代表質問
1.平成22年度における新行革プランの実施方針と総点検の取り組みについて
2.県政課題に立ち向かう県民運動の構築について
3.自殺対策の推進について
4.少子対策の推進について
5.若年者の雇用就業機会の確保・拡大について
6.「観光立県ひょうご」への取り組みついて
7.新たな環境施策への取り組みについて
8.実効ある「ひょうご教育創造プラン」の推進について
質問全文
第304回定例会(2月)代表質問
2010年2月23日(火)
1 平成22年度における新行革プランの実施方針と総点検の取り組みについて
2月17日、井戸知事から「変化の時代だからこそ、改めてその精神に学び、共に生きる社会を築き、新兵庫再生をめざし、誠心誠意取り組んでいく」と力強い決意とともに、平成22年度当初予算案が提案されました。来年度は、新行革プランがスタートして3年目の総点検の年であり、また、井戸県政3期目初の予算として、従来にも増して非常に重要な予算であると考えます。
予算案の内容を見てみますと、歳入は地方交付税等の見直しなどによって1,158億円の増額となり、また、歳出では人件費の削減や投資的経費の抑制などを実施した結果、新行革プランの財政フレームに示された要調整額が、従来の見込みを下回り、来年度はゼロ、平成30年度までの全体で565億円の減が見込まれています。
しかし、昨今の厳しい経済情勢や所得水準の低下等を背景に、法人関係税、個人県民税など県税収入の落ち込みは続いており、後期高齢者医療事業など社会福祉関係経費の増嵩等によって、なお884億円の収支不足が見込まれるほか、一般会計の県債残高も大幅に増加するなど、県財政の立て直しには依然として厳しい環境が続いており、より一層の「選択と集中」が求められることに変わりはありません。
最初にも述べましたように、来年度は新行革プラン3年目の総点検の年となりますが、私たちの会派では、新行革プランの検討段階から、一貫して県民の生命と生活に直結する医療・福祉、教育、治安等については、極力、行革の対象とすべきではなく、選択と集中によってメリハリのある改革を求めるとともに、プランの対象となった各分野においても、再検討も含めまだまだ精査すべき課題があり、「推進に関する条例」に規定されたフォローアップの仕組みを最大限活用し、県民本位の改革となるよう繰り返し訴えてきたところです。
例えば、事務事業では、1年間の周知期間を経て、昨年7月から老人医療費や乳幼児等医療費など福祉医療の見直しが実施されましたが、県民生活への影響を十分検証する必要があると考えますし、景気が低迷する中、投資事業については、必要性・緊急性など事業の優先順位、事業評価のあり方など透明性、公平性の確保のあり方とともに、事業費総額の段階的な抑制方針における、地域経済への影響もさらに精査する必要があると考えます。
また、新行革プランでは、土木事務所や健康福祉事務所の統合再編が行われましたが、このことが県民、市町、関係機関等から、どのように評価されているのか、そして、県民サービスの確保を図るため設置された保健支援センター、地域普及所も含め検証が求められます。
このように事務事業、投資事業等の見直しが進む一方で、新行革プランに基づく給与の大幅な減額措置に加え、昨年12月には、人事委員会勧告に基づいて、過去最大となる期末・勤勉手当の引き下げを主な内容とする職員の給与改定が行われました。
定員についても行革期間の11年間で概ね3割の削減が予定され、とりわけ平成20年度から22年度までの3年間で削減総数の2分の1となる概ね1.5割の削減がなされ、給与についても秋には、さらに厳しい内容の人事委員会の勧告も予想されることから、行財政構造改革審議会が「専門的な分野における将来の人材育成や職員の意識改革、士気高揚などに特に留意されたい。」と指摘するように、給与は削減しやすいとは言え、削減にも限界があり、本当に職員のモチベーションが保てるのか、また、真の行革となりうるのか大いに危惧するところであり、より慎重な検討・対応が必要と考えます。
新行革プラン策定後、社会経済情勢の変化とともに、県政・県財政を取り巻く環境は、目まぐるしく変化し、県民生活にも大きな影響が及んでいます。
新行革プランは、この2年間、関係方面のたゆまぬ努力により一定の成果を上げることができましたが、今後は、さらに県民自らが自分たちの課題と捉え、その理解と協力を得るためのプランでなければならないと考えます。
そこで、平成22年度における新行革プランの実施方針について伺うとともに、新行革プラン3年目の総点検にどう取り組まれるのか、とりわけ聖域なき改革という方針の下で、定員・給与、事務事業、投資事業の3つの柱について、現状を踏まえた上で、来年度以降、どのような考え方で臨まれるのか知事の方針をお伺いします。
2 県政課題に立ち向かう県民運動の構築について
急激な社会経済情勢の変化等により、少子高齢対策、自殺防止対策、環境問題への取り組み、さらに、今年に入り女子中学生らが大麻所持容疑で逮捕・補導されるというショッキングな事件に象徴される麻薬対策など、その改善・解決に向けて、担当部局だけでなく、広範な連携を必要とした、短期、また中・長期にわたる取り組みが必要な県政の課題が山積しています。
当初予算においても、各課題解決に向けて、手厚い予算配分、また新規事業も打ち出されていますが、対症療法的な対応に終始せざるを得ない施策もあり、例えば、後ほど質問します自殺防止対策など、懸命な取り組みにもかかわらず、結果として十分な成果を上げるに至っていないと思われる面も多々見受けられます。
どの課題についても、その解決・改善に向けてのより効果的な対策は、行政サイドのよりきめ細かい取り組みに加え、県民の参画と協働による、つまり、県民が自身の課題として捉え、その解決に向けて行動を起こすか、すなわちいかにして全県的な県民運動としての意識づけ、動機づけをすることができるにかかっていると考えます。
思い起こせば、15年前の阪神・淡路大震災の際、全国各地から、また県内各地から仕事も休み手弁当で、救援・支援活動に約140万人とも言われる多くの方に来ていただいたこと、さらに、子どもの命を助けるための募金活動も、厳しい経済不況の中であっても数日にして億単位の募金が全国から寄せられることなど、その目的が理にかない、人々の正義感に訴え、共感を得ることができれば、県民の誰もが率先して行動を起こしていただけるという大きな証明だと考えます。
そこで、県民に身近な県政を推進する上で、神戸・阪神・播磨・但馬・丹波・淡路というそれぞれの地域性を重視し、地域に根ざして地域の活性化を促し、市町との連携と適切な役割分担のもとで、県民や市町の声に応える現場重視の施策を実現していくという重要な役割を担うために、県民局が設置されています。
まず、各県民局において、前述した県政課題を選択して、良い意味での競い合いの中で、より確かな成果を上げるため、市・町単位、地域単位で県民運動を喚起し、より県民に直結したきめ細かい施策を展開することによって、確かな成果を上げ、その効果・ノウハウを全県的な施策として県下全域に広めていくという仕組みづくりを考えてはどうでしょうか。
現在、県民局長の裁量で執行できる予算として、一律5千万円の地域戦略推進費が措置されており、その予算を有効活用するということも一考の価値があると思います。
また、毎年度、「兵庫宣言」とも言うべき、兵庫ならではの一大県民運動を提起し、その解決に向けて県民総参加の取り組みを発信することも考えてはいかがでしょうか。
そこで、県民自らが県政課題の解決に立ち向かう県民運動の構築、意識の醸成について、当局の所見をお伺いします。
3 自殺対策の推進について
警察庁の調査では、昨年1年間で自殺を図り亡くなった人は前年と比べ504人増加し3万2,753人となり、12年連続で自殺者が年間3万人を超える最悪の事態となりました。自殺未遂は、その10倍とも言われていますが、実に、1日に100人の方が自殺で亡くなっているという深刻な状態が毎年繰り返されています。
特に、雇用情勢と自殺者数との間に強い相関関係があると指摘されていますが、とりわけ一昨年の金融危機以降の急激な景気の落ち込みによる失業者の増加が影響していると考えられ、「ハローワーク心の健康相談」を利用した失業者のうち、1か月以内に「死にたいと思ったことがあった」と回答した人は78%、「実際に自殺をしようとしたことがあった」と回答した人は22%にも上っています。
失業者が増加傾向にある現在の経済・雇用状況の中にあっては、さらに自殺者が急増しかねませんし、とりわけ憂うべきは、20歳、30歳代の死因第一位が自殺であり、30歳代の自殺は一昨年に過去最多を記録するなど、我が国の将来を背負って立つ若い世代が、何ものにも代え難いたった一つの尊い命を自ら絶たつという悲劇が繰り返されているという現実があります。
一方、ある公的調査機関が行った試算では、我が国の自殺者数が急増し初めて3万人を超えた1998年から、2000年の3年間の平均で約1兆3千億円のGDPが損失されたという報告もなされています。自殺対策は、心理学的視点、社会・文化的視点に加え、県民の福祉向上を最大の使命とする地方公共団体として、経済・財政施策や雇用施策など多角的な視点から総合的に推進していくことは、言うまでもありません。
このような状況に鑑み、本県では、これまでの全国に先駆けた対策に加え、昨年5月に、全庁的な推進体制として知事を本部長とする「兵庫県自殺対策本部」を設置し、補正予算では自殺対策強化基金を造成するなど、「県民の自殺予防に対する理解の促進」や「こころの健康の保持対策」などの実施、さらに、来年度予算では、自殺対策に取り組む市町への補助制度の全市町への拡大など、さまざまな視点から自殺対策の強化に努めておられることは大いに評価をいたします。
しかし、残念ながら県内の自殺者数は、懸命の自殺防止対策、施策の実施にもかかわらず、平成20年にはいったん減少に転じたものの、昨年は再び増加し1,354人の方々が亡くなられており、依然として高い水準で推移しています。
以前にも取り上げましたが、昨年度に、我が会派が調査のため訪問したフィンランドでは、国の主導のもと、地方自治体レベルで自殺防止対策を行い、関係諸機関があらゆる枠を超え、民間団体との協力も含めた横断的な連携を実施しており、市民への広報の徹底、とりわけ、我が国においても、国・県段階において、今後、検討しなければならないとされている報道機関との防止に関する協力・連携が密に行われたことにより、大きな効果を上げています。
また、国内に目を向ければ、神奈川県では、平成19年度から、地域自殺対策推進事業の一環として、都市部におけるモデル地区を選定し、3年計画で体制整備、人材育成、地域づくりなどを実施し、取り組みの成果を各市町村に還元しようという施策を関係機関の協働事業として展開しています。
昨年11月に、内閣府が取りまとめた「自殺対策100日プラン」では、一人でも多くの人に、「自殺は私たちにとって身近で深刻な社会問題であり、社会全体で自殺対策に取組まなければならない」といった意識を共有してもらうためにも、国民運動として啓発活動を推し進めていくことを基本戦略の一つに掲げています。
県では、平成28年までに県内の自殺による死亡者を1,000人以下に減少させることを目標に、前述したような総合的な自殺対策事業を県政の最重要課題の一つとして推進されていますが、昨年までの数値を見る限り、現状では、残された7年間でその目標を達成することは非常に困難であると指摘せざるを得ません。
何度も指摘してきたように、県民自らがお互いを見守り、助け合うという体制をつくり上げるためにも、また、県民に県としての防止対策の総合的な施策内容と取り組みの重要性をアピールする意味でも、横断的な全庁挙げての施策の拠点として、県庁内に自殺防止対策の専門部署としての課・室を設け、中・長期的な県民運動としてさらに推進体制を強化すべきと考えますが、当局の所見をお伺いします。
4 少子対策の推進について
近年の急速な少子化の進行は、労働力人口の減少、高齢化の進展をもたらし、我が国全体が直面している経済成長の鈍化、税や社会保障費の負担増、地域社会の活力低下など、深刻な問題の多くは、そこに起因しているといっても過言ではありません。
国においては、先月29日に、今後の子育て支援の方向性についての総合的なビジョンである「子ども・子育てビジョン」を策定し認可保育所の定員増をはじめ各種施策に関する数値目標の設定、子育て支援策を一元的に扱う「子ども家庭省(仮称)」の検討など多岐にわたる重要政策に関し、子どもを生み育てることに夢を持てる社会を実現するために、政府を挙げて強力に推進することを掲げています。
一方、本県では、平成17年に庁内横断組織として少子対策本部を設置して以降、5年間で25万人の出生数を目標に掲げた「ひょうご子ども未来プラン」の策定をはじめ、私たちの会派が少子化対策調査特別委員会等を通じ強く主張してきた、法人県民税の超過課税による少子対策を総合的に強化する施策として、多子世帯の保育料軽減、子育てと仕事の両立支援、子育て世帯への支援などを、予算に反映してこらたことは、大いに評価し敬意を表したいと思います。
また、プランが策定された平成17年と20年を比較してみますと、県下の出生数は47,951人から49,222人、合計特殊出生率では1.25から1.34と上昇傾向が見られるものの、有配偶者率や出産適齢期の女性人口の減少、さらに、景気、雇用の悪化といった厳しい経済環境が若者の賃金水準や就業に影響を及ぼし、そのことが結婚・出産を躊躇させるなど、まだまだ多くの課題が残されているとともに、近年、若者の結婚観自体が大きく変化してきていることも見逃すことができません。
本県では、全国に先駆けた先導的な取り組みとして、平成18年3月に県・連合兵庫・経営者協会が「仕事と生活の調和と子育て支援に関する三者合意」を行い、20年10月には、兵庫労働局を加えた四者による「仕事と生活のバランス」ひょうご共同宣言を採択しており、この三者合意や宣言の趣旨を確かなものとし、この分野の施策をより一層促進することも重要であると考えます。
県では、この度、これまでの「ひょうご子ども未来プラン」の達成状況や少子化問題を取り巻く状況の変化等を踏まえ、平成22年度から5年間を計画期間とした「新ひょうご子ども未来プラン」を策定することとしていますが、例えば、前述したように、内閣府が昨年実施した調査では、結婚しても必ずしも子どもを持つ必要がないと考える若者が20歳代で63%、30歳代で59%に上り、若い世代ほど子どもを持つことにこだわらない傾向が顕著に表れており、新たなプランに掲げる目標数値の設定、達成のためには、このような若者の意識の変化や生き方の多様化に対する対策も十分考慮しなくてはなりません。
来年度予算案に計上された待機児童解消に向けた各種の事業や、子どもの健全育成を図るためのヒブワクチン接種への支援といった施策については大いに評価をいたしますが、「新ひょうご子ども未来プラン」には、このような現状に即した対症療法的な施策だけではなく、過去5年間のプランの数値目標達成に対する評価と課題に加え、若者の意識の変化や生き方の多様化に切り込んだ将来を見据えた施策を推進していく必要があると考えます。
そこで、現行のプランで検証された評価と明らかになった課題に基づき、新たに設定される新プランの重点目標に対して、その達成のためどのような対策を講じていくのか、その決意と併せ、考え方をお伺いいたします。
5 若年者の雇用就業機会の確保・拡大について
我が国経済は、新興国向けの輸出の回復などにより、一部に持ち直しの兆しも見られるものの、物価が持続的に下落するデフレや円高などで経済の先行きは不透明感が強まっており、企業は人員抑制を続けています。
県内の昨年12月の有効求人倍率は0.43倍と3か月連続の横ばい状態からマイナスに転じる一方、新規求職者は前年同月比で5.1%増となっており、県下の雇用情勢は依然として非常に厳しい状況にあります。
とりわけ、今春卒業予定の県内高校生の就職状況は、昨年12月末時点の内定率は78.9%にとどまり、前年同期から8.6ポイント下がり下落幅は過去最大、また12月1日時点の大学生の内定率は、73.1%で調査開始以来最低となり、2000年前後の就職氷河期と言われた時期に匹敵する厳しい雇用状況にあることが改めて浮き彫りになっています。
一方、就職意欲を持たないいわゆるニートの存在も大きな社会問題となっており、現在、県内のニートは約2万8千人と推計されています。若年失業者やニートの増加は、本人にとって、職業能力・技術が蓄積できない、また経済的自立ができず将来の展望が持てないなどの問題があり、社会全体にとっても、職業能力や技術力の低下に加え、職業能力等の乏しい世代の増加による社会的不安要因、すなわち納税者や保険料負担者の減少による社会保障制度の崩壊を招く危険性の増大など、国家的課題として看過できない問題となっています。
さらに、発達障害や何らかの事情で精神疾患を抱える若者にとって、現在の不況の中で、就職へのハードルはより一層高くなっているという憂慮すべき実態があり、このような若者がさらに就業から追いやられてしまうのではないかと大きな懸念を抱かざるを得ません。
そこで、フリーターなど若年失業者やニートへの支援として、県では「若者しごと倶楽部、同サテライト」を設置し、国では「若者サポートステーション」を県下4箇所に順次設置するなど、国、県ともに若者への就職支援に努めるとともに、県では、平成19年7月に、とりわけ就職意欲が乏しく、社会性が薄く引きこもりがちな特性を持つニートに対して、関係機関によるネットワークを構築し、各支援機関の特性を十分に活用するとともに、支援実績の情報交換を行うなど、ニートの総合的な支援を目的とした「ひょうごニート支援ネットワーク」の運営が行われています。
若年者の就職率が低下すれば、新たなニート・フリーターを生み出し、県内経済の停滞や少子化に拍車をかけることが懸念され、従来のように各機関・施設が行う縦割り的な個別の取り組みでは限界が来ており、このようなネットワークをより有効に活用し、ワンストップ機能を一層高めていくことが求められていると考えます。
また、引きこもりや発達障害等を抱え働く自信をなくした若者に対しては、合宿形式の生活訓練を行う「こうべ若者自立塾」が平成19年に設置され、昨年までの入塾者50人のうち、半数を超える28人が入塾時に「うつ病」や「発達障害」等を抱えているという中で、医療関係者との連携、職業訓練、就業支援の取り組みを行い、大きな成果を上げていますが、さらに継続・拡充した取り組みも望まれます。
そこで、県として、若年者への雇用就業対策の充実強化に加え、不況、雇用不安が深刻化する中で、ニート・引きこもりなど何らかの問題を抱えた若者が置き去りにされないよう、若年者全体に目を向け、自立を含めた訓練をはじめ就業に至るまでの入口部分の対策とともに、安定した雇用就業機会の確保と拡大に向けた施策を加速させていくべきだと考えますが、当局の所見を伺います。
6 「観光立県ひょうご」への取り組みついて
観光は旅行業、宿泊業、運輸業、飲食業、土産品業などに関連する裾野の広い産業であり、観光産業は我が国の経済、人々の雇用、地域の活性化に資するもので、新時代の成長産業として期待されるとともに、とりわけ訪日外国人旅行者の増加は、国際的な友好親善の促進加え、国内の旅行消費の拡大、関連産業の振興や雇用の拡大による地域の活性化といった大きな経済効果が期待できます。したがって、今、観光分野における施策はより重要となっています。
しかし、世界的な景気後退や円高、新型インフルエンザ等の影響によって、昨年、日本を訪れた外国人観光客は697万人と、前年の835万人から18.7%減少し、23年ぶりに2桁台の落ち込みとなるなど非常に厳しい1年になり、本県も同様の傾向が表れています。
本県では、昨年4月から6月にかけて、兵庫の魅力を全国に発信する「あいたい兵庫デスティネーションキャンペーン」の実施、さらに、新型インフルエンザの風評被害から早期回復を図るため、7月から9月には「やっぱり、ひょうごキャンペーン」を展開するなど、切れ目のない観光客の誘致に全庁挙げて努めてこられましたが、まだまだ入込数の回復・底上げを図るための施策を講じなければなりません。
兵庫には、例えば、有馬温泉や城崎温泉、北野異人館や姫路城といった多様で魅力ある観光資源が数多く存在していますが、今後は、このような全国的に知名度の高い資源だけではなく、各地域に存在するさまざまな地域資源の見直しと掘り起こすことによって、リピーターを増やし、新たな観光スポットを体感してもらう取り組みの強化を図るため、例えば、一つのアイデアとして、来年度、企画県民部で新たな交流促進事業として導入予定の県民の県政や地域活動にポイントを付与する「ひょうごポイント」のノウハウを参考に、観光施設・観光スポットなどの連携の中で、観光を重ねることによって、観光客に何らかのメリットを付加するという仕組みも検討してはどうかと考えます。
また、国際観光に目を向けると、訪日外国人旅行者数は、韓国、台湾、中国など東アジアの国・地域が上位を占め、兵庫県を訪れる外国人旅行者にも同様の傾向が見られます。特に、これまでの団体旅行に加え、昨年7月に訪日個人観光ビザの発給が始まった中国については、目覚ましい経済成長と相まって、今後、観光客の一層の増加が期待されるところです。
本県の外国人誘客数は、全国9位と比較的好位置にありますが、さらに上位を目指すためには、東アジアの国・地域からの誘客に、より一層力を注いでいくことが必要と思われます。
昨年12月には、中国杭州において、兵庫・大阪・京都の3府県知事による観光プロモーションが行われましたが、本県では、これまでにも友好姉妹都市である広東省や海南省を中心に、さまざまな人的交流を行ってきた歴史があり、このような交流を県への誘客へとさらに発展させていくことも非常に重要です。
中国からの誘客を促進するためには、先の12月定例会の一般質問で我が会派の吉本議員からも問題提起をしましたが、中国圏における海外事務所の設置を改めて検討していくなど、海外事務所を単に行革の対象として、廃止・縮小するのではなく、現地に密着した事務所として逆に有効に活用する方策を講じるべきだと考えます。
そこで、厳しい経済・雇用環境と財政難の中、地域資源の見直しや掘り起こしを行い、さらに、観光客が県下各地を周遊できるような観光拠点が連携した誘客の仕組みを積極的に講じるとともに、中国をはじめとする東アジア、さらには各国からの誘客を促進することによって、観光振興と県内経済の活性化、雇用の創出に寄与できる「観光立県ひょうご」への取り組みをより充実・強化すべきだと考えますが、当局の所見をお伺いします。
7 新たな環境施策への取り組みについて
かつての大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済構造は、国民、県民の生活に大きな恩恵や利便性をもたらしたという側面をもつ一方で、膨大な量の廃棄物の発生による埋立地等の最終処分場のオーバーフロー、不適正な処理による環境負荷の増大、天然資源枯渇への懸念、また地球温暖化など、深刻な環境問題を引き起こしてきました。
国土が狭く埋立地の確保が難しくなっている我が国において、家庭や事業所から発生するゴミの約8割が焼却あるいは埋立処理をしている現状があり、焼却炉からの有害な化学物質発生への懸念、衛生問題等、今後の立地は非常に困難な状況にあります。
焼却処理においても、エネルギーの蓄積物でもある製品を一瞬にして灰にしてしまうため、近年「もったいない」と捉えられ、リサイクル、リユースを支持する声も高まっていることもあり、焼却炉による処理・埋立処理自体の見直しを含め、今、多くの自治体にとって、ゴミの減量、リサイクルのための分別は避けて通れない懸案となっています。
このような状況に鑑み、国においては、これまで「循環型社会形成推進基本法」をはじめ、各種リサイクル法の制定を進め、国、自治体挙げて3Rや5R等を通じた持続可能な循環型社会の構築に向けた取り組みを進め、本県でも、「兵庫県廃棄物処理計画」の推進、廃棄物の一層の排出抑制、資源化・再生利用、さらに、ゼロ・エミッション社会の実現を目指した各種の施策を推進しているところです。
そうした中で、近年、さらに進んだ施策としてゴミを焼却せず、環境負荷を減らしながら堆肥化するなどの方法によって、燃やすゴミをゼロにする、すなわちゴミの発生回避を目的として、エネルギー消費が少なく、環境負荷の少ない自然代謝を最大限に活用した社会を目指すとともに、そもそも「ゴミになる物を作らない」「使わない」あるいはリサイクル、リユースがしやすい設計も視野に入れた「ゼロ・ウェイスト」という、これまでのゴミ政策を大きく転換する考え方が注目されています。
この「ゼロ・ウェイスト」は、イギリスの産業経済学者マレーが提唱した概念で、「無駄」「浪費」「ゴミ」がゼロであるということを意味しています。
海外では、1996年にオーストラリアのキャンベラ市が、焼却ゴミや埋め立てゴミをゼロにするため、目標年度を決めて埋立場を減らしたり、再資源化率を高めるなどの具体的な施策を推進するとともに、「ゼロ・ウェイスト」宣言を採択したのを皮切りに、その宣言を採択する自治体が世界各地に広がっています。
私たち会派が調査したところ、ニュージーランドでは、半数以上の自治体がこの宣言を採択しており、地方自治体のゴミ政策に対する積極的な取り組みや要求が環境省を動かし、国のゴミ政策にもゼロ・ウェイストを取り入れる原動力になり、生ゴミの堆肥化によりゴミの減量に成功したり、その関連施策で新たな雇用を生み出すことができ、さらにゴミの減量化によって埋立地の建設が凍結され、また焼却炉も不要になり予算化もしなくなったという財政的にも大きな成果が現れています。
一方、我が国の廃棄物処理方法は、前述したように安全な処理、減容化処理として焼却が広く普及しており、ダイオキシン類などの環境保全対策も進んでいることから、焼却を避けるという考え方、必要性については必ずしも十分な賛同が得られていない現状にありますが、2003年には徳島県上勝(かみかつ)町が2020年までに焼却処理・埋め立て処理の全廃を目標に、国内初となる「ゼロ・ウェイスト」宣言と行動宣言を行い、一昨年には福岡県大木町もこの宣言を採択しています。
県では、平成20年12月に「第3次兵庫県環境基本計画」を策定し、各分野の環境施策に取り組んでいるところですが、このような海外や国内の取り組みを参考に、次世代に継承する環境適合型社会の実現に向け、市町と連携し県民を巻き込んで「ゼロ・ウェイスト」の考え方を取り入れた環境施策を推進し、モデル地区の指定をはじめ、その取り組み、アイデアを県下全域に広める施策展開を検討してはどうかと考えますが、当局の所見を伺います。
8 実効ある「ひょうご教育創造プラン」の推進について
改正教育基本法が平成18年に施行され、地方公共団体には、教育の振興のための施策に関する基本的な計画、すなわち教育振興基本計画を定めることが努力義務として規定されました。
この法改正を受け、県では、平成20年8月に検討委員会を設置し、昨年の6月定例会において、今年度から平成25年度までの5年間を計画期間とする「ひょうご教育創造プラン」(兵庫県教育基本計画)が議決されました。
本県における教育の施策を見てみますと、これまで、本県においては、全国に先駆けて、小学校3年生の「環境体験事業」、5年生での「自然学校」、中学2年生での「トライやる・ウィーク」、また高校1年生の地域貢献事業や2年生の就業体験事業など、児童生徒の発達段階に応じた体系的な体験活動の推進、ADHD等の児童が在籍する小学校へのスクールアシスタントの配置、35人学級編制の小学校4年生までの拡大、小学校5・6年生を対象とした「兵庫型教科担任制」、さらには、震災の教訓を生かした生きる力を育む教育の推進や、個性や能力を伸ばす教育の推進に力を注ぎ、全国に誇れる教育施策を鋭意実行してこられたことは大いに評価されるところです。
一方で、教育施策において、学力問題、特別支援教育や県立高等学校教育改革等々、喫緊の課題も山積しています。
さらに、教育現場においては、近年、モンスター・ペアレントと呼ばれる、度を超えた苦情や要求を寄せる保護者の問題が顕著になっています。来年度、小・中学校に続き、高校にも、教育関係OBや弁護士、精神科医らによる「高等学校問題解決サポートチーム」が発足し、教職員が教育に専念できる体制づくり、また学校側の対応の瑕疵も含め、課題の早期解決や教育現場の信頼を得る取り組みが充実、拡大されます。
教職員に関しても、県教育委員会の調査では、平成20年度に病気のため休職した本県の公立学校の教職員は202人で、このうち精神疾患による休職者は94人と過去最多を占めるという憂慮すべき結果が出ています。さらに、危機的な財政状況を反映し、新行革プランでは、財政面からの県単独教職員、事務局職員の定員削減や、全国的にも評価の高い事業の予算上の見直しが行われるなど、教育を取り巻く環境はかつてないほど厳しい状況にあります。
私たちの会派では、兵庫の教育をより前進させるため、「ひょうご教育創造プラン」の策定と実施に当たっては、前述した課題に加え、教職員が子どもと向き合う環境をつくり子どもを中心に据えた教育を実現するための実効ある施策、さらに、教え込むのではなく、子どもの心を大切にした教え育む教育の実践等、繰り返しその充実と実効ある施策展開を求めてきたところです。
今定例会に「ひょうご教育創造プラン」策定後、初めてとなる予算が提案されました。そこで、兵庫の教育をより前進させるために、5年間の「ひょうご教育創造プラン」を実施するに当たり、前述したような教育を巡るさまざまな課題をどのように捉え、また、教育施策を実効あるものとするために、どこに重点をおいて取り組もうとしておられるのか、教育長の所見をお伺いします。
藤井訓博
(北区)
一般質問
1.県立高校の次世代リーダー育成特色校の創設について
2.診療報酬改定が県立病院の経営に与える影響と評価について
3.姫路地域への救命救急センターの整備について
4.重症心身障害児(者)短期入所設置支援モデル事業について
5.県公社等の外郭団体の委託と再委託について
6.県財政について
質問全文
第304回定例会(2月)一般質問
2010年2月24日(水)
1 県立高校の次世代リーダー育成特色校の創設について
県立高校の次世代リーダー育成特色校の創設について井戸知事に提言させていただきたいと思います。知事が選挙前に出された「私の政策」という公約集の中にも、「授業の充実による学力の向上をめざすことや単位制高校の拡充、複数志願選抜、人口減少や帰国子女向けの中高一貫教育等」の取り組みに触れられています。近年、ほかの自治体の取り組みでも公立高校の改革が注目されています。そうした取り組みの一つが、東京都の都立高校改革であります。
「都立復権」という言葉でよく知られていますが、その中でも特に話題となったのが「都立日比谷高校」の復活です。日比谷高校といえば、明治11年に旧制東京府第一中として創立された、130年を超える歴史のある名門で、東大合格者が多かったことでも有名ですが、昭和30年代は毎年100人を超え、 ピークの39年には193人と断トツの全国1位でした。ちなみにその193人の1人がそこにおられる井戸敏三知事であります。
しかし、井戸知事が卒業してから3年後、昭和42年に都立高校に転機が訪れます。都立高の生徒の学力が平均化するように、生徒を振り分ける「学校群制度」という制度が導入され、以降、日比谷は長い低迷期に入ります。東大合格者上位校から姿を消し、平成5年には何と1人にまで落ち込み、名門解体とも言われました。
同じころ兵庫県でも高校入試改革が行われました。昭和43年、試験よりも「内申書」を重視する入試制度の導入、広域人事等の施策です。「大正から昭和にかけての上級学校への進学状況は全国有数で」、東京の日比谷高校・旧制東京府立一中と並び称されていたのが本県の旧制神戸一中、現在の県立神戸高校ですが、同校の「110周年記念誌」によりますと、「昭和53(1978)年度末、県教委から広域人事計画が実施され、現場に混乱がもたらされた」。さらに翌年、「異動は一層の厳しさを増し、職員組織や教育計画に大きな影響を及ぼし始めた。56~58年の3年間に延べ29人が転退職し40%強が3年間に代わった。伝統の継承・発展に大きな困難を生じることになった。結果として、私学の人気が高まるという皮肉な結果になったと言います。
こうした流れは全国的なものでありましたが、その後、少しずつ緩和されていきます。そして、再び大きな転機が訪れるのが、平成11年に就任した東京都の石原慎太郎知事による都立高校の改革でした。その最大の特徴は 「進学指導重点校」制度の導入でありますが、日比谷高校は平成13年に進学指導重点校の指定を受けると授業時間の増加、放課後や土曜の補習、カリキュラムの見直しのほか、数値目標の設定と教職員による目標の共有化により、進学実績の向上をはかるということを明確に打ち出しました。また、都教育委員会も、熱意ある教員や進学指導に実績のある教員を同校に配置して支援したと言います。
今、日比谷高校の公式ホームページに校長名の「学校経営計画」が公表されていますが、まず、「目指す学校像」として「二十一世紀を逞しく切り拓くリーダーを育てる」ことをあげ、さらに「『進学指導重点校』として、意欲と活力に満ち、使命感のある教職員の一致協力した学校運営に努め、都立高校を代表する骨太で重厚な進学校としての充実を図る」と書かれています。次世代のリーダーを育てるため、進学環境を整えるという特色の都立高校になることを宣言しておられるのです。
また、この計画の中には、進学目標について「各学年の生徒数320人全体の指標として、目安とする数値」を掲げており、例えば、難関国立大学及び国公立医学部医学科35人以上、難関3私立大学190人以上などとなっています。教職員、都教委など様々な関係者の努力もあって、私学の中高一貫校の進学実績が拡大する中でも、日比谷高校の東大合格者は、平成20年に13人、21年に16人と平成5年には1人にまで落ち込んだ状況から回復してきています。
一方、本県はどうでしょうか。昨年の東大合格者でみてみると、私立高校が優位にあり、灘の103人以下、甲陽学院20人、白陵19人をはじめ私学合計155人。県立高校は、長田の9人、神戸5人、加古川東3人など、県立高校合計で26人です。近年この傾向に大きな変化はありません。
それでは東京以外の他府県の公立高校はどうなのでしょうか。昨年の東大入試の全国の都道府県立高校の上位をみると、トップの愛知県立岡崎高校は42人、埼玉県立浦和高校が36人、栃木県立宇都宮高校が27人、千葉県立千葉高校が27人。今挙げた高校は1校だけで兵庫の県立全143高校の合格者26人よりも多いのです。
このうち浦和高校の公式HPには、自らを「埼玉県で最も歴史ある県下随一の進学校」とし、「社会で活躍できる人材の育成」と「高校生として当面の目標は、人生の重要なステップである大学受験になります。浦和高校では「第一志望に現役で合格する」ことを目標に、「授業で勝負」を基本に様々な学習・進路指導プログラムに取り組んでいます。」と記載されています。
関東だけではありません。大阪府でも平成23年度から北野高校など府立高校10校が進学指導特色校としてスタートします。指定校に進学指導の専門学科を新設し、学区制を見直した上で、定員の半数は学区を越えて生徒を集める計画で、これまで府立高校から約1000人だった難関国立大等への合格者の6割増を目指すということです。
平成19年の兵庫県教育委員会「県立高等学校 長期構想検討委員会」報告の中に、「普通科の特色化をさらに進めること」も課題として掲げられていました。本県には、普通科単位制、理数科、環境防災科のほか、農業、工業、商業といった職業科の特色校はありましたが、次世代リーダーの育成や進学指導を特色とする学校はありません。私は、こうした取り組みをエリート主義などと否定的にとらえるのではなく、普通科の特色のひとつとして取り組むべきだと思うのであります。
わが国には資源がありません。戦後の荒廃から世界第2位の経済大国として繁栄してこられたのは先人たちの弛まぬ努力と国民の勤勉性の賜です。いま、中国をはじめとする新興国の台頭がすぐそこまで迫っています。優秀な人材を育てることをためらうべきではありません。高校無償化もあり、県立高校の人気が少し高まるでしょう。この国を背負って立つんだというぐらいの人材を育てようという学校、そのために進学指導にもしっかり対応する、経済的に恵まれなくとも、塾や予備校に行かなくても、あの高校に入ればしっかりした授業が受けられる、というぐらいの県立高校をつくってほしいと思います。
東京、大阪ともに知事による政治主導の取り組みであります。その背景に、教育行政の最終責任はやはり選挙で選ばれた政治家が負うという時代を迎えつつあるとも言えます。他府県に負けない県立高校、次世代リーダー育成校の創設について、教育長には申し訳ありませんが、政治家 井戸知事の考えをお伺いします。
2 診療報酬改定が県立病院の経営に与える影響と評価について
政権交代の影響を色濃く受けた平成22年度からの診療報酬の改定ございますが、診療報酬の改定により10年振りに医療費がネットでプラス改定されました。その中でも、重点課題として「救急、産科、小児、外科等の医療の再建」「病院勤務医の負担軽減」が掲げられました。県立病院の収益にも影響があると見込まれますが、入院は一定上がるものの、薬価などは下がるわけであります。収支に与える金額的な影響はどうなのか。また、病院事業管理者という病院経営者の観点から、今回の診療報酬改定をどう評価するか、あわせてお伺いします。
3 姫路地域への救命救急センターの整備について
これまで、姫路地域への地域救命救急センターの設置と姫路循環器病センターの充実を求めてきました。しかし、先週2月16日の神戸新聞に、平成21年の姫路市の救急出動件数が過去最高の2万2827件を記録したという報道がありました。また、そのうち病院から5回以上搬送を断られた例が529件、中には18の病院に断られ、病院到着まで約70分かかった例もあったということです。
平成19年12月に姫路市で救急搬送された方が、多くの病院に受け入れられず、市外の病院に搬送される途中で亡くなられるという、大変痛ましい事故がありましたが、今回の報道をみると、状況はあまり変わっていないと感じます。
姫路市消防局の救急担当者からは、昨年まで姫路地域では対応する病院がなかった多発外傷等に対応できる県立加古川医療センターがオープンし少し安心しているものの、本来の3次救急である「姫路循環器病センター」が麻酔科医の不足で脳神経疾患の患者への対応力が低下したままであることから、充実を要望されました。
私は、改めて、地域救命救急センターの早期設置等を求めたいと思いますが、施設整備にあたっては財政措置や市立病院のない自治体の財政負担を含め解決すべき課題も多くあります。この際、知事自ら動く時期に来たのではないでしょうか。整備への決意を聞かせていただきたいと思います。
4 重症心身障害児(者)短期入所設置支援モデル事業について
重症心身障害児(者)とは、重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複し、かつ18歳未満にその状態となった方のことでありますが、県内の重症心身障害児(者)は1,500から1,600人とされ、人工呼吸器の使用や気管切開など24時間の介護や医療行為が必要な方も多いということです。ただ、全員の方が施設に入っているのではなく、症状が重くても在宅のまま保護者の方と一緒に生活している方も700から800人おられます。
特に、在宅の場合、保護者の病気や用事などの理由で家庭での介護が一時的に困難になった場合、どこかの施設で受け入れてもらうショートステイと呼ばれる短期入所サービスが必要となってきますが、入所可能な重症心身障害児施設が県内では神戸・阪神・北播磨にしかありません。地域的な偏りが著しく、実際に姫路などで子供さんを抱える保護者の方の集まりに参加させていただいたときにも、中播磨・西播磨圏域に重症心身障害児施設の整備を求める切実な要望をいただきました。
しかし、県内既存施設の現在の入所状況から、新たな施設整備は難しく、新たな対策が求められていましたが、新年度に予算化されたのが、「重症心身障害児(者)短期入所設置支援モデル事業」であります。これは、短期入所施設のない中播磨など6圏域で、介護老人保健施設、老健を短期入所モデル施設に位置づけ、老健施設の看護師や介護士ら職員に対する研修を実施する事業ということです。
障がいをもつ子どもをかかえると、長い年月の間に心身ともに疲れはてて余裕がなくなり、子どもとうまく接することが出来なくなってしまうというときもあり、たまに友達と息抜きをしたり旅行に行ったりして心身をリフレッシュすることなどがレスバイト・ケアという社会的援助であり、自宅から近いところでそうした施設を確保することが非常に大切です。
これまで、短期入所について保護者の方からどんな声が寄せられていたのか、また、どのような基準で施設を指定するのか。医療行為が必要な方も多いということで、老健の受け入れ体制についても十分な配慮が必要だと思いますが、実際に預けられるようになる時期も含め、ご答弁をいただきたいと思います。
5 県公社等の外郭団体の委託と再委託について
知事は、その選挙公約で「県行政の実施機関の役割を担ってきた公社等外郭団体について、統廃合や経営改善、県の財政支出・人的支援の見直しを進めます」と宣言されております。また、昨年9月に県公社等経営評価委員会から知事宛に提出された報告書でも、土地開発公社の廃止や県道路公社の存廃の検討など多くの外郭団体に厳しい意見が出されました。
また、国においても政権交代で実施された「事業仕分け」の第2弾が予算成立後に予定されていますが、独立行政法人や公益法人で国からの委託事業をそのまま別の団体等に再委託する「中抜き」と呼ばれる構造等について検証されることになると聞いております。中抜きや丸投げをしているのなら、最初から県が最終的な委託先である民間等に委託すれば、中間的なコストがかからなくなり、委託費用が削減されるわけです。
そこで、お伺いしますが、県の密接な公社等35団体が県から受諾した事業の総額とその随意契約の比率、別の団体等に再委託した金額、再委託率を平成20年度決算で教えてください。
6 県財政について
本県財政の特徴は、基金が少なく、その積み立て不足が実質公債費比率を上昇させ、一方の県債残高は多く、これは将来負担比率を高くするということは何度も指摘してきました。県債の多くは金融機関が引き受けており、当然金利がかかっています。県債残高をみてみますと、22年度末見込で4兆1226億円とされていますが、これは一般会計の金額であります。本県の場合、他会計の資金を県債管理基金に集約し、県債償還等の資金を一体管理していることもあり、一般会計だけでなく特別会計と公営企業会計の全会計をあわせてみておかなければなりません。特別会計5213億円、公営企業会計2770億を含む県債総残高は4兆9209億円です。
国では、毎年国債発行計画が公表され、国債残高のほか、その利払い費がいくらになるのかということが示され、大きく報道されるなど、その財政状況が国民に示されるのに対し、本県では県債残高こそホームページ等でもわかるものの、その利子がいくらになっているのかは中々わかりません。そこでお伺いします。県債残高4兆9209億円にかかる年間の支払い利子はいくらなのか。又、一方の貯金に当たる県債管理基金など全基金残高2381億円にかかる受取り利子はいくらなのか。お答え下さい。
また、昨年の決算特別委員会で県債管理基金の中に現金化が難しい美術品などが一部含まれていることを指摘しました。そうした美術品の一部の現金化について、1億9660万円で一般会計に買い戻す補正予算も組まれていますが、この財源としても新たに県債を発行することとなっています。いつでも現金化できるので実質公債費比率の算定に美術品が入っていても問題がないとするなら、現金(一般財源)で買い戻すのが矜持、見識ではないでしょうか。既に基金で所有している美術品を買うために起債・借金する。財政規律に対する姿勢として疑問を感じます。これは指摘にとどめておきます。
また、補正予算の提案理由説明の中に、「土地開発公社の資金を受託し、県基金として活用する」という話がありました。調べますと、土地開発公社が「県立尼崎の森中央緑地用地」の買い戻しで得た資金108億円のうち100億円を県に預け、県はそれを県債管理基金に積み立てるということです。
「受託」という表現は曖昧でわかりにくいのですが、公社が県に運用を任せるということです。県の基金管理特別会計の予算をみますと、歳入に「兵庫県土地開発公社運用受託金」として100億円、歳出に、県債管理基金積立金として100億円が記載されています。過去に他の公社の保有する余裕資金等を県に集約していますが、今回過去の資金集約や先に指摘した美術品等とも違うのは、これは県のお金でなく、公社にいずれ返済しなければならないお金ということです。
土地開発公社が放棄すれば別ですが、公社は20年度末で有利子負債が900億円にものぼる一方、資産については、公有土地754億円など土地こそ多く保有するものの、財政健全化法の「将来負担比率」の算定にあたっては、県の追加負担見込みが205億円と資本を上回る含み損を抱え、将来債務超過となる可能性が明らかになっています。清算時に追加負担こそあれ、100億円を県が受け取ることはありえないのです。
この100億円が実質公債費比率の算定に含まれてしまうと、数値だけ改善されたように見えますが、県財政の実態は変わらないというのでは、県民に誤解を与えます。少なくとも21年度決算ではそうした数値の算定から除外したほうがいいと思いますので、念のため要望しておきます。
新行革プランの財政フレームでは、22年度見込での県債管理基金について、本来5280億円を積み立てておくべきところ、1699億円とその積立不足率が67.8%に達しています。一方、新たな起債については、起債の利率が低いとはいえ、積極的に県債を発行しています。県債管理基金の積立不足を解消することに消極的なのも、満期一括償還の県債償還にあたっては途中で積み立てておく必要はなく、総務省や地方財政健全化法の考えのように基金を積み立てていると「宝の持ち腐れ」だという発想なのではないかと思います。
起債は現金というリアルマネーを生みますが、一方で起債は利子を払わなければなりませんし、金利が上昇すれば利子も高くなります。また、基金については基本は現金でルールに則って積んでいくただきたい。そうでなければ、将来負担比率の全国ワーストの360.1%ような状態がいつまでも続いていきます。本県の場合、他会計や公社等の資金の相互関係も強く複雑で、将来負担比率がその財政の実態をよくあらわしていると思います。これを放置すれば、間違いなく次世代の負担となり、我々世代の議員がそうした姿勢を唯々諾々と受け入れていくわけにはいきません。最後に、将来負担比率の改善目標についてお伺いします。
竹内英明
(尼崎市)
1.県立大学への環境防災学科の創設について
2.まちづくり施策としての自転車環境整備について
3.刑務所等を出所した高齢者や障害者の社会復帰支援について
4.特別支援学校への5年制高等部の設置について
5.神戸空港を活用した東アジアとの国際交流の拡大について
質問全文
第304回定例会(2月)一般質問
2010年2月25日(木)
1 県立大学への環境防災学科の創設について
今年は、震災15年目の節目の年に当たります。阪神・淡路大震災15周年追悼式典で、ご遺族代表の方が、「崩壊した家の下敷きになり、なすすべもなく目の前で冷たくなっていく息子を今でも忘れられません」「震災で亡くなった方々の分まで、1日1日を大切にして自信を持って生きてきたと言えるよう頑張ります」と述べられました。
また、1・17ひょうご安全の日宣言では「これまで世界中の人達に震災の教訓を知ってもらいたいと発信し続けてきた。災害の教訓を、自分から、家庭から、学校から発信したい。震災の教訓はすべての災害に通じる知恵だから」と謳っています。井戸知事も2010年の年頭の挨拶で「震災を風化させてはならない。震災県としての責務を果たしていきたい」と述べておられます。
私は、35年間、高校・大学の教師経験を通し、社会を豊かにするために、知識を学ぶことは大切なことだと思っています。しかし、それ以上に、命を大切にし、心の豊かさを育むことがもっと大切だと、震災を通じて学んだような気がします。
災いはいつやって来るか分かりません。特に最近は、集中豪雨など予想を超える自然災害が増えています。また、高い発生率で東南海・南海地震が想定されています。兵庫県は、震災県として、環境防災に力を入れるべき責務があると考えます。
その一環として、8年前、兵庫県は、全国に先駆けて県立舞子高校に環境防災学科を創設しました。大変意義があり高く評価しています。
しかし、残念なことに未だに卒業後の出口がない、つまり、動機付けされた生徒が、さらに環境防災を追求し、学問として研究していく場・大学が存在しません。
そこで、県立大学に環境防災学科を創設し、将来、兵庫県の環境防災で活躍する人材を発掘し、同時に全国に環境防災を発信する拠点にしていって欲しいと願っています。また、広く環境防災に対する意識の向上にも大きな影響を及ぼすものと確信します。
私は、4年前から県立大学への環境防災学科の創設を要望してきましたが、未だに実現していません。皆さん、「良いことだ」「大切なことだ」と言ってくれます。しかし、良いことが、なぜ直ぐ実現の方に向かないのでしょうか?高校にあって大学にない、それはおかしな話ではないでしょうか!命を守ることは一番大切なことにもかかわらず、一向に前に進んでいないのが現状です。知事・議会・県民の何人も命を守る備えをすることに対して異論を持つ方はいないと思います。
私立大学と競合する研究分野に力を入れるのではなく、震災県としての役割があるはずです。率先して環境防災を学問として研究する学科を創設することが、公立大学の存在意義にも繋がると確信します。
当面、学科創設は無理だとしても、環境防災コースを直ちに創設し対応すべきだと考えます。そして、これまで私は県会議員として、また大学関係者として、県立大学の責任者に何度もお会いし、環境防災の必要性を訴え、大学側の理解も得てきました。後は県側のトップの判断のみと思っています。
震災15年目の節目に当たる今年、是非、県立大学環境防災コースの創設を実現し、全国に向かってアピールをして戴きたいと熱望するところですが、当局のご所見を伺います。
2 まちづくり施策としての自転車環境整備について
日本の温室効果ガス排出量は、自動車利用など運輸部門からが、全体の約2割を占め、内、半分が家庭や会社が使う自家用車です。工場などの産業部門が、京都議定書の基準年の90年度に比べ2.3%減っていますが、運輸部門は逆に14.6%増え、自家用車は41.6%と大幅に増えています。そこで、自転車大好き人間の私としては、環境の面からも、まちづくりで自転車道の整備を提案したいのです。
デンマークのコペンハーゲンでは、36%が自転車通勤をしています。それだけでも年間8万トンのCO2が削減できるそうですが、さらに、自転車通勤が50%になるよう政策を推し進めています。全ての幹線道には、自転車道を併設、デイポジット制で乗り捨て自由の貸し自転車と自転車ステーションを設け自転車を奨励するなど、いろんな部署で多彩な施策を発案し、実行に移しています。
フランスのパリでは、道路の真ん中に対面通行できる自転車道が整備されています。旅行者も市内を貸し自転車で、美術館・博物館巡りができます。週末の買い物やドライブには車を使うけれど、平日の通勤、通学には自転車を利用する生活が市民に定着しています。95年に8キロだった自転車道が、07年には400キロと大幅に延長。また欧米では、対面通行の道路を一方通行に変え、浮いた車線を自転車道にするという工夫がされています。自治体がそのような環境に配慮した生活を率先して進める政策を打ち出しているのです。我が兵庫県でも井戸知事は「本県は自動車関連企業が多いが、ちょっとだけ転換し、自転車に目を向けるべき」と発言されています。
町なかで、駐車場を探すことや、駐車場から目的地までの移動を考えると、自転車の方が効率的です。ある企業では、自転車通勤はCO2の削減で社会貢献ができ、社員の健康増進にも役立つと言うことで「エコ通勤手当」を新設、自転車通勤を奨励しています。名古屋市では、01年から自転車通勤手当を2倍にしました。その結果、自転車利用者は倍増し、自動車利用者は4割減りました。行政自ら率先して、自転車通勤を奨励している自治体も増えてきました。
自転車は、心肺機能を高め、心身共に健康作りに役立ち、排気ガス・騒音も出さず、環境に優しく、交通渋滞もないので、今、日本でも見直されています。良いことだらけの自転車ですが、一つだけ欠点があります。それは交通事故の心配です。
交通事故を考慮し自転車道の整備を目的として、昭和45年「自転車道整備法」が施行されました。しかし、現実には、車優先社会が続き、自転車道の整備は遅々として進んでいません。道路交通法上では、本来自転車は車道を走るべきとなっていますが、車道には駐車車両も多く走りにくく、自転車の走行場所も主に歩道上に整備されてきたこともあり、自転車と歩行者の事故は、この10年で4.5倍に増えています。
最近、認定された子育て世代に優しい3人乗りの自転車が、随分増えました。しかし、交通事故のことを考えると、町のどこを走るように推奨できるのでしょうか!自転車好きの私が、なかなか他人に勧められないのはそのためです。
このような中、国土交通省では各道路管理者に対して、自転車道の計画的な整備を推進するよう通知し、また都道府県においてモデル地区を指定し、試行的に自転車道の整備を実施しています。本県では、神戸市西須磨地区、尼崎市県道尼崎地区、西宮市国道西宮地区の3地区が指定されています。しかし、この3地区における事業を見ますと、すでに十分な幅員があるなど、自転車道を整備しやすいことを条件に地区選定したのではとの感が否めず、また、まちづくりという重要な視点が抜け落ち、本当のモデル事業にはなっていないのではないかと思います。
そこで、まちづくりの施策の中に自転車利用のための環境整備を明確に位置付けて戴きたいと思います。
予算が厳しい中ではありますが、先を見越し大局的に進めることが行政の務めだと思います。都市部など相当な自転車通行が見込まれる地区において、利用者の視点から路線を系統的に設定し、有機的な社会実験を実施すべきと考えます。
例えば、自転車生活圏での通勤・通学・ショッピングなど、都市機能の集約として、自転車で生活を支える地域づくりの観点から、自転車を利用しやすい道路ネットワークや駐輪場をハード面から整備する。さらに、自転車道や駐輪場を都市計画へ位置付けた施策の推進、そして環境・健康に良い自転車推奨の啓発を含めたソフト面からも、単に道路行政という観点ではなく、まちづくりの観点で、事業展開を進めて行くべきだと考えますが、当局のご所見を伺います。
3 刑務所等を出所した高齢者や障害者の社会復帰支援について
刑務所や少年院などの矯正施設入所者の中には、高齢であることや障害を持つことにより自立した生活を送ることが困難である人がいます。矯正施設を出所した後、必要な福祉的支援が受けられず、帰住先や就職先を確保できないまま、再び罪を犯し、刑務所に戻ってくる人も多くいることが指摘されています。
現在の福祉政策は、「自立」を基本理念に推し進められていますが、特に高齢者や障害者の中には、十分な支援が受けられず、結局のところ社会で孤立し、排除されてしまっている現実があります。そして、その排除の先が刑務所だったというケースも多く、こう言った問題は矯正や更正保護行政というよりも、むしろ福祉行政の課題ではないかと考えます。
我が国の刑務所の現状を見ますと、犯罪者の高齢化が顕著です。刑務所に収容される高齢者は年々増加し、平成16年には全受刑者の約1割が60歳以上の人たちでした。また再犯率も42.9%と非常に高く、平成19年の犯罪白書では、犯罪歴のある高齢者の約4分の3が2年以内に再び罪を犯していました。本県でも、刑法犯検挙者のうち高齢者が平成12年は1,089人でしたが、平成21年では3,309人にも上り、10年で3倍に増加しています。
また、平成19年の法務省の調査によりますと、全国15の比較的大規模な刑務所に収容されている知的障害者または知的障害と疑われる受刑者410人中、療育手帳を所持している人は、わずか26人に過ぎず、事件を起こした際に「無職」だった人の割合は、80.7%と非常に高いものでした。さらに「犯罪性の進んだ者を収容している」11の刑務所では、入所回数が5回以上の受刑者の比率は、全体の54.4%にも達しています。これらの調査結果は、出所しても目の前には大きな塀が立ちはだかっていることを証明するものであります。
私は永らく保護司を努めており、この問題については以前から大いに関心を持っています。現在の出所者への支援については、必ずしも十分とは言えない状況であると実感しています。仮出所者に対しては、保護観察所の保護観察を受け、社会復帰に向けた指導がありますが、満期出所の場合、生活基盤がないままに社会に復帰しなければならない人が少なくありません。
このような状況に対して、法務省と厚生労働省では、出所後の就職を支援する組織として、保護観察所や労働局、都道府県、各経済団体や企業、協力雇用主、更生保護関係団体などで構成する「刑務所出所者等就労支援推進協議会」を全都道府県に設置し、出所者の就職を受け入れる企業の輪を広げる取り組みを始めました。
また「地域生活定着支援事業」が創設され、特に高齢又は障害者で福祉的な支援を必要とする出所者には、出所後直ちに障害者手帳を発給し、社会福祉施設への入所などの福祉サービス等につなげるための「地域生活定着支援センター」を各都道府県に整備し、社会復帰の支援を推進することとしています。
しかし、残念ながら現実には、同センターを設置した都道府県は、現在わずか11県しかありません。そのため設置県では、未設置県との連携が取れないため、昨年1月に開設した長崎県のセンターなどでは、他県での居住を希望する受刑者の受け入れ先探しのため、職員が出張を繰り返しているとのことです。
犯罪者の矯正は国の所管ですが、服役を終えて出所した高齢者や障害者の生活を支えるのは、地方行政、地域福祉の役割です。そのために、全都道府県が協調してセンターを設置し、それぞれの市町と密接な連携を図っていく必要があります。さらに、生活を安定させ、再犯を防ぐためには、就労が不可欠であることから、ハローワークや経済界との連携も重要な要素になります。
そのことが、再犯率を抑えることになり、安全・安心な社会に繋がると確信しています。犯罪を取り締まることは、もちろん大切なことですが、犯罪を起こさせない社会づくりの方が、もっと大切なことだと思いますが、皆さんはどうお考えですか?
本県では、来年度に地域生活定着支援センターを設置することとし、1,700万円の予算を計上しています。この問題に積極的に取り組んで行こうという意思表示として大いに評価し、期待をするところですが、高齢又は障害を有する出所者の実態の十分な把握、また他府県や関係機関・団体との密接な連携なくしては、このセンターの機能は十分発揮し得ないと考えます。
そこで、まず高齢又は障害を有する出所者の実態について、県としてどのように認識しておられるのか、また、センターの運営にあたり、特に関係機関・団体との役割分担や連携について、どのような方針で進めていかれるのか、知事のご所見をお伺いします。
4 特別支援学校への5年制高等部の設置について
日本では、教育は大切だと多くの方々の共通認識だと思います。しかし、現実は、日本の教育費は対GDPの3.3%で、28カ国の先進国でトルコに次いでワースト2位にまで落ちてしまっています。
しかし、政権が変わり、平成22年度の文科省予算は、対前年度5.9%増、文教予算は8.1%増で過去30年の最高の伸びです。国も厳しい予算の中で、教育費の大幅な増は、民主党政権の教育に対する姿勢が現れていると言えます。
本県においても、厳しい財政状況の中ではありますが、私は永年の教育現場での経験を通じて、どうしても教育予算を増やしていくべきだと痛感しています。今回は、その中でも特に特別支援教育に焦点を当ててみたいと思います。
私が、高校の教師をしていた時、身体障害者が入学して来ました。彼は教室のドアーさえ開けるのが困難でした。その彼が、教室に入ろうとした時、ゴン太な生徒がやって来て、教室に入る訳もなくドアーを開けて、そのまま通り過ぎて行きました。一言も発することなく、彼のためにドアーを開けてくれたのです。これは、ほんの一例で、間違いなく障害者のいるクラスは優しいクラスになっていました。学校を休みがちな生徒がいれば電話をしたり、家に誘いに行く生徒が現れ、いろんな意味で逆に生徒から私達教師が学ぶことが多々ありました。障害者に優しいまちは、万人にとって住み良いまちになることは間違いないと思います。このことから、経済的より精神的な豊かさが優ると実感しました。
先日、ある県立特別支援学校を視察しました。高等部への進学生徒の増加に伴い、教室が足らず、特別教室どころか倉庫まで改築して教室として使っていました。運動場も十分な広さはありません。トイレはカーテンで仕切るという所もあります。
このような現状に対して、県では特別支援学校を新設するなど、その努力は伺えますが、新旧学校の設備に、余りにも大きなギャップを感じざるを得ません。
さて皆さん、障害のある子供を持つ親が、一番心配なのは何だと思われますか?
自立できない障害者を抱えた親は、「私が死んだら、この子はどうなるか!」これが最大の悩みです。だから高等部を希望する生徒が増えているのです。けっして障害者が増えている訳ではなく、少しでも自立できる力を付けさせてやりたいという親心の現れであり、今の日本の世の中では当然のことだと思います。
健常者には、高等専門学校や、専修学校の専門課程などが、県内に50校以上もあります。先日、障害者を抱える親から、「せめて障害者にも支援学校に5年制の高等部が県内に1校ぐらいはあっても良いのではないですか」と言われました。きわめて遠慮した要望だと思います。
確かに教育関係者の中にも、「専攻科への進学は単なる社会参加の先延ばしではないか」といった意見もありますが、私が視察した他県の特別支援学校では「3年制の高等部卒業生に比べて、もう2カ年専攻科で学んだ生徒には、大きな成長が見られ、就職定着でも良い結果が出ている」とのことでした。高等部を社会参加への移行期教育として捉え、時間をかけて体系的に障害児の発達を支援する5年制高等部の教育的意義は大きいものと考えます。
今、全国には、5年制以上の高等部を持つ支援学校が9校あります。是非、兵庫県にも作って戴きたいと思うのですが、これに対する当局のご所見を伺います。
5 神戸空港を活用した東アジアとの国際交流の拡大について
ビルが林立するすぐ頭上を、飛行機が離着陸するような住宅密集地の空港は、私は欠陥空港だと思っています。事故が起これば大惨事になるということで、韓国・金浦空港の国際線はインチョン空港に、香港も海上に移転しました。大阪空港も、廃港を前提で関空ができた経緯があります。大阪空港は、今でも環境対策費として、毎年約50億円が投入されています。騒音問題で、夜間9時以降の離着陸ができません。
それに対して、神戸空港は海上空港で、現在夜間10時までとなっていますが、24時間空港としての利用が可能です。私はポートアイランドに住んでいますが、騒音は全く気になりません。都市部に近く、兵庫県の中心地・三宮からポートライナーで18分、関西国際空港と29分で結ぶ海上ベイ・シャトルもあり、大変アクセスも良く便利な空港です。ポーアイの医療産業関連施設の集積やスーパー中枢港湾を直ぐ近くに抱え、24時間の国際航空貨物の拠点、あるいは医療空港としても成り得る大変便利な空港です。
神戸市は、ポーアイ2期の先端医療に大変な力を入れています。お騒がせをしたスパコンも復活し、先端医療とドッキングすれば、最先端の心臓手術・臓器移植などが可能になり、世界に誇る有能な医療産業都市が実現します。現在は、アジアの最先端の医療はシンガポールで行っていますが、これも神戸に持って来ることが可能になり、先端医療産業都市としての発展が予測されます。
また、医療機関や大学と連携した高度医療で、外来でのがん治療も可能となります。県立大学大学院高度計算科学研究科や甲南大学先端生命工学研究所の併設、製薬会社の集積、さらには理化学研究所や医薬基盤が整った先端医療センター、移植・再生医療や先端医療機器の開発を行うKIFMEC構想などが整いました。産学官連携した医療産業都市の規模の拡大は、アジアの交流拠点にもなります。中近東の王族が心臓手術にやってくる米国ミネソタ州のメイヨークリニックやマサチューセッツ州の大学・研究機関との協力体制が大いに参考になると思います。
東アジアとの交流拠点は、昔から関東ではなく、関西です。兵庫県では、平成20年度の観光客入込数は過去最高で、対前年比243万人の増。観光消費による経済波及効果は1兆8316億円、雇用創出効果として就業者数約20万人という試算が出ています。
我が会派の吉本議員が、前回の本会議の一般質問で取り上げたように、これからは、アジアの時代です。その牽引車に日本・中国がなるべきです。そのような時代に、行財政改革を理由にアジアの玄関口となる兵庫県香港事務所を閉鎖しましたが、積極的にアジアとの交流を進めるためにも、今こそ中国エリアに海外事務所を開設すべきです。アジアからの誘客にも力を入れ、兵庫県の発展に繋げるべきだと考えます。また、神戸空港が医療空港として利用されれば、アジアからの患者だけではなく、その家族の付き添いの来県も考えられます。健康診断に観光ツアーを組み合わせたパッケージ商品の開発も可能です。
3空港一元管理を唱えている方々がおられますが、そのことで需要が増える訳ではありません。必要なことは、国が設けた発着回数や空域の規制を撤廃し、飛行経路を一元化することであり、一体運営だと思います。神戸空港の利便性を最大限活かすことです。神戸空港が単なる地方空港の位置付けでは、じり貧だと思っています。
そこで、神戸空港に係る運用制限の緩和・撤廃を、県・市協調して国に働きかけることは勿論必要なことですが、現在、国際便の利用が認められているビジネスジェットやオウンユースチャーター便の利用拡大を図り、東アジアとの交流を拡大していくべきと考えます。アジアから24時間対応可能な医療空港としての神戸空港を誕生させることができれば、神戸市全体の活性化に繋がるものと確信します。
神戸が元気を取り戻すことは、兵庫県の発展にも繋がります。東アジア共同体の一員として、兵庫県が果たすべき役割があり、東アジア、そして世界への窓口としての神戸空港を活用し、東アジアとの国際交流をより一層拡大していくべきだと考えますが、当局のご所見を伺います。
小池ひろのり
(中央区)
1.人口減少社会に対応したビジョンづくりについて
2.指定管理者制度について
3.県立山の学校の運営について
4.農業への新規参入について
5.ヤード対策について
6.警察官の技能向上について
7.警察施設の充実について
質問全文
第304回定例会(2月)一般質問
2010年2月26日(金)
1 人口減少社会に対応したビジョンづくりについて
我が国は今、人口減少時代に突入し、少子高齢化、労働力不足をはじめとする大きな社会問題に直面しており、その対応が急がれています。
本県でも人口は近いうちに減少局面に転じるとされていますが、先日、知事は提案説明の中で、「今、変化の時代と言われています。その変化の兆しをしっかりと捉え、進むべき道筋を見定めなければなりません。」と述べられています。
「人口減少時代をどう生きる2020年の日本人」と題した、経済学者で政策研究大学院大学教授の松谷明彦さんの著書では、人口減少が日本人の働き方、住まい方、過ごし方に何が起きるのか、経済の量的、質的な変化の下でどのような経済社会システムが築かれるべきなのかが解説されています。
また、今年1月に、松谷教授の講演を聞く機会がありましたが、その講演では、人口減少の大きな原因として、高齢者の急増による死亡者数の増加、出生者数の減少が挙げられるが、出生者数が減少する要因は、既婚者の出生者数は変わらない中で、子どもを生む女性の数、すなわち出産年齢の女性人口が減っていることにあり、今のままでは人口減少に歯止めがかからないのではないかと述べています。
少子対策では、結婚し子供を生み育てる環境整備が重要であり、一方、高齢者対策では高齢化に対応した社会経済システムの構築が必要と思われますが、先進国の高齢化率を比較すると、現在、日本は21%、アメリカ13%、イギリス16%、フランス16%、ドイツ20%となっており、2050年の推計では各国が概ね20%台から30%程度と予測される一方、日本は40%程度に達すると予測されています。
松谷教授は、アメリカ・シカゴでは、一人当たりのコストを下げるために高齢者を都市に集めて施策の効率化を図っているという事例を紹介しています。 高齢化に対応していくためには、都市と農村の連携を図ると同時に、都市でできること、農村でできることを機能分担し、グローバルに取り組んでいく、新たな社会システムが求められていると述べておられます。1つには、高齢者の生活コストを下げること、具体的には、住宅、公共賃貸住宅を増やすなどによって、社会的なストックを充実する。2つには、スクエアー(空間)、すなわち好きなように過ごせる多目的で、安価に活動できる施設があることなど、お金のかからない生き方が可能な街をつくることによって、スローライフな気持ちに余裕が持てる社会をつくることが必要であると述べておられます。
兵庫は日本の縮図と言われますが、都市部の高齢化、郡部の限界集落など、人口減少と少子高齢化を見据えたさまざまな視点から地域づくりを考えていかなければならないと思います。
そこで、さまざまな時代潮流の変化や人口減少社会のもとで、元気で豊かな地域社会を目指していくために、どのような視点で今後の全県ビジョン、地域ビジョンづくりに取り組んでいくのか、当局のご所見をお伺いいたします。
2 指定管理者制度について
平成15年の地方自治法改正によって、公の施設のより効率的・効果的な管理を行うため、その管理に民間の能力を活用するとともに、住民サービスの向上などを図る仕組みとして、指定管理者制度がスタートしました。
我が会派では、昨年12月に、「全面委託で地域に開かれた博物館を」コンセプトとする長崎歴史文化博物館を訪問し、同博物館の民間指定管理者である(株)乃村工藝社から、施設の管理運営の現状や指定管理者制度の課題について、現地調査を行いました。
(株)乃村工藝社は、平成17年4月から22年3月までの5年間、指定管理者となっていますが、指定期間に関しては、当初から議論があり、施設によっては3年では事業実施計画を推進することが難しいとの意見や、9年という案も出たものの、それでは長すぎるとの意見が出されたために5年となったようですが、再公募に当たっては、5年から6年への期間延長が決定したと伺っています。
このような文教施設、文化施設などの指定管理者になった民間業者は試行錯誤しながら運営に臨み、集客、増収等に大変な努力をしています。しかし、企画から実施、開催時期など時間を掛けて検討し、長期的な視点で計画を実施しているために、1度や2度のイベント等の開催ではなかなか結果を出せないうえに、評価もしにくいのが現状です。
指定管理者の公募については、できるだけ多くの応募が望まれ、より良い運営に取り組むことが可能な民間事業者の指定を目指していると思われますが、指定管理者となるためには、実績の積み上げはもちろん、現状維持にとどまらないより質の高い管理運営能力が求められており、当然、可もなく不可もなくではなかなか指定されるのは困難な状況です。
また、赤字経営で事業者が辞めたい時でも直ぐに代わりが見つからず、辞めることができないという現実もあると思われます。
今回の長崎県の調査では、民間の指定管理者から、「目先の利益を優先するのではなく確実な企画とたゆまぬ努力を続け、当初の赤字体質から利益体質に転換する」と力強い言葉を聞きました。
一方、本県では、指定管理者制度導入以来、順次、公募の実施によって段階的に対象施設を拡大してきましたが、例えば、明石西公園の指定管理者には、平成17年度の第1回目の公募では民間事業者が選定され、民間活力が導入されることになりました。しかし、平成20年度に行われた第2回目の公募においては、県の外郭団体である(財)兵庫県園芸・公園協会が選定され、その民間事業者も、再公募に意欲を持って臨み最終審査まで残ったと聞いていますが、結局、選定されませんでした。
民間事業者と園芸・公園協会の指定管理者としての実績がどう評価されたのか、詳細はわかりませんが、公表されたデータを見る限り、園芸・公園協会は、運営経費削減に対する取り組みが他の応募者より優れていたことが選定された主な理由と推察されます。県と密接な関係のある外郭団体が取り組むとしても、効率的、効果的に運営していただくことを望みます。
本県では、特定の者を指定する施設が、現在48施設あり、また「指定管理者の公募に関するガイドライン」によって、指定期間を原則3年としていますが、平成21年に総務省が公表した調査でも比較的長期の指定期間を設定している事例も少なくありません。
そこで、指定管理者制度の趣旨を踏まえた公募実施施設のさらなる拡大とともに、長期の期間指定が可能となるような施設の性格や種別に応じた指定期間の弾力的な設定など、指定管理者制度の考え方について、当局の所見を伺います。。
3 県立山の学校の運営について
県立山の学校の平成12年度から21年度までの10年間について、入学者数の推移を見てみますと、年度によって多少のバラツキはあるものの、いずれの年度も定員の20名を満たしておりません。
このような現状に鑑みれば、山の学校の運営が今のままでいいのか、何らかの見直しを行わなければならないのではないかと感じます。
山の学校は、義務教育修了以上の15歳から20歳までの男子で県内在住者を対象としており、共同生活の体験を通じ、生き方や進路に悩む若者の自立を助ける活動を行っていますが、「自分の生き方を見つけたい」というニーズや、学校生活になじめなかったり、あるいは不登校といった将来に不安を抱える若者は潜在的に多いのではないかと思われます。
そのことを裏付けるように、本県では、平成20年度の不登校児童生徒は、小中学校合わせて約5,200人で、千人当たりで10.7人となり、全国平均をやや下回ってはいるものの、ほぼ横ばい状態にあり、依然として不登校・引き込もり現象は深刻な状態にありますが、このような多くの不登校や引き込もりの児童生徒たちの義務教育終了後の受け皿として、山の学校は非常に重要な存在だと考えます。
最近の青少年の動向や社会のニーズを的確に把握し、山の学校の環境を十分に生かし、幅広い活動ができればと考えます。
例えば、自然豊かな環境を十二分に生かし、山の学校を中核施設として、青少年の育成に取り組んでいる民間団体やNPO、さらに、各種学校などの教育関係施設との幅広い連携を行い、これらの施設を活用したり、カリキュラムの工夫を行って交流を広げていくといったことも考えられます。
そこで、青少年の健全育成はもとより新たな社会ニーズに的確に対応し、山の学校が一層幅広い活動ができる施設として、その機能を十分に活かす施策展開が必要だと考えますが、山の学校の運営に今後どのように取り組まれるのか、所見をお伺いいたします。
4 農業への新規参入について
景気低迷のおり、企業倒産が多発しています。今や大手と言えども安心することはできませんが、特に建設業、流通業界などは生き残りとも言える状況下で、農業に転換しようとする企業をはじめ、定年退職して農業に従事したいという人も増えていると聞いています。
県では、「ひょうご就農支援センター」をはじめ、兵庫楽農生活センターにおける就農コース等の実施、兵庫みどり公社の農業後継者育成事業など、農業への新規参入を促進するため、努力をしておられることは十分理解をしていますが、若手で農業に参入しようとされる方は後継者を除き、農地確保や栽培技術の習得などはなかなかハードルが高いうえ、生計を立てるには収入が不安定なことなどにより、二の足を踏んでいるのではないでしょうか。
農業へ新規参入するにはさまざまなパターンがあると思われますが、私が体験したケースでは、事前研修が数日あり、実際の農業実習として月のうち15日間農業に従事し、それを1年間通して実習して、農家に証明していただくというものでした。
支援制度としてはいろいろなメニューが用意されていますが、土地を確保し、機械を購入するだけでも大変な費用であり、相当な自己資金がなくては難しいというのが現実です。
また、定年退職後の農業参入者については、農業を業とする方だけではなく、健康のためとか、生き甲斐づくりとして取り組む方も多いことが伺え、こうした方々とのすみ分けをしていかなければなりません。
しかし、本気で参入しようとしても、技術や経営ノウハウについては自然を相手にするだけに、その都度、土壌や気象条件などが違うわけで、多くの経験を積んだアドバイザーが必要となります。
先日、兵庫県農業賞を受賞された、佐野さんの祝賀会に出席しました。同席された伍々農政環境部長が、この賞は長年農業に従事して功績を挙げ、かつ地域の農業の発展に寄与された方に送られる賞であると挨拶しておられましたが、まさにそのとおりだと感慨深いものがありました。また、佐野さんご自身は謝辞の中で、自分は農業一筋に取り組み、いつも土と対話していると話を続けられました。地元の方々の厚い信頼のもと、常に中心的な役割を果たしてこられました。ご本人は至って元気ですが、既に80歳を迎えておられます。こうした方々のノウハウをしっかり受け継ぐことが必要です。残された時間はそう多くありません。
私は、農業への新規参入を促すためには、経費面の問題もありますが、経験に裏打ちされた農業従事者の技術や経営ノウハウをしっかり引き継いでいくことが何よりも重要だと考えます。
そこで、農家の高齢化と後継者不足の中、県では、農業への新規参入の現状を踏まえ、今後の新規参入者への支援と確保とともに、農業従事者のノウハウの継承についてどのように考えておられるのか、所見をお伺いいたします。
5 ヤード対策について
「周囲を鉄壁などで囲まれ、犯罪組織が海外へ不正輸出等を目的として、窃取した自動車・オートバイの解体、コンテナ詰めなどの作業を行う作業場」をヤードと呼んでいます。ヤードは、盗難車の解体や不正輸出の舞台となったり、外国人の不法滞在や不法就労、薬物の隠匿場所として利用されるなど犯罪の温床となっています。
ヤードは、山間部や田園地帯に存在し敷地の周囲を鉄壁やコンテナで囲んで内部を見えにくくしている閉鎖的な構造であることから内情が分かりにくい実態があり、私の住む神戸市西区や隣の三木市を中心に、県下80数箇所でその存在が確認されていると聞いています。
県警では、平成21年中に16箇所のヤードに対して捜索を行い、自動車の窃盗10名、入管法違反7名、薬物事犯7名などの犯罪を検挙し、一定の成果を挙げており、西区においても、14箇所のヤードが確認されていた時期もありましたが、県警で捜査を重ねた結果、現在は9箇所に減少しています。
過去にも集団での窃盗犯の検挙も行われておりますが、車を盗んだ者、運搬する者、それを解体する者など、それぞれ役割が違うために犯人の特定や立証が難しいという側面があると思われます。
また、ヤードの多くはナイジェリアやパキスタンなど、アフリカ・中近東系の外国人が経営している実態があり、そこで働く労働者をはじめ多くの外国人が出入りしており、県警が昨年11月に西区でワゴン車の解体作業場となっているヤードを捜索した際にも、近隣住民の「10年前から、外国人の出入りが目立つようになった。」という証言が報道されています。
この11月の捜索では、西区を含め県内10箇所の捜索が行われ、ナイジェリア人ら2人が入管難民法違反容疑で逮捕されましたが、三木市内のヤードでは、市街化調整区域であるにもかかわらず、無許可で工場や鉄壁を建設していたことが判明しています。
県警では、この捜索の翌日、「兵庫県警察ヤード対策本部」を設置し、実態把握や立入りの強化などを図ることとしていますが、県警のみならず関係機関との連携を密に行うことにより、迅速かつ的確な対策を推進し、外国人の不法就労をはじめヤードの実態解明を進め犯罪の温床にならないよう、さらなる対策の強化が求められていますが、本部長の所見をお伺いいたします。
6 警察官の技能向上について
警察官の皆さんは、日ごろから自らの身体と必要な技能の習得、鍛錬に取り組んでおられます。どの部署にとっても危機管理は重要ですが、私自身の経験として言わせていただければ、とりわけ「白バイ隊」に関しては、2輪車であるがゆえにバランスをとりながらの操作であり、機敏に動ける利点もありますが、防御は自らの技術によるところが大きく、如何に危険な状況の中で活動していかなければならないかは、ご承知のとおりです。
現在、兵庫県警には、約150台の白バイと約180名の白バイ隊員が配置されていますが、特に2輪を扱い、その操作技術のレベルUPに取り組むには「心技体」のバランスを図りながら技術を研ぎ澄まし、ミスを無くしていくことによって安全のマージンが増えるわけで、如何に日ごろからの訓練が大切か伺われます。
全国の白バイ隊員がその技術を競う大会として、白バイ全国大会が行われていますが、兵庫県警の過去の結果を見てみますと、個人総合優勝が1回、個人種目別優勝6回、平成8年に発足した女性白バイ隊「ホワイトウェーブ」も、2度優勝しており、直近では昨年の第41回大会の優勝が記憶に新しいところです。その他にも各種目・部門で2位、3位などの上位入賞を多数記録しています。
このように本県の白バイ隊員は、全国レベルの大会で優秀な成績を残しているにもかかわらず、必ずしも県民にそのことが十分周知されていないのではないかと思われ、隊員の士気高揚のためにも、もっと積極的なPRをしていくことが必要ではないでしょうか。
また、県下においては、白バイ専用の訓練場所が限られており、技術レベルに対応したコース設定が可能であったり、路面環境の変化に対応可能なコースを設けるなど、訓練場所の一層の充実が求められているのではないかと考えます。
県財政が厳しい中ではありますが、例えば、県民が利用する交通安全施設に併設した訓練場所ができないものか、既存の訓練場所に加え、県有地を活用した訓練場所がさらに確保できないものかと考えます。また、白バイ隊員の訓練を多くの県民に観ていただいて、技術を切磋琢磨している様子や、訓練の厳しさなど、その活動を広く広報する見せる訓練も今後は、必要ではないでしょうか。
そこで、県警における白バイ隊の活動や訓練の広報、さらに訓練場所の確保についてどのように考えておられるのか、本部長の考え方をお伺いいたします。
7 警察施設の充実について
神戸市内のニュータウンに立地する神戸西警察署は、私の住む西区を管轄区域としており、管内では、今なお人口の増加が見込まれています。
神戸西警察署が建設された平成3年当時、署員の定員は146名でしたが、管内人口の増加等により、現在、定員は314名に膨れ上がっています。このため、これまで庁舎の増改築を繰り返しながら現在に至っていますが、県民から見ますと、署員は狭隘な庁舎の中で仕事をしており、時には来庁者に対して廊下で応対したり、駐車場は満車状態が続き、場合によっては付近の有料駐車場を利用せざるを得ないこともあります。
例えば、県全体の交通事故件数は減少傾向にありますが、神戸西警察署管内は、人口が増加していることに加え、面積が広大であることから、自動車を利用する住民が多い地域であり、交通事故件数は増加しています。人口の増加傾向に加え、交通事故の例を見ても、今後、まだまだ神戸西警察署は人員増の可能性があるのではないかと思われます。県民にとって身近な存在である駐在所をはじめ、さまざまな面から警察機能の充実を図っていく必要性は十分理解していますが、現状のままで神戸西警察署にこれ以上の人員配置をすれば、職場環境が一層劣悪になります。
庁舎の現状は、執務室の机の配置を見ても、せいぜい人1人が通るのがやっとで、仮に署員が増員されたとしても机を置くスペースもないほど狭く、平成8年と17年に増築していますが、現在ではそれでも不足気味になっていると聞いています。
とりわけ、来庁者用の駐車場不足は慢性化しており、業務に使用する車両の駐車場も満車状態で、緊急時の対応のために車両入れ替えが日常的に行われています。
このような状態で、警察活動に支障がないのか、警察官の士気高揚に影響が出ないのかと懸念を感じます。
庁舎建築後約18年が経ちますが、耐用年数までまだ22年余りを残しており、新たな建て替えはできないかと思われますが、このままでは執務そのものに影響を及ぼしかねません。現在の庁舎を生かしながら敷地内での有効な改築等を考えなければなりませんが、県民の利便性からも、手狭となっている駐車場の確保は必須です。隣接地の公園(神戸市)を利用できないのか、幅広い視野での検討が望まれます。
今後は、施設の増改築も含め、さらなる用地の確保も視野に入れ、地域の安全・安心の確保に向けた神戸西警察署機能の充実が必要と考えますが、本部長の所見をお伺いいたします。
杉尾良文
(西区)