹の剪定や撤去の基準を盛り込んだ維持管理指針の策定が必要と考えますが、ご所見をお伺いします。
2 農地集積率の将来目標と小農(生活農業、兼業農家)が果たす役割について
国の農業経営基盤強化促進法では、効率的かつ安定的な農業経営を育成するとして、農用地の利用集積を進めるとされています。
これを受けて、兵庫県でも農用地の利用の集積に関する目標を定めており、現在の国の目標値80%に対して、県内の多様な営農類型を踏まえ、耕作面積の3分の2、つまり66%を集積するという目標値を掲げています。
しかし、現実をみると、集積率は、2018年度で23.4%となっており、ここ4年の推移を見ても、年間1ポイント未満の上昇幅となっています。
2025年度の66%集積という目標に対し、このままのトレンドで推移すると、うまくいって30%と、目標の半分も満たさない状況となっています。
一方で、農林水産ビジョン2025で示されている農業の担い手数の推移をみると、経営体の区分ごとで見ても、2025年度の目標値に向かって概ね順調に推移していることがわかります。
ということは、農用地集積の目標値を達成、または近づけるためには何か劇的な変化、政策がない限りとても不可能であると理解できるというのが普通の見方であると思われます。
つまり、本県の農業構造と担い手数の推移をみると、農用地の大半は、今後もやはり小農といわれる生活農業や兼業農家が支えていくのであり、農用地の集積と農業振興施策も現実路線に転換すべきと考えます。
現状、県内自治体によっては、人口減少していく社会であるにもかかわらず、全ての農用地を維持する前提にたった政策を展開しています。例えば、獣害柵を今ある農地すべてを守るために山裾に設置しており、将来的な維持管理を考えると、先が見通せない現実があります。こういった投資は、将来的には無駄だったとなる可能性もあり、県として、現実的な路線を見極め、かつ、小農といわれる農用地の大半を支える人たちにどのような支援をしていくべきかを検討することが必要なのではないかと考えます。
そこで、農地集積と小農に対する考え方と今後の方針について、ご所見をお伺いします。
3 女性への健康支援の必要性について
今、女性活躍という名のもと、女性の社会進出の必要性が叫ばれています。
女性の社会進出が進む中、日経BP総研と一般社団法人ラブテリが働く女性を対象にした「仕事と健康に関する調査2019」においては、ヘルスリテラシーの高さが働き続ける自信につながっていること、会社から健康サポートを受けられていると感じている女性ほど、長く健康で働き続ける自信があるという結果が発表されました。
今、日本では、20~40代の母親となる世代の痩せ体型の増加、カロリー摂取量が終戦直後を下回る、貯蔵鉄不足の隠れ貧血が1,000万人、血中ビタミンD濃度の不足による新生児ビタミンD欠乏症・くる病や葉酸欠乏による二分脊椎症の発症など、次世代への影響が危ぶまれるという現状があります。
実際に、妊婦の葉酸不足が日本泌尿器学会で報告されており、正常新生児にビタミンD欠乏症が高頻度で見られることが、京都大学依藤(よりふじ)医学研究科講師らの研究グループから報告されています。
また、低出生体重児がOECD加盟国ワースト1位と、既に課題が顕在化しています。
また、一般社団法人ラブテリによると、顕在化できていない課題として、子どもの貧血があり、新生児の貯蔵鉄は母親の貯蔵鉄と比例し、出生週数・出生体重が影響を与えるとされています。
元々成長期の子どもは鉄分不足に陥りやすく、特に「離乳期貧血」が1歳前後に起こりやすくなると言われています。
乳幼児の鉄不足は脳の中枢神経の発達を妨げ、認知機能の低下などをもたらすとされていますが、現状、この年代へのスクリーニング機会はないに等しい状態です。
内閣府男女共同参画局の資料でも、20~40代の女性の痩せ志向の問題点と、女性のBMI低下に伴い、低出生体重児が増えたことの問題が取り上げられています。
兵庫県でも、低出生体重児の割合は、ここ10年9.5%程度で横ばいとなっており、女性の痩せ問題と低出生体重児の問題は継続しています。
県の健康づくり推進実施計画では、低出生体重児の割合を令和4年度に「減少」させるとの目標値が設定されていますが、これまでのトレンドを見ると、今まで以上の効果的な政策を展開していく必要があるのではないかと考えるところです。
また、女性の痩せ問題については、20代の痩せについては減少しているということでしたが、10代では増加しているなど課題も見受けられると考えられます。
先に挙げた一般社団法人ラブテリによる調査では、働く時間が増えるほど朝食の欠食率も高くなり、栄養摂取が悪化しているという結果も出ており、今後、女性の社会進出が益々進んでいく中、女性への健康支援の重要性は増していくのではないかと考えます。
そこで、これら女性への健康支援は、今後、より積極的にアプローチし支援していくべき政策分野であると考えますが、現状認識と課題、今後の取組方針についてご所見をお伺いします。
4 児童虐待防止に向けた取組の推進について
児童虐待事案が年々増加しています。
本県議会でも多くの議員がこの問題を取り上げ、国でも本年6月、児童虐待防止法と児童福祉法を改正し、児童虐待事案を防ごうと今、様々な取組が始まっています。
児童虐待に関する各議員の質問に対しても、井戸知事は前向きな答弁をされており、今後、児童福祉司などの専門職の増員、資質向上への取組充実や、虐待通報への対応強化、その他、一時保護について、介入的対応と支援との機能分化などについても速やかに進んでいくものと期待しています。
一方で、虐待は、その3~4割が世代間連鎖であり、こども家庭センターの機能強化を図っても、根本原因にアクションしない限り虐待事案を減らすことは難しいと言われています。
そこで今回は、虐待の負の連鎖、世代間連鎖を断ち切るための政策として、子どもたちの権利擁護、教育への支援、そして、しつけと体罰、虐待という概念を正しく周知していく必要性などについて、以下4点質問させていただきます。
(1)一時保護のあり方と課題解決について
まず1点目は、子どもたちの権利擁護の観点から、一時保護のあり方と課題解決について伺います。
県では、虐待や非行などにより、一時保護の必要性が生じた場合速やかに一時保護されています。
本年、健康福祉常任委員会の管内調査で一時保護所を視察させていただきましたが、施設は壁に穴があいていたり、子どもたちが外部と自由に出入りのできない状態になっていたり、また施設の構造からも、機能別に部屋が順番に配置されているだけで、生活者目線の環境整備がなされていないと感じました。
一時保護所のあり方については、全国的な課題として専門家からも意見されており、今は地域ごとに一時保護所を設置するという分散型が求められています。
また、大人数を同じ施設で保護することや、混合処遇についても課題とされています。
本県の一時保護所でもこれらの課題を抱えており、今後、施設の分散化や小規模化、施設構造の見直しも必要と考えます。
以上を踏まえ、一時保護のあり方と課題解決に向けた取組について、ご所見をお伺いします。
(2) 負の連鎖を断ち切る教育について
2点目は、虐待の負の連鎖を断ち切る子どもへの教育について伺います。
虐待事案の3~4割が世代間連鎖、つまり虐待サバイバーと言われる親によるものであると述べましたが、いわゆる親から継いだ虐待の負の連鎖が、児童虐待に大きく影響している現実があります。
半数以上の親は負の連鎖を断ち切っていますが、重症度が高い虐待事例ほど、世代間連鎖の割合が高いという専門家の報告があります。
大阪市生野区では、教育現場で「性・生教育」という事業が行われており、増え続ける虐待事案に対し、根本的なアクションが必要という意識から、取組が始まったと聞いています。(大阪府子ども虐待防止アドバイザー 辻 由起子氏より)
溢れる情熱で教育を展開し、実際に効果も確認されており、今後、さらに大きな教育成果が表れてくるのではないかと思っています。
本県でも、学校において命の尊さ、性に関する教育が実施されていますが、児童虐待の負の連鎖を断つという明確な目的意識をもって、より踏み込んだ教育プログラムの構築が必要と考えます。この点について、ご所見をお伺いします。
(3)アタッチメント(愛着)とトラウマへのケアの必要性について
虐待を受けた子どもたちは、トラウマを抱え、愛着障害を抱える子が多くいることが指摘されています。
この子たちにとって一番必要なのはアタッチメントの形成と言われています。虐待はトラウマになるケースが多く、トラウマとアタッチメントにアプローチする治療とケアを実施することは重要な取組です。
一方で、虐待をしてしまった親も同じく悩みを抱えています。
山梨県立大学の西澤教授は、重大な虐待事件を起こした親も、徐々に追い詰められていった心理状態があり、特に虐待サバイバーである親の治療とケアは大切と指摘されています。
そして、取り組むべき課題として、体罰等の有害性に関する理解の促進と適切な養育方法への志向性の動機付けやトラウマからの回復の他、アタッチメントへの手当や加害者臨床の視点からの学びをあげておられ、これらのケア充実を望むところです。
以上、アタッチメントとトラウマへのケアの必要性について、ご所見をお伺いします。
(4)体罰等禁止の啓発について
4点目は、体罰等禁止の啓発についてお伺いします。
悲惨な児童虐待事件において、虐待に関与した疑いで逮捕された親族が「しつけのためだった」と供述するケースが後を絶たないことから、本年6月、児童虐待防止法が改正され、親権者や里親、児童福祉施設長が子どもをしつける際の体罰禁止が明文化されました。
親権者に必要な範囲で子どもを戒めることを認めている民法の懲戒権についても、改正法施行後2年を目処にそのあり方を検討するとされており、今後、しつけという名目での体罰は民法上も禁止される可能性があり、しつけという名で体罰を行うことは許容されないことが法律上も明確になる時代が来ようとしています。
今は沢山のエビデンスもあり、「怒鳴る」「叩く」子育ては子どもの成長によい影響を与えないことがわかっており、厚生労働省も体罰・暴言は子どもの脳の発達に深刻な影響を及ぼすと啓発しています。
「子ども自身は否定せず、この手が悪いと手だけ叩く」、「お尻を叩く」という方法ならいいだろう……と思いきや、3歳半までにお尻などを叩かれた子が5歳半のときに問題行動を起こす(「落ち着いて話を聞けない」「約束を守れない」など)リスクが高いという研究結果も報告されています。
このように、しつけの中で行う体罰も、子どもたちの発達に深刻な影響を及ぼすことが明らかになっている一方で、しつけとしての体罰を容認する傾向は依然根強くあります。
2017年に実施されたセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの2万人アンケート(2017年7月実施)では、約7割が「しつけの一環として子どもを叩いたことがある」と回答。56.8%が「しつけのための体罰を容認」しているという結果が出ています。
インターネット上では、今も、「しつけ 体罰」と検索すると、子どものしつけに体罰は必要かというタイトルのページがトップにあがり、それでも体罰は必要だ!との見出しで、著名人が体罰の効果と必要性を訴える記事が出てきます。
本年5月10日の国会本会議において、議員の質疑に対し安倍首相が次のとおり答弁されました。
「体罰は、たとえしつけを目的とするものであっても許されないものであります。そもそも、親権者以外のものについては、民法上の懲戒権を持たないため、従来より、体罰を加えることは許されていません。いずれにしても、体罰はどのような理由があっても許されないということを法律の上でも国民の意識の上でも徹底し、虐待の根絶につなげてまいります」
県としても、しつけという名目での体罰容認も許されるものではないということを保護者だけではなく、すべての県民に広く周知し、徹底していく必要があると考えますが、ご所見を伺います。