議会の動き

黒田 一美議員が代表質問を実施

質 問 日:令和3年12月6日(月)

質 問 者:黒田 一美 議員

質問方式:一問一答方式

1 新型コロナウイルスワクチン3回目接種の安心・安全の確保について

国の新型コロナウイルスワクチンの3回目接種についての方針では、対象者は、2回目接種を終えた人全員とすること、ただし、18歳以上の者を予防接種法上の臨時接種に位置づけること、高齢者等重症化のリスクの高い方には、できるだけ3回目接種を呼びかけることとされました。

また1、2回目にモデルナ社ワクチンを接種した人が、3回目にファイザー社ワクチンを接種すると言ったいわゆる「交互接種」についても、認める内容の判断がされました。これは海外の研究では、交互接種とそうでない場合との間で、副反応は同様であったとの報告から判断されたとのことです。

さらに、接種間隔については、2回目接種完了から、原則8ヶ月以上後を対象とすることとし、地域の感染状況等を踏まえて自治体の判断により8ヶ月より前に実施する場合においては、薬事承認の内容を踏まえ、6ヶ月以上の間隔をあけること、とされましたが、この内容を巡っては、新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大に対応するため、未だ政府で検討されています。そのオミクロン株に対する県民の不安が広がっております。ワクチンの有効性などが国において検証されていくと思いますが、今後、県民への正しい情報の提供と、迅速な対応が重要です。

この3回目のワクチン接種においては、2回目の接種を完了してから原則8ヶ月以上を経過した際に接種を開始できるよう、市町が接種券を送付し、各自がそれをもとに市町のホームページなどで予約、接種するという流れになっており、接種の実務は原則市町が担うこととなります。

そのため、県がこの3回目接種に向けて担うべき重要な役割は、ひとつにはワクチンの確実な確保と供給、ふたつには県民のワクチンに対する疑問、不安に答え、副反応等に対する正確な情報提供を行うことによる安心安全の確保、であると考えます。

1回目の際には、国のワクチンの供給が滞ったことで、市町の現場は大変混乱を来しました。今回は国が示した来年3月までのワクチン配分について、交互接種が広く行われることを前提に、ワクチン接種を実施する市町単位でファイザー社ワクチンが6割弱、モデルナ社ワクチンが4割以上の割合で供給する計画となっており、ファイザー社ワクチンを前提に準備を進めていた各市町や医療機関が困惑していると聞いています。

以上を踏まえ、新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種を積極的に進めるに当たり、県としてどのような取組を進めていくのか、お伺いします。

2 阪神・淡路大震災から続く本県の「参画と協働」の取組の推進について

本県の「参画と協働」の推進の姿勢は、平成12年に行われた21世紀兵庫長期ビジョンづくりの過程の中で、“県民自らが主体的に地域の「夢」や将来像を描くことに「参画」することを基本に、その実現に向けて、各主体が責任を果たしつつ「協働」する”という視点の中に明確に表れました。

それを踏まえ、平成14年12月には「県民の参画と協働の推進に関する条例」を制定し、その理念を明らかに示しました。

この条例の第1条には、「参画と協働の意義」として、「豊かな地域社会は、県民の参画と協働による地域社会の共同利益の実現と県民の参画と協働による県行政の推進」により実現されなければならないとしています。

私が本県の参画と協働を考えるとき、その原点は、震災半年後の平成7年7月に発足した「被災者復興支援会議」を思い起こします。これは被災者と行政の間に立つ第三者機関という位置づけで、被災者の生活実態、意見、要望を把握し、被災者と行政の双方に提言助言する活動をしていました。被災者の生活実態を把握するため、支援会議では「移動いどばた会議」といって、仮設住宅などを回り、被災者と直接、意見交換を繰り返し行いました。

私は議員になる前に、地元でこの「移動いどばた会議」に参画した経験があるのですが、本当に真剣に被災者、支援グループと兵庫県の担当者が熱い議論を繰り返していたことを鮮明に覚えています。

私は、兵庫県の「参画と協働」の原点は、やはりこの阪神淡路大震災から続く、県民と行政が一体となって共に自らの地域を住みよくしていこうとする熱気であると考えています。しかし、震災から27年となり、この「参画と協働」が一般的な言葉になるにつれ形骸化してきたことも否めません。

これから、齋藤知事には、兵庫県が震災から得た教訓であり財産である「参画と協働」の精神を、知事が唱える「県民ボトムアップ型県政」に活かして頂きたいと考えますが、単に会議に県民を入れる、といった形式的なことでは、熱気は生まれません。行政が本気で県民の意見を聞き、それを施策に活かすんだという意欲、時には意見の対立を恐れず、本音で意見を言い合う場、手段、その仕組みを作ることが重要と考えます。

今後、齋藤知事は、本県の「参画と協働」について、具体的にどのように推進されるおつもりか伺います。

3 兵庫県の政労使の三者での取組の推進について

兵庫県の雇用労働行政においては、これまで兵庫県、連合兵庫、兵庫県経営者協会の三者による協働を重視して取り組んできたことは大変評価しています。

この三者での取組がクローズアップされたのは、今から20年以上も前の、平成11年のことである。当時はバブル崩壊後の第二次平成不況のただなかで、その年の4月に県政史上最低の有効求人倍率0.32倍を記録したことを契機に、兵庫県の政労使による雇用の打開策を探る取組として兵庫県雇用対策三者会議が発足し、平成11年12月には、兵庫型ワークシェアリングについての三者合意がなされました。この兵庫型ワークシェアリングについては、当時も様々な議論がありましたが、平成12年2月の定例会で当時の貝原知事は次のように答えています。

「ワークシェアリングとは、労働時間の短縮を図ることにより仕事を分かち合い、雇用を確保するというものだが、兵庫型ワークシェアリングは、短時間勤務や在宅勤務、さらには自営や生きがい就業といった雇用以外の働き方も含めた広い意味での仕事をより多くの人で分かち合うとともに、労働者個人の職業生活と家庭生活、地域生活の充実を図ることをめざしてまいりたい」

この考え方を今改めてみてみると、コロナ禍で一層の取組が求められた「働き方改革」「多様で柔軟な働き方の推進」そのものであります。当時はまだ、一般的でなかった「ワーク・ライフ・バランス」の考え方を、本県ではいち早く認識していたのです。

この流れから、平成18年には仕事と生活の調和と子育て支援に関する政労使の三者合意を締結し、子育てしやすい環境作りを推進してきました。また平成20年には仕事と生活のバランスひょうご共同宣言によりWLBの推進に向けて政労使が一体となって取り組むことを宣言し、さらに平成21年6月には「ひょうご仕事と生活センター」を開設し、政労使協働の取組の下、県内事業者での多様な働き方の支援を行い様々な成果をあげてきました。

このようにこれまで兵庫県が行ってきた、国の兵庫労働局も含め政・労・使が一体となって、社会経済状況に応じた雇用対策を協議、検討する体制については是非とも継続して取り組んで頂きたいと考えるが、知事はこれまでの取組をどのように評価され、今後どうしていくつもりかお伺いします。

4 人権行政の推進・強化について

最近、兵庫県内では県民に関わり合いのある人権侵害事件が続いて起こっています。

一つは、本年8月4日に兵庫県警が逮捕した行政書士の事件です。

新聞報道によると、全国で800回以上にわたり戸籍謄本、住民票を不正取得し、探偵業者等へ提供して多額の報酬を得た容疑であります。その者は職務を悪用し、虚偽の理由で、姫路市や加古川市などでも不正に取得しており、その他尼崎市、西宮市など、県内市町で戸籍等を取得したことも分かっています。戸籍などの不正取得は、身元調査等“人権侵害”や差別に繋がる悪質な犯罪です。

もう一つは「全國部落調査」復刻版出版事件です。2016年2月に川崎市の「示現(じげん)舎」という出版社が戦前の「全國部落調査」を復刻出版するとして、ネット通販大手Amazonでのネット通販を告知しました。Amazonは被差別部落関係者からの販売中止の申し入れをうけ、予約受付を中止したが、示現舎はその後、複数のウェブサイトに、地名リストや、被差別部落関係者の名前、住所、電話番号、生年月日まで掲載しました。兵庫県内でも多数の地域と個人の情報が掲載されました。これらに対して、被差別部落関係者は、出版差し止めや、掲載の削除を求める訴訟を起こし、東京地裁で、この9月27日に「差別や誹謗中傷を受ける恐れがあり、プライバシーを違法に侵害する」と違法判決が出されたという事件がありました。

また、昨年11月、「ニコニコ動画」「YouTube」「ライブドアブログ」等で丹波篠山市の被差別部落について差別を助長する内容でネット動画が流され、地元自治会が仮処分を申立て、神戸地裁柏原支部が削除命令を決定するという事件もありました。

このように兵庫県民に関わり合いのある悪質な人権侵害、差別事件が続いており、マスコミでもそれぞれ大きく報道されましたが、残念ながらそれを利用する人々が存在するという事実があります。

戸籍の不正取得を頼む人、悪質なネットを見る人、また書き込む人。

日本では残念ですが、諸外国が法制定している包括的に差別そのものを禁止する法律「差別禁止法」がありません。そのため、差別を禁止する、人権侵害をなくす県行政の取り組みの重要性が問われます。

兵庫県は、人権に関わる方針、「兵庫県人権教育及び啓発に関する総合推進指針」を策定し、人権に関わる行政セクション、人権推進課、人権教育課、そして今年30周年を迎えた公益財団法人人権啓発協会等を中心に差別をなくし、県民の人権擁護、啓発に取り組んでこられました。しかし、先ほど述べました、最近の差別事件、あるいはコロナ差別やLGBT等性的少数者への差別など人権課題の多様化といった人権を取り巻く状況を踏まえ、これらの取組をどう強化していくのか。「だれひとり取り残さない」兵庫県政を進められる知事のご所見をお伺いします。

5 多文化共生の充実について

本県は、特に神戸港を有する神戸地域を拠点に、世界の様々な地域の人々と文化が集り、国際性豊かな地域として発展してきた歴史があります。

私は、神戸の垂水で育ちましたが、私が通っている小学校のすぐ南側に、ルーテル国際学園ノルウェー学校がありました。当時は塀やフェンスもなく、まさしくオープンでしたから、下校途中に、そのノルウェー学校の児童と一緒に遊んだものでした。今思えば、それは一番自然な形で多文化に触れ合った経験でした。このような地域にある外国人学校の役割も重要です。

さて、令和3年3月に改定されたひょうご多文化共生社会推進指針によれば、本県の外国人県民は一時期減少傾向でしたが、国の外国人材受入促進等により平成26年以降増加に転じ、令和元年末時点で115,681人、国籍数は157ヶ国に渡るとのことです。

近年の外国人県民の特徴としては、ベトナムやフィリピン、ブラジルまた最近ではアフリカ系の方も増え、これまでと比べ一層、多国籍化していることが挙げられます。

また、国の方針もあり、外国人労働者と留学生が急増しています。近年コンビニ等でアルバイトする外国人留学生をよく見かけるのは、留学生の増加を実感します。

このような中、私が非常に重大だと感じている特徴は、外国人県民の地域分散化です。令和元年時点でも、外国人県民が最も多いのは神戸地域ですが、平成26年からの増加率をみると、北播磨や淡路、丹波、但馬などの増加率が高くなっています、これまでそれほど外国人県民がいなかったところに、この5年で急に増えているわけです。こういった地域では、地域に外国人県民を受け入れる土壌が出来上がっていない場合が多く、文化や生活習慣などの違いから、地域住民との問題が発生しやすいと考えられます。

そのため、この多文化共生について、特に外国人県民の地域分散に対して、それぞれの地域に根付いた多文化共生をすすめるため、今後どのように対応していくのか、当局の見解をお伺いします。

6 芸術文化立県ひょうごの実現に向けて

兵庫県では、とくに阪神・淡路大震災において疲弊した人々の心を、芸術文化が癒やし、元気づけ、復興への原動力となった経験から、芸術文化が県民の暮らしに欠くことの出来ない基本的な公共財であることを強く認識し、その振興のため様々な施策を展開してきました。

令和3年3月に県が策定した第3期芸術文化振興ビジョンでは「芸術文化立県ひょうご」の実現を基本目標に掲げています。

ひとくちに芸術文化と言っても様々なものがあり、広い兵庫県では地域によっても、県民に根付き、地元の方に親しまれ大切にされているものは異なります。

私の個人的なイメージでは、淡路地域での人形浄瑠璃や但馬地域の数々の民俗芸能、阪神地域では舞台芸術が盛んですし、丹波ではやはり陶芸でしょうか。播磨地域では祭りに関わる伝統文化、地域文化が盛んです。

このように思いつくだけでも、兵庫県には地域によって盛んな芸術文化が異なり、特性があります。そのため「芸術文化立県ひょうご」の実現に向けては、それぞれの地域の特性に合わせた文化振興施策を考えて行く必要があります。

また一方で、私は文化振興議員連盟の役員もしており、この12月1日に各文化団体との意見交換会を行いました。コロナ禍で活動に制約があることの困難に加えて共通している訴えは、少子高齢化による会員数の減少と先細りする活動への深刻な懸念です。担い手不足・後継者不足の問題は、全県的な課題であり、持続可能な芸術文化活動に向けて県として支援していく必要があります。

以上のことから、兵庫県として、今後、芸術文化立県ひょうごの実現に向け、どのように取り組まれるか、当局の見解をお伺いします。

7 兵庫県の関西広域連合への関わりについて

関西広域連合は関西から新時代をつくるため、平成22年12月に府県域を越える全国初の広域連合として設立されました。井戸前兵庫県知事は、設立当初の平成22年から令和2年まで10年に渡り連合長を務められ、防災分野では「関西防災・減災プラン」をはじめとする各種計画、ビジョンの作成やカウンターパート方式による迅速な被災地支援、ドクターヘリの運航体制の構築、また、琵琶湖・淀川流域対策など着実に成果を上げてきました。

では今後、仁坂新連合長の下での構成員として、新たに加わった齋藤知事は、そして兵庫県はどのような役割を果たしていくべきでしょうか。

2025年大阪・関西万博やこの度2026年へ再延期を検討しているワールドマスターズゲームズ関西などのビッグイベントを成功させることも重要ですが、それと同時に、改めてこの関西広域連合の設立当初の趣旨に立ち返って頂きたいと思っています。

関西広域連合の設立のねらいの一つは、「国の出先機関の事務の受け皿づくり」でありましたが、結果として、現時点では国の出先機関の地方移管については、京都に文化庁の移転が決定したものの、それに続く成果を出せていません。

広域連合は、法律又は、これに基づく政令の定めるところにより、国から直接、権限移譲を受けることができ、広域連合議会の議決を経て、国の事務の一部を広域連合が処理するように要請できるなど、具体的な地方分権の実行を国に対して求めることができるとなっています。

齋藤知事には、国でも地方でも関西でもそれ以外の地域でも、様々な場所で地方行政に携わってこられたその経験を活かし、国から関西広域連合が権限移譲を受けるべき事務にはどんなものがあるのか、それをどのように実現していけるのか等について、ぜひ兵庫県から関西広域連合に向けてアイデアを出し、活発な議論に導いていってほしいと期待します。

地方分権の実現に向けて、関西広域連合のなかで今後兵庫県が果たすべき役割について、どのように考えているか、知事のご見解をお伺いします。