議会の動き

◆21年12月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方

代表質問  黒田 一美 議員
一般質問  前田 ともき 議員、栗山 雅史 議員

代表質問

(黒田 一美 議員)[発言方式:一問一答]

1 新型コロナウイルスワクチン3回目接種の安心・安全の確保について
2 阪神・淡路大震災から続く本県の「参画と協働」の取組の推進について
3 兵庫県の政労使の三者での取組の推進について
4 人権行政の推進・強化について
5 多文化共生の充実について
6 芸術文化立県ひょうごの実現に向けて
7 兵庫県の関西広域連合への関わりについて

質問全文

質 問 日:令和3年12月6日(月)

質 問 者:黒田 一美 議員

質問方式:一問一答方式

1 新型コロナウイルスワクチン3回目接種の安心・安全の確保について

国の新型コロナウイルスワクチンの3回目接種についての方針では、対象者は、2回目接種を終えた人全員とすること、ただし、18歳以上の者を予防接種法上の臨時接種に位置づけること、高齢者等重症化のリスクの高い方には、できるだけ3回目接種を呼びかけることとされました。

また1、2回目にモデルナ社ワクチンを接種した人が、3回目にファイザー社ワクチンを接種すると言ったいわゆる「交互接種」についても、認める内容の判断がされました。これは海外の研究では、交互接種とそうでない場合との間で、副反応は同様であったとの報告から判断されたとのことです。

さらに、接種間隔については、2回目接種完了から、原則8ヶ月以上後を対象とすることとし、地域の感染状況等を踏まえて自治体の判断により8ヶ月より前に実施する場合においては、薬事承認の内容を踏まえ、6ヶ月以上の間隔をあけること、とされましたが、この内容を巡っては、新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大に対応するため、未だ政府で検討されています。そのオミクロン株に対する県民の不安が広がっております。ワクチンの有効性などが国において検証されていくと思いますが、今後、県民への正しい情報の提供と、迅速な対応が重要です。

この3回目のワクチン接種においては、2回目の接種を完了してから原則8ヶ月以上を経過した際に接種を開始できるよう、市町が接種券を送付し、各自がそれをもとに市町のホームページなどで予約、接種するという流れになっており、接種の実務は原則市町が担うこととなります。

そのため、県がこの3回目接種に向けて担うべき重要な役割は、ひとつにはワクチンの確実な確保と供給、ふたつには県民のワクチンに対する疑問、不安に答え、副反応等に対する正確な情報提供を行うことによる安心安全の確保、であると考えます。

1回目の際には、国のワクチンの供給が滞ったことで、市町の現場は大変混乱を来しました。今回は国が示した来年3月までのワクチン配分について、交互接種が広く行われることを前提に、ワクチン接種を実施する市町単位でファイザー社ワクチンが6割弱、モデルナ社ワクチンが4割以上の割合で供給する計画となっており、ファイザー社ワクチンを前提に準備を進めていた各市町や医療機関が困惑していると聞いています。

以上を踏まえ、新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種を積極的に進めるに当たり、県としてどのような取組を進めていくのか、お伺いします。

2 阪神・淡路大震災から続く本県の「参画と協働」の取組の推進について

本県の「参画と協働」の推進の姿勢は、平成12年に行われた21世紀兵庫長期ビジョンづくりの過程の中で、“県民自らが主体的に地域の「夢」や将来像を描くことに「参画」することを基本に、その実現に向けて、各主体が責任を果たしつつ「協働」する”という視点の中に明確に表れました。

それを踏まえ、平成14年12月には「県民の参画と協働の推進に関する条例」を制定し、その理念を明らかに示しました。

この条例の第1条には、「参画と協働の意義」として、「豊かな地域社会は、県民の参画と協働による地域社会の共同利益の実現と県民の参画と協働による県行政の推進」により実現されなければならないとしています。

私が本県の参画と協働を考えるとき、その原点は、震災半年後の平成7年7月に発足した「被災者復興支援会議」を思い起こします。これは被災者と行政の間に立つ第三者機関という位置づけで、被災者の生活実態、意見、要望を把握し、被災者と行政の双方に提言助言する活動をしていました。被災者の生活実態を把握するため、支援会議では「移動いどばた会議」といって、仮設住宅などを回り、被災者と直接、意見交換を繰り返し行いました。

私は議員になる前に、地元でこの「移動いどばた会議」に参画した経験があるのですが、本当に真剣に被災者、支援グループと兵庫県の担当者が熱い議論を繰り返していたことを鮮明に覚えています。

私は、兵庫県の「参画と協働」の原点は、やはりこの阪神淡路大震災から続く、県民と行政が一体となって共に自らの地域を住みよくしていこうとする熱気であると考えています。しかし、震災から27年となり、この「参画と協働」が一般的な言葉になるにつれ形骸化してきたことも否めません。

これから、齋藤知事には、兵庫県が震災から得た教訓であり財産である「参画と協働」の精神を、知事が唱える「県民ボトムアップ型県政」に活かして頂きたいと考えますが、単に会議に県民を入れる、といった形式的なことでは、熱気は生まれません。行政が本気で県民の意見を聞き、それを施策に活かすんだという意欲、時には意見の対立を恐れず、本音で意見を言い合う場、手段、その仕組みを作ることが重要と考えます。

今後、齋藤知事は、本県の「参画と協働」について、具体的にどのように推進されるおつもりか伺います。

3 兵庫県の政労使の三者での取組の推進について

兵庫県の雇用労働行政においては、これまで兵庫県、連合兵庫、兵庫県経営者協会の三者による協働を重視して取り組んできたことは大変評価しています。

この三者での取組がクローズアップされたのは、今から20年以上も前の、平成11年のことである。当時はバブル崩壊後の第二次平成不況のただなかで、その年の4月に県政史上最低の有効求人倍率0.32倍を記録したことを契機に、兵庫県の政労使による雇用の打開策を探る取組として兵庫県雇用対策三者会議が発足し、平成11年12月には、兵庫型ワークシェアリングについての三者合意がなされました。この兵庫型ワークシェアリングについては、当時も様々な議論がありましたが、平成12年2月の定例会で当時の貝原知事は次のように答えています。

「ワークシェアリングとは、労働時間の短縮を図ることにより仕事を分かち合い、雇用を確保するというものだが、兵庫型ワークシェアリングは、短時間勤務や在宅勤務、さらには自営や生きがい就業といった雇用以外の働き方も含めた広い意味での仕事をより多くの人で分かち合うとともに、労働者個人の職業生活と家庭生活、地域生活の充実を図ることをめざしてまいりたい」

この考え方を今改めてみてみると、コロナ禍で一層の取組が求められた「働き方改革」「多様で柔軟な働き方の推進」そのものであります。当時はまだ、一般的でなかった「ワーク・ライフ・バランス」の考え方を、本県ではいち早く認識していたのです。

この流れから、平成18年には仕事と生活の調和と子育て支援に関する政労使の三者合意を締結し、子育てしやすい環境作りを推進してきました。また平成20年には仕事と生活のバランスひょうご共同宣言によりWLBの推進に向けて政労使が一体となって取り組むことを宣言し、さらに平成21年6月には「ひょうご仕事と生活センター」を開設し、政労使協働の取組の下、県内事業者での多様な働き方の支援を行い様々な成果をあげてきました。

このようにこれまで兵庫県が行ってきた、国の兵庫労働局も含め政・労・使が一体となって、社会経済状況に応じた雇用対策を協議、検討する体制については是非とも継続して取り組んで頂きたいと考えるが、知事はこれまでの取組をどのように評価され、今後どうしていくつもりかお伺いします。

4 人権行政の推進・強化について

最近、兵庫県内では県民に関わり合いのある人権侵害事件が続いて起こっています。

一つは、本年8月4日に兵庫県警が逮捕した行政書士の事件です。

新聞報道によると、全国で800回以上にわたり戸籍謄本、住民票を不正取得し、探偵業者等へ提供して多額の報酬を得た容疑であります。その者は職務を悪用し、虚偽の理由で、姫路市や加古川市などでも不正に取得しており、その他尼崎市、西宮市など、県内市町で戸籍等を取得したことも分かっています。戸籍などの不正取得は、身元調査等“人権侵害”や差別に繋がる悪質な犯罪です。

もう一つは「全國部落調査」復刻版出版事件です。2016年2月に川崎市の「示現(じげん)舎」という出版社が戦前の「全國部落調査」を復刻出版するとして、ネット通販大手Amazonでのネット通販を告知しました。Amazonは被差別部落関係者からの販売中止の申し入れをうけ、予約受付を中止したが、示現舎はその後、複数のウェブサイトに、地名リストや、被差別部落関係者の名前、住所、電話番号、生年月日まで掲載しました。兵庫県内でも多数の地域と個人の情報が掲載されました。これらに対して、被差別部落関係者は、出版差し止めや、掲載の削除を求める訴訟を起こし、東京地裁で、この9月27日に「差別や誹謗中傷を受ける恐れがあり、プライバシーを違法に侵害する」と違法判決が出されたという事件がありました。

また、昨年11月、「ニコニコ動画」「YouTube」「ライブドアブログ」等で丹波篠山市の被差別部落について差別を助長する内容でネット動画が流され、地元自治会が仮処分を申立て、神戸地裁柏原支部が削除命令を決定するという事件もありました。

このように兵庫県民に関わり合いのある悪質な人権侵害、差別事件が続いており、マスコミでもそれぞれ大きく報道されましたが、残念ながらそれを利用する人々が存在するという事実があります。

戸籍の不正取得を頼む人、悪質なネットを見る人、また書き込む人。

日本では残念ですが、諸外国が法制定している包括的に差別そのものを禁止する法律「差別禁止法」がありません。そのため、差別を禁止する、人権侵害をなくす県行政の取り組みの重要性が問われます。

兵庫県は、人権に関わる方針、「兵庫県人権教育及び啓発に関する総合推進指針」を策定し、人権に関わる行政セクション、人権推進課、人権教育課、そして今年30周年を迎えた公益財団法人人権啓発協会等を中心に差別をなくし、県民の人権擁護、啓発に取り組んでこられました。しかし、先ほど述べました、最近の差別事件、あるいはコロナ差別やLGBT等性的少数者への差別など人権課題の多様化といった人権を取り巻く状況を踏まえ、これらの取組をどう強化していくのか。「だれひとり取り残さない」兵庫県政を進められる知事のご所見をお伺いします。

5 多文化共生の充実について

本県は、特に神戸港を有する神戸地域を拠点に、世界の様々な地域の人々と文化が集り、国際性豊かな地域として発展してきた歴史があります。

私は、神戸の垂水で育ちましたが、私が通っている小学校のすぐ南側に、ルーテル国際学園ノルウェー学校がありました。当時は塀やフェンスもなく、まさしくオープンでしたから、下校途中に、そのノルウェー学校の児童と一緒に遊んだものでした。今思えば、それは一番自然な形で多文化に触れ合った経験でした。このような地域にある外国人学校の役割も重要です。

さて、令和3年3月に改定されたひょうご多文化共生社会推進指針によれば、本県の外国人県民は一時期減少傾向でしたが、国の外国人材受入促進等により平成26年以降増加に転じ、令和元年末時点で115,681人、国籍数は157ヶ国に渡るとのことです。

近年の外国人県民の特徴としては、ベトナムやフィリピン、ブラジルまた最近ではアフリカ系の方も増え、これまでと比べ一層、多国籍化していることが挙げられます。

また、国の方針もあり、外国人労働者と留学生が急増しています。近年コンビニ等でアルバイトする外国人留学生をよく見かけるのは、留学生の増加を実感します。

このような中、私が非常に重大だと感じている特徴は、外国人県民の地域分散化です。令和元年時点でも、外国人県民が最も多いのは神戸地域ですが、平成26年からの増加率をみると、北播磨や淡路、丹波、但馬などの増加率が高くなっています、これまでそれほど外国人県民がいなかったところに、この5年で急に増えているわけです。こういった地域では、地域に外国人県民を受け入れる土壌が出来上がっていない場合が多く、文化や生活習慣などの違いから、地域住民との問題が発生しやすいと考えられます。

そのため、この多文化共生について、特に外国人県民の地域分散に対して、それぞれの地域に根付いた多文化共生をすすめるため、今後どのように対応していくのか、当局の見解をお伺いします。

6 芸術文化立県ひょうごの実現に向けて

兵庫県では、とくに阪神・淡路大震災において疲弊した人々の心を、芸術文化が癒やし、元気づけ、復興への原動力となった経験から、芸術文化が県民の暮らしに欠くことの出来ない基本的な公共財であることを強く認識し、その振興のため様々な施策を展開してきました。

令和3年3月に県が策定した第3期芸術文化振興ビジョンでは「芸術文化立県ひょうご」の実現を基本目標に掲げています。

ひとくちに芸術文化と言っても様々なものがあり、広い兵庫県では地域によっても、県民に根付き、地元の方に親しまれ大切にされているものは異なります。

私の個人的なイメージでは、淡路地域での人形浄瑠璃や但馬地域の数々の民俗芸能、阪神地域では舞台芸術が盛んですし、丹波ではやはり陶芸でしょうか。播磨地域では祭りに関わる伝統文化、地域文化が盛んです。

このように思いつくだけでも、兵庫県には地域によって盛んな芸術文化が異なり、特性があります。そのため「芸術文化立県ひょうご」の実現に向けては、それぞれの地域の特性に合わせた文化振興施策を考えて行く必要があります。

また一方で、私は文化振興議員連盟の役員もしており、この12月1日に各文化団体との意見交換会を行いました。コロナ禍で活動に制約があることの困難に加えて共通している訴えは、少子高齢化による会員数の減少と先細りする活動への深刻な懸念です。担い手不足・後継者不足の問題は、全県的な課題であり、持続可能な芸術文化活動に向けて県として支援していく必要があります。

以上のことから、兵庫県として、今後、芸術文化立県ひょうごの実現に向け、どのように取り組まれるか、当局の見解をお伺いします。

7 兵庫県の関西広域連合への関わりについて

関西広域連合は関西から新時代をつくるため、平成22年12月に府県域を越える全国初の広域連合として設立されました。井戸前兵庫県知事は、設立当初の平成22年から令和2年まで10年に渡り連合長を務められ、防災分野では「関西防災・減災プラン」をはじめとする各種計画、ビジョンの作成やカウンターパート方式による迅速な被災地支援、ドクターヘリの運航体制の構築、また、琵琶湖・淀川流域対策など着実に成果を上げてきました。

では今後、仁坂新連合長の下での構成員として、新たに加わった齋藤知事は、そして兵庫県はどのような役割を果たしていくべきでしょうか。

2025年大阪・関西万博やこの度2026年へ再延期を検討しているワールドマスターズゲームズ関西などのビッグイベントを成功させることも重要ですが、それと同時に、改めてこの関西広域連合の設立当初の趣旨に立ち返って頂きたいと思っています。

関西広域連合の設立のねらいの一つは、「国の出先機関の事務の受け皿づくり」でありましたが、結果として、現時点では国の出先機関の地方移管については、京都に文化庁の移転が決定したものの、それに続く成果を出せていません。

広域連合は、法律又は、これに基づく政令の定めるところにより、国から直接、権限移譲を受けることができ、広域連合議会の議決を経て、国の事務の一部を広域連合が処理するように要請できるなど、具体的な地方分権の実行を国に対して求めることができるとなっています。

齋藤知事には、国でも地方でも関西でもそれ以外の地域でも、様々な場所で地方行政に携わってこられたその経験を活かし、国から関西広域連合が権限移譲を受けるべき事務にはどんなものがあるのか、それをどのように実現していけるのか等について、ぜひ兵庫県から関西広域連合に向けてアイデアを出し、活発な議論に導いていってほしいと期待します。

地方分権の実現に向けて、関西広域連合のなかで今後兵庫県が果たすべき役割について、どのように考えているか、知事のご見解をお伺いします。

黒田 一美

(選挙区:神戸市垂水区)

一般質問

(前田 ともき)[発言方式:一問一答]

1 井戸県政からの守破離と議会歴史との対話を踏まえた齋藤県政
2 職員の採用力強化とリボルビングドア
(1)採用力の強化と爆速出世への道
(2)外部人材の活用:リボルビングドア
3 職業学科の再編とギフテッド教育
(1)職業学科の再編
(2)異才を伸ばせ!ギフテッド教育の推進
4 議員の不当口利きゼロ作戦
5 子育て支援の所得制限は撤廃を!

質問全文

質 問 日:令和3年12月7日(火)

質 問 者:前田 ともき 議員

質問方式:一問一答方式

1 井戸県政からの守破離と議会歴史との対話を踏まえた齋藤県政

知事選の争点の一つは継承か刷新か。継承は前例踏襲のコピペ運営で文句はでないが、刷新で選ばれると早期に変化を実感できない場合、「誰が政治家になっても同じ」と政治不信に逆戻りしてしまいます。

齋藤知事がおっしゃっている「守るべきものは守り、変えるべきところは変える。」には、センスとスピード感に加えて知識と経験も問われます。従って、兵庫県で初仕事の齋藤知事は早期に兵庫県政を熟知する必要があります。

迫る予算編成は最重要であり、その前に押さえておくべき点がある。それが議会議事録です。県政課題を網羅的・多角的・効率的に収集する方法は議事録の速読が最適です。また、議事録を通じて井戸県政の守破離も実現できます。

まず「守」は、師や流派の教えや型を確実に身につける段階。経営者も首長も相談相手はおらず、最終決定は己。トップは孤独と指摘されます。井戸県政の答弁を通じて学ぶことで、知事としての思考回路、守るべきものを学ぶことができるのです。

次に「破」は、他の師や流派の教えも良いものを取り入れ、発展させる段階。

官僚は前例踏襲が多い。過去の井戸県政の答弁に引きずられた県政運営を懸念しています。議会質問では県政に改革や改善点を指摘する提言も多くあります。斎藤知事の目線で答弁実績を見て、軌道修正すべきポイントも多いのではないでしょうか。修正すべき点はどんどん変えていきましょう。

最後の「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。斎藤知事は事業をゼロベースで見直すことを宣言されています。これは是非とも進めてほしいのですが、守と破が出来て初めて離。ゼロベースです。

そして、離を支援するのは議会の役目でもあります。枕詞のように使われる、議会は言論の府、そして伝統。その根幹は議事録です。予算編成や事業評価を行政の視点のみでレクされると、意思決定のための情報としては不十分です。確かに予算は議会の議決を経ていますが、こちらの思いは100%賛成もあれば1%賛成の事業もあり、反対要素は、議事録に発露します。行政の視点に+議会の声を反映させることで参画と協働の実現が図られ、初めて的確な政策判断が実現されるのです。

また、その声は現職議員だけではありません。議事録を読むことで、元職議員を含めて、先達の残してきた議論の積み重ね、議会の伝統に敬意を表しつつ県政運営に当たることができます。

齋藤知事は、直近10年間の県議会本会議・予算&決算委員会議事録を分析した上で、どのようにお感じになったのでしょうか。その上で、「守るべきところは守り、変えるべきところは変える」という井戸県政からの守破離を実現する必要があると考えますが、齋藤県政が変えるべきところは何なのか、知事のご所見を伺います。

2 職員の採用力強化とリボルビングドア

(1)採用力の強化と爆速出世への道

具体的な改善点を主張していく。職員採用試験の筆記は日本人事試験研究センターでいいのか?民間志望者もチャレンジできる、SPI・GABなどの追加も一考の余地があると考えます。

また、大卒者向けの試験会場は神戸4・東京1で妥当なのか。九州・中部からよそ者・優秀な人材を取りに行く積極性も必要です。私の就活時の話ですが、外資コンサルは東京での1次面接から3万円くらいの交通費を出してもらえた。優秀な人材採用にかける投資の重要性を実感しました。金はないが、今は技術がある。遠方学生の交通費負担軽減のため、1次ではウェブ面接も導入すべきです。面接する側のスキルも一朝一夕では身に付きません。更なる面接官向け研修と採用後の評価の関係についても検証していく必要があります。日本は解雇規制が厳しく、公務員はより顕著です。生涯の伴侶を選ぶ仕組みとしては現行の採用プロセスでは不足しているのではないでしょうか。

また、採用の多様化も必要です。自治体DX・ICTの結果がでない。その一因として専門人材が行政内に不足していることが挙げられます。総合土木・環境科学・電気・機械職採用があって、エンジニア・ICT関連がないのはおかしいのではないでしょうか。また、民間と比べて十分な報酬を提示できない自治体は勤務エリアが兵庫5国限定や職種限定採用など民間に負けない柔軟な採用形態の拡充が必須です。

さらに、優秀な人材は爆速で出世できるキャリアパスを整備すべきです。県では、幹部候補生を養成する行政特別研修がありますが、対象は主査級で、概ね35歳以上であるのに対し、出向キャリア30代課長はおかしいのではないでしょうか。学生時代の成績だけで官僚の出世スピードが固定される現行制度に風穴をあけるべきです。大学同期で民間にいったコンサルは35歳、年収1500万円、マネージャーと比較して、県庁の自分はまだ主査?年収は?やりがいは?優秀な人材が採用できないのはあたりまえです。主査・課長など幹部昇格に必要な在級年数や経験年数は撤廃することでキャリア断念組も含めて全国から優秀で成長志向が強い人材を集めると同時に、年功序列が大前提のぬるま湯体質には火をつける必要があります。これら指摘を踏まえた、具体的な改善策を伺う。

(2)外部人材の活用:リボルビングドア

県議として10年間行政職員と接点をもって感じたこと。

決められた枠の中で確実に業務を遂行するスキルはピカイチです。

しかし、生え抜き職員だけでは刷新や未来の創造は不可能です。

私はこれまでICT、広報、ファンドレイジングなど民間主体のチーム作りを提言し、既に幹部クラスは実現しています。今後も県庁新卒では養成できない分野の人材拡充が必要です。

県職員の競争倍率は新卒約4倍に対して、社会人経験者は数十倍。氷河期世代も対象とした試験とは言え、拡大余地、いい人材を採用するチャンスは大きいと言えます。新卒の重要性は理解していますが、今後は現職員の比率を新卒8割、中途2割レベルの規模感に拡大させていく必要があるのではないでしょうか。行政or民間ではなく、どちらも重要です。混ぜることで化学反応が起こります。デジタル庁では初の本格リボルビングドアが実現。幸いなことに民間人材も受け入れ体制ができつつあります。

ビズリーチの調査では68.5%が「官公庁の仕事に興味がある」と回答しているほか、「リボルビングドア」は83.7%がキャリア形成における有効性を感じています。民間は副業を推進し、テレワークで労働時間に余裕も生まれた結果、優秀な人材が週2などで参画できる余地が生まれています。非常勤、数か月単位のプロジェクト採用など多様な時間軸の働き方を大幅拡充させ、中途フルタイム市場には出てこない優秀な人材の取り込みを強化すべきです。

今後、ハイスペック層の働き方はお金を稼ぐ収益職と、NPOや行政スポットなど社会貢献職に分けて同時並行で走らせる考えになるでしょう。

また、指針・中期計画時の審議会委員の人選は刷新すべきです。委員のキャリアを見ても、役所と代り映えのない意見・新しい視点が生まれる余地が少ないメンバーがほとんど。侃侃諤諤の議論、役所のシンクタンク機能、斬新な提言を求めるなら、審議会のメンバーは知事が直接選定すべきです。

これら指摘を踏まえた外部人材活用の強化策について具体案を伺う。

3 職業学科の再編とギフテッド教育

(1)職業学科の再編

今年3月のひょうご未来の高校教育あり方検討委員会報告書 に追加すべき考え方を提言する。まずは職業学科。大規模に再編成すべきだ。「職業教育を主とする学科の在り方検討会」では、『農業・水産・家庭科は求人が少なく、学科の教育内容と職業との関連性が弱まっており、職業学科の意味が薄れている。』と指摘されているが、未だに3科15校存在している。職業学科は今後の成長産業・高付加価値職種に編成すべきではないか。

一方、民間企業では社内人材のリスキリングに大きな投資をしている。この分野の先駆者AT&Tは、2008年時点で「25万人の従業員のうち、未来の事業に必要なスキルを持つ人は半数に過ぎず、約10万人は10年後には存在しないであろうハード関連のスキルしか持っていない」と把握していた。また、2020年1月のダボス会議では「第4次産業革命により、数年で8000万件の仕事が消失する一方で9700万件の新たな仕事が生まれる」と予測されています。

職業学科の役割に地域の産業・社会を担う人材の育成があるのは承知しているが、あくまでそれは現段階の産業・人材ニーズです。しかし、数十年後はどうだろうか。

また、スマート農業にiconstruction、地域産業もDXしなければ生き残れない時代です。DXは全産業に必要であり、付加価値が高く、所得向上につながりながら人手不足の状況、それがICT。なのに、その分野の職業学科はゼロです。

兵庫県のデジタル田園都市はICT職業学科への全集中から始まる。

これら趣旨から乖離した職業学科は廃止、もしくは普通科に転化させるべきではないだろうか。また、職業学科はICTを大きく拡充させ、卒業後の職種につながる学科のみとすべきでないだろうか。

これらの指摘を踏まえた今後の職業学科の再編・見直しについて伺う。

(2)異才を伸ばせ!ギフテッド教育の推進

次にギフテッド教育の推進について提言する。日本の教育には「特定分野に特異な才能=ギフテッド教育」の視点が欠けていないか。 定義は様々だがギフテッドは人口の数パーセントで世界各国は早修や拡充の様々な教育プログラムを提供している。 森鴎外は東大医学部予科に年齢詐称で2歳低く12歳で入学したそうです。日本が低成長なのは異能・はみ出し者を排除・抑圧する社会も要因だ。ノーベル賞の真鍋教授のスピーチは記憶に新しい。「私は日本に戻りたくない」「なぜなら調和の中で生きる能力がないから」。

(発達障害と才能を併せ持つ子供)2Eは親から理解されず、教師からも扱いにくい存在として感じられる場合もあります。孫正義育英財団など民間主導で立ち上がりつつあるが、これに応募してくる人は周囲の発掘・支援と理解があったラッキーな存在と言えます。才能は埋もれ、潰されていたギフテッドもいるはずだ。

認識能力テストCogATなどでの全県調査や教員がギフテッドを見落とすことのない研修などギフテッド発掘プログラムを創設すべきだ。

一方で、兵庫のSSH・SGHは全国的に見ても素晴らしい取組ですが、高大接続は地域高校の存続中心の考えから早修へも拡充させるべきです。これに加えて、県立大学でサマープログラム、飛び級入学や3年次卒業生制度を導入し、成績優秀者は学費無料にすることで、大学まで一気に突き抜けることになります。また、高校の飛び級は認められていないが、例えば国への特区申請により飛び級・早修を可能とする教育を実現すべきです。

今後、県立高校教育改革の議論を進めるにあたり、最大級のギフテッド発掘・支援体制を兵庫県が国に先駆けて構築していく必要があると思いますが、兵庫からの異能創出、ギフテッド教育の推進についての考えを伺う。

4 議員の不当口利きゼロ作戦

自治体運営は二元代表制だけではなく、議院内閣や議員が副知事になる特別職兼業モデルでもいいと考えている。

投票の洗礼・住民から直接付託を受けた公選職として、全体最適の意思決定、介入ならいい。職員では判断できない、価値観、未知の分野、公選職だから許される意志決定もある。従って、議員の存在は重要だ。

しかし、国会議員事務所による融資仲介、知事によるスポーツイベント演出への口出し、職員への市会議員による不当要求など、最近は議員の行政への不適切な介入事例が散見される。

議員が特定団体・個人と行政を仲介することや、施策に口出しすることを否定するものではない。複雑な行政ルール・施策・事業の改善に共に解決していくことも必要だ。しかし、それは大前提として、私利私欲のためではない。善良さ・高潔さが必須である。一方で、残念ながら、邪悪な政治屋の存在も否定できない。

従って、政治と行政の接点をお天道様のもとに晒しして牽制する必要がある。また、公開することで善意の取り組みがやりやすくなるのです。

私自身、議事録に記録される会議体以外では、できるだけ個別の団体・個人の名前は出すことを控え、疑義を持たれないようにしている。本当はいいサービス・技術はもっと紹介したいし、改善すべき点を議論したいのだが、非公開の場ではやりにくい思いが在職来ずっとあった。

しかし、不適切な介入を公表する制度があれば、善意の取り組みも堂々と積極的にできるようになる。更には、志を持った職員によこしまな政治屋の仕事をさせることはモチベーション低下や倫理観の欠如につながる由々しき問題であり、職員を守るためにも必要な牽制だ。

例えば、神戸市は市政の透明化の推進及び公正な職務執行の確保に関する条例があり、年間3万件の事例が登録されている。一方で兵庫県ではそのような制度は設けられていない。

知事公約はフルオープン。天網恢恢疎にして漏らさず。県会議員からの要望等を適切に記録し、 一定の基準を定めた上で、対象応対記録については 定期公開していく制度を創設すべきと考えるが、いかがか。

5 子育て支援の所得制限は撤廃を!

少子化担当大臣が創設され14年が経過した。結果はでたか?

2022年10月からは、見直しによって年収1200万円以上の世帯は児童手当がカットされます。少子化対策は国策であるが、国民が求めているのは大臣ではなく、当たり前の政策です。所得制限やクーポンによる余計な事務経費を見ると税金を払うのが馬鹿らしくなります。子作りから社会人まで、不妊治療、保育料、高校・大学授業料から養育費まであらゆるタイミングでお金がかかります。各種給付、控除がありますが、所得制限の壁が存在します。

例えば、年収1200万円の1馬力、4人子供世帯はどうなのか?あらゆる支援  から見放され、所得税・住民税率は高額で税が引かれた後に子育てコスト4人分を捻出することになります。一方で年収600万×2馬力、世帯年収1200万円世帯ならどうでしょうか?・・・

また、例えば、年収1200万円のひとり親は、所得税から健康保険、年金を引いて、手取りは約850~900万円です。ひとり親控除から外れ、児童手当は無し、高校授業料は有料、大学奨学金は借りられず、ワンオペ子育てで疲労という状況になります。懸命に働き、納税して、この仕打ちです。コロナ10万円給付金を契機として、不公平感が高まりつつあります。

事業ごとの所得制限は個別最適で、全体最適になっていないのでは?

家族構成や控除・助成などがからみ、子育て、教育、住宅、医療、介護も考慮すると複雑で変数が多い所得制限。可処分所得は逆転が生じていないのか?

この問題提起は若年がん患者妊孕性温存治療費助成などでも指摘してきた。

今年の夏、内閣府規制改革・行政改革担当大臣直轄チームが分析レポートを発表した。これによると、各種給付の所得制限の限度額や限度額の根拠を、政策に役立つ形で整理し、分析した先行研究はほぼないとしているが、例えば、共働き世帯(子二人)では、児童手当の給付額が所得制限により減少することから、夫年収が約 918 万円と約 960 万円を境に可処分所得が逆転する可能性などを指摘している。しかし、これら分析でも携帯・食費・塾などの養育費は考慮されておらず、可処分所得逆転や実態を把握するには不十分といえる。

ここで問題提起。「ひょうご保育料軽減」や「不妊治療ペア検査助成」など、兵庫県が独自に実施する子育て支援の所得制限は全廃すべきでないだろうか。子育て世帯は現役世帯、所得税を落としていただける世帯であり、その層を流入させるには雇用と子育て環境。そして、自治体の影響力を行使できるのは子育て環境です。

突き抜けた子育て支援は、情報伝達力の強化にもつながります。全国に先駆けて、兵庫県独自の子育て施策に関する所得制限は撤廃すべきと考えるがいかがか。

前田 ともき

(選挙区:神戸市東灘区)

(栗山 雅史 議員)[発言方式:一問一答]

1 知事業務の見直しについて
2 女性活躍のための、男性の家事・育児への積極的参加について
3 知事公約の「県内GDP成長率 全国トップクラスの実現」について
4 30歳代後半から40歳代の県内転入の傾向について
5 鉄道の地方ローカル線の将来について

質問全文

質 問 日:令和3年12月8日(水)

質 問 者:栗山 雅史 議員

質問方式:一問一答方式

1 知事業務の見直しについて

斎藤知事は、知事のホームページのポリシーの欄に、特出しで掲載されています「長時間レクの廃止など、知事業務のあり方を見直したい」ということを、選挙時に訴えておられたと聞いています。11月2日の定例記者会見でも、記者からの質問に「強い思い」として「予算編成のあり方は大胆に見直し、知事との協議はできるだけ縮減していく方向でやりたい、知事がすべての事業を見てチェックするという時代ではない」と答えておられます。私はこの知事の方針を聞いて、「まあ、ええんちゃうか。井戸知事の時はエライ長いって聞いてたしなあ」とあまり深く考えずに、新しい人の、新しいスタイルでどうなるのかと見守ってきました。しかし、よくよく考えてみると、「ホンマにそれで大丈夫かなあ」という感情が芽生えてきました。

記者会見では、「特に大事な事業に絞ってヒアリングをしようと考えている」、「大きな方向性は示しつつ、部局にある意味任せていく」とおっしゃっていたようですが、これまで兵庫県で勤務されていた方ならまだしも、兵庫県でのご勤務の経験はなく、知事に就任してまだ1年目、今でやっと4ヶ月ちょっとです。もし私が知事だったら、というのは失礼かも知れませんが、自分が新参者として組織のトップになったならば、その組織がどういう事業をやっているのか、やろうとしているのか、どんな職員がやっているのかなど、全事業とはいかなくても、就任初年度ぐらいはできる限り多くの事業をヒアリングし、把握したいと思うのではないか、と想像しました。

私は県議会議員としては11年目ですが、それでもすべてを把握できていませんし、まだまだ勉強不足です。斎藤知事は総務省のご出身で、大阪府や宮城県などにも出向されていますし、財政課長さんをやっておられた方なので、都道府県が進めている事業なんて、どこもだいたい同じということでおわかりなのかも知れません。

さて、斎藤知事が見直されたものとして「政策会議」があります。これは井戸県政の時には2週間ごとにやっていたようですが、今では2ヶ月に1度程度という頻度に見直されました。議題についても「全庁的な情報共有が必要な案件等に限る」ことになったようです。これでは、これまでの政策会議でやっておられた「各県民局からの報告」は、まったく時間が取れないようです。

そして、これまで11月に実施されていた「重要施策ヒアリング」ですが、これは部局ごとに、翌年度に新規、拡充する主要施策について協議するもので、井戸知事時代は2週間ぐらいかけてやっていたそうですが、齋藤知事はこれを取りやめたとのこと。各部局長のマネジメントに極力委ね、重要案件等については適宜、副知事協議、知事協議を実施することになったと聞いています。これでは、あまりにも知事にとって情報量が少なくなり過ぎやしないかと感じました。小さな事業や細かいことは知事の耳には届かず、その手前の「新県政推進室」で止まり、そこで多くのことが判断されてしまうのではないか、と私も危惧しますし、職員からもそのような声が聞こえています。

もう一つ心配なのは、職員との信頼関係、そしてコミュニケーションです。「部局長、職員に任せていく」というのは、聞こえは良いですが、それほどの信頼関係が斎藤知事と職員の間に、そもそもあったのかどうか。先ほども申し上げたように、兵庫県でのご勤務の経験はなく、一部の方を除いて、どの職員もほぼ一からの人間関係づくりになったのではないでしょうか。

知事が今、話をする職員、頻繁に協議する職員はどのくらいいるでしょうか。「知事業務の見直し」によって、多くの職員と協議したり、報告を受けたりする機会がなくなり、職員を知る機会が少なくなってはいないでしょうか。そういう状況の中で、齋藤知事は今後どのような人事を行うことができるでしょうか。女性幹部の登用というのも公約にありますが、副課長クラス以上の女性職員を知ることは可能でしょうか?この点も心配をしております。

知事のお仕事、知事業務のあり方はそれぞれのスタイルでもあるし、何が正解かなんて私もわかりません。井戸知事のやり方が良かった、とも言いきれないと思いますし、齋藤知事が決められたのなら、そのやり方でやられたらと思っています。しかし、どちらも一長一短あるのではないか、と思っています。今後、やってみて修正すべきだなと思えば、これも大胆に見直されたらと思います。

「働き方改革の促進」という観点についても、斎藤知事は言及されていました。知事自身も仕事を早く切り上げて、帰宅されておられると聞きます。その働き方、観点はぜひとも職員にも広めていただきたいですし、職員も実践できるよう、環境を整えてあげて欲しいと思います。

以上、知事業務の見直しによる今後の県政運営への影響について、知事のご所見をお伺いします。

2 女性活躍のための、男性の家事・育児への積極的参加について

「共働きはキツイですわー」と、私のパパ友、ママ友がよく言っております。

私の妻もフルタイム勤務の民間サラリーマンをしておりまして、私は県議会議員をやらせてもらっていて、共働き夫婦です。夫婦ともども、日々様々な仕事をこなしながら、5歳と3歳の子どもの育児をし、掃除、洗濯、食事の用意などの家事をして、慌ただしい毎日を過ごしております。

共働き世帯は年々増加を続け、令和元年では、全国で男性雇用者と無業の妻、いわゆる専業主婦から成る世帯は582万世帯の一方、共働き世帯は2倍以上の1,245万世帯になっています。3分の2以上の世帯が共働き世帯となっています。兵庫県においても、女性の有業者は平成29年で121万人となり、5年前に比べて10万人増えています。特に、育児中の女性有業率は、この5年間で、全国で最も高い19.3ポイントの上昇となりました。

先ほどの質問でも触れましたが、知事は女性幹部の登用を公約に掲げられております。そして、この令和3年度から始まりました、第4次兵庫県男女共同参画計画「ひょうご男女いきいきプラン2025」でも、女性の登用や意思決定過程への参画促進を進めています。女性が職場でいきいきと仕事が出来ること、そしてその環境を整えていくことが、まさに今求められていることだと、私も実感しています。しかし、どうでしょうか。働く女性を、男性、つまりは夫が、あるいは職場が、十分に支えられているでしょうか。

総務省が実施している社会生活基本調査によりますと、平成28年における6歳未満の子どもを持つ夫の家事・育児時間は、1日平均83分となっています。一方、妻は1日平均454分、つまり7時間34分となっており、男性の5倍以上の時間を家事・育児に費やしています。前回の調査時よりも、男性の家事・育児時間は増加しているようですが、やはりまだ女性にずいぶんと負荷がかかっています。

私が思いますに、それぞれのご家庭のことだとは言え、お互いに同じように働いているのであれば、これはやっぱり是正していくべきと、半々の負担にしていくべきではないかと思っています。かく言う私は、妻が忙しく働くのを見て、現実的に家の家事・育児を誰かがやらねばならないという切迫感の中で、朝早くから起きて積極的に家事に勤しむなど、割合とすれば全体量の半分を上回るぐらいに頑張っているのではないかと自負しているところです。これは毎日、本当に疲れますが、やるしかありません。

さて、女性が活躍できるように男性、夫が家事、育児をがんばっていくべき時代となりました。働き方改革も進んでおり、今ではフレックスや在宅勤務、短時間・短日数勤務などの制度もありますが、社会全体が、まさにワークライフバランス、家事・育児バランスに大きな理解を示していかなければならないと思っています。

こうした中、「ひょうご男女いきいきプラン2025」では、男女共同参画計画としては初めて、「男性」に関する重点目標を新設されました。「仕事偏重から、家庭や地域とのバランスが取れた生活環境への転換による豊かで自立した生活の実現」、「夫の家事・育児への参画による家庭でのリスクヘッジ等の効果を期待する」と書かれております。

齋藤知事の奥様は専業主婦だと伺っておりますが、子育て世代でもいらっしゃいますし、働き方改革、そしてワークライフバランスにも大きな理解を示されていると聞いております。また、県庁においては、子育て中の女性職員への理解や、あるいは子育て中の男性職員にも「早く家に帰って家事・育児への参加を」と応援してあげて欲しいと思います。

県庁を含め、社会全体がワークライフバランス、家事・育児バランスに理解を示していくことが必要と考えますが、男性の家事・育児への積極的参加に対する知事の想い、ご所見をお伺いします。

3 知事公約の「県内GDP成長率 全国トップクラスの実現」について

今回の一般質問は、齋藤知事就任後、私にとって初めて斎藤知事にする一般質問なので、改めて斎藤知事の公約を確認し、前の9月議会では触れられなかった公約で、「これはいったいどういうことだ?」と思ったものについて、その真意を確認するために質問をします。

今回質問するのは、公約の5つの柱となっているものの1つで、「Vision3 県内GDP成長率 全国トップクラスの実現!」というものです。「県内GDPの“額” 全国トップクラス」ではなく、「成長“率” 全国トップクラスの実現!」と拝見しまして、本当に実現できる公約なのか?と思いました。そしてこれは、年次ごとの目標なのか、任期中の4年間通算で、という意味なのか、今はまだわかりません。

私は、この「県内GDP成長率」について、最近の兵庫県はどうだったのか、全国はどうなのかということを、担当課にお願いしてデータをつくってもらいました。国のデータからの引用だそうですが、最新のものは平成30年度で、それを含む直近3年の都道府県別の県内GDP成長率の数字をいただきました。それを見ますと、平成30年度は、兵庫県の成長率は-0.4%で、マイナス成長でした。全国42位でした。「トップクラスの実現!」ということですから、全国のベスト3までに入るくらいをトップクラスだとすると、平成30年度は佐賀県が6.3%でトップ、2位が富山県で4.2%、3位が山梨県で3.6%でした。それぞれ、兵庫県に比べて県内GDPの額としては小さい県でしたので、グッと伸びる大きな要素があると、成長率としては大きくなることもあるのでしょうか。

そして、平成29年度はトップが茨城県で6.3%、2位が山形県で5.8%、3位が滋賀県で5.5%でした。兵庫県はこの年、2.2%の成長率で27位でした。

平成28年度は、順位だけ申し上げると、トップから山口県、和歌山県、熊本県で、兵庫県は0.4%の29位でした。

各都道府県の総生産額は、人口の多寡によって、あるいは産業の大きさによってかなりバラツキがあり、小さな経済規模の県ほど何か大きな案件があると、率としては大きな成長率を示すこともあり得るのではないかと思っています。しかし、兵庫県ほどの大きな経済規模を誇る県内GDP、平成30年度では名目で21兆1778億円でしたが、規模が大きいほど「成長率トップクラスの実現」というのは難しいのではないでしょうか。また、トップクラスかどうかというのは、他の都道府県との比較の結果であり、相対評価なので、そもそもそれを目指すことに意味はあるのか?と感じざるを得ません。

いやしかし、総務省職員として全国でご勤務され、大阪府でも財政課長さんをやっておられたので、何か成長率が大きく伸びる秘策をお持ちなのではないか、あるいは相当な根拠があって示されている公約なんだろうと思っていますので、「県内GDP成長率 全国トップクラスの実現」のために、具体的にどのような取組を進めていかれるおつもりなのか、知事のご所見を伺います。

4 30歳代後半から40歳代の県内転入の傾向について

「兵庫県、全国ワーストの転出超過!」という報道が今年ありました。

この傾向はここ10年ぐらいでしょうか、特に20歳代前半において、年を経るごとに転出数が微増しておりまして、その状況を憂い、私も、多くの議員もこの問題を取り上げては、県の数々の対策・施策について、良かったとか効果が出ていないだとか、色々な評価をしてきたところです。そして、県は若者の県内就職をもっと増やそうと、地元企業を知ってもらうことや、地元企業の見学ツアー、若者が望む職種の企業誘致など、若者を引き留めようという方向性の施策を強く打ち出してきました。

しかし、私は以前の質問でも、「去る者は追わなくていい。来る者をもっと歓迎し、流入策を積極的に図るべきだ」と意見しておりまして、前の井戸知事の時にも、特に西日本各地からの「兵庫県への流入施策」についてご賛同をいただいていたところです。しかし、やっぱり毎年何千人という兵庫県の若者が東京や大阪へ転出してしまっていることには、担当課をはじめ、関係者の落胆の色は隠せないようにも見えましたが、私はもうそれは仕方がないことだと、ほぼ諦めておりますし、一方で優秀な人材を排出する誇りある県として、知事自身もそうだと思いますが、若き頃に野心を持ってチャレンジする行動について、むしろ応援したいと考えております。

そんな中、担当課から最近の転入出の状況を聞くと、令和2年では新しい傾向、兆しが感じられるような数値が出ておりました。それはタイトルにあるように「30歳代後半から40歳代」が、転入超過に転換したという数値でした。「30歳代後半から40歳代」は、これまで転出超過が続いていたにも関わらず、令和2年に至っては730人を超える転入超過となっていました。時期的にはコロナの影響なのか?と感じるところもありますが、これは嬉しい数値でありましたし、今後の明るい未来を予感させる兆しだと感じました。

担当課さんには「どうしてこういう数値になったのか、もっと分析を進めていただいて、この傾向をもう元に戻してはならない。20歳代で転出しても、結婚して家族が出来て、30代後半以降には故郷へ帰ってくる傾向になっているのかも知れない」とか、「テレワークなど、大都市にいなくても良くなったから、大都市を出て余裕のある地方へ来てくれているのかも知れない」と、申し上げたところです。

以上のようなことから、齋藤知事には改めて、兵庫県民のここ最近の転入・転出の動きについての受け止めと、ご紹介した「30歳代後半から40歳代の転入増」という新たな兆しについてどのように感じておられるかを伺うとともに、この新たな兆しを踏まえた今後の移住・定住対策についてご所見をお伺いしたいと思います。

5 鉄道の地方ローカル線の将来について

コロナ禍を受けて、JR西日本をはじめとする鉄道各社の経営が大変厳しいものになっていることはご承知のことかと存じます。JR西日本が11月に行った中間決算発表によると、乗客数は少しずつ回復傾向にあり、営業収益が昨年より増加するものの、最終決算において赤字見込みであると予想されています。

秋のダイヤ改正では、県内の神戸線、山陽線、赤穂線において減便が決定されました。新型コロナウィルス感染症によって、我々の生活スタイルや労働スタイルが大きく変わり、鉄道会社は利用者に応じた対応を取らざるを得ない状況になってきています。今後の鉄道利用については、以前のような状況に戻ることは難しいのではないかと言われております。

そして、現在も進行しております急激な人口減少も、鉄道経営には大変厳しい要素と考えられており、都市部の路線を除いて、県内のローカル線や地方鉄道などは、その活性化やあり方について、今後ますます厳しい状況が続くと思われます。また、鉄道設備や車両等の老朽化も進んでおり、安全・安定運行や利用者の安全確保を図るためには、地域住民の心情にも配慮したうえで、県や沿線自治体からのさらなる支援が欠かせないと考えるところです。

そんな中、JR姫新線において、平成27年度から5年連続で年間乗車目標300万人を達成されたと聞きました。沿線自治体の懸命な取組み、資金面での援助などが功を奏したと伺っております。

このような好事例を参考にしながら、県内の地方ローカル線や地方鉄道をしっかりと支えていく必要があると思いますが、兵庫県としてどのようなヴィジョンを描いていくのか、ご所見をお伺いします。

栗山 雅史

(選挙区:西宮市)