第314回兵庫県議会 一般質問(平成24年10月2日)
質問者:黒 田 一 美 議員
形 式:一問一答方式
1 地域主権改革の推進について
(1) 社会福祉施設等の設置・管理基準条例化における本県の独自性について
質問の第1は、「社会福祉施設等の設置・管理基準条例化における本県の独自性について」であります。
平成21年の政権交代以来、民主党が進めてきた地域主権改革は、地域のことは地域に住む住民が責任を持って決めることのできる活気に満ちた地域社会をつくっていくことを目指しています。
すなわち、明治以来の中央集権体質から脱却し、国が地方に優越する上下の関係から、国と地方とが対等なパートナーシップに立つ関係へと、この国の在り方を大きく転換することを目指すものであり、その具体的な施策を検討していくため、平成21年11月17日の閣議決定により、内閣府に地域主権戦略会議が設置されました。
以後、多くの面において、地域主権改革の具体の成果が上がっておりますが、中でも、地方自治体に対する国による義務付け・枠付けについては、地方分権改革推進委員会の勧告、地方分権改革推進計画(平成21年12月15日閣議決定)及び地域主権戦略大綱(平成22年6月22日閣議決定)を踏まえ、地方自治体の自主性を強化し自由度の拡大を図る観点から、「施設・公物設置管理の基準」等について、昨年5月及び8月に、いわゆる第1次一括法・第2次一括法が公布されました。
この2次にわたる見直しにより、合計200余もの法律に関して、義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大が実現されたことは、特に大きな成果であると言えます。
こうした国の動向を受けて、昨年来、これまで国が定めていた施設・事業等の基準を、各地方自治体の新たな条例で定めるなどの取組が積極的に進められております。
本県においても、本年の2月定例会での審議を経て、本県における環境保全や労働、陸運等に関する基準を定める「法令の規定により条例に委任された基準等に関する条例」が制定され、この4月1日付けで施行されたことは、皆様もご記憶に新しいことと思います。
さて、この度、社会福祉施設等の設置・管理基準を新たに条例化するとして、この8月のパブリックコメント手続による県民意見の募集を経て、今定例会に同条例の改正案が上程されております。
言うまでもなく、保育所や老人ホームをはじめとする社会福祉施設等は、多くの県民にとって最も身近で生活に直結する施設であることから、各地方自治体の実状や住民の方々のニーズに応じた、最適なサービスの提供が求められる施設の代表格であります。
そこで、今回、社会福祉施設等の設置・管理基準の条例化にあたって、どのような点において本県の独自性が発揮されているのか、また、パブリックコメント手続において県民の方々からどのような意見が出され、この度の条例案にどう反映されているのか、当局のご所見をお伺いします。
(2) 「地域主権改革」の更なる促進について
質問の第2は、「「地域主権改革」の更なる促進について」であります。
先ほども少し触れましたが、「地域主権改革」とは、憲法の理念の下で、住民に身近な行政は地方自治体が自主的かつ総合的に広く担うとともに、住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにするための改革であります。
この改革の根底に掲げられている「地域主権」の理念は、憲法が定める「地方自治の本旨」や、国と地方の役割分担に係る「補完性の原則」に基づいて、住民に身近な行政はできる限り地方自治体に委ねることを基本としており、国による義務付け・枠付けの見直しと地方自治体における条例制定権の拡大は、基礎自治体への権限移譲の取組とともに、このような視点から進められているものです。
すなわち、わが国における行政の仕組みを、住民代表である議会の審議を通じて、各地方自治体自らが、その判断と責任において実施する体制に改め、それぞれの地域実情に合った最適な行政サービスの提供の実現を目指していくことは、この改革を進めるにあたって最も重要な課題のひとつだと言えます。
とりわけ、住民がより良い行政サービスを受けるためには、そのサービスを提供する自治体が地域の実情や住民のニーズを個々に把握し、その内容に基づいて、個々の施策を決定、実施することが必要であることに鑑みれば、「地域主権改革」の取組を推進していく上で重要となるのは、国や都道府県ではなく、より住民に近いところで、その声を身近に聴くことのできる基礎自治体の役割であることは言うまでもありません。
特に本県は、異なる地勢や歴史背景を持つ、摂津・播磨・但馬・丹波・淡路の五つの国を県内に有し、北は日本海、南は瀬戸内海・太平洋に面する多彩な地域性を持った県であります。同じ兵庫県と言えども、個々の地域における実状や住民のニーズは一様ではなく、国による一律の義務付け・枠付けが不適当であるのと同様に、県条例による一律の縛りが、個々の市町の実状や住民ニーズにぴったりと来ないものも多々あるのではないでしょうか。
これらを総じて考えれば、より住民に身近な場所で、地域の実情や住民ニーズに即した総合行政に取り組むことのできる基礎自治体に、その独自性と自由度を高めるため、可能な限りの権限を集約していくべきという「近接性の原理」に基づいて、更なる県内分権の推進に取り組んでいくことが必要だと考えます。
そこで、県内市町への権限移譲により一層取り組んでいくことはもちろん、今回の義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大により、県条例に権限が委任された事務についても、市町の独自性と自由度を高めるため、県内各市町の意見、要望に応じて市町条例に委任できるような法令改正を含め、「地域主権改革」の更なる促進に向けて、国に積極的に働きかけていくべきだと考えますが、知事のご所見をお伺いします。
(3) 県民の参画と協働について
質問の第3は、「県民の参画と協働について」であります。
先ほども述べました通り、「地域主権改革」は、地域のことは地域の住民が責任を持って決めることのできる、活気に満ちた地域社会づくりを目指す取組です。
私は、その実現のためには、「地域主権改革」を進めて行く過程における県民、地域住民の参画と協働が必要不可欠だと考えます。
この点、本県では、今回の義務付け・枠付けの見直しの一環として、県営住宅の入居基準に関して、新婚子育て世帯の収入基準の拡大と併せ、対象となる子どもの範囲を小学校就学前の子どもから中学校卒業まで拡大する内容を含む条例案が今2月定例会に上程され、可決されました。
この県営住宅の入居基準の拡大は、内閣府地域主権戦略室においても非常に高い評価を受けており、先進事例として全国にも紹介され、大きな注目を集めています。
この新たな基準そのものは、直接、県民や地域住民の方々の声やニーズを踏まえて定められたものではないようですが、その背景には、阪神・淡路大震災を経験した本県が、被災者である県民の皆様とともに、まさにその参画と協働を受けて創造的復興で取り組み、歩んできた、これまでの積み上げの成果が生きていると考えます。
震災当時、本県内では多くの震災復興住宅が建設されましたが、当初から、その入居者は高齢者の方々が多くを占め、コミュニティづくりや一人暮らしの入居者の方々の安心ケア対策が大きな課題となっていました。こうした課題の解決へ向けて、住民自らの取組が進められる中で、住宅の多様な入居のあり様、とりわけ、若い世代の入居を促進する必要性が指摘されるようになりました。
県民、ボランティア、NPO、NGO等様々な立場の方々が参画し協働し、粘り強く取り組み続けた「被災者復興支援会議」でも、そのような議論が重ねられました。
その後も、公営住宅政策の議論は続けられ、さらに、子育て支援の充実が県民にとって重要な課題となり、そのための住宅政策、特に県営住宅の有効な活用が指摘されるようになりました。
このような背景と積み上げの上に、今回の県営住宅の入居基準の拡大という、本県独自の基準が設けられ、全国的に大きな評価を受けているものと認識しております。
一例を挙げましたが、「参画と協働の推進」は、阪神・淡路大震災からの創造的復興に取り組む中で、本県が得た大きな財産です。私は、今後、「地域主権改革」の取組を進めていく上でも、県民の参画と協働は欠かせないと考えています。
この点、今回の義務付け・枠付けの見直しについては、国からの期限が切られる中で条例制定したものであり、その多くは十分な県民や関係者等の意見、提案、擦り合わせ等を経て内容を固める時間的余裕がなかったのではないかと考えます。
そこで、今後、これらの条例の内容が、より地域の実情や県民ニーズに沿った内容となるよう不断の見直しと更なる改善を進めて行くにあたって、県民の参画と協働を得る仕組みづくりが必要だと考えますが、知事のご所見をお伺いします。
(4) 現場職員の意見を反映する仕組みづくりについて
質問の第4は、「現場職員の意見を反映する仕組みづくり」についてです。
「地域主権改革」を推進するためには、地域の実情を的確に捉え、地域ニーズをしっかり把握するとともに、県民からの声にしっかりと耳を傾け、受け止めていくことが重要です。
また、基礎自治体である市町の実情を把握し、相互に顔の見える信頼関係を築き、お互いに連携して、住民、県民のために取り組んでいく人間関係も必要だと考えます。
それを担えるのは、何よりも現場を担っている県職員の皆さんです。
現場の県職員一人ひとりが「地域主権改革」の必要性を認識し、日頃の個々の業務や取組の中において地域主権の推進を意識すること、住民による活気ある地域づくりに向けて県政を推進する大切な役割を担っているのだという自覚を持つことが必要です。
加えて、こうした自覚を持つ職員が、それぞれの地域や現場で、直接、県民の方々と接することを通じて得られた問題意識や、業務改善へ向けた意見を、的確に県の「地域主権改革」の取組に反映させていく仕組みが必要だと考えます。
この点、県では、職員の意見を県政に反映させる仕組みとして、職員提案制度を設けて、行政サービスの向上・改善や事務の効率化を目指す職員からの提案を募って県政運営に反映させており、特に優秀な提案については表彰も行っていると聞いております。
そこで、より地域の実情や県民ニーズに即した県政運営を行っていく観点から、地域主権改革の推進に特化した職員提案制度を設けるなど、現場職員のアイデアや意見を、今後の「地域主権改革」の取組に生かして行ける仕組みづくりを進めるべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。