第310回9月定例会 決算特別委員会質問 (産業労働部)
2011年10月12日(水)
1 障害者雇用対策について
(1) 障害者雇用率の向上に向けた課題について
改正障害雇用促進法によって、56人以上の民間企業に対しては従業員の1.8%の障害者雇用を義務付けていますが、2010年の全国平均の実雇用率は1.68%にとどまっています。兵庫県の場合、5年間の推移をみると2006年の1.70%から、(2007年が)1.75%、(2008年が)1.76%、(2009年が)同じく1.76%そして2010年は1.81%と辛うじて法定雇用率を上回っていますが、兵庫労働局発表の障害者の雇用状況では、企業の規模別では、1000人以上規模では1.86%、56人~99人規模では1.85%となっており、何とか法定雇用率を上回っていますが、100人~299人規模では1.78%、300人~499人規模は1.69%、500人~999人規模は1.79%といずれも法定雇用率を下回る状況です。障害者の雇用状況を産業別では、医療・福祉分野を中心に多岐に渡っており、障害者が少しずつ受け入れられる状況になりつつありますが、実雇用率は、法定雇用率の数値前後という際どい現実があります。
また、未達成企業のうち障害者を一人も雇用していない(0人雇用企業)が法定雇用率未達成企業の65.0%となっており、取組姿勢は企業により濃淡があることが窺えます。
実雇用率の低い事業主に対しては、雇用状況報告を求めることから始まり、3ヵ年の雇い入れ計画作成命令、雇い入れ計画の適正実施勧告、特別指導、企業名の公表と障害者雇用促進法に基づく指導がなされていますが、それほど大きなペナルティとは実感できません。違反企業に対しては、罰金というサイクルが定着しており、障害者雇用には結びつかず、安易な流れを作っているように思えてなりません。
実雇用率の向上に向けては、大きな壁があり、法の縛りだけでなく障害者と共生することを企業へ丁寧に説明していくなど、地道な取組を継続していくことが重要だと考えますが、障害者雇用率の向上に向けた現状の課題認識について当局のご所見を伺います。
(2) 障害者の自立のための雇用について
今年、改正障害者基本法が成立しました。国連の障害者権利条約の批准要件を満たす国内法の整備として、一歩前進しました。障害者自立支援法に代わり総合福祉法・障害者差別禁止法の制定へと繋がることを期待しています。障害者権利条約の基本的な考え方は、障害者本人が本来持っている力をきちんと発揮できる環境を整えることであり、この方向に向かい最大限努力することが求められます。
従来、障害者は福祉的就労として働くことが当たり前でした。しかし、社会状況・世界の流れの中で、障害者雇用をリスクと捉えず、積極的意義を見いだし、取り組まれている企業も見られはじめています。障害者雇用の大半は身体・知的障害者ですが、敢えて、の精神障害者を雇用することによって、企業が現在抱えている課題の一つである「うつ」などの精神疾患の社員への対応や社員の健康改善につながると研修会を開催するなど職場の労働環境整備に努力されている企業もあります。もちろん、教育・福祉関係機関との連携により就職の準備から職場定着までのチーム支援推進も大切であると考えます。
そこで、障害者の雇用に当たっては、単に障害者を雇用するだけでなく、障害者が職場に定着できるよう、企業側が障害者の持つ様々な能力を引き出して、障害者が希望を持って働ける就労環境を整えていくことが重要でありますが、障害者の雇用の定着に向けた県の取組状況についてお伺いします。
2 シニア世代との協働による中小企業の活性化について
数年前、団塊の世代の大量退職が続きました。退職された方には、シルバー人材センターで活動されている方や、子ども達に技術を伝承する活動をされている方、悠々自適の生活を満喫している方など色々な方がおられます。
その中には、民間企業において一線で活躍された方も多くおられます。また、県の行政職・技能職にも民間に劣らず、すばらしい知識・技能を有する方も多くおられます。
滋賀県野洲市では、「ものづくり交流経営センター」を開設し退職者の高度な知識・技術に着目し、2004年に経済産業省から支援を受け70人のインストラクターを輩出している東京大学ものづくり経営研究センターと協働し、再教育し、産業を超えて異業種に対しても指導できる人材を育てる取組を行っています。野洲市ものづくりインストラクター養成スクールの運営は、厚生労働省のふるさと雇用再生特別推進事業補助金と経営改善の支援料、地元金融機関の協力金の合計1500万円の資金で事業推進されています。この取り組みの成果は、受講生の能力を最大限に発揮できることや、低価格で経営改善指導を依頼できることから、市域、県域越えて広がろうとしていると聞いています。
このように、シニア世代の高度な知識や技能を活かし、中小企業や他産業の改善指導できる人材を育てる試みが滋賀県野洲市で行われているのを知り、ものづくりの兵庫県で応用できないかと調べましたが、同様の取組は行われていないとのことであります。
現在の経済不況・景気低迷の厳しい環境下にある中小企業にとって、生き抜くためには、中小企業の業種の壁を越え、異業種の知恵を取り込むことも方策と考えます。
そこで、野洲市とは一味違う、産学官の協働の歴史を持つ兵庫においても、中小企業の支援においてシニア世代を積極的に活用していくべきであると考えますが、どのような活用方策が考えられるのか、ご所見を伺います。