議会の動き

小池ひろのり議員が代表質問を実施

第310回定例会(9月)代表質問
2011年9月28日(水)

1 本県財政運営の健全性確保について

 本県では昨年度、「行財政構造改革の推進に関する条例」に基づく3年目の総点検を行い、県議会でも「行財政構造改革調査特別委員会」を設置して精力的な議論を重ねる中、我が民主党・県民連合議員団としては、将来にわたって持続可能な行財政基盤を確立すべきことを主張してまいりました。
 特に、財政運営に関しては、「今後の収支バランスをしっかりと精査し、事業を確保するための起債発行は、県民生活にとって将来負担と比較して、より大きなメリットを享受できるようしっかりと検証すること」などを求めてまいりました。
 そうした議論を重ねた結果として、本年3月に第2次行革プランが策定されましたが、その内容は、経済・雇用対策などの臨時的課題に対応しつつ、県民福祉の向上に向けた積極性も認められたものと、一定の評価が可能といえる内容でありました。
 しかしながら、阪神淡路大震災からの復興対策と、それに伴って生じた収支不足解消のために、これまで多額の県債を発行してきたことから、県債残高も平成22年度決算見込ベースで3兆2千9百億円となるとともに、平成23年度当初予算ベースでもいまだ3兆2千8百億円となっております。
 加えて、第2次行革プランにおける財政フレームに目を転じると、平成30年度までの収支不足額が1,740億円に達するという厳しい見通しの中、国の財政対策をみながら、さらなる事務事業の見直しや、投資規模の適正化と共に、県債管理基金590億円分の取り崩しなどが必要という厳しい事態に直面するなど、なお予断を許さない状況が続いております。 
 特に、財政フレームにおける収支不足額を解消するための活用が想定されている県債管理基金に関しては、その残高が平成22年度決算見込ベースの約2,461億円から平成23年度当初予算ベースでは約2,663億円へと増加しているとはいえ、本来あるべき積立額に対する不足率は、なお50%を超えている状況にあります。 
 ご承知のように、この県債管理基金の過度な取り崩しは、積立不足率の増加を招き、それが地方財政の健全化判断比率の要ともいえる実質公債費比率の悪化に繋がることを考慮すれば、慎重かつ充分な思慮・検討があってしかるべきです。
 就任10年を迎えた知事が記者会見で「基金の積み立て不足と県債の償還が弱点」などと述べておられることや、歳出面の見直しがもはや限界に来ていると伺っています。
 さらに、東日本大震災の影響や昨今の急激な円高・デフレ経済を鑑みれば、今後の財政運営のあり方は、一層、健全でバランスの採れた取り組みとしていくことが肝要です。
 そこで、平成22年度決算や本県経済動向等を踏まえつつ、本県の財政運営をいかにして健全化に導かれるか、特に、巨額な県債残高の逓減や見込まれている収支不足の解消に向けて、知事はどのような認識と姿勢で取り組もうとされているのか伺います。

2 防災先進県「兵庫」の役割について

 鴨長明は「方丈記」の中で、元暦(げんりゃく)2年(1185年)の地震に触れ、地震を“なゐ”と呼んでいるのですが、「歳月が過ぎると、地震(なゐ)のことを誰も口にする人はいなくなった」と書いています。
 今から800年以上前に書かれたこの書物の一節は、現代の私たちが地震や災害に対してどのように向き合い、平素からの備えや心構えをどのように持つべきなのかを教えてくれているように思います。
 私は、阪神・淡路大震災を契機に、ことあるごとに防災・減災の重要性を説き、防災教育・人材育成の必要性を訴え続けてきました。
 同時に、私は、安全・安心な兵庫を築くことが、被災地兵庫の責務であり、そのためには、防災の専門教育が極めて重要であると認識し、被災地内の公立大学である県立大学に環境防災学部、学科を創設することは極めて意義深く、必要なことであると言い続けて参りました。
 昨年9月30日の県議会本会議で、知事から「防災に特化した学科について検討を進めながら、当面、各学部を横断して総合的・体系的に防災に関連する科目が履修できるユニットを整備する」との前進した答弁がなされました。
 本年8月17日には、兵庫県立大学防災教育センターの開所式が行われ、着々と進んでいるように聞き及んでいます。しかし、防災教育ユニットの開設だけでは必ずしも充実したとは言えません。
 是非、環境防災学部、学科を創設し、環境防災学を4年間通じて学び、県立大学が防災・減災の先進県兵庫の人材育成拠点としての役割を果たしてほしいと思います。
 3月11日に東日本大震災が発生し、兵庫県は、地震発生49分後に、45名の警察官を、さらにその日の内に121名を全国に先駆けて派遣、職員も9月23日現在、延べ76,252名を派遣し、被災地から大いに感謝されています。
 これは、兵庫県が防災先進県として日頃から対策が出来ていたからこそ素早い対応が出来たと思っています。
 我が会派も、5月に早速、被災地を視察しました。
 大自然の猛威で根こそぎガレキ化してしまった荒れ地を目の当たりにし、防災・減災教育、専門人材育成の必要性を改めて痛感しました。
 防災教育は、自ら調べ、考え、判断し、行動する教育を基盤としたものでなくてはならず、その防災教育をいかに実践していくかが大切なことだと思います。このことは、日頃から防災教育に取り組んでいた釜石市の小中学校で死者をほとんど出さなかった例が実証しています。
 兵庫県は、阪神・淡路大震災の教訓を活かすため、9年前全国に先駆けて、県立舞子高校に環境防災科を設置しました。しかし、せっかく高校で環境防災に関心を持ち、動機付けされた生徒が、卒業後の進路としての環境防災学を専門とした大学に進学することが出来ないまま推移して来ましたが、最近、関西学院大学、神戸学院大学等、被災地内の私立大学で、環境防災に関する教育の取り組みを始めました。
 近い将来必ず襲ってくると言われている東海・東南海・南海地震が、同時発生すれば、現在想定されている大きさより遙かに大きなエネルギーの地震となり津波も心配されます。火山列島・日本、いつ何処で地震が起きても不思議ではありません。東日本の津波、豪州の洪水、ニューヨークのハリケーン、今月の15号台風を見ても、人間が自然を制覇出来るというおこがましさを捨て、自然の驚異を冷静に見直さねばなりません。自然に対する謙虚さを持ちながら、減災に対する新しい発想で望んでいきたいと思います。
 折しも、今年4月、県立大学大学院応用情報科学研究科と日本初のシミュレーション学研究科が、ポーアイ二期の演算能力世界一のスーパーコンピューター“京”に隣接して設置されました。
 これから世界一のスパコンの防災面での活用を含めて、社会科学的な面からも総合的に防災・減災を取り上げ、本格的な防災拠点の集大成として県立大学環境防災学部、学科を位置付けて頂きたいと願うものです。
 また、「人と防災未来センター」や「こころのケアセンター」など、国内のみならず海外からも高い評価を得ている機関を、県立大学の附置研究所として位置付け、防災・減災政策を相乗的に高めていくことが可能になるとも考えます。
 「防災・減災」は、今や兵庫の県是であり、トレードマークであります。
 東日本大震災という我が国全体で取り組むべき課題に対して、兵庫が全国を先導する決意を示す視点からも、減災情報発信と行動の拠点にするための同学部、学科を設立して環境防災を学問として研究する人材養成に取り組んで頂きたいと願うものです。防災に深い理解をお持ちの井戸知事の所見を伺います。

3 小児周産期専門医療の充実について

 少子化の進展の中、小児救急医療や周産期医療の充実は、安全で安心な県民生活を実現する上で極めて重要だと思います。
 本県ではこれまでも、小児救急医療電話相談や地域周産期母子医療センターの充実強化に努めてきました。しかし、医療ニーズの高度・多様化や、産科・小児科医の不足などによる地域医療の深刻化が増す中、特にリスクの高い妊娠に対する周産期医療や、高度な新生児医療等を行える全国で2番目のこども専門病院として「県立こども病院」の存在意義は極めて大きいと考えます。
 私は先日、県立こども病院を視察しましたが、その際に、院長初め職員の方々から自信に満ちた説明を受け感銘を受けました。
 私は、従来からこども病院は、「子どもの命を助けて欲しい!」という親の願いに応えるため、命を救う“最後の砦”として、小児疾患における高度医療を提供し、日夜、大いに奮闘して頂いている病院と理解し、感謝していましたが、改めてその役割を認識しました。
 現在、入院患者の約4割が神戸市民ですが、県外からも高い評価を受け、小児周産期における生死の狭間にある患者が多く訪れています。
 こども病院は、「近くて便利」という病院ではなく、「命を救ってくれるなら遠くてもわざわざ訪れる」という病院と言えます。
 そのこども病院が、築42年という建物の老朽化の問題を抱えています。
 院長からは、水周りを初め先端医療の提供に支障を感じながらも、やりくりをして頑張っていることや、老朽化した病室内で、身動きが難しい状況の中、身をかがめながら精密な診療・看護に携わる病棟スタッフが医療に取り組んでいるという説明を受けましたが、こうした努力も限界が来ており、改築し課題に対応していかなければならない時期に来ていると痛感しました。
 県は小児、周産期医療の全県拠点病院として診療機能の充実を図るため、こども病院の建て替え整備の計画を進めています。整備候補地等の調査に着手しつつ、先般には「県立こども病院建替整備基本構想」を公表し、今年度中に基本計画の策定を行うとされたところです。
 この構想の中でも、重症患者の増加、入院の長期化等こども病院が提供する診療機能に係る課題を取り上げています。
 また、小児疾患を抱えたまま成人してしまったキャリーオーバー患者への対応や、子供だけでなく妊娠している母体に異常が発生した時、合併症や感染症等で緊急事態に陥る可能性も想定すれば、小児医療、周産期医療の全県拠点病院としての役割を確実に果たしていくためには、他の総合病院と医療連携に基づく相乗的な効果も極めて重要になってくるものと確信します。
 また、遠方からの患者を多く受け入れているという面から言っても、建て替え整備を行う際には、新幹線、空港、ドクターヘリ、ドクターカー等の交通アクセスが優れた場所、また子供に付き添う親が宿泊できるファミリーハウス等の整備等、家族にとっても優しい環境下にある場所に立地していくことを視野に入れる必要があると思われます。
 そこで、小児専門医療の充実という観点から、「小児医療の最後の砦」としてこども病院の建替整備にあたっては、診療機能の充実を図るとともに、全県の拠点病院としての機能発揮にふさわしい整備場所を選定していく必要があると考えますが、当局の所見をお伺いします。

4 国際観光都市・神戸の活性化と兵庫の発展について

(1) 中国事務所の再開による観光・貿易振興について

 679万人から861万人に、これは東日本大震災直前までの外国から日本を訪れた観光客数の前年からの推移です。
 その75%にあたる652万人が、アジア地域からの訪問者であるという実情や、これからのアジアの発展を考慮すれば、アジアの中での日本の役割を冷静に、長期的な視点から見つめなくてはなりません。特に若者の交流、しかもお互いが直接訪れることでの相互理解が最も必要なことと思われます。
 これからのやり方次第では、国際観光都市・神戸への観光客の増加が、兵庫県の産業の発展に大きく寄与するものと確信します。特に、アジアからの誘客、東アジアの富裕層の観光団の日本訪問で、元気な神戸を取り戻し、兵庫県の発展に繋げて行くべきだと考えます。
 ご承知の通り、神戸は、神戸ビーフ・日本酒・ケーキ・パン・各国のハイカラなレストランなどの食文化を有すると共に、日本最古のゴルフ場やファッション・真珠・シューズなど世界に誇る優れた文化や産業があり、さらに歴史的な港町神戸に国立公園六甲山があり、温泉もある地形的にも大変恵まれた観光地です。また、中国・台湾など、アジア地域からの観光客の主な訪日目的が、温泉・リラクゼ―ション・ショッピングであることから、まさに最適な観光地と言えます。
 観光による平成21年度の日本国内における旅行消費額は22兆円で、雇用創出効果は400万人を上回るという観光庁のデータも見受けられます。
 さらに中国については、昨年7月に日本への個人観光客を対象としたビザが緩和されると共に、中国の取り扱い旅行会社も、48から290社に増えたことから、東アジア旅行社の取扱関係者を日本に招くファムトリップや誘客のプロモーションを行い、しっかりした種を今、積極的に蒔く時だと考えます。
 本県は1982年には香港事務所を開設して、1983年に、日本でいち早く広東省と友好提携し、順調に中国と経済・文化交流を進めて来ました。
 しかしながら、行財政構造改革に伴って、3年前に中国の在香港兵庫県事務所を撤退させました。
 財政状況の悪化に伴う判断であったこととは思いますが、海外との観光・経済交流の推進にあっては、目先の経費より、産業の発展で雇用・税収入など多方面の成果を大きな視野から、よりグローバルな視点で見つめる必要があると思います。
 今や、日本の貿易の50%以上が対アジアで、中国が20%以上のシェアを占めます。その約30%が関西で、中国との交流はこれからが本番だと思われる時期に、こうした撤退は、交流のモチベーションにも影響しかねず、余りにも“もったいない”と考えます。
 本年7月に、私達民主党・県民連合議員団は、鹿児島県を視察しました。
 同県は平成21年7月に「上海マーケテイングプロデユーサー」の活動拠点となる現地代表事務所を上海に設置し、10年後のマーケット戦略ロードマップを作成しています。
 さらに、ここ数年で、岩手・宮城・長野・大分・沖縄県等が中国事務所を開設しており、現在28府県が35の事務所を中国に開設しています。
 中国事務所を拠点にした、将来を見据えたアジア戦略を、兵庫県も打ち出す必要があると考えます。
 本県の財政が厳しい状況は理解できますが、コスト以上の成果につながるポテンシャルと魅力が、アジア・中国には十分あると確信します。
 国際交流の推進にあっては、常に先を見越した事業展開が必要であり、早急に兵庫県の中国事務所を再開し、それを拠点とした積極的な交流事業を展開すべきだと考えますが、知事の所見をお伺いします。

(2) 神戸空港の有効利用について

 今年は、辛亥革命から100周年の年にあたります。
 孫文は、18回も訪日をした好日家で、最初に訪れたのも神戸で、日本を去る最後の大アジア主義の講演を行ったのも神戸です。
 神戸市垂水区の舞子に孫文記念館・移情閣があり、未だに中国でも台湾でも尊敬されている孫文と所縁が深い兵庫県が、積極的に中国交流を政策的に進めるべきだと考えます。
 申し上げたように、兵庫県は、全国でいち早く中国の広東省と友好姉妹提携を交わし、これまで日中経済・文化交流の中心的な役割を果たしてきました。 
 今、日中交流が低迷していますが、こうした時だからこそ積極的に、戦略的にアジアとの交流を進めるべきと考えます。
 ご承知のように、神戸空港は、兵庫県の中心地・三宮からポートライナーで18分、関西国際空港と29分で結ぶ海上ベイ・シャトルもあり、大変アクセスも良い海上空港です。
 将来目指すべき24時間の国際空港貨物の拠点として、また医療搬送用として、さらに観光立国として歴史遺産が多い関西のアクセスの拠点として、神戸空港は非常に利便性が高く、その最大限の活用を通じて兵庫県の発展に繋げるべきと考えます。
 そのためにも発着時間や便数制限、そして海外便の運航などの規制緩和・撤廃を、兵庫県は神戸市と協調して国交省にもっと積極的に働きかけるべきです。
 そして、現在認められているオウンユースチャーター便の利用拡大を図り、国際ビジネスジェット・チャーター便を積極的に受け入れるべきと考えます。
 さらに神戸空港の規制緩和は、ポートアイランドに整備されている先端医療施設への遠方患者の受け入れや、演算能力世界一を誇るスーパーコンピューター“京”がもたらす企業誘致などに、拍車がかかるといった相乗効果をもたらし、神戸市並びに兵庫県全体の活性化に繋がるものと確信します。
 国際観光都市・神戸、医療特区で先端医療を活用した神戸空港の有効利用で、兵庫県の発展に繋げていくべきと考えます。
 申し上げたアジア・中国との交流の重要性、そしていわゆる東アジア共同体の一員として、兵庫県が果たすべき役割は大きく、東アジアと世界への窓口としての神戸空港をより適切に活用していくべきと考えますが、ご所見を伺います。

5 原発依存から自然エネルギーへのシフトについて

 2011年3月11日に発生した東日本大震災により日本の、いや世界の原子力エネルギーの見方は大きく変わりました。
 安全神話と安価が売りであった原子力発電は見直され、ヨーロッパでもフランスなどを除き、2050年を目途に80%以上を自然エネルギーに転換するとしたドイツを初め、スイス・スペイン・イタリア・オーストリアなどの国々が脱原発を表明するなど、脱原発への動きを加速させつつあります。
 こうした機運の発信源である日本が、原発推進、あるいは従来通りの原発依存と言う訳には行かないと考え始められています。
 もともと日本の本格的な原子力平和利用への動きは、1950年代から始まりました。1955年12月に「原子力基本法」「原子力委員会設置法」「原子力局設置法」の原子力3法案が可決されると共に、政府には「原子力委員会」が設置されました。
 さらに、国策として、東京大学に原子力工学科を創設、資源に乏しい日本にとって原子力の平和利用が、強力に推し進められました。そして、原子力工学は、その利用に肯定的ないわゆる“原子力村”と言われた一部の産学官集団により、強力に推進されて行きました。
 今回の事故直前、資源の乏しい日本では、エネルギー自給率は18%でした。
 そのうち原子力がエネルギー源の約14%を占めていたことからも、原子力依存体制が出来上がっていたと言えます。
 一方で、私達は、原発について余りにも情報を知らなさ過ぎた、否や、きちんと情報を知らされていなかったと言った方が正しいかも知れません。
 単価の面で、経済産業省の試算によれば、電気1キロワット時を作り出すのに、太陽光が49円、水力が8~13円、風力が10~14円、火力7~8円かかるのに対し、原子力は5~6円であると報じられ、原子力エネルギーの優位性が強調されていました。しかしながら、公表されていた発電コストには、原発を誘致した地域に国から支給されていた交付金が含まれておらず、今後大きく問題となってくる放射性廃棄物処理費用や、今回のような事故に対する補償費用も全く計算されていないことなどが明らかになりました。
 これまで、自然エネルギーの典型とも言える太陽光発電については、我が国がオイルショックを経験した1970年代から開発と普及に力を入れ、産業界の努力もあって、日本の太陽光エネルギーのパネル作成技術は、世界最高水準となり、その生産シェアもトップを誇った時期がありました。また単価についても、工夫によっては、許容できるコストで相当量を導入が出来、適切な普及促進が可能になってきているとも聞きます。
 今後、国策として、太陽や風力エネルギーなどへのシフトを進め、生産規模の拡大で資材の量産や、新技術の開発を進めていけば、価格の低下と安定供給の実現に結びつくことが容易に想像出来ます。さらに、自然エネルギー産業が
 純国産であることを考慮すれば、日本経済再生の起爆剤になるとも考えられます。例えば、環境省の試算では、2020年までに年間約6,000~8,400万トンのCO2排出量削減に相当する再生可能エネルギーを導入した場合、生産誘発額が約9~12兆円、雇用創出が約46~63万人等と見積もられています。
 私は、直ちに原発を止めることは得策とは思いません。
 しかし、前述したような原発の安全・安価神話への疑問に基づけば、今後は原発依存度を徐々に低下させる一方で、自然エネルギーへのシフトが適切だと考えます。
 本県としても将来的な新エネルギー戦略を見据えた施策を速やかに打ち出し、省エネルギーの推進と併せて、太陽光や風力、バイオマスといった自然エネルギーの導入促進を図ることが肝要です。
 すなわち、自然エネルギーの拡充に向けて、県民の取り組みへの支援はもとより、企業がより積極的に導入に取り組めるような仕掛けづくり・誘致の推進が重要となってくるものと考えます。
 「県民生活の利便性確保」と「本県経済の持続的発展」、そして「地球環境問題への効果的な対応」を実現するため、今こそ積極的なエネルギーのシフトを取り組んで行くべきと考えます。
 そこで、今や重大な国家的課題である“原発”に対する知事の考え方と、自然エネルギーの導入に向けた取り組みのあり方についてお伺いします。

6 県立高校における通学区域の検討について

 県教育委員会は、県立普通科高校の学区見直しで、3年後の平成26年度を目途に全県を5学区に再編するという「兵庫県高等学校通学区域検討委員会報告(素案)」を公表し、検討を行っていると聞きますが、解決すべき課題があると考えており、それについてお尋ねしたいと思います。
 まず1つ目に、8年前から順次取り入れた複数志願選抜がどう総括されたのか、何処に問題があったのかを明らかにする必要があると思います。
 複数志願選抜入試が導入されて年数も浅く、今年の4月から導入されたばかりの学区があり、まだ導入できてないのも4学区あります。
 その検証を十分に仕切らないままで、平成26年度から県下を5学区に見直すという学区検討委員会の案は、あまりにも拙速と言わざるを得ません。
 2つ目に、各々の進路や目標を定めて、その達成に向けて努力する生徒達を支援する教育体制の構築こそが大切であるという点です。
 県下を5学区に見直すことの影響の一つに、受験戦争の過度な高まりが結果的に高校の序列化を進めるという課題が聞かれます。
 学区見直しの効果の一つは、高校間の競争及び切磋琢磨を促して、いわゆる昔の“日比谷”を再現し、トップクラスの生徒をしっかりと磨きたいということと、生徒に合った学力保障をしたいということだと思います。
 しかし、高校は本当に知識だけを教える所なのでしょうか!
 私が、高校の担任をしていた時、身体障がいがある生徒が入学して来ました。
 教室の扉が開けられなくて、苦労をしていると、日頃ゴン太(いたずら好きで腕白)な生徒が、ごく自然体で扉の所へ行って、扉を開け通り過ぎて行きました。
 一人の障がいを持つ生徒のお陰で、勉強の面でも生徒同士で教え合い、何事にも協力的でいろんな面で団結力を持った、まとまりのある素晴らしく優しいクラスが出来上がりました。
 また、私は、10年ほど前、短期留学のお世話をして、アメリカに高校生を引率したことがあります。
 ある日、老人ホームを訪問した際に、非常に頭の良い女子生徒が、99歳の日系アメリカ人のおばあちゃんと、折り紙をしながら話し込んでいました。
 そのおばあちゃんは「半世紀振りの日本人!」に会えたと言うことで、英語と思い出すように片言の日本語の単語を交え、涙を流しながらの交流をしていました。
 やがて別れる時がやって来て、おばあちゃんが玄関の外までやって来て、ずっと手を振って見送ってくれました。
 かつてこの女子生徒は、「年寄りは嫌いです。直ぐ壊れそうだから」と言っていたのですが、この日の彼女の日記には、「私は、この日を境にお年寄りの見方が変わりました」と告白していました。
 この経験は、彼女にとって短期留学での一番の収穫であると共に、立派な勉強であったと思います。
 子供にとって勉学とは、単に知識を得るだけではなく、得た知識をどう活用し、将来の目標や夢にどう繋げるのかだと思います。
 多くの親と生徒が、高校に期待することは、良い大学へ進学させてくれることと言われますが、高校は、大学入学するための受験予備校ではないのです。
 繰り返しますが、様々な特性を持った生徒にもまれ、自らの目標をつかみ、その進路に向かって努力していく生徒を支援する教育体制こそが重要なのです。
 もちろん基礎教養を学ぶことは大事なことです。しかし、生徒の全員が数学を好きになる必要はありません。何か一つ好きなことや得意な分野を見つけ、自分の夢・目標に向かって努力することが大切で、その努力の結果、生徒は大きく伸びて行きます。
 自らが目的を持ち自覚した時、それに向かって努力をした時、一気に学力が伸びます。これが真の学力に繋がると考えます。
 3つ目に、通学区域の見直しで、地域に自分の学力に合った学校が無い場合には、遠くまで通わなければなりません。遠距離通学を余儀なくされる生徒の増加とそれに伴う精神的・経済的負担についても考えねばなりません。わざわざ遠方まで通い、魅力を感じられない学校であれば、退学者が増えることも考えられます。
 このようなセーフテイネットについてもよく考えたうえで、学区見直しの是非を検討して頂きたいと思います。
 最後に蛇足(私見)ですが、私の永年の教師経験で、生徒を伸ばす一番大切なことは、教師が生き生きと頑張れる学校現場であるかどうかと言うことです。校長は一般教師に「多少のミスの責任は、私が取る。生徒のために頑張って欲しい」と意気に感じられる学校に、生徒は、目が輝く教師に魅力を感じ、師と仰ぎ勉学に力が入れられるような教育環境整備こそが、一番大切なことと思えてなりません。学びたいことを学べる魅力ある学校作りへの取り組みを一層強力に推進して行きたいものです。
 日本の縮図と言われる兵庫県は、日本海から瀬戸内海まで広範囲で、地域によって背景・実情が異なります。地域の面積や交通事情も異なります。このような特色のある兵庫県の高校学区見直しについては、しっかりとした理念を基に、地域の実情に合わせ、保護者を初めとする県民の理解を十分に得ながら熟慮した結論で改革を進めることが肝要です。
 今回の新学区構想は、拙速に変更するのではなく、しっかりした総括を行った後に、新構想の検討に入られることを願うものです。
 以上のことを提議し、どのような検討がなされ、教育委員会として、申し上げた課題についてどのように取り組もうとされるのか所見を伺います。