議会の動き

永富 正彦議員が質問(予算審査・総括審査)

平成27年度予算特別委員会質問要旨(総括審査)

質 問 日:2015年 3月13日(金)

質 問 者:永富 正彦 委員

1 地域創生に向けた取組みについて

県では、今議会に上程されている「兵庫県地域創生条例」に基づいて、今後、地域創生に向けた取組みを推進していくために、5年間の総合戦略を策定することとしています。

昨年12月に国が先行して「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定しましたが、地方創生に向けた取組みを実効あるものとするために、短期・中期の政策目標を設定し、政策の進捗状況について検証・改善する仕組みを確立する必要があるとしています。地方においても2016年度以降、地方版総合戦略に基づいて、データによる政策効果の検証・改善を進めるPDCAサイクル、つまり計画、実施、評価、改善を本格的に稼働させるとしています。

人口減少対策においては、絶えず政策効果を検証し改善していくことが必要であります。このことは、言い方を換えれば人口減少対策に特効薬はないということを意味しています。従って、人口減少に歯止めをかけ地域を創生していくためには、幅広い観点からあらゆる施策を講じていくとともに、本条例にも規定しているとおり、施策の推進にあたっては、県民、事業者、市町など地域の多様な主体と連携することが重要です。地域を愛する多様な主体が参画するからこそ創意工夫が生まれ、地域に磨きがかかると思います。

しかしながら、地域創生において忘れてはならないのが、経済の豊かさ以上にその地域に暮らす人々の心の豊かさの実感が重要だということです。経済力だけを追い求めていたのでは、やがては地域格差を生んでしまいます。日本の良さ、兵庫の良さ、地域の良さを活かした「心のゆたかさ」が実感できる地域づくりを推進していく必要があるのではないでしょうか。

五国からなる本県は、地域によって風土や文化が異なることから、人口減少を始めとする地域創生に向けた取組みも地域によって様々であると考えます。

そこで、地域の多彩な主体が参画して地域の特色を活かした地域主導・住民主役の取組みにより、個性豊かで元気なふるさとが創生されると考えますが、知事の考えをお伺いします。

2 格差社会の是正に向けた取組みについて

残念ながら生活保護受給者が増加していますが、今年4月から、生活保護制度に頼らずに働いて自立できるよう就労、住居、子どもの学習を一体的に支援する生活困窮者自立支援法が施行されます。

県では、来年度から法律の施行に合わせて新たに関連事業として、住宅の確保や就労、生活習慣等の支援を行うこととしていますが、既に先行実施している生活相談、就労訓練等のモデル事業を通じて得られた成果や課題を4月からの事業実施に活かしていただきたいと思います。

この法律での支援対象者は、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者としていますが、基準が明確でないことから、実態把握に困難が伴うことが予想されるため、対象者を確実に把握できるよう国・市町をはじめ関係機関との緊密な連携が欠かせません。

また、生活困窮に至った経緯は様々であることから、自立に向けた就労支援では、これまでから障害者や離職者さらには引きこもりなどの方を対象とした支援で実績のあるNPO法人等との連携も必要であると考えます。

先の質問でも触れましたが、地域創生の推進にあたっては、経済力だけを追い求めていたのでは格差を生んでしまいます。「心のゆたかさ」が実感できる地域づくりを目指していかなければなりません。そのためには、格差社会の要因となっている働きたくても働けないで生活困窮に陥った人たちに目を向けて、一人ひとりが自立した生活が送れる地域社会を築いていくことが必要です。

そこで、様々な課題を抱える生活困窮者を生活保護に至る前の段階で支援し自立へ導くためには、詳細な実態把握に努めるとともに、国・市町等の関係機関とも連携した取組みが欠かせないと考えますが、あらためて今後の取組みについて当局のご所見をお伺いします。

3 次世代へつなぐ戦没者追悼行事のあり方について

今年夏には、県主催の「兵庫県戦没者追悼式」が県公館で、また秋には「終戦70年全国戦没学徒追悼式」が南あわじ市の若人の広場公園でそれぞれ開催されます。戦後70年という節目にこれら2つの追悼式が本県で執り行われることは、非常に意義深いことだと感じております。

これらの戦没者追悼式は、戦争で犠牲になられた人に追悼の誠を捧げるとともに、戦争の悲惨な体験を伝承することを目的としており、県内の市町でも独自に追悼式典が開催されていますが、遺族の高齢化や転居等で参加者が減少傾向にあるとも聞いており、これからの追悼行事に向けての課題となってくるのではないでしょうか。

また、人口の80%が戦後生まれとなり、やがては国民のほとんどが戦争を知らない世代へと交代していきますが、戦争の記憶が次第に薄れつつある今だからこそ、殉国の史実を風化させることなく、生命の尊さ、平和の大切さ、戦争の愚かさを後世に語り継ぎ、再び悲しみの歴史を繰り返さないため、永久に戦争を放棄する「不戦の誓い」を新たにしていくことが大切です。

部局審査では、戦後70年という節目にあたり、これらの追悼行事についても、未来志向の下に次世代に向けた平和への願い・思いを語り継いでいく取組みが必要であると提案したところであり、当局からは、平和への願い・思いを次世代へ継承していくという観点から、若年世代により多く参列してもらうため広く県民に参加を呼びかけていくとの答弁がございました。

国では、今年夏に安倍首相が戦後70年談話を発表しますが、平和国家として生きる日本の決意とも言えるこの首相談話に世界中が注目しています。過去の談話をどのように引き継ぎ、これまで築いてきた平和主義をどう発信していくのか、しっかりと考えていただきたいと思います。

一方で、これらの追悼式の開催地である本県からも、平和の尊さと戦争の愚かさを世界へ向けて発信していくことが重要だと考えますが、知事のお考えの下、何をメッセージとされるのかをお伺いします。

4 県立病院の大規模化について

県立病院の運営については、県民から信頼され安心できる県立病院づくりを推進するため、「第3次病院構造改革推進方策」に基づき、「より良質な医療の提供」、「安心してかかれる県立病院の実現」、「自立した経営の確保」、「安定した医療体制の確立」を進め、病院構造改革の一層の進展を図っていくこととしています。

そのような中、県立尼崎病院と塚口病院が統合し、平成27年7月に尼崎総合医療センター(仮称)が開院します。続いて、平成28年度には老朽化し、狭隘となっている「こども病院」のポートアイランドへの建替移転に続いて、翌年度には小児がんに重点を置いた新粒子線治療施設が新こども病院整備地の隣接地に整備されます。そして、平成30年度には柏原病院と柏原赤十字病院が統合再編し、新病院が整備されます。

また、過去十数年を見ても、平成13年の粒子線医療センター、平成15年の兵庫県災害医療センター、平成21年には加古川医療センター、平成25年には淡路医療センターがそれぞれ開設されるなど、県立病院の新設や建替整備がなされています。

病院局の部局審査においては、我が会派の竹内委員が、先日報道された平成33年度に向けた姫路循環器病センターと製鉄広畑病院の統合検討についてお伺いしました。統合検討を行うに至った経緯や、製鉄記念広畑病院の統合後の地域医療の維持に関する問題などの課題等を確認いたしました。改めて救急医療の充実など中播磨、西播磨医療圏域における総合的かつ高度で専門的な医療を提供できる中核病院となることへの期待を答弁として受けましたが、経営面等を初めとした課題解決もしっかりと図りながら進めていただきたいと考えます。

また、経営面での課題という意味で、病院事業会計に対する一般会計繰入金についても部局審査で伺いました。平成27年度の県立病院事業の収益的収支は約59億円の赤字見込みとなっていますが、この赤字は、県立病院全体で約150億円に及ぶ一般会計からの繰入金を収入に入れた上での赤字であること、あるいは、資本的収支における約34億円も含め、約184億円の県からの繰入金が入っていることを確認しました。一方で、交付税措置があるとは言え、直接の病院利用者以外の負担額も多額となっていることから、適切な情報開示と県民の理解が必要です。

先日、3月2日の定例記者会見において、県立西宮病院と市立西宮病院の統合移転について、知事は「県立西宮病院は改築したばかりなので、統合は喫緊の課題ではない。」としながらも、西宮市から「熱いラブコールを受けている状況にあることは承知しており、両病院の置かれている現状分析等を行っている段階」と語っておられました。言うまでもないことですが、地域医療における必要性の検討はもちろんのこと、①病院事業における累積欠損金が平成26年度末で約130億円の見込みとなっていること、②県立病院が瀬戸内海沿岸に偏在して立地していること、③過去には小泉内閣が小さな政府を目指した診療報酬の大幅減額など、予期せぬ経営リスクが存在すること、そしてそれらが県財政に影響を与えること等を含め慎重な検討が望まれます。

そこで、県立病院の統合再編等による大規模化について、どのようなビジョンを持って進めようとしているのかお伺いします。

5 県内中小企業の振興について

景気回復の兆しが見える中、未だその恩恵を十分に受けていない中小企業の現場においては、人手不足や事業継承難といった課題を抱えています。部局審査では、我が会派の掛水委員から、中小企業対策として人材確保が重要であることを申し上げ、当局から関係機関との連携により事業継承支援と人材確保対策を更に取り組んでいくとの答弁がありました。総括審査においても、この課題認識のもと、県下の優れた技術力等を持つ中小企業が採用したい人材を確保・定着するための対策について質問させていただきます。

昨年4月に兵庫労働局が実施した中小企業ヒアリング調査によると、約4割の企業が正社員不足としており、そのうちの多くの企業が中途採用を予定しているとの結果が出ています。建設業では担い手不足が深刻になっているように、採用したい人材が集まらない、採用しても定着しない、人材が育たないなど業種によっても課題は様々です。

経済産業省が昨年8月に発表した中小企業の賃上げ等取組み状況調査では、中小企業にも賃上げの動きが広がってきていますが、従業員の定着・確保を賃金引上げの理由とする企業が多いことからもわかるように、中小企業において人材の確保が大きな課題となっていることがうかがえます。

県内における地域の雇用・経済を支えてきたのは、県内企業数の99.8%を占める中小企業であり、地域の活性化のためには地域の中小企業の活力が必要です。このことは、今県議会の知事提案説明において、地域の元気づくりは、地域の自発的・内発的発展を目指すことが基本であると述べられているように、大企業の繁栄のみでは地域の隅々まで豊かさは行き渡りません。

県内には古くから地域の特性を活かした“ものづくり産業”が各地で発展し、地場産業として地域経済を牽引してきました。今後とも地域の雇用を支えていくのは地域に根付いてきたこれら中小企業ではないでしょうか。また、地場産業のほかにも、県内にはオンリーワンの技術力を有する企業や障害者雇用に熱心な企業など魅力のある企業が各地域に存在しており、これらの企業と地域で働き続けたいと希望する新卒者やUターン、Jターン、Iターンで地域に戻ってくる人たちをマッチングしていくことが重要です。

そこで、地域の若者や都市部からの転入者が地域で働き続けられる環境を創るためには、地域の実情に応じ必要とされる人材の確保・育成を地域全体で取り組むことも重要であると考えますが、当局のご所見をお伺いします。

6 水田農業のあり方について

平成25年12月に国では、過去40年以上にも渡って実施してきた「減反制度」を平成30年に廃止することを正式に決定しました。農家が国による生産数量目標に頼らずに自らの経営判断で生産が行えるようになるわけですが、国に守られてきた農業から“自立型農業”へと大きな転換を迎えます。

米をめぐる情勢は、国内では米の消費量が依然として減少傾向にあり厳しい状況が続いていますが、食産業のグローバル化や健康志向から、2014年の米の輸出量は4,516トンと過去最高を記録し、香港やシンガポール、台湾などアジア諸国を中心に海外で和食ブームが起こるなど、米農家にとっては明るい兆しも見え始めています。

社会経済の国際化により、これからの日本の農業は世界市場で通用する成長産業へと変革が迫られ、国内のみならず海外との激しい競争に立たされることになり、生産コストの低減や品質向上に加えて、香りや食味など消費者の嗜好に合わせた高付加価値型の米づくりが今まで以上に求められてきます。

一方で、米をはじめ日本の農業が力強い産業へと成長していくためには、担い手の高齢化が進む現状において、特に意欲ある若い担い手の確保と育成が重要な課題であることを部局審査において申し上げたところです。新規就農者や認定農業者のほか農業参入法人など多様な担い手を確保・育成し、農地を有効活用していくとともに、旧態依然とした米づくりではなく、「魅力ある地域産業」や「稼げる米づくり」として新しい発想を受け入れる柔軟な取組みも必要です。

知事は今県議会の提案説明において、地域創生を最重要課題の一つと捉え、地域創生のためには地域の元気づくりが重要であるとして、地域の創意工夫によって地域特性を活かした農林水産業を育成していく必要があると述べられていました。

農地の9割以上が水田を占める本県においては、米づくりが中山間地域や都市近郊など各地域で行われており、「コウノトリ育むお米」など地域の特性を活かした高品質型商品も次々に誕生しています。

今後も、米を中心とした作付体系の中、地域の特産を活かした幅広い営農活動を展開していくことが必要であり、今ある水田を最大限に活用していかなければならないと考えますが、今後の本県における水田農業のあり方について、当局のご所見をお伺いします。

7 安全な兵庫の実現に向けた取組みについて

県では、道路、河川、治山・砂防、港湾・漁港、など、様々な社会基盤の整備に当たって、昨年3月に策定された「ひょうご社会基盤整備基本計画」を踏まえ、「ひょうごインフラ・メンテナンス10箇年計画」などの分野別計画を策定するとともに、同年6月には県民局ごとに策定している社会基盤整備プログラムを改定し、地域ニーズに応じた安全な県土づくりの効果的な推進に取り組んでいます。

そういう中、井戸知事は今定例会の提案説明で、「安全な兵庫。災害から県民の命と財産を守る強い県土づくり」を、新年度の県政の5つの柱の第一として掲げられました。この点は、平成27年度の社会基盤整備に当たっては、まず「安全」が必要な箇所や事業を第一に取り組んでいくことと理解しています。

部局審査で我が会派の各委員は、それぞれの部局で、巨大地震対策、施設の老朽化対策、河川改修などの取組みを伺いました。また、社会基盤の整備に関して、個別箇所の進捗状況等を本会議等も含めて当局に確認してきましたが、これらは昨年の8月豪雨からの災害復旧はもとより、津波・地震対策、風水害対策、土砂災害対策、施設の老朽化対策の確実な実施など、安全面での要望を県民から受けているという点で、会派を超えて共通であると思います。先ずは、県民の皆さんが第一に求めるものは「安全」のための社会基盤整備であり、知事の新年度の県政方針に合致するものと考えます。

そこで、地域の元気づくりの基となる安全な県土空間確保に向け、社会基盤整備に関し、今まで作ってきた計画を着実に推進するとともに、さらに拡充していくとの気概をもって、安全兵庫の実現のための「備える」を総合的にどのように取り組んでいこうと考えているのか、当局のご所見をお伺いします。

8 学校における家庭や地域全体で子どもを育てる環境づくりの推進について

平成26年度予算、今年度予算を審査する昨年3月の予算特別委員会において、我が会派の総括審査で「家庭及び地域の教育力の向上」について、教育委員会に伺いました。「地域のつながりが希薄化する傾向のある中で、地域において多様な世代が関わって子育てを支える必要があることから、子育て中の親が地域の身近な人たちとのつながりの中で子育てできる環境づくりに取り組む」との答弁を得ました。

また、今回の予算特別委員会の部局審査において、我が会派の掛水委員より、学校における様々な課題に対し、教職員の多忙化の状況も踏まえ、教諭だけでなく学校事務職員、栄養教諭、カウンセラーやソーシャルワーカー等の専門スタッフなどの人材も含め、学校に関係する人材が「チーム学校」として一体となって取り組むことを提案しましたところ、「国に要望してきた事務職員の配置拡充が来年度予算案で全国で150名が追加配置される予定である」ことなどを踏まえ、「まず、体制を整えていくことが先決である」との答弁を得ました。

「第2期ひょうご教育創造プラン」にも、子どもたちの学びを支えるためには、「学校・家庭・地域は、それぞれが子供たちの成長に関わる当事者として、責任と役割を果たし、互いに連携・協力して、子供たちの教育に取り組む必要がある。」と記載されており、家庭や地域全体で子どもを育てる環境づくりの重要性は十分に認識されていると感じますが、教職員の多忙化等の現状等から、なかなか効果的に進んでいないのではと感じます。

一方、子どもの安全安心の確保に関して、企画県民部では、「子どもを守る110番の家・店」の取組支援等を通じた地域全体で子供の安全を守る事業を、新年度より概ね小学校区を単位とした250カ所の地域団体で実施するとしています。もちろん教育委員会も連携して取り組むものと考えますが、この機を捉えて、家庭や地域全体で子どもを育てる環境づくりの推進にも一歩踏み出すべきではないかと考えます。

そこで、「チーム学校」の考え方に沿って、学校を中心とした家庭や地域全体の様々な人材が一体となった、家庭や地域全体で子ども育てる環境づくりの推進について、ご所見を伺います。