代表質問
1.減災対策について
(1) 県庁機能のリスク分散ついて
(2) 災害対応に備えた図上訓練の実施について
2.総合診療医の養成・配置について
3.公的医療保険制度の運営一本化について
4.ジョブコーチ(職場適応援助者)活用に向けた支援について
5.廃棄物の資源化促進について
6.小学校における言語教育について
7.取り調べの可視化の推進について
質問全文
盛耕三
(相生市)
一般質問
1.県と市町の政策協議の場の常設化について
2.地域主権改革推進一括法施行に伴う県の取り組みについて
3.地域医療における市町間の連携の促進について
4.県立阪神昆陽高等学校(仮称)への通学手段の確保について
5.シティズンシップ教育の導入について
質問全文
第311回定例会(12月)一般質問
2011年12月8日(木)
1 県と市町の政策協議の場の常設化について
質問の第1は、「県と市町の政策協議の場の常設化」についてです。
私は市議会議員として、2期8年にわたり地方自治の最前線で活動する中で、「そもそも市は何をするべきなのか?」「そもそも県はどのような役割を担うべきなのか?」ということについて、真剣に考えなければならない場面に何度も遭遇しました。
たとえば、平成12年度から取組の始まったスポーツクラブ21ひょうご事業や平成18年度から本格実施されている県民交流広場事業では、市や実際に活動する地域住民の方々からは「予算が付くのはありがたいけれど、細かいルールがあって使い勝手が良くない」という声をいただきました。
もちろん、地域スポーツの活性化や地域コミュニティ活動の促進を図るという政策目的自体には、私も異論がなく、一定の成果があった事業だと考えます。しかし、現場の状況を見聞きし、ともに地域の一員として活動する中で「これらはそもそも県が直接ルールを作って行う事業であったのだろうか?」「ルール作りの段階でもっと市町との協議を深めていれば、より一層効果がある事業となったのではないか?」との思いを強く持ちました。
一方で、自治体の規模にもよりますが、地域医療や少子化対策などは、必ずしも基礎自治体では解決できない政策課題であり、各市町がそれぞれに事業を行ったとしても、なかなか有効な成果にはつながりにくいのは実状ではないでしょうか。
「広域的な連携があれば、もっと有効な施策が打てるのではないか?」「広域的な連携を促進することや、市町の規模では実行できない事業は、本来県が担うべきではないか?」ということを強く感じることがありました。
従来、県と市町との関係については、二重行政、類似事業等への批判があり、兵庫県としても、過去から見直しに取り組んでいることは理解しております。しかし、私は、二重行政や類似事業等の批判は、あくまで表層の現象面を捉えたに過ぎず、本質的な問題は県と市町との連携や意思疎通が十分に行われていないことだと考えています。
最も大切なことは県が事業を行う際に「いかに基礎自治体である市町と連携するか」ということです。
とりわけ、県や各市町の財政状況を考えれば、二重行政や類似事業を行うといった非効率な行政運営を行う余裕はなく、効果的な税金の使い道という観点からもより積極的な連携が必要だと考えます。
そこで、県と市町とが政策協議を行う場を常設化し、常日頃からの密接な協議、連携を通じて、適切な役割分担の下で、それぞれの行政運営を担っていくべきだと考えますが、知事のご所見をお伺いします。
2 地域主権改革推進一括法施行に伴う県の取り組みについて
質問の第2は、「地域主権改革推進一括法施行に伴う県の取り組み」についてです。
民主党政権では、政権交代後の一昨年9月以降、地域主権の確立は1丁目1番地の重要課題であると位置付け、改革の取り組みを積極的に進めてまいりました。本年4月及び8月には、国会において「地域の自主性及び自立生を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(いわゆる第一次、第二次一括法)が成立しています。
これら二次にわたる一括法では、地方自治体の自主性を強化し、自由度の拡大を図るため、国による義務付けや枠付けを見直すとともに、条例制定権の拡大が定められており、各種の施設や公物の設置・管理の基準を地方自治体自らが条例により定めることになりました。
このような、国から地方自治体への権限移譲に関しては、国の取り組みの成果と言うよりもむしろ、これまで国に対して権限移譲を強く働きかけてきた地方自治体及び地方議会が勝ち取った大きな成果です。
そして、未だ道半ばではありますが、国からの権限移譲が実現した今、私たちに求められているのは、これからの分権型社会にふさわしい地方自治体としての覚悟だと考えています。
とりわけ、私は、公の施設等の設置・管理基準に関する条例づくりは、兵庫県の地方分権にかける思いや覚悟の強さを表す一つのメルクマールになると考えています。
この点、第一次、第二次一括法では、公の施設等の設置・管理基準に関して、「従うべき基準」「標準」「参酌する基準」の三つが設けられています。ただ、同法の趣旨から考えると、これらの基準はあくまで一つの基準に過ぎず、許容される幅の大小の違いはあるものの、いずれの基準についても、地域の実情に応じたルールを設定することができるのです。
このような視点で考えると、国から示された従来の基準をそのまま踏襲するという発想で条例制定を行うようでは、地方分権の理念を大きく損なうばかりか、「権限を移譲しても、結局は地方自治体の自主性は高まらない」との印象を国や国民に与え、今後の権限移譲、ひいては地方分権改革の歩みを鈍らせることにもつながるのではないかと危惧しています。
一部を除き、来年4月1日までに条例を制定することとされていますが、私は今ある基準をもとに「上乗せをするのか緩和をするのか」「それとも現状維持か」を考えるのではなく、市町や県民、施設管理者等の意見や地域のニーズを踏まえながら、それぞれの施設ごとに、そもそもの在り方などを真剣に議論したうえで条例制定に臨むべきだと考えます。
そこで、地域主権改革推進一括法成立に伴う、公の施設等の設置・管理基準に係る県条例の制定について、今後、県として、どのような基本的考えの下で、どのように取り組んで行くのか、知事のご所見をお伺いします。
3 地域医療における市町間の連携の促進について
質問の第3は、「地域医療における市町間の連携の促進」についてです。
現在、地域医療を確保する上で、市町において確保困難な特殊医療や高度専門医療、先進的医療等の提供体制を確保することが都道府県の役割でありとされており、兵庫県でも地域医療再生計画を策定し、医療体制確保に向けて、日夜取り組んでおられることと思います。
一方、住民に身近である内科や外科といった一般的な初期医療に関しては、基礎自治体である市町が担うこととされています。このような初期医療の提供体制を確保する上で、とりわけ、公立病院が各地域における中核的な医療機関として大きな役割を担っているのは言うまでもありません。
しかし、その公立病院は非常に厳しい状況に陥っています。公立病院の役割や使命を考えれば、赤字であることそのものを問題視するつもりはありませんが、本県市町振興課のとりまとめによれば、平成21年度における県内各市町の病院事業の決算状況は、23事業中21事業が、また、平成22年度では23事業中18事業が赤字となっています。
その根本的な問題は医師不足と言っても過言ではなく、私は慢性的な医師不足等の厳しい環境の中で、今後も必要な医療を地域において提供するためには、それぞれの市町が努力することは当然ですが、これに加え、広域的な行政を司る県として、果たすべき役割がますます大きくなっていると考えています。
実際に、それぞれの基礎自治体や市町立病院が時間を割き、多くの労力をかけている医師不足の問題は、それぞれの病院が頑張って医師を招聘したとしても、今ある限られたパイを奪い合っているだけに過ぎません。
さらに、このような限られた医療資源にもかかわらず、その医療資源でさえ必ずしも効果的に配分されているとは言えない状況もあります。
たとえば、市立川西病院では、病院経営改革プランに従い、平成21年に消化器内視鏡センターを設置しました。しかし、消化器内視鏡センターが定着し始めた1年後には、お隣の宝塚市立病院においても同様のセンターが設立されたのです。私は、「限られた医療資源の有効活用を考えれば、同じ2次保健医療圏域の中で、なぜすみ分けができないのか?」ということを感じざるを得ませんでした。
つまり、それぞれの自治体や病院が、住民に良質かつ適切な医療を効果的に提供することを目指して様々な取り組みを行ったとしても、より広域な観点、つまり市町の枠組みを越えた地域全体の医療という観点から見ると、必ずしも充実にはつながっていないのが現状です。
私はこのような状況を見るにつけ、たとえ初期医療の分野であったとしても、すべてを基礎自治体に任せきりにするのではなく、個々の基礎自治体相互間の連携が必要であり、広域的な観点から、県として相互連携をより積極的にコーディネートしていく必要があると考えています。
そこで、今後、限られた医療資源を有効に活用する観点から、地域医療の更なる充実確保のために、県として、どのような基本方針の下で、市町間の連携を支援し促進していくのか、当局のご所見をお伺いします。
4 県立阪神昆陽高等学校(仮称)への通学手段の確保について
質問の第4は、「県立阪神昆陽高等学校(仮称)への通学手段の確保」についてです。
兵庫県教育委員会は、平成20年10月に、定時制である県立川西高等学校、同宝塚良元校、伊丹市立高等学校の3校に関し、阪神昆陽高等学校への再編という形で平成24年度から新入生の募集を停止する方針を打ち出しました。
この県教委の方針に対しては、多くの地域住民が反対の声をあげており、地域では今なお、県立川西高等学校や同宝塚良元校の存続を求める活動が展開されております。
実際に、川西市議会では平成21年2月に「県立川西高等学校及び川西高等学校宝塚良元校の存続を求める意見書」が可決され、県教育委員会に提出されました。
しかしながら、このような取り組みにも関わらず、残念なことに、平成24年度より県立川西高等学校は募集停止となってしまいました。川西教室、宝塚教室として当面の間存続するなど、県としては、地域の声に一定配慮したものと考えています、ただ、これはあくまで3年間の限定措置であり、依然として「地域の学びのセーフティネットを残してほしい」という地域の声が大きいことをまず申し上げておきます。
一方で、私は目の前にある川西市や猪名川町から県立阪神昆陽高等学校への交通アクセスの問題も指摘しなければなりません。
この問題は、県議会でもたびたび議論をされており、平成22年度の決算特別委員会においても篠木和良委員から交通アクセスに対する質問がなされており、川西市ならびに猪名川町では、政党・会派の垣根を越えた重要な課題です。
猪名川町議会においても、交通アクセスが困難になることを問題視し、平成21年3月26日に「旧武庫荘高校跡地での「多部制単位制高等学校」開設に関する意見書」が可決され、「就学を希望する生徒が通学時間や経済的負担などにより通学を断念することがないよう、交通手段の確保や経済的負担の軽減措置を講じること」等を求める意見書が採択されており、知事ならびに県教育委員会に対し送付されています。
実際に、猪名川町の六瀬中学校に通う子どもたちは、最終の授業である12限目を受けた場合、部活動や放課後の活動を一切しなかったとしても、現在の公共交通機関の運行状況では、自宅まで帰ることができません。
私は、学びのセーフティネットとなる定時制高等学校として、これまで地域で重要な役割を果たしてきた県立川西高等学校を廃止してまで設立する県立阪神昆陽高等学校には、従来、県立川西高等学校が地域で果たしてきた教育におけるセーフティネットの機能を引き継ぐ責任があると考えています。
したがって、県立阪神昆陽高等学校への交通アクセスの確保は、単なる利便性の向上という視点ではなく、地域における学びのセーフティネットをいかに守るのかということだと考えています。
そこで、県立阪神昆陽高等学校への交通アクセス確保に向けた取り組みの進捗状況と今後の見通しについて、教育長にお伺いします。
5 シティズンシップ教育の導入について
最後の質問は、「シティズンシップ教育の導入」についてです。
現代社会では、高度情報社会化やグローバリゼーションの進行が加速しており、社会の形が大きく変革する中、私たち一人ひとりも国民としての意識改革が求められています。一方で、若年層の政治離れに歯止めがかからず、従来の教育だけでは対応できないと感じています。
このような中、これからの教育においては、今まで以上に、生涯にわたって、いかに生きる力を身につけていくかという視点が大切になってきているのではないでしょうか。とりわけ、私は、学校教育の中で、社会に自ら積極的に関わっていく力を育てていくこと、市民としての力を身につけていくことが求められていると考えています。
兵庫県では、小学校の段階で環境体験教育、中学校の段階ではトライやる・ウィーク、高校の段階でもインターンシップ推進プランなど、「体験活動を通じた学び」を一つの大きな柱としており、先進的な取り組みも多いことから、全国的にも高い評価を受けています。
ただ、私は、これからの時代や社会の在り方を考えたとき、想像を超えるスピードで発展する新しいメディアの登場と、それによって引き起こされる人権侵害などの諸課題、新しい公の概念、多様化する価値観など、従来の授業だけでは対応できず、また短期間の体験教育だけでは十分身に付かないこともあるのではないかと考えています。
この点、近年、欧米諸国を中心に、めまぐるしく変化する現代社会において、子どもたちが将来、市民としての十分な役割を果たせるよう、「シティズンシップ」を育む取り組みが、学校教育の中に導入されるようになっています。
シティズンシップとは、「国などの正式な構成員たる市民として保障される権利」という側面と、「市民たるにふさわしい資質」という側面の二つを併せ持つ概念です。つまり、シティズンシップ教育とは、自らが属する社会における市民としての権利に関する認識を培う一方で、その社会に自ら積極的に参加するための資質を育む教育であると言えます。
このシティズンシップ教育は、単に知識を身につけるだけではなく、それを基に能動的に参画しようとする態度を育むこと、子どもたちが、参加型民主主義を理解・実践するために必要な知識・スキル・価値観を身につけ、行動的な市民となることを目的としており、将来の民主主義のプレーヤーとなる市民を育てていくことにつながると考えています。
本県教育委員会でも、高校生に「社会で生きる力」を身に付けてもらうため、本年度から「社会人基礎力育成カリキュラム」の研究開発に乗り出しており、県立高校4校をモデル校に指定し取り組みを進めています。その中ではシティズンシップ教育の観点も取り入れた取組が進められていますが、本県の将来を支えてくれる行動的な市民をより多く育てていくためには、県下すべての高校でシティズンシップ教育を進めていくべきだと考えます。
そこで、今後、兵庫県における高校教育の柱の一つとしてシティズンシップ教育を導入するべきだと考えますが、教育長のご所見をお伺いします。
以上5点にわたり質問をさせていただきました。
どんなに難しい課題であったとしても、今の時代にある課題は、今の時代を生きる私たちの手で解決していきたい。それが未来に対する責任。そんな決意を最後に付け加え、壇上での質問を終了いたします。
越田謙治郎
(川西市・川辺郡)
1.次世代育成支援に向けた環境整備について
(1) 不育症対策について
(2) タンデムマススクリーニングの導入について
2.『新しい公共』の実現に向けたNPOへの支援について
3.マンパワーを活かした防災機能の強化について
4.高齢者のインターネットトラブル対応について
5.女性の就業支援対策について
質問全文
第311回定例会(12月)一般質問
2011年12月8日(木)
1 次世代育成支援に向けた環境整備について
(1) 不育症対策について
質問の第一は「次世代育成支援に向けた環境整備について」です。
まずは産みたいと望んでいる夫婦への支援という観点から不育症対策について質問します。
現在、子供を持ちたいと思いながら不妊に悩み、検査や治療を受けている夫婦は増加の一途を辿っています。不妊治療という言葉もこの数年で一般的になり、特定不妊治療費助成制度も年々拡充されています。治療を受ける身には大変ありがたい制度ですが、所得制限があったり、医療費の値上げで自己負担額の軽減にはつながらなかったりと十分であるとはいえません。本県としては不妊治療の保険適用を国に求めているとのことですが、これは大変高いハードルを越えねばならず、もう少し現実的なアプローチとして不育症への支援について質問いたします。
妊娠はするものの流産や死産を繰り返すのが不育症ですが、国内において140万人の経験者がおり毎年3万人が新たに発症しているとの結果が最近の調査で明らかになりました。昨年の出生児数107万人から考えてもこれは大変な数だといえます。
不育症は原因にもよりますが、適切な治療を受ければ9割近くが出産できるといわれています。これは成功率3割程度の特定不妊治療に望みを託して長年通院した身からすれば大変自信と希望を持てる数字です。しかしまだまだ認知度が低いことから流産、死産を繰り返して悲しんでいる夫婦が多いのが現実です。情報を集めて、勇気を振り絞って専門病院を訪れても、治療を開始すると保険適用外の部分も多く、積み重なる治療費に怖気づき、それなのに時間的制約で仕事を辞めざるを得なくなるなど、夫婦が抱える負担は大きなものとなっています。
周囲の理解不足から流産・死産は女性の管理ミスであるかのような誤解を受け、その結果、鬱症に悩まされたり、患者の離婚率が通常の3倍にもなっているなど夫婦への影響は深刻です。
最近になって現状手つかずであった不育症患者への支援にも光が当たり始めました。全国で初めて岡山県真庭市が『一度授かった命をなくすのはストレスフルなできごと』として治療費の助成を始めたのを機に今年4月から和歌山県が全県において、また石川、茨城、神奈川の自治体の一部などでも取り組みが開始され、その動きは徐々に広がりを見せています。
本県においては不育症の症状や相談先を掲載したリーフレットなどを作成し周知を図るということですが、インターネットなどを通じて情報が氾濫し、ややもすれば知りすぎることで不安が増幅するという状況もある今、その情報発信は適確に必要としている人に届かなければ意味がありません。自治体や関係機関と連携し、妊娠した喜びと授かった命を失う悲しみを繰り返す夫婦に希望を与える取り組みを切に願います。不育症に対しては経費助成の検討も含め、一層積極的かつ多彩な支援が必要と考えますが、県の所見をお伺いいたします。
(2) タンデムマススクリーニングの導入について
次に、この世に生を受けた子どもの疾病リスクの軽減という観点から、タンデムマススクリーニングの導入について質問します。
子どもの病気には生まれつき病を抱えていても、見かけは元気で、それを放置していることで成長段階に重い障害がでてくるものがあります。それらの病気は早期に発見し治療介入することで、心身に起こる障害を未然に防ぐことができます。
我が国では『新生児マススクリーニング事業』として昭和52年に開始され、有効な治療法が確立されているフェニルケトン尿症など6種の先天的疾患に関して全国実施されています。一般的には生後数日の新生児から微量の血液を採取し、ろ紙に染み込ませて検査機関へ送るという手順がとられているわけですが、近年この領域で、新たに20種類以上の疾患を検査できるタンデムマス法が開発され、欧米を中心にこの検査法が広がりを見せています。国内においても平成16年度から厚生労働科学研究費補助金を受けて導入に向けたパイロットスタディが大学や検査機関で行われています。
この新しい検査法では、従来のものと比べて発見できる先天性疾患が飛躍的に拡大することから、新たに年間100人以上の子どもが救われると期待されます。本年3月には厚生労働省から各都道府県に対してタンデンマス法を用いた新生児マススクリーニング検査を早期に実施することが適当とし、導入を積極的に検討するよう通知されたと聞いています。検査法を導入するにあたっては、医療機関と検査機関の連携体制の構築や、保護者、医療関係者への周知徹底なども必要ですが、県として新検査法導入に向けての取り組みをぜひとも加速化して頂きたいと考えます。
少子化の進行で検体数が減少し一検体あたりのコストが増加傾向にあることや、多忙化する産科での検査の厳格な精度確保など、事業開始から34年を経過した今新たな課題も出てきています。新方式導入で発見される稀少疾患が増えることで、患者へのきめ細かいフォローアップ、中長期にわたる診療支援体制の充実もさらに求められる中、スケールメリットの観点から、関西広域連合での導入など、より広域的な取り組みに結びつけるといったことも視野に入れながら、スクリーニング体制を確立することが安心して子どもを産み育てることができる環境づくりにも大きく寄与するものと思われます。本県の導入に向けた検討状況についてご所見を伺います。
2 『新しい公共』の実現に向けたNPOへの支援について
質問の第2は『新しい公共』の実現に向けたNPOへの支援についてです。
東日本の被災地では県内の多くのボランティアやNPOが発災直後から各方面でうまく機能し、獅子奮迅の活躍をみせました。これはまさに本県の経験を活かしたいち早いカウンターパート方式の導入などが素地となったことはいうまでもありません。今回改めてその大きな力がフォーカスされたNPOですが、財政基盤のもろさというのが以前より課題視されていました。これは税制優遇を受けられる認定取得の厳しさや、寄附総額がGDP比わずか0.11%にすぎないなど我が国の寄付文化の未成熟さにも起因しており、そのサポート体制の構築が求められていました。
こうした課題解決に向け、国では本年6月に改正NPO法が全会一致で成立し来年4月から施行されることになりました。それにより認定権限が国税庁から都道府県と政令市に移り手続きの迅速化が図られるほか、「事業収入のうち、寄付が5分の1以上」という現行基準が緩和され、「3000円以上の寄付者が100人以上」や「条例による指定」が加えられます。これらはとりわけ震災の復旧・復興に取り組むNPOの後押しとなることが期待されているところですが、この法改正で今後いっそう重要になってくるのが、県の役割です。
すなわち、来年4月の改正NPO法施行のためには、都道府県や政令市が条例制定に引き続き、申請のための規則や様式の整備、受付窓口の設置、また必要に応じて説明会の実施なども行い、申請業務にスムーズに対応することが不可欠です。また、今年6月からスタートした新寄付税制では認定NPO法人に寄付をした際、国税40%、地方税10%の合わせて最大約50%までの税額控除が可能になりました。
しかし、この地方税の控除が受けられるかどうかは、各自治体が、寄付金に関する地方税条例いわゆる3号指定条例をしっかりと整備するかにかかっています。さらに今回の改正では、地方自治体が独自に地方税の控除対象を指定できる制度、4号指定条例も導入されましたが、これも、県等が条例を整備しないと機能しません。
年明けの条例制定がスムーズに行われることは勿論ですが、全国で36の都道府県が制定済みの3号指定、また他県で動きがみられる4号指定についても、本来ならば、ボランティア立県を標榜するわが県が旗振り役となる立場であり、全国的にその動きが注視されるわが県ですから、しっかりその期待に応えるべきだと考えます。
民の力が存分に発揮できる環境づくりを通じて、NPOと行政、企業などが渾然一体となって協働していくことが時代の要請といえる今、改正NPO法の施行を間近に控え、これまで以上に重要な役割を担う立場となった本県の今後の具体的な取り組みを伺います。
3 マンパワーを活かした防災機能の強化について
質問の第3はマンパワーを活かした防災機能の強化についてです。
先の台風12号、15号は本県にも大きな被害をもたらし、加古川市では一人の消防隊員が救助活動に向かう途中に命を落とされ、ご遺族、消防関係者はもとより、地域全体が大きな悲しみに包まれました。『逃げ遅れない』『安全に避難する』ということに重きをおいて被害の最小化に努めなければならないわけですが、この度の災害でもいくつかの課題がみえてきました。
12号台風時は夜が更けるにつれ、これまで耳にしたことのないようなすさまじい轟音が雨戸を閉めきった部屋にも響きました。加古川市では市や県の職員が車で巡回し、自宅2階への避難を呼びかけましたが、そうする間にもどんどん水位が増し何度も行く手を阻まれ引き返さざるを得ない場面が多々あったと聞いています。
しかも残念なことに、身の危険を感じながらの避難誘導は雨風の轟音にかき消されて住民になかなか届きませんでした。我が家にはNTTドコモの携帯電話を通じて避難指示のエリアメールが何度か届き、初めての経験に驚きました。しかし深夜に子どもを起こして連れていけるような外の状況ではありませんし、実際に避難した人はごくわずかでした。また姫路市ではこのエリアメールを巡って役所に問い合わせが殺到し、電話回線、ホームページがパンクするなど現場が混乱したといいます。
至極当然ではありますが今回も最終最後は人海戦術、マンパワーに頼ることになりました。要援護者を抱える高砂の親戚の家にも、早い段階に民生委員さんから居場所確認や避難指示の連絡が入り心強かったと聞きました。
しかし、高齢化する自治会長や民生委員に多くの部分を委ねるわけにはいきません。各人が迅速で適切な初動をとれるように構える必要があります。
兵庫県は防災先進県として、さまざまな取り組みを行っています。中でも自主防災組織の活動カバー率は、全国平均が74.4%である中、95.9%と全国2位の高水準です。その一方、メンバーの高齢化、世代間の偏り、実効的な訓練不足が課題になっており、実際の災害にどれだけ対応が可能なのか疑問を呈する声も聞こえてきます。
統計だけをみると、9割以上の県民が自主防災組織に籍を置いていると解釈できるわけですが、どれだけの人がそれを自覚しているでしょう。実際は大半が幽霊会員で各組織の会合や訓練に参加するメンバーは限られているのが現状です。自主防災組織が実際のところ機能不全に陥っている地域が相当数あると考えられるわけです。
県が主導する「ひょうご地域防災リーダー育成事業」などに関しても裾野がひろがるような具体的取組がなされているのか。1人の100歩より100人の1歩が大切といわれる防災意識の高揚のために行政はどうアプローチすべきと考えておられるのでしょうか。
根拠ある安全・安心に守られながら暮らすためのリスクマネージメントとクライシスマネージメントにおいて重要な役割を果たすと考える自主防災組織の機能を最大限に発揮するための取り組みについて所見を伺います。
4 高齢者のインターネットトラブル対応について
質問の第4は高齢者のインターネットトラブル対応についてです。
インターネット利用においては60歳以上のシニア層への普及率が年々高まっております。高齢者専用のSNSも誕生し、旅行や健康に関する情報を家族や仲間と共有して楽しむシニアが増えています。数字で見ても2010年末のインターネット利用率は70代が前年比6.3ポイント増の39.2%、80代以上は同1.8ポイント増の20.3%であり、国民全体では0.2ポイントの増加であることから、その急激な普及率は際立つところであります。
また、産学一体となったシニアのネット利用による経済活性化の調査及びフィールド実験の結果、インターネットやデジタル機器を積極的に使いこなす、いわゆるデジタルシニアの6割がネットショッピング、ネットオークションを日常的に利用していることがわかりました。同調査によればインターネットを利用していない層でも、旅行の手配や食品の宅配、昔のテレビや映像の配信などに大きな関心をもっており、企業サイドとしては“購入する層”としてシニアに熱視線を送っている現状です。
しかし、このように時間と資金に余裕がある高齢者がインターネットの新住人となることで、その知識不足から詐欺などのトラブルに巻き込まれることも予測されます。
加えて、最近小中学生がネットゲーム、いわゆる非出会い系と呼ばれるコミュニティサイトへの不正アクセスで摘発されるというショッキングな事件も報道されましたが、ゲームとは縁遠いと思われていたシニア層も例外ではありません。
今や街のゲームセンターの平日昼間はシニアの憩いの場のひとつであり、介護施設にもアミューズメント企業が参入しゲーム機を設置するなど、シニア層にもゲームというものが身近な存在になってきています。一人暮らしの高齢者が増える中、インターネット上での巧みな誘導で詐欺被害に遭う人が増えることは容易に想像できます。
消費者庁が今年3月にまとめた「インターネット取引に係る消費者の安全・安心に向けた取組について」の中でも、特に高齢者への対応のあり方として、「見守る立場の方々も含め、トラブルに巻き込まれないような適切な周知啓発が必要で、インターネット取引に係る悪質商法も含めた適切な注意喚起を行う」ことの重要性が述べられており、県としても高齢消費者をインターネットトラブルから守る取り組みを積極的に開始する時期にきていると思われます。
インターネットの経済活動上これからますます存在感を強めてくると予測されるデジタルシニアの被害防止に向けた啓発活動等の本県における取り組みを伺います。
5 女性の就業支援対策について
最後の質問は女性の就業支援対策についてであります。
『稼ぐ夫に育てる妻、二人の子ども』という過去ある時期の標準家庭モデルはすでに解体しつつあります。良い、悪いということではなく、このモデルが成り立たなくなっているのです。生産年齢人口の減り続けるわが国にとって、女性の活用、活躍なくしては、社会の活性化が阻害され、むしろ男性をも苦しめることになります。
草食化進行中といわれる男性に比べ、最近の日本女性は社会でどんどん発言力を増し、十分すぎるほどに活躍していると思われているかもしれませんが、総務省の労働力調査等をみても、管理職に占める女性の割合は10.6%、都道府県の公務員に限れば6%にとどまっています。給与水準も男性一般労働者を100とすると女性は69.3と3割以上も少ないのが現状です。
いち早くグローバル化の波に洗われた欧米では、産業が空洞化していった80年代の構造転換の危機を、女性という新しい人材の活用で乗り切ったといわれています。国に残ったサービス産業を中心としたいわゆるソフト産業は、女性の技能がいかんなく発揮できる分野であり産業の再生には女性の存在が不可欠であるという共通認識が浸透していきました。デフレ、円高に苦しみ、本社機能までも海外に移そうかという今の日本、福祉・サービス産業に傾斜を強める今の日本、まさに今が日本にとっての意識転換の時期といえるのではないでしょうか。
また、女性が稼ぎ納税することでこれまで団塊の世代が担ってきた内需の減退のカバーにもつながります。女性は往々にして財布の紐を握っている上に購買意欲が旺盛ですし、自分の稼ぎも出来てそれを堂々と消費すれば日本の内需は格段に向上します。外国人労働者を積極的に受け入れる議論もなされていますが、その前に企業をより活性化させ、競争力を高める戦略となり得る人材が目前にあることに気づくべきです。さらに、元気に働く高齢の女性が増えれば医療福祉費抑制にもつながります。何といっても30年後には人口の2割が65歳以上の女性で占められる社会が到来するのです。
平成22年度の調査で兵庫県の女性就業率は43.7%で全国44位となっており、数十年来一貫して全国平均より低い状態が続いています。本県経済の底上げを目指すとともに、人口減少社会において活力ある社会を実現していくためには、企業における女性の雇用機会の確保はもとより、就業継続とその能力を充分に発揮して管理職へも積極登用が果たされるような職場づくりが極めて重要であると考えます。
本県でも、離職した女性の再就業や起業を支援する施策や、女性の能力発揮に向けた取り組みを進められていますが、これまでの施策のスタンスと結果検証を踏まえ、県・国・企業等が一体となった取り組みを一層加速させる必要があると考えますが当局の所見をお伺いします。
以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
迎山志保
(加古川市)
1.国家危機管理国際都市構想(NEMIC構想)と関西復権・兵庫の発展について
2.災害応援時の市町間連携の強化について
3.こども家庭センター機能の充実・強化について
4.高校の新規学卒者の就職率向上に向けた取組について
5.東日本大震災で発生した災害廃棄物の受け入れについて
質問全文
第311回定例会(12月)一般質問
2011年12月9日(金)
1 国家危機管理国際都市構想(NEMIC構想)と関西復権・兵庫の発展について
質問の第1は、「国家危機管理国際都市構想(NEMIC構想)と関西の復権・兵庫の発展について」であります。
本年6月定例会において、高橋しんご議員、石井健一郎議員のお二方より首都機能バックアップ構想についての質問が続きました。これらの質問に対し知事からは、関西広域連合による「首都機能バックアップ構造の構築に関する提言」をもとに、既存の施設、機能が充実する関西こそが最適な都市圏であることや、首都機能継続計画の策定や実践訓練によって時間と費用をかけずに国家危機管理体制が構築可能であるとし、関係府県や経済界とも連携し国へ働きかけたいとの旨のご答弁がありました。
私も関西こそが首都機能をバックアップできる最適地との考えに大いに賛同するところですが、より期待したいのは、有事の際の危機管理の場のみならず、これを契機に東京一極集中から脱却した平時からの関西の復権と兵庫の発展です。
そこで注目をしたいのが、「国家危機管理国際都市構想(NEMIC構想)」です。平成15年12月定例会でわが会派の石井秀武議員が取り上げましたが今一度質問したいと思います。
今年8月にJリサーチ出版より国家危機管理国際都市建設推進検証チームが編集した『副首都建設が日本を救う』が出版されましたが、NEMIC構想は首都機能をバックアップするとともに、関西をアジアのビジネスと観光のゲートウェイとなることを目指し、危機管理中枢部を備えた行政・国際ゾーンはじめ次世代住環境、都市物流、国際ビジネス、コンベンション、セントラルパーク、メディカル、ダウンタウンなど約500haの敷地に8つのゾーンを備えた人口20万人の都市を建設するものでカジノ建設についての言及もあります。
いくつかの候補地に絞り込んだうえで、その優位性を比較していますが、土地の所有状況・交通アクセス整備状況などの条件が整う伊丹空港がその最適地として示されています。この伊丹空港前提とした場合の試算ですが、新都市建設整備にかかる事業費は4兆円とされ、そのうちJ-REITの活用などにより3兆円の民間資金導入を目論み、その経済効果は山田浩之京都大学名誉教授の試算によると7兆円にものぼると予測されています。
またこの構想の歴史的意義について「1つは、首都圏のバックアップ機能を完成させること。2つは、アジアにおける都市開発の目玉として日本の更なる発展に大きく寄与すること。3つは、関西経済の復興、即ち双眼的な国家構造の樹立である。」と記されています。
日本社会を東京圏と関西圏の二眼レフ構造に変えることはまさに歴史的意義のある国家プロジェクトであり、東日本大震災に見られた国家の脆弱性の補完に加え、関西の復権に多大なプラス効果が生まれます。残念ながら関西広域連合での取り組みでは有事の際の首都機能のバックアップ構造の構築はできますが、それだけでは関西の復権と兵庫の発展に繋がりません。
伊丹空港が最適地かどうかの議論は次回にしますが、NEMIC構想が兵庫の発展に資するものにしなければなりませんし、大阪都構想を強力に推進する新大阪府知事・新大阪市長の動きも目を離せません。
このような中、国の平成23年度第3次補正予算に内閣官房及び国土交通省に官邸や首都機能のバックアップに関する検討を行うための調査費が計上され、副首都構想が動き出しはじめています。
そこで、関西広域連合で取り組みを進める国家危機管理体制の構築に加え、NEMIC構想に云う双眼的な国家構造の樹立を目指した副首都を関西・兵庫の発展に資するように積極的に誘致すべきと考えますが、知事のご所見を伺います。
最近は、少子・高齢化と人口減少、円高不況による産業の空洞化はじめ将来に明るい兆しを見出すことができないキーワードばかりです。未来に向かって心躍る構想が不可欠です。知事の期待膨らむ答弁を期待します。
2 災害応援時の市町間連携の強化について
質問の第2は、「災害応援時の市町間連携の強化について」です。
東日本大震災の発生直後の3月13日には、関西広域連合より被災県に対する支援について、構成する府県を割り当てたカウンターパート方式により行うことが表明されました。各府県が重複することなく、また偏ることなく迅速的に被災地支援を行うことが出来たことは大きな成果であります。また、先月16日には、これらの成果を踏まえ、同方式により関西広域連合と九州知事会との間で、地方ブロック間で全国初となる災害時相互応援協定が締結されました。これからも引き続き、連合長としての知事のリーダーシップによりこれらの取り組みが全国に発信され、浸透していくことを期待しています。
本県では、大規模災害が発生した場合、県と県内市町による応援活動を迅速かつ円滑に実施するために、平成18年11月に県と県下すべての市町による「兵庫県及び市町相互間の災害時応援協定」が結ばれ、応急対策及び応急復旧に必要な資機材、物資、職員の提供・派遣などの応援内容や経費の負担、平時の活動などの項目が盛り込まれています。
平成21年の台風第9号による災害発生時には、この協定にもとづいて、県・市・町職員の派遣をはじめ様々な支援が行われました。後日、災害検証委員会によりまとめられた報告書によれば、平常時からの防災訓練や各種行事における県と陸上自衛隊との「顔の見える」関係や、県内市町や民間団体等による支援体制などがそれぞれ円滑に構築されていたことが、有効な対応に結びついたとする一方、市町合併により情報収集を行う手段が少なくなってきていることや、応援協定の規定では費用負担は原則、被応援市町が負担すると定めているが、実際には被応援市町の状況を考慮し、応援市町が負担しており、応援協定の規定と現実との間に齟齬が生じたことなどが指摘されています。
ただ、応援市町の担当者は、「費用の負担は災害と言うこともありお互い様であったことや、要した費用も少なかったことから市の負担が可能。阪神淡路大震災を経験した職員が少なくなっており、派遣により災害現場を経験することは貴重な財産。」と言われており、費用の負担よりも応援活動に係る人材の育成、ノウハウの蓄積のほうが重要な活動となっていることがわかります。
一方、東日本大震災支援でも見られましたが、市町間の個別の応援協定などにより支援を行ったケースもありました。私の地元明石市では、大阪府八尾市との間で、また特例市36市との間で災害時応援協定が結ばれるなどそれぞれ市町の独自の取り組みも併せて進められています。それぞれの取り組みを否定するものではありませんが、地域的な偏在が生じないような仕組みが必要であります。平常時から地域の道路、施設の所在など特性を少しでも知っておくことが支援の質の向上につながります。
「顔の見える」関係をベースとした連携を高めていくために、県民局の呼びかけにより管内の市町の防災担当者が集まり、研修や情報交換を行っているとは聞いていますが、市町職員の人事交流を進めていくなど圏域を超えた市町間の結びつきを強くしていくことも必要ではないでしょうか。また、その次のステップとして、関西広域連合内の府県を超えた市町村間の連携強化を計画的に図っていくことも重要です。
そこで、県内の市町間の連携強化に向けて、県の果たすべき役割をどのように認識されているのか、今後の取り組みの方向性とともに、ご所見をお伺いします。
3 こども家庭センター機能の充実・強化について
質問の第3は、「こども家庭センター機能の充実・強化について」です。
NHKで「やさしい花」というドラマ番組が放映されました。ある日シングルマザーが育児ストレスから我が子に虐待を始めてしまい、近隣の住人や社会がどのようにこの親子と係わるのかを問いかけた番組です。自称育メン中の1 人の親として思わず見入ってしまいました。
特にストレスの多い生活環境の中で子育てをされている方々にしてみれば、「早く寝なさいと言っても寝ない。食べなさいと言っても食べない。ゲームをやめなさいと言ってもやめない。」というような、ごく当たり前の日々の育児の中で、仕事のストレスや経済的不安などいくつかの条件が重なれば、つい子どもに対して声が大きくなってしまうことや、「明日、わが子に虐待を始めてしまうかも知れない。」と思うことは、程度の差こそあれ、誰にでもあるのではないでしょうか。
昨年、全国の児童相談所が対応した児童虐待件数は5万件を超え、虐待件数はここ20年で50倍を越えています。一昨年の死亡事例は約50件で、1週間に1人の割合で子どもが命を落としています。県のこども家庭センターに寄せられた児童虐待に関する相談は過去最高の1,688件となり、姫路市で発生した2歳の男の子に対する虐待事件は記憶に新しいところです。ドラマの虐待は1時間で終わりますが、実際の虐待には終わりがありません。それだけに虐待の防止はもとより、早期発見、早期対応の充実が求められます。
児童虐待を受けた若しくは受けたと思われる子どもたちの安全確保などのために、保護者などと分離する必要がある場合には、児童福祉法に基づき、一時保護が行われます。中央こども家庭センターに設置されている40人定員の県の一時保護所には、昨年度1日あたり28.5人の計415人が保護されました。その内訳は、中央こども家庭センターが8.1人、同じく西宮10.0人、川西6.4人、姫路3.9人、豊岡0.1人となっており阪神間へのニーズの偏在が見られます。確かに昨年度の実績を見ると定員に余裕がありますが、甚大な不適応障害を起こす子どもを保護した場合、複数の職員による特別な支援が必要となり他の子どもを保護することが出来ないとも聞きます。
また他府県の県所管分の設置状況をみると、10万人あたりの定員は、京都府の3.79人、神奈川県の2.28人、千葉県の1.90人に対して、本県は0,99人に留まっているなどの一時保護所の課題が浮かんできます。
次に一時保護所での受け入れが困難な場合は、児童養護施設や乳児院、警察などの機関へ一時保護の委託が行われますが、昨年度は355人で、一昨年度の229人と比べて急増しています。中でも児童養護施設、乳児院への委託は前年より倍増しています。
県の一時保護所は、平成5年度に中央こども家庭センターへ統合され、機能強化・専門職員の資質の向上が図られましたが、先に述べたとおり、近年、虐待相談の増加と相まって、一時保護、児童養護施設等への一時保護委託が急増しているもかかわらず一時保護所が県下1カ所であるが故に、一時保護所に頻繁に出向き子どもとの面接を重ねていかなければならないセンターの職員にとっては、時間的なロスや肉体的な負担も少なくないと聞きます。
そこで、児童虐待相談が増加の一途をたどり、重篤なケースが後を絶たない今日において、虐待された子どものセーフティネットであり、非行少年なども含め今後の支援を決定する上で不可欠な行動観察などを行う極めて重要な場所である一時保護所の県の現状についての認識と、県下複数配置や定員の増加も見据えた、今後の一時保護所のあり方について知事のご所見をお伺いします。
4 高校の新規学卒者の就職率向上に向けた取組について
質問の第4は、「高校の新規学卒者の就職率向上に向けた取組について」です。
東日本大震災や景気の低迷によって職を失った方々はじめ、高齢者、中高年者・若年者、障がい者とそれぞれの立場に応じた雇用対策は県政の重要課題であります。その中で、今回は卒業を控えた高校の新規学卒者の就職についてお尋ねします。
高校の新規学卒者の就職率の状況は、景気の回復とともに平成16年3月の94.5%から上昇を続け、平成20年3月の99.1%をピークに、平成23年3月には96.1%へと低下しています。求人数の推移も同様となっており、平成16年3月は6,576人から上昇を続け、平成20年3月の11,353人をピークに、23年3月には6,624人へと半数近くにまで減少しています。しかしながら、求人数が激減したとはいえ、平成23年3月の就職希望者数は5,527人で、求人倍率は1.0倍を割っておらず、求人企業とのミスマッチの解消に向けた取り組みを進めることにより、就職率の向上を図ることは可能です。
このミスマッチは、大学の新規学卒者にも見られます。平成24年3月の大学・大学院卒業予定者の求人倍率は、従業員1,000人以上の企業で0.65倍に対し、1000人未満の企業で1.86倍となっており、中小企業が新卒労働市場で苦戦していることが窺えます。
先日、日本経済新聞に奥平寛子岡山大学准教授による、大学生の就職活動を中心とした「新卒採用問題解決の方法」と題したコラムが7回にわたって、掲載されていました。
新卒採用市場は一般的に、一定のタイミングで求職者が市場にあふれ出す市場の「混雑」という性質を持つことから、雇用主は、他の雇用主たちも同時に採用活動をしていることを気にせざるを得ず、他の雇用主よりも少しだけ内定を出す時期を早めたり、本当に雇いたいとする候補者は他の雇用主からも内定をもらっている可能性が高いと考えられることから、いわゆる「安全パイ」の候補者に内定を出すなど、より多くの優秀な人材を獲得したいというインセンティブを雇用主に与えるとしています。
また、雇用主にとって、内定を出した学生が受理するかどうかを検討する時間は、大きな損失となりえること、また、候補者にとって、雇用主から内定受理を迫られることは、他の雇用主の下で働く選択肢を検討できず、市場の「厚み」を失うと述べられています。そこでこの市場の「混雑」と「厚み」の弊害を解消させる仕組みとして2つの提案がされています。
1つは、米国の研修医の新卒採用で成功し、7年前から日本の臨床研修医採用でも導入されている「集権的マッチング制度」で、雇用主と求職者の希望を第三者が調整する仕組みです。病院は受け入れたい学生の順位を、学生は働きたい病院の順位をそれぞれリスト化し、それをもとに第三者が内定するまでマッチングを繰り返すもので、これにより市場の「混雑」は解消できるとしています。
そしてもう1つは、米国の経済学博士号取得予定者の採用で利用されている「スクランブル」と呼ばれる敗者復活戦をお膳立てする方法であります。3月のある時期までに内定を得られていない候補者と適任者が見つからず採用選考を続ける研究機関は、米国経済学会のサイト上への登録を行い、その後互いに情報公開し、研究機関は興味ある候補者に直接連絡を取る方法です。これにより市場での選択肢を豊富にするという意味で市場の「厚み」が保たれるとしています。
就職を希望する高校の新規学卒者が、社会への第一歩である就職活動で躓くことは、ニート、フリーター、ワーキングプアなどさまざまな社会問題につながっていきます。このことは単なる労働問題に止まらず、晩婚化、未婚化、少子化、所得格差と教育格差、労働意欲、年金制度、治安など社会全体に負の連鎖をもたらすこととなり、その影響は計り知れません。
一方、中小企業にとっても、新卒者の確保は経営を左右させる重要事項であることから、求人にかかるコスト圧縮と長期化は避けたいのが本音ではないでしょうか。
そこで、先の方式を踏まえ、県が積極的にマッチングにかかわることが重要であると考えますが、高校の新規学卒者の就職率の向上に向けて、求人企業と就職希望者のミスマッチの解消について、今後どのように取り組んでいくのか、ご所見をお伺いします。
5 東日本大震災で発生した災害廃棄物の受け入れについて
質問の第5は、「東日本大震災で発生した災害廃棄物の受け入れについて」です。
東日本大震災の本格的復興に向けた12兆1千億円規模の国の第3次補正予算が成立しました。この中には放射能汚染への懸念から難航する災害廃棄物の処理について、災害廃棄物処理事業費3,860億円が盛り込まれたことや、野田総理自ら全国都道府県知事会議の場で「政府としても安全対策に万全を期すので協力をお願いしたい。」と災害廃棄物の受け入れに言及したことから、本格的な処理が進むことが期待されます。
井戸知事におかれても、いち早く関西広域連合での災害廃棄物の受け入れを表明されたことは、一人の県民としてうれしく思います。
東日本大震災により岩手・宮城・福島の3県から通常排出される廃棄物の数十年分とされる約2,300万tもの災害廃棄物が発生し、その内約1,500万tは仮置き場へ搬入されたものの焼却・埋立などの処理が進んでいません。国では福島県で発生したものは県内で、また岩手・宮城県で発生したもののうち県内での処理能力不足により処理できないものについては県外で広域処理し、平成26年度末までに終えるとしています。
国が全国の各自治体などに対し広域処理を進めるために4月に実施した調査では、42都道府県の572市町村・一部事務組合などで処理を受け入れる意向があるとされました。また県下では34市・町・事務組合が受け入れ可能と回答していましたが、放射性物質に対する不安などから、10月には受け入れを検討しているのはゼロとなりました。10月の調査では「既に受け入れを実施しているか」や「受け入れに向けた職員派遣や具体的検討が行われているか」または「受け入れにむけた検討を行っているか」について尋ねたものであり、照会方法にも不備があったとはいえ、残念な結果です。
知事も10月の定例記者会見で、災害廃棄物の受け入れについて「がれきの放射能汚染について、国の指導基準やガイドラインで明瞭にされていない」ことや「客観的科学情報も意外と十分に伝わっていない」ことなどの問題点を指摘され、「客観的科学情報も踏まえたうえで、不安のない形で受け入れて行くべき」であることや、「やみくもに何でも受け入れればいいということではない」との見解を表明されていました。さらに、追い討ちを掛けるように、処分の受け入れを検討していた、大阪湾フェニックス処分場における受け入れについても、埋め立て時の海水との接触により、汚染の恐れがあるとの報道がありました。
今のところ東北地方以外で唯一受け入れを行っている東京都は、一昨日から試験焼却が始まりましたが、平成25年度までの3カ年で、50万tの木くず等の可燃性廃棄物、廃畳、混合廃棄物、焼却灰を処理するとしており、その基準は「東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライン(環境省平成23年8月11日)」によるとしています。災害廃棄物の受け入れを表明以降、東京都には多くの反対や苦情の声が寄せられていますが、ホームページで搬出先の放射能測定調査の結果などについて公開し、日々更新を行っています。
お隣の大阪府でも、放射線による人体や環境への影響がないよう、災害廃棄物の処理指針の策定に向けた検討会議を9月より実施しています。一昨日に開催された検討会議では、参加者による不規則発言により会議は途中で打ち切られましたが、年内に指針を取りまとめる予定は変えないとのことであります。
東日本大震災での災害廃棄物の受け入れを進めていくことは復興支援にもつながります。またその処理にあたっては、県や広域連合での広域処理は不可欠です。
受け入れにあたっては、県民の十分な理解を得ることが必要であり、その判断のための前提となる災害廃棄物に対する現状の課題を、県民と共有しなければなりません。
このような中、国は先月18日に岩手県、宮城県で発生した災害廃棄物の広域処理の安全性に関するガイドラインを改定しました。
そこで、県としても災害廃棄物の受け入れに向けて研究・検討していく必要があると考えますが、現状の課題認識とともに、今後の方向性について、知事のご所見をお伺いします。
岸口実
(明石市)