議会の動き

北上 あきひと議員が一般質問を実施

質 問 日:令和4年2月24日(木)

質 問 者:北上 あきひと 議員

質問方式:一問一答方式

1 私立幼稚園における特別支援について

子ども一人ひとりの教育・保育ニーズに応じた実践が求められる  なか、支援が必要な子どもに応じた十分な教育・保育を保障することは極めて重要であります。国、県、市町においては各々の立場から、保育所、こども園、幼稚園への補助事業等の施策を講じておられ、新年度、県においては、発達障がい等の子どもを受け入れる私立認定こども園に対して国制度に上乗せする形で支援を拡充する方針を示されました。

補助事業の多くは、国・県の負担割合はあるものの、実施主体が市町であり、特別な支援が必要な子どもの判定も市町が行っています。例えば川西市が公立の保育所、認定こども園はもちろんのこと、私立の保育園、認定こども園に通う子どもについて特別な支援の必要性の有無を判断する場合は、保護者の申請に基づき、市の保健師、指導主事、保育士等が、子どもと保護者に直接面談し、園所での個別の支援内容を踏まえての審議を経て決定をしています。

ところが、私立幼稚園の場合だけは流れが異なっています。私立幼稚園等特別支援教育推進事業は、特別な支援が必要な子どもへの早期支援、幼児期の子育て支援充実等の観点から、私立幼稚園における受け入れに対する支援を行うものですが、実施主体は兵庫県であり、該当する子どもの判定も県が行っています。

一部の私立幼稚園関係者からは、県に同事業の補助対象児童として認められることが極めて狭き門であると指摘をされ、現場の実情に即した制度の運用に改めて欲しいとの要望が寄せられているところです。

認定の基準としては、制度の趣旨に大きな差異は無いと思われる  ことから、これは現場の実情を細かく把握できる市と、書類上の判断が主にならざるを得ない県との、運用上の差では無いかと推測するところです。特別支援の必要の可否についての判断は、現場との意思疎通を充分に行い、子どもの特性や状態を丁寧に把握して適正に行われるべきであり、また判断結果の合理性についての理解を得ることが肝要だと考えます。

障がい児保育に要する経費については、保育所で受け入れている 障がい児一人当たり150万円余が各市町に地方交付税として措置されていますが、幼稚園においては同様の交付税措置がありません。国に是正を求めることが必要でありますが、それが叶わない現状にあっては、県において私立幼稚園特別支援教育への力強い取組が求められると考えます。新年度予算案では私立幼稚園等特別支援教育推進事業について、358,288千円を計上され、今年度に比べ46,648千円の増額見込となり、その効果に期待をするところです。

そこで、補助対象児童決定のあり方を含め私立幼稚園等特別支  援教育推進事業の現状と課題について、当局の所見を伺います。

2 公共交通事業支援施策について

コロナウイルスの感染拡大が長引くなかにあって、地域公共交通 機関においては、感染対策に鋭意努めながら運行を維持し、県民の暮らしを支えて頂いています。かねてより人口減少等に伴って、公共交通機関を取り巻く環境は厳しいものがありました。コロナ禍が追い討ちとなった交通事業者も多く、その経営は深刻であるとの声を数多聞き及ぶところです。

コロナ禍、県民のライフラインである公共交通機関への支援は必須であり、私たちもその取組強化を訴えて参りました。県においては、交通事業者が実施する感染防止対策への支援、車内などの密度を上げないよう便数等に配慮した運行に取り組む鉄道・バス事業者等への運行経費支援等を実施しているものと存じます。

地域公共交通は、人口減少や過疎化に加え、大規模自然災害の頻 発、カスタマーハラスメント、暴力行為、放火事件・殺傷事件の続発、燃料費高騰、施設の老朽化、要員不足等、極めて多くの難問に直面しています。また、リモートワーク等が普及するなか、これまでの需要構造は大きく変化することが見通せます。コロナ禍が明けるのを待っていれば、いずれ事態は良くなるとは決して言えません。

新聞報道等によると、既に国土交通省においては今月16日に鉄道の運賃・料金制度を見直す方針を明らかにしています。

鉄道・バス等の交通事業者は、企業としての社会的使命を果すために様々な取組に努めており、例えば、自治体と連携しての生活交通網維持、交通弱者の移動手段確保、環境負荷低減等に取り組んでいることは周知のことと存じます。加えて通学定期券であります。鉄道事業者の通学定期割引率(1ヵ月平均)は、東洋経済オンライン2020年5月の報道によると、阪急電鉄78.5%、山陽電鉄77.6%、阪神電鉄75.0%、神戸電鉄69.6%、神戸市営地下鉄60.0%、神戸新交通59.8%、能勢電鉄59.7%等となっており、またJR各社の割引率も大手私鉄と同等だと認識するものです。バス事業者においても、同様に通学定期券の大幅な割引が実施されております。通学定期券は、均等な教育機会の保障に資する多大な社会貢献でありますが、各事業者の今後の経営状況によっては止むを得ず割引率減少に至るのではないかと危惧するものです。

県におかれてはひょうご公共交通10カ年計画(2021~2030)を策定し、その理念を「豊かで活力ある県民生活を支える持続可能で安全・安心な公共交通 ~公共交通を県民とともに、つくり・まもり・育てる~」としています。私は、公共交通の維持・確保は、憲法25条の文化的な生活に含まれるものであり、公共交通の公共性を誰がどのように担うのかが、今一層問われていると考えます。

そこで、県におかれては、コロナ感染防止策への補助やコロナ禍における実証運行への支援等にとどまることなく、将来に渡って地域公共交通が安定的に維持できるよう、国・市町・県民とも連携を図りつつ更なる施策展開を図って頂くことを望みますが、当局の所見を伺います。

3 川西市内に新設される一時保護所のあり方について

県の報告によると、2020年度の神戸市、明石市を含む県内のこど も家庭センターが受け付けた児童虐待相談件数は8,816 件で、2015年度の3,281件と比較して268 %増、2020年度の一時保護児童数は   2,580人であり、2015年度の1,402人と比較して184 %増となっています。本来なら最も愛されるべき親など周囲の大人から子どもが虐待されるという事態は、本当に痛ましく辛いことであり、子どもの生命と人権を擁護するため、迅速で適切な対応が強く求められているところです。

県においては、中央こども家庭センター一時保護所において一時 保護が急増しパンク状態であること、子どもの人口に対する定員数が全国と比較して極めて少ないこと、また広い県域のなかで阪神間の一時保護件数が多いこと等から、2024年度を目途に川西市内に一時保護所を新設するとの方針を示されました。県の前向きな判断を嬉しく思います。新設される一時保護所においては、子どもの最善の利益を実現するために、ソフト・ハード両面の取組が充分になされることを期待するものです。

一時保護所の専門職員には、幅広い知識と洗練された援助技術、現場経験の蓄積によって編みだされる洞察力、共感力、調整力など総合的な人間力が求められます。果す役割が大きく担う責任が重い、そういう職種にふさわしい処遇が求められていることは、かねて再三指摘してきたところです。中央こども家庭センター一時保護所においては、2019年度に受入れ定員を40人から54人に引き上げましたが、必要な職員が確保できず、残念ながら予定した定員の増員が叶わない状態が未だ続いています。新設される一時保護所の職員配置は、年齢構成において、ベテラン、中堅、若手のバランスが求められるものと考えます。また、子どもアドボカシーの観点も重要であり、相応しい職員の確保に努めて頂きたいと考えます。

施設については、定員の75%以上を個室とし、セクシャルマイノ リティや性的被害を受けた子どもらに配慮したユニットバスを設置する等の方針が示されています。年齢の異なる、様々な困難を抱えた子どもたちが、心から安心して穏やかに寛いで過ごせるよう充分な配慮が行き届いた環境を整えて頂きたいと切に願います。図書室、体育室、ICT機器、Wⅰ-Fi環境等の整備によって、学校に通えない子どもたちの学習を支える体制の構築にも努めて頂きたいと考えます。

そこで、今後、社会福祉審議会児童福祉専門分科会一時保護所のあり方検討部会での議論を踏まえ、川西市内における一時保護所開設への作業が進むと存じますが、ソフト・ハード両面の取組において、子どもの最善の利益をどのように実現して行かれるのか、当局の所見を伺います。

4 化学物質過敏症への取組について

私たちの身の回りには、極めて多くの化学物質が使用されおり、国内では約5万種の化学物質が製品として流通しています。化学物質が現代の私たちの快適な生活を支えている一面があるのは事実ですが、他方においては化学物質の暴露により、様々な環境影響や健康被害がもたらされる危険性があるのも、また事実です。

農薬や建築材料、柔軟剤や芳香剤などから発する微量の化学物質を 吸い込むと、頭痛、目まい、胸の痛み、口・のど・鼻の痛み、身体のかゆみ、けいれん、脱力、疲労感等を発症する化学物質過敏症の方は、13人に1人とも10人に1人とも言われます。加えて、これは極一部の体質の人だけが発症する病気ではなく、微量でも化学物質を浴び続けると、ある日から突然化学物質過敏症になる可能性があると指摘をされています。昨年8月、国は柔軟剤や芳香剤等の香り製品により体調不良を起こす人が一定数存在することを認め、5省庁(消費者庁、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省)連名で啓発ポスターを作成、発行しました。本県では、ホームページ等で住宅地周辺の樹木等の病害虫駆除における、化学物質過敏症の方への配慮を呼びかけていますが、充分な対応だとは言えず、一層の取組を期待するところです。20以上の都道府県では化学物質過敏症の周知・啓発をホームページで行っています。部局横断の連絡会の立ち上げ、相談窓口の設置、独自のガイドラインやマニュアル作成等に取組む都道府県も見受けられます。

そこで、県民の生命・健康に関わる課題として捉え、他都道府県の先行事例も参考にしつつ、相談窓口設置や啓発事業等の対策を求めますが、当局の所見を伺います。

5 石綿(アスベスト)健康被害救済法見直しに向けての本県の役割について

アスベストは断熱、耐火、防音性に優れ、また安価だったため、かつては建設資材をはじめ多様な製品に使用されました。アスベストは繊維状の鉱物で、ほぐすと髪の毛の5千分の1という細さになり、肺に吸い込むと、中皮腫、肺がん、石綿肺などを引き起こします。発症までの潜伏期間は十数年から50年程度と極めて長く、静かな時限爆弾とも言われます。

石綿(アスベスト)健康被害救済法は、所謂クボタショックを 契機とし、2006年に成立しました。同法施行により、アスベストによる健康被害のうち労災補償の対象にならない周辺住民の環境被曝等の被害者が救済対象となり、加えて労災補償を受けずに亡くなった労働者の遺族には特別遺族給付金が支給されることになったのです。2011年の法改正では、特別遺族給付金の請求期限が延長されるとともに、支給対象が拡大されました。

2016年12月に中央環境審議会環境保険部会石綿健康被害救済小 委員会が取りまとめた「石綿健康被害救済制度の施行状況及び今後の方向性について」では、同制度の5年以内の見直しが必要であるとされ、昨年12月には、取りまとめから5年が経過しました。治療環境の変化や新たな司法判断が示される等、制度を取り巻く状況は大きく変化しており、認定基準や療養手当の見直し、治療研究促進のための石綿健康被害救済基金の活用、労災時効となった遺族を対象とした給付金の請求権延長等が求められています。本年1月24日には、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の方々が、斎藤知事宛に環境省に対し、中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会を至急開催するよう要請して欲しいとの要望書を提出されたところです。

本県はかつてアスベストを扱った工場が多く、2005年には県内アスベスト工場の労働者や周辺住民の健康被害が判明し社会問題化しました。阪神・淡路大震災から27年が過ぎ、被災地で飛散したアスベストによる健康被害の一層のひろがりが懸念されています。2016年当時、本県健康福祉部長は取りまとめを行った石綿健康被害救済小委員会(委員10名)の一員でもありました。

そこで、これらの経緯に鑑みて、本県は患者と家族の実態を把握し、必要な見直しを国に求める役割を果すべきだと考えますが、当局の所見を伺います

6 猪名川町の観光資源活用に向けての、市街化調整区域における開発及び建築行為に対する許可の弾力化について

一昨年12月議会での私の一般質問に対し、産業労働部長は猪名川町には、猪名川渓谷の屏風岩、鉱山としては本県初の国史跡多田銀銅山遺跡、江戸時代の豪農の屋敷を模した静思館、そば打ち体験が人気の道の駅いながわなど、観光コンテンツが多数あります。大野アルプスランドは、都市近郊にありながらダイナミックな展望を誇り、キャンプ場では満天の星空を楽しめるなど、魅力あふれるスポットです。とご答弁されました。県においては、地域創生交付金の活用、ひょうご観光本部や阪神北県民局による広域観光の情報発信等により、猪名川町の観光振興に尽力頂いていると認識するところです。また県立奥猪名健康の郷は、昨年10月にリニューアルしました。温泉、自然体験、アスレチック、スポーツ施設等の魅力を発信すると共に、周辺エリアの整備によって、本県の観光資源としての一層の活用が期待されます。

猪名川町では、人口減少が進むなかにあって、観光資源の積極的 な活用によって地域経済の好循環を生み出すとともに、IJUターン等の移住・定住を視野に入れた交流人口の拡大に努めているところです。新名神高速道路の開通によりアクセスが向上し、特に大野山や屏風岩周辺では観光資源としてのポテンシャルが高いことから、積極的に観光客を誘致する土地利用が望まれています。現在、第2次猪名川町観光振興基本計画の策定が進められているところですが、猪名川町の観光資源の多くが市街化調整区域に存することから、無秩序な市街化を抑制しつつ、開発や建築行為を如何に進めて行くのかという課題に直面しています。

県においては、県土地利用推進検討会を立上げるなど、市街化調整区域での空き家活用に繫がる規制緩和や用途変更迅速化、補助率引き上げ等の取組を進めており、県内関係市町の期待は大変に大きいと考えます。猪名川町では、都市計画マスタープランや土地利用計画の見直しによって、観光施策上必要な土地利用を図るべく、観光資源の活用区域の設定などを検討しているところでありますが、円滑な施策展開には県との連携が不可欠です。また、民間事業者や個人の参入を促し事業の具現化を図るには、明解平易な基準の明示、実現性の担保、可及的迅速な手続き等が期待されており、県に引き続きの取組を求めるものです。

そこで、アウトドアやマイクロツーリズムへの関心の高まりを見据え、市街化調整区域における地域活性化や観光振興に寄与する開発及び建築行為に対する許可の弾力化を切に願うところでありますが、当局の所見を伺います。