第308回2月定例会 予算特別委員会質問(総括質問)
2011年3月11日(金)
1 兵庫の未来づくりに取り組む施策の推進について
県では、平成12年2月に平成20年度までの「行財政構造改革推進方策」を策定して以来、平成16年にはその方策を見直し、そして、平成20年度には新たに平成30年度までの「新行革プラン」を策定、さらに、本年度は、条例に基づく総点検が実施され、これにあわせて、県議会の特別委員会でも精力的に議論を重ね、今定例会に第2次行革プラン案として上程された。
まさに、平成11年度以降、厳しい行革を行っている中で、かつ、今回の総点検で、施策目的をゼロベースから評価し、見直しをするという方針が示され、県民にとっても「いつまで我慢すればいいのか」という先の見えない不安により、県民の県政への信頼低下が懸念される。
そういう中で、今回の第2次行革プランでは、事務事業において厳しい見直しを行う一方で、「兵庫の未来づくりに取り組む施策の推進」が示され、平成23年度予算案においては、具体化の施策として、地域ビジョンや地域活性化実現のため、県、市町、地域団体が取り組む事業を支援する「地域の夢推進事業」が創設された。この事業は、我が会派も主張してきたもので、地域の独自性と参画と協働を広げる、将来に希望を持てる社会の実現に向けた予算として大いに評価する。
この「地域の夢推進事業」については、財政状況審査において、藤井副委員長からも課題を数点指摘し、その中で、新たな担い手であるNPOなどの市民団体が地域課題に取り組む事業や、地域の中小企業団体などが行う活性化事業も対象とするなど経済雇用対策にも効果がある地域に還元できるような事業も取り入れるべき、と提案したが、「今後十分に検討」「県民局での活用を期待」との答弁であり、行革の目玉として第2次行革プランに同事業を予算化した所管としての、事業そのものの立案に対する思いと熱意が弱かったと感じる。
厳しい行革を実施する中で、この事業が「県民が将来に希望を持てる社会の実現に向けた事業」であることを県民がイメージできるよう、県が県民に強くメッセージとして発信していくことも、この事業を行う大きな目的でもあると考える。県民に伝わりにくいようでは意味がないと考える。
そこで、兵庫の未来づくりに取り組むこの施策について、県民が将来に希望が持てるとイメージできるわかりやすい説明をお願いするとともに、経済雇用対策にも効果があり地域が夢を持てる事業への活用についてどう考えているのか、知事の見解を伺う。
2 土地開発公社のあり方について
平成20年度策定の新行革プランでは、土地開発公社等が保有する県の先行取得用地について、現時点では直ちに利活用が見込めないことから、森林の持つ公益的機能に着目し、「環境林」として県が計画的に取得し、適切な管理を行うこととした。その方針に基づき、県では、毎年度取得を行い、今年度は三木市志染町の約34haの森林を約50億円で買い取ることとし、今定例会に平成22年度関係議案として上程、本会議で可決した。森林の公益的機能の重要性、また、土地開発公社所有のままだと金利がかさむ一方、30%の交付税措置が後年度ある県債が活用できることなどを踏まえ、議案には賛同した。だが、県取得後はほとんど放置されている状況にあることを考えると、林野庁でも「環境林」を公的管理により公益的機能を高度発揮できる森林と位置づけ、新年度より整備事業に取り組むこととしていることも踏まえ、県が取得することの県民理解を得るためには、少しでも地域振興に資するような有効活用や事業化を図るべきと考える。
また、今定例会には、平成15年、16年に県が住宅供給公社より買い戻した「宝塚市玉瀬用地」の処分の件も上程され、新名神高速道路整備の用途での売却であり、我が会派としても賛同したが、県が公社より簿価で買い戻した単価が約9,700円/㎡である一方、今回の処分単価は4,300円/㎡と、倍以上の差となっている。一方、この差額は県の損失になるのに、県民には極めてわかりにくくなっている。行革を進める上で、県民にわかりやすく示していくことも必要ではないかと考える。
いずれにしても、これらの問題は不動産バブルと言われた時期等に、乱開発防止の目的とは言いながら、県が土地開発公社等の公社に対し非常に多くの用地を先行取得させたことが原因ではないかと考える。その後、土地神話は崩れ、地価は急激に下落し、現在も下落傾向がなお続く一方、大規模開発に対するニーズも落ち着いている今日の情勢の中で、特に、土地開発公社については、その設立目的にもある「経済基盤確立と産業発展に伴う土地需要の増大や地価高騰の障害の解消」という社会的使命は、とっくに終わったのではないかとも考える。実際、他県においては、平成18年の神奈川を皮切りに、平成19年には熊本、平成22年には群馬、宮崎で土地開発公社が既に解散し、福井、富山では今年度末に解散するほか、山口では来年度末の解散を目指し、また、山梨は平成25年度までに残務整理し平成49年の解散を目指すなど、多くの自治体が期限を決めてあり方を検討するなど、解散に向けた取り組みを行っていると聞く。
また、総務省による平成21年度土地開発公社事業実績調査結果によると、平成21年度末に残存する44道府県の土地保有額は、全国平均で144億円、うち1位は愛知で782億円、兵庫は2位で732億円であり、さらに10年以上保有している土地では兵庫が484億円で1位となっている。
そういう中で、本県においても、新行革プランの公社改革推進のための第三者委員会である「公社等経営評価委員会」から、土地開発公社について「体制の縮小を図るとともに、存廃についての検討」をすべきと提言され、今回提案された第2次行革プランにおいては、同公社のあり方について「県財政への影響等を踏まえた中長期的な課題として検討を行う」こととしている。
一方、昨年の予算委員会で我が会派の石井健一郎議員が同公社の存廃を含めたあり方を質した際、「土地開発公社の事業量は減少傾向をたどり、平成25年度以降は80億円程度で推移する」と答弁された。このように公共事業に必要となる用地の減少とともに公社の事業量が減少する中にあっては、私が県土整備部審査で提案した外部専門職等を導入できる部分には導入するなどして、公社業務を整理していくべきではないかと考える。
そこで、先行用地取得等の土地開発公社に依頼してきた業務の外部専門職への委託等を検討した上で、廃止までの検討スケジュールを示して、土地開発公社の今後のあり方を明らかにしていくべきと考えるが、ご所見を伺う。
3 自殺対策の推進について
今月3日に警察庁より昨年の自殺者状況が発表され、総数は前年比3.5%減ながら13年連続3万人を超える3万1,690人。要因では、半数が健康問題、さらにその半数が鬱病、そして、目立ったのは、就職失敗が約20%増、子育ての悩みが約44%増と、悲しくも社会問題を反映した形となっている。
この問題は、部局審査で、藤井副委員長と岡委員も取り上げたが、県の実効ある対策の実施を期待して、再度伺う。
県では、平成28年までに県内の自殺者の1,000人以下への減少を目標に、自殺対策を県政の最重要課題の一つとして推進している。また、我が会派からの推進体制強化の強い提案の中で、一昨年の「自殺対策推進本部」に続き、昨年4月に専門部署として「いのち対策室」の設置が実現した。しかし、県内の自殺者は依然として年間1,300人を超えており、平成22年も前年より5人増えている状況にある。数字を見る限り、残された6年間での目標達成は非常に困難と指摘せざるを得ない。
全国的に自殺問題がクローズアップされる中で、各都道府県でも対策が進み、平成22年では、8割近い都道府県で前年から自殺者数が減少している一方で、全国に先駆けて専門部署を設けるなど、先進的に取り組んでいる本県で成果が現れないという実態を重視し、総合的な取り組みを多方面から検証し直す必要があるのではないかと考えている。
まず、減少目標数の年次計画を作成し、特に多い県民局等をモデル地域として選定し、プライバシーにも留意することは勿論であるが、その原因・背景を含め調査・対策を集中的に講じるなどして、モデル地域で成果を上げ、その成果を全県に広げていくといったように、戦略的に自殺対策を進めていく必要があると考える。
そこで、モデル地域設定による取り組みの検討を含め、目標達成には本当に実効性のある対策を戦略的に進めていかなくてはならないと考えますが、ご所見を伺う。
4 兵庫県における実効ある雇用就業対策について
今月1日に発表された1月の有効求人倍率では、全国、兵庫県ともに前月より0.03ポイント改善、それぞれ0.61倍、0.57倍となった。改善傾向なものの、兵庫県は全国を0.04ポイント下回り、近畿2府4県の中でも11ヶ月連続最低という状況である。
そういう中で、県では、新政権のもと創設された重点分野雇用創造事業に平成23年度も取り組むとして、昨年に続いて予算提案している。そこでは、重点分野として、介護、医療、観光、農林水産、環境・エネルギーなどの11分野が示され、県事業で約44億円・135事業と、市町への事業費補助約30億円をあわせて合計約74億円が計上され、5,283人の雇用創出が見込まれている。
一方で、部局審査で岡委員も指摘したが、この重点分野雇用創造事業は実施が各分野に及ぶことから、関係部局と密接に連携を図りつつ、各分野において地域で生じている課題等と向き合いながら取り組まないと、各種指標が改善するような実効ある取り組みにならないと考える。一方、厳しい雇用情勢を反映して、雇用対策の予算は一定措置されるが、厳しい財政状況の中で他分野では予算措置が困難なことを踏まえ、単なる予算不足の補充となっているためか、実際の効果がなかなか見えてこないと感じる。他の雇用就業対策も同様だが、実効ある対策とするため、雇用政策の立場で産業労働部がしっかりと各部局の事業をマネジメントしていかなければ、政策効果は生じにくいと考える。
そこで、長期にわたり他府県と比較しても特に厳しい状況にある本県の雇用情勢を踏まえ、様々な分野で行う雇用就業対策を実効ある対策としていくため、産業労働部が果たす役割をどのように認識しているのか、ご所見を伺う。
5 農林水産業の6次産業化の推進について
新政権がかねてから標榜していた「農林水産業の6次産業化」に関する法律、いわゆる六次産業化法が、今月1日に施行された。
この法律では、地域資源を活用した新事業の創出等だけでなく、地域の農林水産物の利用促進、いわゆる地産地消も合わせて総合的に推進することにより、農林漁業の振興並びに食糧自給率の向上等を目的とすると、少し理念的に書かれているが、農林水産省の「6次産業化」を説明するパンフレットでは、「地域資源」と「産業」を結び付け、まさに「儲かる農林水産業を実現」すると打ち出している。
県の新年度予算案においても、「6次産業化チャレンジ支援事業」など、「6次産業化」を直接銘打った事業もあるが、直売施設設置支援、ブランド化や輸出促進を含め、あらゆる事業に、この「儲かる農林水産業実現」のための「6次産業化」の考え方が生かされているのではないかと考える。
そういう中で、部局審査でもふれたが、世界に誇る但馬牛について生産基盤の強化だけでなく、三田牛・但馬牛をはじめとする県内牛肉のブランド力を活かして、意欲のある畜産農家等の輸出チャレンジを支援したり、岡委員の質問でもあったが、地産地消の促進の一環としての生産者と地元消費者団体等のマッチング支援なども、「儲かる農林水産業の実現」のための農林水産業の6次産業化につながる取り組みではないかと考える。
また、「儲かる農林水産業の実現」は、農林水産業全体の深刻な課題である「担い手」問題を解消していく切り札でもあり、農林水産施策全般において、この要素を盛り込んで推進していくべきと考える。
そこで、農林水産分野での新年度予算案編成において、農林水産業のの6次産業化の考え方をどのように施策に反映していったのか、ご所見を伺う。
6 元気と活力がでるまちづくりの推進について
この問題は、部局審査では地元三田市の件として指摘したが、全県下の問題として再度質問する。
まちの「元気と活力」の起爆剤となると考える市街地再開発事業の進捗は、大震災の際の復興事業を含め、部局審査では東京に次いで進んでいるとのことであったが、平成22年6月現在、未施行の地区が11地区も残されており、事業期間も長期にわたることから、早期施行が望まれる。
一方で、人口減少社会が進む中、市街地再開発事業が進まなければ、施設や木造家屋の老朽化、パークアンドライド等の十分な公共施設がないままとなり、都市機能の低下が進み、まちの活力そのものの衰退につながりかねない。
そのため、持続可能なコミュニティの形成に向け、賑わいのある生活空間、商業空間を再構築するためには、三田駅前の再開発事業に見られるように、主要駅前を市の「玄関」と位置づけながら、市の「核」あるいは「顔」として「都心の賑わい」を求めるという発想から、まちづくりを展開していくことが必要である。
加えて、市民が主体の協働のまちづくりを進めるため、主要駅前市街地に居住する住民自身の「安全・快適・便利」を追求する新たなまちづくりの発想を柱に据えることも大切であり、そうした視点が、住民や世代の循環をもたらし、市町全体の活性化を導く可能性を秘めていると考える。
そこで、人口減少社会が進む中、また、今年度の国勢調査結果によると兵庫県は震災時期を除いて戦後初めて人口減少に転じており、今後県として、主要駅前市街地等において市街地再開発事業等による元気と活力がでるまちづくりに、どのような姿勢で取り組んでいこうとしているのか伺う。
7 教職員の勤務環境の改善について
教育委員会では、平成21年度に策定した「ひょうご教育創造プラン」に基づき、兵庫の未来を担う子どもたちの教育に鋭意・積極的に取り組んでいるが、その目的の実現にあたっては、学校現場で直接、子どもたちと向き合う教職員の役割が最重要である。教職員には、「教育の専門家」として児童生徒との信頼関係を基盤とし、人間形成についての深い理解と限りなき情熱を持って、いきいきと教育活動を展開することが必要である。
しかしながら、教職員の勤務環境の現状を見ると、平成20年度実施の勤務実態調査では、1日当たりの超過勤務時間は、小学校で全国1時間40分に対して兵庫県で1時間58分、中学校で全国2時間13分に対して2時間33分と20分近く上回っている。さらに、様々な要因があるにせよ、兵庫県で1ヶ月以上病気休職した公立学校教職員は、平成21年度で186人にのぼっている現状も報告されている。
この多忙化の要因は、調査・報告書の作成など事務処理や部活動指導などのほか、本来の業務とは言えない業務の混在等が考えられ、さらに、地域、保護者、子どもたちの教育に対する価値観の変化や社会情勢の変化等の中で、教育現場を取り巻く課題が多岐にわたってきていることなどが、多忙化に拍車をかけていると考えられる。
このため、県では、平成21年3月に、学校現場における負担軽減を図るために、「教職員の勤務時間適正化対策プラン」として提言を受けて、様々な取り組みを行っているものの、特に、学校現場の教育課題は、いじめ、問題行動等に加え、近年の児童虐待やいわゆるモンスターペアレントへの対応など山積しており、これらの課題に対応するには、学校の教職員全体の対応体制を構築していくのは勿論であるが、カウンセラーなど専門的見地から外部からの支援も必要であると考える。
そこで、多忙化する教職員に対して、授業や生徒指導の充実や生徒と向き合う時間をしっかりと確保するための、教職員の勤務環境の改善について、どのように取り組んでいくのかお伺いする。
8 大麻事犯対策について
公安委員会審査でも質問した大麻事犯対策について、知事も出席している総括審査で知事部局等と連携した取り組みをお願いしたい。
この件については、兵庫県警が全国で初めて大麻種子の販売を逮捕した事例もあった。今後とも、知事部局や教育委員会等をはじめとした関係機関との連携を密にして、再犯者のない、そして若年層にこれ以上広がらない大麻事案防止を強く要望する。