第324回 9月定例県議会 代表質問案
質 問 日:2014年9月26日(金)
質 問 者:大塚 たかひろ 議員
質問形式:一括
1 安全元気ふるさと兵庫の実現について
人口減少と少子高齢化により地域活力の低下が懸念される中、県では、このような社会状況に対応していくため、2040年への協働戦略として、21世紀兵庫長期ビジョンを平成23年12月に改訂しました。今回の定例会でも長期ビジョンの推進状況の報告がされましたが、これを見ると、県民の実感に基づく主観的指標である「兵庫のゆたかさ指標」や、統計値や県の事業量に基づく客観的指標である「全県フォローアップ指標」の双方ともに、満足度の高まりや取り組み充実の傾向が見え、現ビジョンの実現に向かって少しずつ前進していることが読み取れます。
しかし、今年の5月、民間の有識者等で構成する「日本創成会議」の人口減少問題検討分科会による調査において、県のビジョンが着地点としている2040年までに、県内21の市町で、20~39歳の若年女性人口が5割以上減少するとの結果がまとめられました。この調査は出生率の水準が変わらず、地方から大都市への人口流出が今後も続くとの前提でなされたものですが、こうした自治体は、いくら出生率が上昇しても将来的に消滅する可能性が高いという衝撃的な指摘がされました。
この調査結果は、ビジョン改訂時に、ある程度織り込み済みの想定であったと思われますが、メディアで大々的に取り上げられたことで、今回多くの人々が改めて持った危機感を、ビジョンの取り組みの成熟や変化に結びつけていく必要があります。
ビジョンの報告書を見ると、ビジョンの特徴として、まず行政の計画ではなく、県民や事業者などの多様な主体が共有できる望ましい社会の姿であるとし、次に『「プロセス」重視-成長し続けるビジョン』、つまり「つくって終わり」ではなく、多様な主体がそれぞれ実現に向けてできることに取り組んで「プロセス」を大切にする、と書かれています。このとおりであるならば、近い将来の危機の姿がさらに明確になり、その危機感を多くの人が共有している今、これをきっかけにビジョンの取り組みは県民とともに、新たなステージへ成長していくものだと考えます。
知事はこの7月で就任4期2年目を迎えられましたが、行政だけでは解決困難な地域課題が山積する中、ここで改めてビジョンの取り組みへの期待、そしてこれからの厳しい時代に、どのような「安全元気ふるさと兵庫の実現」を目指そうとしているのかについてお聞きします。
2 安全指針のあり方について
(1)有効な安全指針のあり方と市町との連携について
気象情報や避難情報の迅速・適切な提供の必要性が高まる中、先日の台風第11号の接近時に、「フェニックス防災システム」での避難準備情報の公開の遅れがありました。一方で同時期、県内約3万5千人を対象に避難勧告・指示が発令されたものの、実際に避難した人はわずか1.3%にすぎませんでした。避難情報は市町が発令するものですが、発令にもかかわらず、実際に避難した人が少なかったという課題が浮き彫りになりました。
その理由として、一つには、局地的な豪雨災害に対する被害が、これまでの豪雨災害の被害度合とは違い、近年、急激にかつ甚大になっている状況に行政側も県民側も不慣れなことも原因なのではないでしょうか。先月の広島市の土砂災害における被害は、兵庫県でも、降水量次第では起こりえます。今後起こりうるであろう災害の状況を、過去に起こった災害のケースを参考にしながら、それと同等の危険レベルのエリアの住民に告知していくなど、きめの細かい啓蒙活動が必要です。
二つ目として、避難情報に関して、県民が正確に理解できていない可能性があります。平成24年に実施された、県民モニター対象の「災害時における避難勧告・指示等の発令に関する調査」結果によれば、「避難準備情報について、「内容を含めて知っている」は13.4%、「避難準備情報」「避難勧告」「避難指示」の切迫度の違いを正しく理解できていない人は25%を超えていました。また、先日開催された神戸市の土砂災害対策を検討する有識者会議では、特別警報の運用開始で、警報への危機意識の低下が見受けられるとの指摘があったと聞きます。これは、行政側の情報提供不足という側面もありますが、表現上の問題も大きいと思われます。表現の変更となれば県だけの問題ではありませんが、少なくとも現在の警戒情報の表現と内容を整理し、発信するといった対応も必要です。
県は今回の避難情報が実際の避難行動に結びつかなかった背景を正確に分析することはもちろん、それを踏まえた実際の避難行動に結びつけるための情報提供や普段の啓発のあり方を見直す必要があると考えますが、現状認識と今後の取り組みについてお聞きします。
また、避難勧告や指示を発令する各市町においては、それぞれの地理的特性に合った独自の発令基準を作ることが求められます。今後、今回のような大規模災害における避難の判断基準となる安全指針の充実や適切な運営について、県がどのように支援していくのかをあわせてお尋ねをします。
(2)土砂災害特別警戒区域の指定と安全対策のあり方
続いて土砂災害対策についてお聞きします。対策としては、砂防ダムの整備などのハード面と、警戒区域の指定や避難情報の提供などのソフト面とがありますが、今回は先の質問に関連し、ソフト面についてお尋ねをしていきます。
県は平成12年の土砂災害防止法制定後、特別警戒区域(いわゆるレッドゾーン)指定を見据えながら、警戒区域(いわゆるイエローゾーン)を先行して指定を進めてきました。県下で、土砂災害危険箇所20,748か所のうち、本年7月31日現在、20,169か所の指定を完了しています。
一方、特別警戒区域はこれまで1か所のみの指定にとどまっています。特別警戒区域に指定されると、一定の新規開発に対して許可制となったり、建築制限等が強化され、県民の理解が必要となりますが、全県を考えると、1万か所を超える指定となることも予想されます。今回の豪雨災害の発生に伴い、県はこれまで1カ所のみ指定していた土砂災害特別警戒区域の追加指定をまずは100カ所程度、検討しています。また、上程中の補正予算案でも、県下で97%指定が完了している土砂災害警戒区域について、全指定区域の再点検を行うことが挙げられています。
特別警戒区域については、実際、指定を進めていかなければ、住民にリスクの高さを周知することができず、危機発生時の避難行動の遅れにつながっていきます。これから増加が予想される豪雨災害へのリスクに備え、早急に区域指定を行っていかなければなりません。国は土砂災害防止法を改正する見込みとの新聞報道がありますが、この改正も見据え、今後どのように区域指定を進めていくのでしょうか。先ほど触れたとおり、今年度中の追加指定が100カ所程度になるとのことですが、指定のペースと完了の見通しについてお尋ねします。
また、すでに指定済みの警戒区域についても、市町によるハザードマップの周知や、不動産業者などが宅地や建物の売買時の告知義務があるものの、実際、どこまで住民に警戒情報が届き、危機意識の醸成につながっているのでしょうか。特にイエローゾーンが広がる六甲山系南部は、古くからの住宅街で、人気も高く、人口も多いことから、正確な情報の提供が欠かせません。
よって区域指定を進めるのはもちろん、指定してからが重要であり、指定済みの警戒区域を含め、いかに住民に情報を届けていくかが課題です。今後周知を含めた安全対策をどのように進めていくのか、考え方をお聞きします。
3 こころの健康対策をはじめとした健康寿命の延伸の取り組みについて
中高齢層では、体の健康に不安が出てくると同時に、職場と家庭双方で問題を抱え、深く悩んでいる人も多くいます。この層へのこころの健康維持の働きかけは、身体面のみならず、活力ある社会や将来の元気な高齢者づくりにもつながっていくと考えます。
中高年の多くがかかる糖尿病・脳卒中・がんなどの生活習慣病は、偏った食生活・食べ過ぎ、喫煙、飲酒、不規則な睡眠、運動不足などの生活習慣が原因だとされています。
一方で、社会環境が複雑になり、精神的緊張が続く生活は、現代人をストレス状態に陥らせています。中でも食生活の乱れや過度な飲酒、喫煙などはストレスとの関係性が指摘されています。過労、ストレスが蓄積されると、免疫力の低下や血圧、血糖値が上昇することが、現在、明らかになっています。生活習慣病の原因はさまざまですが、ストレスをうまくコントロールし、こころの健康を取り戻すことができれば、生活習慣病の予防の一つにもなると考えられます。
たとえば、国家戦略特区に指定された神奈川県では「未病を治すかながわ宣言」を打ち出し、人間の体調を「健康」と「病気」という二つに大別するのではなく、病気と診断されないが、健康ともいえない状態を「未病」という概念でとらえ、「未病を治す」取り組みをはじめています。これは、病気に至る前にその誘引となる食のあり方や運動、休養など、ライフスタイルそのものを見直すことで、心身ともに健康な状態に保つことを意識づけるという取り組みです。さらに、地域の企業・団体と連携し、未病の状況の把握や、未病を治す取り組みを紹介する「未病いやしの里の駅」を設置することで検討をはじめています。
企業においても先駆的な取り組みが始まっています。オーラルケア製品のメーカーであるサンスターでは、心身が健康でないと企業内で、十分に能力が発揮できない、さらには「健康が企業価値につながる」という考えから、健康診断において、生活習慣病の予備群と診断された社員には、本人任せにせず、会社が運営する「健康道場」において、食事、運動、休養などの面で、正しい生活習慣が身につけられるプログラムを2泊3日の日程で提供しています。
まず、食事内容をはじめ生活習慣全般のチェックを行い、その結果によって、個人ごとに健康上の課題を見つけて目標を立て、改善に取り組む動機づけにします。このような積極的支援の取り組みによって、在職中、そして退職直後に亡くなる社員もここ数年目立って減り、2013年度の在職死亡者数はゼロになり、さらには、健康保険組合の財政面と会社の経営面の両方にメリットがあったとのことです。
本県でも、昭和57年に開設された「五色県民健康村健康道場」は、十分な医学的管理のもとに、本格的な絶食療法や食事療法を体験でき、心ゆくまでの休養も得られ、職場や家庭でのストレスの解決方法も学べる施設であり、現代社会のストレスにさらされた「こころ」のケアにも有用で、健康財団に経営移管された平成20年度から25年度まで、のべ2万9千人を超える体験者から評価を受ける施設となっています。
現在、特定健康診査で生活習慣病の発症リスクが高いと診断された方に対しては、生活習慣を見直すための指導、いわゆる特定保健指導がすでに行われていますが、これに加えて、健康診断時にメンタルチェックを実施し、ストレスの高い状態にあると診断された場合、生活習慣病の予防の観点から、自分自身の心の現状を把握し、ストレスを解決していくための対応を図ることを検討できないかと考えます。
今年6月の労働安全衛生法の改正で、従業員50人以上の事業所に、社員へのストレスチェックなどのメンタルヘルス対策が義務づけられたことを好機ととらえ、心身両面からの未病対策に取り組むべきです。
このようなこころの健康対策をはじめとした、健康寿命延伸に向けた現状認識と今後の対応についてお聞きをします。
4 県内事業者の国内・海外展開への支援について
(1)県内企業の海外展開支援
企業が海外展開を行う際には、事業計画の策定や現地に関する情報収集、海外実務を任せられる人材の確保、信頼できるビジネスパートナーの確保、法律・税制などへの対応、資金調達、販路開拓など様々な課題に直面します。
中小企業が海外展開で躓く理由として多いのが、現地の商習慣などに関する情報不足、理解不足であると指摘されます。進出目的や進出方法を明確化するためにも、準備段階での現地情報の収集と分析は重要です。また、しっかり企業理念、企業文化など自社情報を積極的に発信することも、販路開拓や新規取引先の確保、優秀な若手人材や信頼できるビジネスパートナーを確保する上で不可欠です。
先日、産業労働常任委員会の管内調査で、明石酒類醸造株式会社を視察し、経営者からも海外展開の難しさについて様々な観点からお聞きしました。国内市場が飽和状態にあり、またこれから縮小していく中、企業にとっては海外展開が必要と簡単に言われますが、実際、同社の事業が軌道に乗るまでには、何年にもわたる地道な販路開拓の努力や廃業寸前の危機があったとのことでした。
県は、県産のものづくり製品の海外への売り込みや県内企業の海外展開などの支援のため、今年ジェトロ、神戸市と共同開設した「ひょうご・神戸国際ビジネススクエア」のほか、平成23年から順次、中国やベトナムなど5カ国7都市に「ひょうご国際ビジネスサポートデスク」を置き、現地情報の提供などを行っています。
しかし、企業の海外展開を支援していくには、一時的なサポートではなく、事業の継続性こそが大切だと考えます。その意味で、行革を進める中での見直しという視点もありますが、現地のサポート機能を継続的に配置し、進出しようとする企業へ長期的に寄り添う視点が必要なのではないかと考えます。この事業における県の役割をどのように認識しておられるか、お伺いいたします。
また、特に中小企業が海外展開をするにおいては、現地の適切なビジネスパートナーについての調査や紹介をはじめ、現地の情報に精通したアドバイザーなどによるきめ細やかなマッチングの実施こそが、企業の真のニーズに沿うものだと考えます。
そのような現地情報の収集・分析、マッチング、見本市・展示会への出展などは、行政として支援できる取り組みです。変化の激しい今日においては、スピード感を持って、リアルタイムに対応していく必要があると考えますが、現況や成果、今後の取り組みについてお伺いします。
(2)県産農畜水産物・加工品の国内・海外展開への支援
神戸ビーフ、淡路島たまねぎ、明石だこなどの県産農畜水産物は、国内でも人気が高く、輸出量も順調に増加傾向にありますが、このような傾向は、まだブランド力のあるものに限られている状況にあります。
特に今の海外における健康志向、アジア圏の富裕層拡大などによる世界的な日本食ブームを追い風にすべく、さらなるブランド産品の輸出販路の拡大、ブランド産品以外の県産農畜水産物・加工品においても輸出の裾野を拡げていくことが今後の課題です。これからは、市場やニーズをしっかりと調査した上で、「強み」となるポイントを見極めた上でそれを磨き、はじめから海外戦略を見据えたものづくりをするという発想も必要になってくると考えます。
一方、一昨年の予算特別委員会でも質問したことですが、現在ブランド力に欠ける農畜水産物を単体で売り出して行くには、かなりの困難が伴います。そこで、ブランド力のある農畜水産物のシャワー効果を活用し、それ以外の産品との販売上の連携を行うことで、「ひょうごブランド」として、県産農畜水産物全体の底上げを図るなど工夫も必要と考えます。
また、別の方法として、異業種とのコラボレーションが考えられます。これも産業労働常任委員会の管内調査で但馬県民局を訪れたときに、現在ブランド化を進めている朝倉山椒を練り込んだパンを食べる機会がありました。これはインターネット販売も手がける地元で有名なパン屋がつくったもので、県としてはこのような、地域色ある異業種とのマッチングを進めていくべきと考えます。これらの取り組み推進についての現状認識をお尋ねします。
また県は、国内における需要拡大を図るため、首都圏でのプロモーションを実施していますが、次のブランド産品づくりのためには、見本市や単発のキャンペーンなどへの出品にとどまらず、外部評価の適切なフィードバックによる品質改善が欠かせません。そのためには個人経営が圧倒的に多い生産者サイドに対し、改善に向けて客観性や柔軟性の視点を持ってもらうことが必要になります。6次産業化の推進を含め、多くの人が生産に関わり、付加価値をあげることにより、多角的な経営視点を維持できるよう、各種のアドバイザー等によるフォローアップがさらに重要と考えますが、今後の戦略についてもあわせてお聞きします。
5 実効性あるエネルギー対策の取り組みについて
(1)ひょうご100万キロワット創出にかかる総合的な戦略の推進について
地球温暖化に影響する、温室効果ガスの排出抑制対策として、また、新たな電力確保やエネルギー自給率向上の観点から、県は2020年度末を期限とするひょうご100万キロワット創出プランを策定し、再生可能エネルギーの導入に取り組んでいます。
エネルギー政策を考えるとき、再生可能エネルギーを導入していくには「創エネ」「蓄エネ」、エネルギーの消費の抑制については「省エネ」という視点が重要で、さらにそれぞれを効率よくリンクさせることで、その相乗効果の結果として実効性のある取り組みとなり、それこそが、自立した地域分散型エネルギーを可能にしていくと考えます。
県は、100万キロワットの創出を実効性のあるものにするため、どのように政策を進めていこうとしているのでしょうか。現在、全量買い取り制度が追い風となってはいるものの、産業部門や民生部門、地域のマネジメントを含めた全体的な取り組みが重要となってきます。
環境問題で先進的な取り組みを行っている神奈川県では、中小企業を対象に、今年度からガスを資源に発電したのちの、廃熱を給湯などに利用するガスコージェネレーションシステム導入への補助を開始したほか、効率的な「創エネ」「蓄エネ」を目指し、軽量で多様な場所に設置可能な薄膜太陽電池の導入や、蓄エネによる電力のピークシフトを図るため、定置型蓄電池の普及促進や、EV(電気自動車)及びEVを活用した給電システムの普及促進に取り組んでいます。
再生可能エネルギーは、天候等の条件に左右されやすく、安定的に確保することは難しいので、太陽光、風力などの発電も不安定なわけですが、一方で、「創エネ」「蓄エネ」をセットで活用することで、その安定性は上がってきます。今後のさらなる技術革新も必要ですが、このような様々な「創エネ」「蓄エネ」などの取り組みも併せて行うことで、ひょうご100万キロワット創出プランの達成も加速していくのではないでしょうか。当局の所見をお聞きします。
(2)地域エネルギーマネジメントの導入について
ここからは「省エネ」という観点から、地域マネジメントという効率的な電力の使い方についてお尋ねします。
兵庫県では再生可能エネルギー導入促進の施策として、住宅における創エネルギー・省エネルギー設備の導入を促進するため、住宅用太陽光発電設備や家庭用燃料電池等を新たに設置する場合に、特別融資制度を実施しています。
家庭において情報通信技術(ICT)などを活用し、電力の消費と発電・蓄電設備をリアルタイムで統合的に管理し、快適さを保ちつつ節電を行うエネルギー・マネジメント・システムHEMS(Home Energy Management System)という考え方がありますが、地域において自立的なエネルギーの需給調整を図る分散型エネルギーシステムを構築するという観点から、住宅用創エネルギー・省エネルギー設備設置特別融資制度に加え、効率的な使い方を促す制度設計が必要ではないでしょうか。
自立したエネルギーシステムを構築するためには、地域ごとの再生可能エネルギーの導入状況を見える化した上で、ネットワーク化し、地域全体のエネルギーを集中管理し、無駄なく効率的に使ういわゆる地域エネルギーマネジメントシステムCEMS(Community Energy Management System)を構築していくという視点が重要だと考えます。「地域主導型再生可能エネルギー導入促進事業」においても、設備導入の支援をすると同時に地域エネルギーマネジメントのモデルとして、スマート化していく取り組みも今後検討に値するのではないでしょうか。
また、同様に工場やオフィスへの取り組みに対してもBEMSやFEMSの導入は、温室効果ガスの抑制効果も期待できることから、推進する後押しとして考えられます。
兵庫県では省エネという観点から、エネルギー全体の総量を一律に節電する取り組みを県民、事業者に毎年行っています。また、ピークカット、ピークシフトなどの取り組みも行っており、一定の効果を得られています。しかしながら、より効率的な電力の使い方を考えれば、地域の電力を管理するということも、今後重要性が増してきます。それぞれの部門でエネルギー・マネジメントをすすめていくという仕組みを構築できた暁には、ネットワーク化し、CEMSという地域でエネルギー・マネジメントという考え方をすすめていくことが大事だと考えますが、再生可能エネルギーを活用した、分散自立した地域のエネルギー政策についてお聞きします。
6 こどもの学習環境の充実について
(1)家庭や地域との連携について
こどもの学習環境をめぐっては、いじめや不登校をはじめ、非行や暴力行為などの生徒指導に関わる問題行動や、災害や犯罪の被害に遭った被害児童生徒への心のケアなど、様々な問題がおこっています。それらの問題に対応するため、教育現場では、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーをはじめとする専門性を持った外部人材を積極的に活用しています。
兵庫県では、阪神・淡路大震災の被災など大きな出来事が起こったこともあり、「心の専門家」であるスクールカウンセラー制度においては、他の地域にはない独自の取り組みを行ってきました。被災児童生徒への心のケアや、さまざまなこどもを巡る問題における学校への緊急危機対応の流れを受けて、スクールカウンセリングを「いじめ・不登校に対応する」だけでなく、「あらゆる問題行動に対応する」活動であると位置づけるなど先進的な取り組みが行われてきました。近年では、スクールカウンセラーが子どもや保護者の心の相談、教職員に対する相談支援はもとより教職員自身のメンタルヘルスアドバイザーの役割も期待されています。
また、学校における生徒指導上の諸問題が起こった場合には、家庭、学校、地域が連携した取り組みが必要なため、学校にスクールソーシャルワーカーを配置し、対応を支援しています。スクールソーシャルワーカーは教育と福祉の両面に関して専門的な知識・技術を有し、子どもの問題を生活環境から見た上で,包括的な分析、評価を行い,関係機関との連携を図り問題解決につながる支援を講じる役割を担っています。
さらに、学校だけでは解決できない少年犯罪等の事案に対応するため、関連機関との連携、調整などの役割として学校関係OB、警察関係OB、スクールソーシャルワーカーなどの専門家で構成された「学校支援チーム」を設置するなど、学校外部の人材を活用した取り組みを進めてきました。
このように子どもたちを取り巻く多様化・複雑化する学校の課題に対応するためには、地域、児童福祉機関、医療・保健機関、警察、市町等も含めた様々な領域にまたがる関係機関で連携を取りながら一体感を持って取り組んでいく場が、今後ますます増えていくと想定されます。教育委員会として多様化・複雑化する学校の課題に対して、全体の状況を見きわめながら、施策を進めていく必要があると考えますが、当局に所見をお聞きします。
(2)スクールカウンセラーのマネジメントについて
スクールカウンセラーの意義・成果については、学校外のいわば「外部性」を持った専門家として、児童生徒と教員とは別の枠組みや人間関係であるため、心を許して相談できる、教職員等も含めて、専門的観点からの相談ができる、といった報告があります。
県では、スクールカウンセラーを平成17年度から全公立中学校へ配置し、平成18年度からは小学校へ配置を拡充したほか、平成12年度からキャンパスカウンセラーを全県立高等学校に配置し、キャンパスカウンセラー等を活用した教職員研修会を実施するなどの施策に取り組んできました。スクールカウンセラーの守備範囲もそれに伴い多岐にわたり、責務がますます大きくなる中、様々な課題も見えてきました。
主な課題としては、一つには、スクールカウンセラーは、学校外部の人材ですが、一方で、学校組織の一員として、管理職の指導や学校の方針のもとで活動を行っているという側面もありますが、スクールカウンセラーと教職員との間において、必要な情報の共有がなされないことがあります。教育相談体制を充実するという観点から、スクールカウンセラーの役割、業務等を明確にし、全教職員が共通認識を持ち、スクールカウンセラーと教職員との間において、必要な情報を共有することが必要です。
二つには、各学校におけるスクールカウンセラーの派遣が主に週1回となっている現状では、継続的な相談効果や校内の一体的、組織的な相談体制の確保は困難です。このため、週当たりの相談時間の増加や相談日数の増加について検討することが必要です。
三つには、スクールカウンセラーの配置の拡大に伴い、資質や経験に違いが見られたり、学校における活用の仕方に大きな差が見られるなどの課題も指摘されています。特にスクールカウンセラーにおいては、児童生徒に対してプライバシーにかかわる相談もあるので守秘義務や密室性に起因する問題等、繊細さも同時に求められる役割であることを考慮する必要があります。その資質の向上やマネジメントをどのように図っていくかが課題となっています。
その他にも、経験豊かなスーパーバイザーを、例えば各教育事務所に配置し、スクールカウンセラーへの指導や助言、マネジメントする体制を整えていくこと、スクールカウンセラーの適格性の判断や評価、ガイドラインの整備等も必要です。
以上のように、様々な課題がありますが、これらの課題は、文部科学省において検証され、兵庫県に限らず、全国的な問題として指摘されている内容です。
いじめや不登校、災害時のこころのケアを始めとした児童生徒の様々な問題に対応していくため、現状の取り組みを含めて、今後これらの課題にどのように対応していくのか、当局の方針をお聞きします。