議会の動き

上野英一議員が質問(予算審査・財政状況)を実施

第304回2月定例会 予算特別委員会質問 (平成22年度の財政状況)
2010年3月3日(水)

1 県民に対する財政状況の説明について

 この点については、通告しておりましたが、先程、松本委員からの質問もあり、重複しますので、答弁は求めませんが、要望という形で発言させていただきたいと思います。
 さて、平成22年度予算の知事提案を受け、厳しい財政状況の中でも県民の負託に応えるべく全分野にわたりきめ細かい対応がなされていると感じました。その反面、総花的とも言える知事の予算提案を聞いて、県民からみれば「兵庫県財政 全国ワースト2位と聞いているが本当に苦しいんですか?」というような声が聞こえてきそうな気がします。もちろん、厳しいときだからこそ前向きに未来に向かって進むということは大切だと思いますが、県民と一緒に苦しみを分かち合いながら、また県民に参画し助けてもらうことも大切だと思います。
 そこで、現在の厳しい財政状況について、県民にわかりやすく説明し、財政改善に向けた取り組みへの協力をお願いする、という姿勢がより一層強く求められていると思いますので、強く要望させていただき、質問にうつります。

2 財政状況の基本的認識と持続可能な財政構造について

 質問するに当たり当初予算の説明資料を見ますと、かなり詳しく整理されており「みれば分かるだろう」といわれそうで逆に質問しにくくなったように思います。財政当局の資料づくり、ご努力に敬意を表します。が、平成22年度当初予算発表資料の18P 県債残高の数字、20・21P プライバリーバランスの数値について、今定例会に提案された新行改プランの財政フレームの変更後の数値との整合性がとれてない部分があるとのではないかとも思います。また、昨年の委員会の議事録をみますと、主に収支見込み、新行革プランの財政フレームの見込みと修正、要調整額、とりわけ収入見込みについてもっと厳しい姿勢で臨んでいただきたい等々の内容で、これもかなり詳しく議論されていました。
 そこで、私は少し視点を変えて、あるいは県民にとって分かり易い内容で財政状況等の基本的な認識について、お尋ねいたします。

(1) 本県の財政状況の認識について

 まず、厳しいといわれる本県の財政状況の認識についてであります。
 本県財政が厳しい原因として、枕詞のように「震災復興」といわれますが果たしてその認識だけでよいのでしょうか。
 基本的に自治体の財政は、既にご承知のとおり、税収等に地方交付税が措置をされ、日本のどこにおいても基本的な行政サービスを行うことができるようになっています。その必要な財源が、基準財政需要額です。地方交付税は、その基準財政需要額から標準県税収入の75%の基準財政収入額を差し引いたものであり、標準県税収入の25%が内部留保金であります。その25%の内部留保金が、自由に独自の施策等を行えることになります。その範囲内で予算執行をしていれば、基本的には財政赤字とはなりません。
 私は赤字、それ以上の財政出動をするものに、疫病を含む災害対策事業、世代間負担をともなう先行投資事業、不況時における経済・雇用対策事業があると思います。
 本県の場合は、先行投資事業等で殆ど伸びきろうとしていたゴムの状態に、震災復旧事業が重なりゴムが伸びきった状態になっている状況だと思います。それが、平成21年度末で先行投資分約2兆6,368億円、震災分7,605億円、計3兆3,973億円の県債(借金)残高、臨時財政対策債等を加えると3兆6,210億円、実質公債費比率はそれぞれ16.1%、7%、計23.1%、将来負担比率は388.3%となっていると理解いたします。そして新行革プランにより平成30年度には県債(借金)残高を2兆9,900億円、実質公債比率を18%にしようとするものだと思います。それでも将来負担比率は、282.2%です。財政健全化団体指定は、実質公債費比率25%、将来負担比率は400%ですから指標からは全然問題ないわけですが、常に持続可能な財政構造と考えた場合、世代間負担をともなう先行投資事業を考慮して、私は、もう少し低い数字、例えば、国の指標の半分程度、実質公債費比率で12.5%、将来負担比率で200%程度を目標として、改善のスピードを早める取り組みを行うべきではないかと考えますが、ご所見を伺います。

(2) 平成21年度の収支見込みと財政フレームについて

 今年は県税収入の落ち込みがあったものの、新政権による総額1兆円の交付税の増額と人事委員会勧告による人件費の切り下げにより、5月補正による緊急的な有効需要の創出や9月補正、台風9号災害に係る緊急対策等々、当初予算比1,047億円の歳出増を行っても1,367億円の歳入増があり差引320億円の収支改善が図られました。
 しかし、平成22年度当初予算を踏まえた見直し後の財政フレームでは、平成30年度で実質公債費比率、将来負担比率、県債発行残高、県債管理基金残高、県債管理基金積立不足率等々の財政指標は、ほぼ財政フレームにそった内容となっていますが、歳出総額は23兆1,445億円となっており、旧フレームから、人件費で330億円減、公債費で1,110億円増、県税交付金で840億円減、行政経費で1兆3,883億円増(うち特定財源が1兆1,178億円)、投資的経費で274億円増、新規事業財源で30億円減、歳出総額で1兆3,947億円増えています。
 歳出総額、とりわけ行政経費の増の主たる要因は、中小企業制度資金貸付金及び国の経済対策に関連して設置した基金事業だと思われますが、財源が国庫支出金又は特定財源で、収支への直接の影響はないことは理解するものの、財政フレームの歳出規模がこれだけ増大することは問題なのではないか、また、あくまでも現下の経済状況を踏まえた緊急的な対策であることからすれば、後年度も高水準で推移することはあり得ないのではないかと考えますが、歳出総額が変更になっているそれぞれの根拠、とりわけ行政経費の増額の根拠について伺います。

(3) 基金管理と適正な事業執行について

<1> 基金積立等のルールについて

 まず、基金管理のことについても通告していたのですが、時間の関係もございますので、省略しまして、第2の適正な事業執行についての質問を行います。

<2> 適正な事業執行について

 補正予算での淡路市の県有環境林の購入について、地域活性化事業債など有利な資金を使うことには十分に理解をするところですが、県有環境林の用地について、行政財産の取得、適正な事業執行という点において、帳簿価格での購入については問題があるのではないかと思います。また、補正予算は認めたところであるが、帳簿価格で購入したとしても、その時々に帳簿価格と時価価格との比較等を行い、購入時の理由と購入先、含み損の確認を行うことで、今後の事業執行に当たってより厳しく事業執行を行うことにつながるのではと考えるが所見を伺います。

(4) 基準財政需要額と事業費の比較について

 基準財政需要額は、地方財政に関する基本的な方針とその標準的な姿を掲げる地方財政計画に組み込まれた、給与費、社会福祉費、公共事業費、単独事業費などの内容を基礎としたものであるとされている。もっぱら他府県など類似団体比較等で事業費の比較は行われているが、基準財政需要額での比較検証は行われていない。一般財源ベースと事業費ベースでは困難とは思うが、基準財政需要額で比較を行い予算配分や財政改善の検討を行うことは出来ないか、例えば、人件費は需要額から判断して多いか少ないか、投資事業について需要額に相当する分と先行投資分の比率はどうかなどの検討が出来ないか伺います。

3 選択と集中について

 今定例会の代表・一般質問でも「コンクリートから人へ」の理念について、揶揄・批判も含めた発言が多くあったと思いますが、私は、ムダな事業をやめて、真に必要な事業だけを行う、いわゆる県が進める事業の「選択と集中」のことかと考えます。また、私は、複雑、怪奇にしている地方財政制度、国庫補助金・交付金、地方交付税、内部留保金、地方交付税の事業費補正(事業による起債の償還額の補填)、臨時財政対策債(本来は地方交付税、不足分)、減収補填債、行革推進債、退職手当債等々、地方財政制度を駆使するのが財政手腕とさえ思えるところに実は、「コンクリートから人へ」の理念、提起が生まれてきたと思います。極端な言い方かも知れませんが、多くの事業を起こし、多くの起債を発行すれば、単年度でみれば事業費補正で交付税が措置され一般財源が増えるという現象が、国も地方を合わせ1千兆円に上る借金体質を生み出したとも言えると思います。
 例えば、但馬空港問題を例に上げれば、そもそもは但馬地域の振興・活性化にむけた事業であったと思います。多額の用地買収・補償費、建設工事費は、大きな経済効果を地元にもたらしたと思います。但馬-伊丹間の搭乗率は平成20年度で65%を超え、地域挙げての存続に並々ならぬ努力を認めるところですし、敬意を表しますが、客観的にみて運賃助成が、大人普通運賃12,400円に対して豊岡市民等なら7,000円もの助成があることや、空港管理の人件費や維持費などの現状から、厳しい運営実態を認めざるを得ません。どれだけの公費を投入しているか計り知れません。これだけの公費をもっと別の形で投入できれば、本当の意味での地域振興・活性化につながると思いますが、残念ながら適当な補助金や交付金、資金手立ての制度はありません。このことが、地方財政制度の問題点だと思います。また、このような厳しい運賃助成を伴った現状でも羽田の発着枠拡大で但馬-羽田便に経営改善の期待を寄せておられるが、羽田便ともなればプロペラ機でなくジェット機を飛ばす必要性も生まれ、そのためには滑走路の延長が新たな課題となるように考えます。但馬空港を一例に挙げたが、真に地域の活性策と成りうる事業なのか、十分な議論を踏まえた事業の選択が必要と考えます。 
 また、先ほど申し上げた県有環境林の取得に地域活性化事業債など有利な資金を使うことや、あるいは議論のあるところですが、土木・建築工事等で国庫補助事業を適用することで、必要以上あるいは過大設計とも言えるムダな事業も多くあると思います。工事雑費や事務雑費などの経費でも同様かと考えます。国の補助があるから、何でもするというのではなく、十分な議論の上での、選択と集中により事業を行うことが大前提かと考えます。
 そこで、事業の選択と集中を図り、無駄を省き、真に必要な事業に厳選して効率的に執行することが必要と考えますが、ご所見をお伺いします。

4 歳入確保・歳出削減の努力について

(1) 県税収入の確保について

 極めて厳しい経済情勢の中、県税収入も厳しい状況かと認識します。しかし、一方で、県の財政も非常に厳しい状況にあり、収入確保に向けた取り組みが不可欠であります。
 本県が目指す自己決定・自己責任の原則に基づく自主的な財政運営を展開するためには、歳出面での改革とあわせ、自主財源を最大限に確保することが必要であり、このような観点からも、税収確保対策の徹底が求められています。
 そこで、今年度の税収確保の取り組み状況と来年度の方針について伺います。

(2) 県民緑税の延長について

 県民緑税について、新行革プランには導入後5年を経過する中で、制度の延長の必要性について検討するとありますが、来年度で5年目を迎えます。しかし、来年度の実施計画には検討予定の記載も全くありません。県民負担が生じるものであり、周知期間も考えると、早期の検討、方針決定が必要と考えますが、検討状況を伺います。

(3) 未利用地の売却状況について

 平成20年度決算審査の特別委員会において、加藤議員も確認しましが、未利用地をそのままに放置しておくことで、管理費等の歳出がふくらみます。また、活用方法によっては歳入が見込まれることから、早期売却等が望まれます。そこで、昨年10月に加藤議員が確認した後の、売却状況と早期処分に向けた今後の取り組みについて伺います。

(4) 県民参加の各種ボランティアによる労務提供等による歳出削減の取り組みについて

 県では県民との参画と協働を推進する中で、本来、県で実施すべき事業について、各種ボランティアの活用や、NPO法人にアウトソーシングする等を行っているかと思います。このような取り組みは、県で直接実施した場合と比べて、一定の歳出の削減効果につながっていると考えます。
 このような取り組みについて、行財政構造改革を推進する県としては、積極的に取り組むべきであります。
 そこで、県民の参画と協働の推進による県民参加の各種ボランティアによる労務提供等による歳出削減効果についてのご所見を伺います。