概要 質疑
第316回兵庫県議会 質疑(平成25年2月8日)
質 問 者:大塚 たかひろ 議員
発言方式:一問一答
現在国会において審議中の平成24年度補正予算案は、公共工事4兆7,000億円を中心とした総額10兆2,815億円の大型補正予算となっており、本県においても、約1,286億円の補正予算案が今臨時議会に提出されました。
総務省の通達によれば、今回の補正予算により今年度に追加される投資的経費に係る地方負担額については、原則として、後年度に地方交付税の基準財政需要額に算入される等の財政措置がなされます。また、地方の資金調達に配慮し「地域の元気臨時交付金」が交付されるなど、地方にとっては至れり尽くせりのような印象さえ受ける内容となっています。
さて、今回の本県の補正予算案では、約1,286億円のうち700億円強が公共事業等に充当される予算編成となっています。
この補正予算案では、緊急性が高いにもかかわらず、予算上の制約から、必ずしも十分に予算措置されてこなかった部分、「防災・減災対策」や「通学路の安全対策」などが盛り込まれており、住民にとって優先順位の高い、命を守ることに直結する事業を、実施することができるということは、好機であるといえます。
ただ、今回の地方負担については、今後、交付税の基準財政需要額等に算入するとはいっておりますが、地方財政の基本となる地方財政計画において大きな締め付けが行われていることに鑑みると、仮に今回の予算措置分が交付税で補てんされたとしても、結果的に基準財政需要額総額の内訳が変わるだけではないでしょうか。つまり、個々の自治体が、現時点で財政的に最善な判断に基づき行ったことであっても、将来的に地方全体として大きな財政的な負担を強いられることになるという可能性も考えられることを、あえてここで指摘しておきます。
1 公共事業の事業箇所選択について
はじめの質問は「公共事業の事業箇所選択」についてです。
今回の補正予算案は、国の補正予算を受けて、県内における関連事業について早期に促進を図ることにより、地域振興、需要創出効果を発現させることを目指しとりまとめられたものであり、このような効果がすばやく表れるよう、効果的・効率的な取り組みを取捨選択し、早急に事業化して行かなければなりません。
この点、今回の補正予算案での大きな柱のひとつは公共事業です。
今回の補正予算案を見るに、公共事業に関しては、近い将来の地震、風水害に備えた防災・減災対策や更新期をむかえた社会インフラの老朽化対策、県民の生活をささえる社会基盤の整備や通学路の安全対策などが挙げられており、その方向性は理解しますが、どのような基準・考え方に基づいて、これらの事業箇所が取捨選択されたのか内容を明確に説明する必要があります。
今回の補正予算案においては、公共事業に関しては、国が補正予算で措置した補正予算債や地域の元気臨時交付金等の国庫支出を活用するとともに、補正予算債の元利償還金については交付税措置がなされることから、県独自の負担は基本的には発生せず、有利に事業を進めることができるとされていますが、だからといって、この際だからあれもこれもやってしまおうということではいけません。事業の必要性や緊急性をしっかりと分析・検証、判断し、取捨選択した事業について優先的に取り組んでいく姿勢が必要であることは言うまでもありません。
そこで、今回の補正予算案における公共事業の事業箇所選択にあたって、県として、どのような基本的な視点や基準に基づいて具体の作業を進め、決定するに至ったのか、お伺いします。
2 基金の積み増しについて
質問の第2は「基金の積み増し」についてです。
今回の補正予算案でのもうひとつの大きな柱が基金の積み増しであります。
今回の補正予算案においては、待機児童解消、地域の子育て支援の充実等を図るための安心こども基金の97億円、成長分野を中心に雇用を創出するとともに、起業後10 年以内の企業等による雇用の拡大を図るための緊急雇用就業機会創出基金の66億5,000万円、また住宅手当緊急特別措置事業等の期間延長や福祉・介護人材確保緊急支援事業を推進するための緊急雇用就業機会創出基金(セーフティネット分)の43億5,200万円など、経済対策関連基金等の積み増しとして、総額242億8,800万円が計上されています。
これらは、昨年12月に国が予備費を活用して事業化して積み増した分と、今回の国の補正による積み増し分との合計額であり、本県としても、重要な緊急経済対策として補正予算案に計上し、今後、これらの基金を活用し具体の取組を進めていくことは景気刺激策として効果が期待できると判断されたものだと考えます。
安心こども基金関連の対策などスピードアップを図っていることは承知おりますし、また、今臨時会に条例案件として上程されている福祉、介護の人材対策の追加などが重要な取組であることも理解しております。
しかし、素直な県民感情からすれば、速やかな地域振興、需要創出効果の発現を目指すとして「緊急経済対策」と銘打った今回の補正予算について、その少なくない部分をそのまま基金に積み増ししてしまうことに、予算執行の先送りになるのではないかと疑問を感じる方もおられるのではないでしょうか。
県としては、このような県民の疑問について、基金自体の存在意義、これを踏まえた個々の事業に係るこれまでの成果と積み増した後、その基金をどういう目的でどう活用するのか、具体的な効果をどう想定しているのかという今後の活用の見通し等について、丁寧に説明し理解を得ていく必要があるものと考えます。
そこで、今回の基金積み増しの中でも、その合計が110億200万円と、最も大きい額となる二つの緊急雇用就業機会創出基金について、県として、これまでの取組の成果をどのように認識しているのか、またこれを踏まえ、今回積み増しされた予算を、今後、具体的にどのように活用して行こうと考えているのか、当局のご所見をお伺いします。
3 地域の元気臨時交付金について
最後の質問は、「地域の元気臨時交付金」についてです。
国の今回の補正予算案においては、緊急経済対策で追加する直轄・補助の公共事業等に対する地方の負担金の8割程度を、地方単独事業などに活用できる交付金として交付する、総額約1兆4,000億円の「地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金)」が計上されています。
直轄・補助とも公共事業の執行には、地元の地方公共団体の負担が必要になることから、財政状況が厳しい地方公共団体が負担拠出に消極的になれば、緊急経済対策となる公共事業がなかなか積み上がらなくなってしまいます。この交付金制度は、国の2013年度予算の編成作業が遅れる中、補正予算で措置する公共事業に限り、地方の負担額に応じた交付金を交付し、地方の負担を軽減しようとする新たな取組だと言えます。
さて、今回の国の補正予算は、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」の財源を裏付けるための予算であり、今回の「地域の元気臨時交付金」が、単なるバラマキという批判をうけないためには、各地方公共団体がしっかりとした中長期のビジョンを策定し、これに基づいて着実に個々の事業を計画的に執行していく必要があり、この際だからあれもこれもやってしまおうとせず、進捗状況、達成度の評価などの検証を行うことが必要です。
この点、今回の本県の補正予算案では、地域の元気臨時交付金を活用し、緊急的事業の実施として、登下校時等の児童生徒の安全を確保するため通学路交通安全対策事業、県立高校耐震化事業などに計30億円を計上されていますが、それ以外の今年度に事業化しない残額約261億円については、来年度以降の県単独事業等の財源として、公共施設整備基金の積み増しに当てられています。
そこで、同交付金の本県への交付額全体の約9割を占めるこの基金積み増し分について、今後、どのようなビジョンのもとで、具体的にどのような施策に活用して行こうと考えているのか、当局のご所見をお伺いします。