議会の動き

掛水 すみえ議員が一般質問を実施

第315回兵庫県議会 一般質問(平成24年12月11日)

                    質 問 者:掛水 すみえ 議員
                    発言方式:分割

1 ディーセントワークの理念を生かす労働政策について

質問の第1は、「ディーセントワークの理念を生かす労働政策」について、3点お伺いします。

(1) 労働政策の説明責任について

1点目は、「労働政策の説明責任」についてです。
兵庫県では、2009年8月から2014年3月まで重点的に取り組むべき政策の目標と工程を定めた「県政推進プログラム100」について、3年目に当たる昨年度の取り組み状況を7月に発表し、新聞にも掲載されました。このプログラムは、「安全安心」「産業立県」など6つの分野について100のプログラムにまとめ、それぞれの達成のため413の施策群と具体的な施策592を設定しています。
私は、事業推進について、常に検証を行うことは重要と考えますが、施策設定にいつも疑問を感じていました。それは、県が率先して取り組む重点的政策と施策設定との乖離があると考えているからです。例えば、現在、厳しい雇用状況下ですが、プログラムの「多様な雇用機会の創出による生活の早期安定化」の項目では、緊急経済・雇用対策の推進は全てに目標達成を示す◎が付いており、特に緊急雇用就業機会創出事業・ふるさと雇用再生事業について、マスコミは100点と報道しました。しかし、それには、あまりにも肌感覚のずれを感じました。これは、目標10,201人に対して24,808人の雇用創出を受けてのことでしょうが、特に若年者雇用に依然と厳しい状況を量だけの判定では、県の労働政策の説明になるといえるのでしょうか。
緊急雇用就業機会創出事業とふるさと雇用再生事業を合わせた2012年度の雇用創出基金事業は県全体で64億円に上る高額です。産業労働部の労働施策に係る24年度当初予算が約86億円ですから、その規模の大きさが分かります。しかし、事業の執行に当たっては、積み上げられた基金を各部局で短期雇用に消化するだけになってはいなかったでしょうか。緊急対策としての公的就労事業の場合も、ディーセントワークの実現を優先的に追及しなければならないと考えます。
文部科学省が8月に公表した学校基本調査速報によると、大学卒業者の22.9%、12万8千人が安定的な雇用に就いておらず、若年層に厳しい雇用現状が示された形です。問題は、社会に新たに参入する若者達が最初の段階で非正規雇用を強いられ、適切な労働能力の形成から排除されることです。一定の経済成長の確保というマクロ的対応も必要と考えます。
そこで、目標達成の◎をつけるためには、喫緊の課題である若年層の雇用対策に全部局あげての対策・戦略があってこそのプログラムと考えますが、県としての労働政策の説明責任をどのように考えておられるのかご所見を伺います。

(2) 兵庫県における労働行政について

2点目は、「兵庫県における労働行政」についてです。
神戸市ハーバーランド内に「八時間労働発祥之地」という碑が立っています。碑文には、「大正8年当時の川崎造船所が我が国で最初に8時間労働制を実施したこと」が記されています。先駆的な労働条件提示が神戸発祥ということで有名な碑です。
県ではこれまで、労働行政に対して、県内の実態を踏まえて各県民局商工労政課が地域の相談などきめ細やかに対応し事業を推進してきました。特に、1995年の阪神・淡路大震災後、厳しい状況下で被災者の声を拾い集めて、経済雇用活性化プログラムを策定し、働き方を考え、早急な復旧・復興に取り組みました。また、雇用確保のため政・労・使三者の合意を経て、初めてワークシェアリングにも取り組みました。その後、ワーク・ライフ・バランスについては、政・労・使三者連携の実績を生かして「ひょうご仕事と生活センター」を設置しました。今後、労働時間の短縮を基底に、より前進することが求められます。
そして、地方分権一括法により、地方の役割は増大しましたが、労働行政は国の一括管理となり、県としての労働行政の存在が薄くなりました。産業労働部として、この不況の折、商工関係の事業を推進されていますが、商工と労働は表裏一体のものです。
そこで、阪神・淡路大震災からの復興の過程で培ってきた兵庫県独自の取り組みを今後の推進にどのように生かすのか。また、県民局商工労政課の組織強化が重要と考えますが、ご所見を伺います。

(3) ディーセントワークの労働政策について

3点目は、「ディーセントワークの労働政策」についてです。
ディーセントワークは、1999年ILOのファン・ソマビア事務局長が提唱し、日本では、「働きがいのある人間らしい仕事」と訳されています。ILOは雇用の危機の克服には数年必要としており、ディーセントワークを危機克服の要石として位置づけ、2006年から10年間を「ディーセントワークのための10年」に指定し活動を進めています。
先日、ハローワークに行き、所内の実態調査をしました。約6割の方々が雇用保険を受給されており、その中で気になったのが、高齢者や転職を求める若い人達、そして赤ちゃんを抱きかかえて職探しをしている若いシングルマザーでした。つまり、生きるための働きを求めている人達でした。
2008年の労働経済白書には、「日本におけるディーセントワークに向けての課題として、正規雇用化に向けた取組や長時間労働の是正が重要である。こうした問題を解決するためにも、仕事と生活の調和に向けた取り組みを進めると共に、ディーセントワークの意義を政・労・使が改めて考え深めていく中で更なる取り組みを進めていくことが求められる」とディーセントワークを避けて通ることができないとの認識があります。経営者側にも労働組合にもディーセントワークへの言及がなされ、働く者の生活安定のための施策の必要性が問われています。今こそ、県行政として、ディーセントワークを中核に据えた施策展開は喫緊の課題です。兵庫における政・労・使三者連携の実績を県民局単位にきめ細やかに地域で実行することによって、働きやすい環境整備が進むことを国内外に発信できるものと考えます。
そこで、県としてディーセントワークの理念を生かす労働政策についてどのように考えられるのかご所見を伺います。

2 障がい者雇用について

質問の第2は、「障がい者雇用」についてお伺いします。
先日、「障がい者年収200万円以下99%」という新聞記事を目にしました。全国の障がい者福祉施設でつくる団体の全国調査によるものです。加盟施設などを通じ、身体・知的・精神などの障がい者が通所施設などで働く本人や家族ら約1万人(平均40.4歳)の生活保護、障害手当、給与、工賃などを合わせた月収は、4万2000円以上8万3000円未満が最多の41.1%、年収では100万円以下が56.1%、200万円以下が98.9%との回答を得たもので、障がい者の自立を取り巻く環境が裏づけられているといえます。また、生活状況では、親と同居が56.7%、きょうだいと同居が18.3%と障がい者の多くが十分な収入を得られず家族に依存して生活しています。障がい者の収入保証制度や障がい者を雇用した企業への公的支援の充実が求められます。
一方、国では、「障害者自立支援法」に代わる「障害者総合支援法」や、障がい者の働く施設からの優先的購入等を促す「障害者優先調達推進法」が、来年4月に施行されます。また、障害者法定雇用率が来年4月から、民間1.8%から2.0%へ、官公2.1%から2.3%へ、教育委員会2.0%から2.2%へ引き上げられます。いつも雇用率を達成したかどうかが問題視されますが、特別支援学校の卒業生のうち約60%が法定社会福祉施設に入所、一般企業への就職は1~2%、就業移行支援を受ける方が16.4%という状況です。
9月に開催された「障がい者雇用フェスタひょうご2012」において、県立精神保健福祉センター所長の精神障がい者の雇用支援の講演の中で「障害に対応するのではなく、障がいのある個人に対応すること、これは、どの職員とも同じ対応が必要となる。」という言葉が印象的でした。そこで、障害者雇用にあたっては、まず特別支援学校の卒業生が、社会・地域での活動や雇用の願いが叶えられるよう企業と教育の連携強化を形作ることが重要と考えますが、そのことも含め、今後、県としての障がい者雇用にどのように取り組んでいかれるのかご所見を伺います。

3 インクルーシブ教育の実現について

質問の第3は、「インクルーシブ教育の実現」についてお伺いします。
1993年、国連は「障害者の機会均等化に関する基準規則」を採択し、「統合された環境における初等・中等・高等教育の機会均等の原則を認識すべき」との統合教育の動きが急ピッチで進んでいます。今日、国際的動向として、分けてから一緒にする統合教育から最初から分けないインクルージョンが強く唱導されているところです。
我が国においても、2011年に障害者基本法が改正され、16条1項に「可能な限り障がい者である児童及び生徒が、障がい者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しなければならない」と明記されました。先の6月議会で我が会派の越田議員の代表質問に対して、「国のインクルーシブ教育システムの構築の動向、本県の児童生徒の実態を踏まえて検討する」と答弁されましたが、既に新たな取り組みが国内で見られることを県としても認識し、率先して取り組んでもらいたいと思います。
例えば、特別支援学校のICT活用は、視覚障害や肢体不自由の分野で先行して導入され、知的障がいの場合は「知的な活動より体を動かして学ぶ」ことが強くあるために、高等部においては就労に向けてのICT教材活用は少ない状況の中にあって、沖縄県では、知的障がいの子ども達の支援ツールとしてタブレット型端末の利活用が進み、本人の本来の能力を支援機器で補うことで理解ができる状態を作り出しています。また、東京都・埼玉県では、学籍は特別支援学校に置きつつ、居住地域の小・中学校を地域指定校として、副次的な学籍を置く「副籍・支援籍制度」が進んでいます。
今春、同一敷地内に開校しました阪神昆陽高校・阪神昆陽特別支援学校において、共に学べる学習形態やノーマライゼイションの科目を設定し、障がいへの理解を進めていることは承知していますし、児童・生徒が学ぶための環境整備が直近求められますが、それ以上に、障がいのある児童生徒の自尊感情を育み、働くこと・生きることへ個としてのステップアップするために従来のものさしではなく、新たな中核となる方針を持つべきと考えます。
そこで、インクルーシブ教育の実現に向けて、県として第二次特別支援教育推進計画をどのように立てられようとされるのかご所見を伺います。

4 移動権確保のための総合政策について

質問の第4は、「移動権確保のための総合政策」についてお伺いします。
1992年、県は全国に先駆けて「福祉のまちづくり条例」を制定しました。中でも、条例の前文には、「すべての人々が、一人の人間として尊重され、等しく社会参加の機会を持つことにより自己実現を果たせる社会の構築こそ人類の願いであり、我々に課せられた重大な責務である」とあり、当時として「すべての人々」の文言を用いた先見性を大いに評価します。その後、少子高齢化の急速な進展、障がい者の施設居住から地域居住の流れ、子育てしやすい環境への要求の高まりやニーズの多様化、人々の自己主張と意欲の高まり、そして、それらを統括する形での、より安全・安心な快適社会への希求がユニバーサル・デザインの理念をつくり、現在、実践へとつながっています。
福祉のまちづくり条例は、2010年の改正において第1条に「ユニバーサル社会づくりの視点」を取り入れ、対象者が追加されました。国においては、1994年・ハートビル法、2000年・交通バリアフリー法、そして2005年国土交通省は、ユニバーサル・デザインが政策の重要な柱であると明確にした「ユニバーサルデザイン政策大綱」を発表し、2006年、適用対象を拡大したバリアフリー新法を制定し、建築と公共交通・道路の連携強化、即ちアクセシビリティ整備をまちづくりとして進めやすくする方向性を打ち出しました。
また、2006年12月には、国連総会において障害者権利条約と同選択議定書が採択され、日本でも、2011年に障害者基本法が改正され、適用対象者が社会に出て、職業を持つこと・学校で学ぶこと・外出するためには、移動しやすいまちに変えていくことが不可欠なものとなり、移動しやすいまちづくりには、だれもが利用できる公共交通の整備も欠かせません。
しかし、ユニバーサル社会実現のためには、移動権が重要であるということを考えたときに、単に交通政策として考えるのではなく、観光・産業・福祉・教育・環境などの地域課題への視点が重要であり、それらを総合的に考え政策を進めていくことが必要です。
そこで、年齢や性別、文化の違いにかかわりなく、誰もが安心して暮らせるまちづくりのために、それらさまざまな分野の地域課題と関連づけた移動権確保のための総合政策の取り組みが必要と考えますが、ご所見を伺います。