質問日:平成25年10月8日(金) 質問者:民主党・県民連合 大塚たかひろ委員
1 横尾忠則現代美術館のあり方について
(1)個人の名を冠した美術館の運営について
昨年11月、神戸市灘区にある県立美術館王子分館の原田の森ギャラリー西館をリニューアルし、世界的美術家、横尾忠則氏から寄贈、寄託を受けた、世界最大の横尾作品コレクションと、膨大なアーカイブ資料を収蔵・展示する「横尾忠則現代美術館」がオープンした。
横尾氏は、ご存じのとおり、西脇市出身の美術家であり、県においては県立美術館の前身の県立近代美術館時代から、横尾忠則展を何度か開催してきた。そういった縁もあって、平成19年に横尾氏より約3万点に及ぶ作品のうち、主要なものを段階的にふるさとである兵庫県に寄贈したいと申し出があり、原田の森ギャラリー西館整備企画委員会の提言を受け、県立美術館王子分館に「横尾忠則現代美術館」の設置を決定した。
同館では、3千点に及ぶ横尾氏の貴重な作品の展示・保存をしている。また、来館者が身近に前衛美術に触れることができるよう、オープンスタジオでの公開制作やワークショップ、さらにはコンサートの開催など、子どもから大人まで幅広い世代を対象とした多彩なイベントが開催されていると伺っている。
美術館は、コレクションの形成とその公開を通して、多様な価値観や感性が存在することを広く分かちあい、学術・文化の発展、郷土意識の涵養、あるいは教育・学習の支援を主な役割としている。公立の美術館は設置目的、美術館の独自の役割や地域に対する使命を明らかにする必要があると考える。
横尾美術館の開館、運営にあたっては、24年度に2億25,129千円を新規事業として計上し、開館記念式典や作品展示準備等の初動経費、展覧会や作品の保存、イベント等の運営費などに充てている。
そこで、本美術館の開館・運営にあたってのコストに、県民の税金が使われている訳であるが、個人の冠をつけた美術館を自治体が運営することについて、県としてどのように捉えているのか伺う。
また、美術作品は保有した時点から、公開・非公開に関わらず経年劣化が始まり、その維持管理のためにコストが生じる。県民の美術館として、県民財産である作品を守る必要から、今後の維持管理費の見通しについてもお聞かせいただきたい。
(2)今後の美術館の運営方針について
横尾忠則氏は、世界的美術家とはいえ自治体が運営する美術館の名称に個人の名前をつけているのは珍しいのではないかと調べてみたところ、他府県においても同様に地元にゆかりのある芸術家個人の名前を冠にした公立の美術館があった。
例えば、神奈川県にある「川崎市岡本太郎美術館」。この美術館では、建物に自然を十分に取り入れた設計が施され、「体験型展示空間」をコンセプトに地域住民との協働によるイベントや、他の芸術家とのジョイント展示などの工夫によって、岡本氏の作品等を感動的に伝えている。また、香川県には、「県立東山魁夷せとうち美術館」があり、コンパクトながら目標入場者を毎年上回る動員数を達成するなど、大変魅力ある施設となっている。
美術館には教育的、郷土意識の涵養などの役割も兼ねている。横尾氏は兵庫県出身の画家で、少年時代に過ごした西脇時代の経験や就職してからの神戸時代等が、今も作品のモチーフとなり、繰り返し描かれている。横尾美術館を通して、横尾さんの芸術家となっていくストーリーや同じ兵庫出身の画家であるという意識を横尾作品を通して見せていくことも、公立美術館としては大事なことではないか。
もちろんご存命で、現在も精力的に作品を制作されている訳であるが、文化遺産ではなく、現在進行形で生きている文化を展示している。作品だけではなく、作品に付随する本人からのメッセージやストーリーなどを蓄積していける美術館だともいえる。これをもっと積極的に強みにしていけるのではないか。
今後の横尾忠則現代美術館の運営方針について伺う。
(3)横尾美術館の利用促進について
横尾美術館では、来館者の利用促進のために、企画展の開催、来館者に実体験してもらうワークショップ、さらには、存命であられる横尾氏個人の多岐に渡る人的ネットワークを活用した講演会や音楽ライブを開催し、来館者が楽しむことができる工夫を行っている。
しかし、一度だけの来館ではなく、継続的に美術館に足を運んでもらう、いわゆる「リピーター」になってもらうには、それらに加え、やはり近隣の施設や地元との連携を図り、誘客を促進する仕掛けづくりが必要と考える。
まず、すぐ近くに市立の動物園があり、南に行くと徒歩圏内にはHAT神戸に県立美術館、「人と防災未来センター」といった県立施設がある。また、平成22年には、王子動物園から県立美術館までを「ミュージアムロード」と命名し、神戸市・地域商店街・住民が一体となって、イベント等を開催して、文化施設が集積する南北の地域を盛り上げている。
現在、県においては、横尾美術館と県立美術館との相互の割引チケットを発行したり、期間限定で無料バスを走らせたりしているが、今後、近隣の施設や観光資源とどのように連携させ、横尾美術館の利用促進につなげていくのか伺う。
2 高齢者の交通安全対策について
(1)高齢者の交通安全対策の成果について
近年の交通事故の状況を見ると、人身事故件数は顕著に減少傾向を示している。しかしその反面、高齢者が関係した交通事故の占める割合は年々増加している。昨年の県下の交通事故死者数は179人で、そのうち高齢者は48.6%を占めている。その特徴としては、歩行中、または自転車乗用中の事故が多く、約8割の67人の方が亡くなっており、さらにそのうち、自宅から500メートル以内の事故の発生が約7割の43人である。
県では、これまでから高齢者の交通事故の多い地域を「高齢者交通事故防止対策推進地域」に指定するなど、市町等と連携した取り組みを推進している。具体的な例を挙げると、24年度予算「交通安全シルバー元気アップ大作戦」において、同地域にお住まいの高齢者にわかりやすい事故防止アドバイスを掲載した「交通安全シルバー元気アップかわら版」の配布のほか、高齢者と接する機会の多い組織・団体等で活動する方を交通安全ワンポイント指導員として委嘱し、交通安全の呼びかけを強化するなど、地域密着型の啓発活動を展開している。さらには、警察・交通安全協会等とともに参加・体験・実践型の自転車教室を開催し、その受講者に自転車教習修了証を交付する自転車運転免許証等制度に取り組んでいる。
そこで、県として高齢者の事故防止に向けた交通安全対策の取り組みとその効果について伺う。
(2)高齢者の事故を防ぐ交通安全対策のあり方について
先ほどの答弁で取り組みを伺い、対策が一定の成果を上げていることは十分認識できた。
一方で、内閣府が発行した「平成25年度版 高齢社会白書」によると、我が国の総人口は昨年10月1日現在で1億2,752万人、うち65歳以上の高齢者人口は過去最高の3,079万人。総人口に占める65歳以上人口の割合、いわゆる高齢化率は24.1%で前年度から0.8ポイントも増加した。現在、我が国は、世界に例のない速さで高齢化が進んでおり、どの国もこれまで経験したことのない超高齢社会を迎えている。これまでの「人生65年時代」から「人生90年時代」に突入しようとしているのがまさに今である。
したがって、今後、高齢者が増えるにつれ、高齢者に対して交通安全の啓蒙活動をし、今まで以上の効果を上げていくには、限界があると考える。それは、高齢者の特性を考えた時、やはり体力的な即時の判断力の低下がいなめないからである。そうであるならば、高齢者の交通事故を防ぐには、高齢者の特性を高齢者ではない若い世代に認識してもらう必要があると考える。
そこで、県として高齢者の交通事故を防ぐために、高齢者の特性を踏まえた若者向けの交通安全対策について伺う。