質 問 日:令和4年2月25日(金)
質 問 者:迎山 志保議員
質問方式:分割
1 県民ボトムアップ型県政の実現に向けて
(1)広聴ツールの刷新
県民の声を聞き、県民の思いを実現する。県民の幸せを追求する県政のエッセンスであり、ボトムアップ県政のキモ。今回、県民の価値観や行動志向、県政課題への意見聴取ツールとして実施されている県民モニター、さわやか提案箱事業について取り上げる。
県民モニターは事前に登録されたモニターが年間4テーマについて回答、回答率は約7割。モニターは継続登録も可能で現登録者2545人のうち53人は2005年の制度開始以来17年継続してくださっている方。今年新規登録された方は376人で全体の15%程度。多くは継続的に県政をモニターしてくれている。全体のうち10代~30代が全体の17%(ちなみに10代は10人)、50代~70代が61%でマス層。制度開始当初は30代までのモニターが3割を超えていた。未来志向の政策形成をするにあたり若年層の意見に耳を傾けること、課題を共有してもらうことは肝要。本制度を維持するのであれば、モニターの新陳代謝や若年層へのアプローチ、調査方法などの見直しを行い、より有意なものとする必要ではあるのではないか。また、さわやか提案箱についてはコロナ禍以降常時パンク状態と聞いている。令和2年度は13000件を超える意見が寄せられているが、内容について建設的で拾い上げるべき意見があったとしても誹謗中傷に近い意見や要望に埋もれてしまうような状況で、フィードバックについても明確なルールがあるわけではなくHPには現時点で9件掲載されているのみ。各県民局にも設置されているが内容については同様の課題を認識しているとのこと。機能的で意味のある提案箱に刷新するべきと考える。ボトムアップ型県政を実現するため現行の意見聴取ツールを刷新するべきと考えるがどうか。
(2)参画と協働の新たな仕組みづくりについて
この度、ビジョン委員制度や参画と協働の体現として県民運動などの中心を担ってきたこころ豊かな美しい兵庫推進会議の廃止を予定されている。制度疲労も見られたし、ここで一新するのは賛成だ。
では、ニューノーマルな時代の新しい旗印、新しい手法をどう示し実践していくのか。例えば加古川市ではdecidimというプラットフォームを活用し意見集約している。県でもトライアル的に新ビジョンへの意見募集で導入された。このシステムでは行政からの明確なリクエストに呼応する形で、公開のWEB上で県民同士もやり取りをしながら議論を積み上げていく。わが町を自分事に捉え、行政と作り上げていくイメージだ。県レベルでは全国初の取り組みであり、参加者の65%が22歳以下と、これまでのツールとは異なる手応えもあったかと思う。県ではパブリックコメントなども条例に基づいて実施されているが実際意見するのはかなりハードルが高いし、行政と一個人の往復のやりとりで終わる。
また、ワーケーション知事室で知事に声が届く人も限定的だ。県政がこれまでリーチしていなかった県民にも知事・県の思いを届け、それに対する声を集め、斎藤知事が考えるボトムアップ型県政をどのように実感できるものにするのか。
これまでの参画と協働の理念はそのままに、と知事は折々に言及されているが、県民のニーズと行政施策を擦り合わせてより良い循環が生まれる仕組み、県政を縁遠いものと感じている県民がMake Our HYOGOを意識するように、これまでの県民の参画と協働の仕組みをどうアップデートし、実践していこうとされているのか。
2 これまで進めてきた芸術文化施策への知事の姿勢について
知事が交代したことによって大きく影響が出るのでは思われた施策の一つが芸術文化施策。周囲でも、文化関連予算が大きく削られるのではないかという戦々恐々とした声が聞かれた。これは、特定文化団体への持続的な補助金を既得権と位置づけ、文楽や大阪フィルなどへの行政支援を打ち切った大阪市長就任時の橋下徹氏の記憶が未だに鮮明に残っているからだと思う。
兵庫県の芸術文化振興ビジョンは、芸術文化が阪神・淡路大震災からの復興への原動力となった経験を礎としている。自前の交響楽団を持ち、劇団を持ち、全国的にも例を見ない県立芸術文化観光専門職大学も設立した。
先日、県立美術館で行われた蓑豊館長と芸文センターの佐渡裕芸術監督の対談でもコロナ禍という困難な今こそ心の豊かさを育む文化力の発信が必要であり、創造的復興の象徴としての二施設がこれからも県民の心の広場となることを目指すとの認識が改めて示されていた。知事は過日、今年度文化庁芸術祭演劇部門で大賞を受賞した県立ピッコロ劇団を訪れ、劇団員の方々と対談やワークショップも体験された。実際劇場で現場の声に触れどのような感想を持たれたか。
今回の行革では芸術文化施策に大きなメスを入れたという印象はないが、知事になられ県財政の予想以上の厳しさを目の当たりにされた今、これまで震災からの復興の象徴として兵庫県が行ってきた芸術文化施策について今後どういう姿勢で向き合い、芸術文化施策をどう進めていこうとするのか。
3 OAAはりまハイツの今後のあり方について
OAAは今から約60年前の1960年に兵庫県や神戸市、神戸新聞社、神戸商工会議所が青少年の健全育成に資する団体として、当時集団就職などで全国各地から集まった若者たちの福祉向上を目指して設立された。
その後、活動拠点として1968年に開設されたのが加古川市の日岡山公園にあるOAAはりまハイツ(地上3階地下1階、宿泊定員90人)。金井知事の時代に交わされたハイツ建設関係覚書によると県の所有権帰属について言及があり、借入金の償還完了後県に帰属するとなっていた。その後どのような経緯か定かではないが、所有権は県に帰属することなく、現在は片山副知事が理事長を務める一般財団法人野外活動協会が所有、宿泊研修施設として管理運営をしている。
2年ほど前、老朽化による施設の危険性を指摘する声を受けたことをきっかけにこの施設の置かれている現状を調べたところ、設備の老朽化への対応が資金不足で不能な状態にあること、加えてコロナ禍による宿泊需要落ち込みで運営も危機的局面を迎えている事を知った。
土地の管理者である市はもちろん、県の支援も求められない中で、この場所に可能性を見出した地元民間企業がアイデアを形にするべくOAA、県民局と話し合いを重ね、企業がOAAに使用料を払う形で当面3年間は運営することになった。現在改修も進み、4月には来園者や地域住民のよりどころとなる拠点としてオープンするところまでこぎつけた。この間、OAAはもちろん、県青少年課にも理解を頂きながら進めてこられたことには感謝申し上げる。
しかしながら将来的なことを考えると、運営はできても所有権を持ってくれるところが出てくるとは到底考えられない。現状、野外活動協会に財政面での体力はなく、いざとなれば県が何とかしなければならない状況だと思う。危険建物になって事故が起きたり、緊急撤去を求められてからでは遅い。抜本的な行革議論も行われている今、存廃も含めて方向性について議論しておくべきだと考えるが当局の認識を伺う。
4 高校における精神疾患への理解と支援について
精神疾患は日本における五大疾病のひとつで患者数も多く重要な医療施策の対象だが、いまだ社会的理解が乏しく知識教育も普及していないため発症に気づかぬまま重症化し、強制入院や自傷他害等の行為により本人自身や家族が大きな苦しみを抱えているという現状がある。
この精神疾患、来年度から高校保健体育でその予防と回復が授業項目に加わる。精神疾患という文言が教科書に記述されるのは実に40年ぶりとのこと。これは精神疾患にり患している患者の半数が14歳までに、8割近くが25歳までに発症しているという実情、早期の気づきで重症化や自殺に至るケースを回避できるという事実等を重く見た結果だろう。
昨年コロナ禍における児童生徒の自殺が増えたことが大きく取りあげられた。全国統計によると、18歳以下の自殺数について昨年度は一昨年度に比べ4割増加、特に女子中高生は2倍となった。数が急増した女子生徒の原因・動機を見てみるとその4分の1以上がうつ病など精神疾患であった。長引くコロナ禍は児童生徒が抱える問題を覆い隠している。学校現場では家庭訪問がなくなり、面談なども機会も減った。地域の子ども食堂が閉鎖したり、恒例行事の中止が相次いだ。全ての人がストレスや不安を抱える今、問題が各家庭に押し込まれ、子供にのしかかっている。その意味で今回の学習指導要領の改訂は大いに意義があるが、実効性を高めることは決して簡単なことではないと精神保健福祉士から指摘を頂いた。
過去、社会の中で差別的な対応がなされた歴史、目に見えない病であることによる理解不足や偏見などもあった中、学習効果を上げるために、どのように授業を進め、精神疾患への理解を深めるのか。また、いざという時に、生徒が1人で悩みを抱え込まないよう、外部機関等とも連携しながら取り組むことが重要だと考えるが、教育委員会の所見を伺う。
5 高校入試における調査書の取り扱いについて
わが県の高校受験制度について、かねてから耳にするのが調査書の配分が大きいということ。調査書についてはネット検索をすればすぐさま兵庫県の公立高校入試は内申点対策が要、といった文言が目に付く。学力検査と調査書は1:1の関係で、調査書では、実技4教科は主要5教科に比べ1.875倍と比重が高い。(他16都府県も何らかの傾斜をつけている)県教委によれば、この割合は昭和61年から基本的に変わっていないとのことでこれまで見直しの必要性に迫られたことはないし、今後もこの兵庫の選抜方式を維持していきたいとのことである。
この調査書であるが、今年度、観点別学習状況の評価の観点が新学習指導要領の全面実施により変更された。これまでの「知識・理解」「技能」「思考・判断・表現」「関心・意欲・態度」の4観点から、これからの時代を生き抜くスキルを落とし込んだ形で「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に集約された。またアクティブ・ラーニングの視点を取り入れ、定期考査などの結果だけでなく学びのプロセスが評価されるという。プロセスにしろ、新しい3本柱の一つ「主体的に学習に取り組む態度」にしろ、主観を完全に排除し客観的に公平に評価することは簡単なことではないように思う。恣意的な要素が入り込む余地があることで生徒が過度に緊張感を持ち続けたり、生徒や保護者が努力ではどうしようもないのではないかと諦めたり、評価が不透明であるように感じたりするものであってはならないし、評価する教師にプレッシャーがかかるような状況も好ましくない。県教委は調査書の課題から目を背けず、高校入試に直結する評価として、公正公平な評価と評定の方法を担保するべく努めてほしい。
近年他の都道府県では、様々な入試改革が積極的に行われている。例えば、広島では学力検査の比重を高め、調査書と同等の比重で自己表現を評価したり、長野県や愛知県などでも時代の要請に応える形で見直しをしている。また、学力検査と調査書の比率を、高校が求める生徒像にあわせて、県によっては一般入試で学校ごとに9:1~5:5で運用したり、自校作成問題での学力検査を実施し重視する学校も増えている。
多くの生徒にとって人生初めての大きなチャレンジである高校入試が、公正で透明性の高い信頼できるものであるよう、県教委には生徒ファーストな改革姿勢をもっていただきたい。公立高校入試における調査書の取り扱いについて課題があると考えるが、当局の所見を伺う。