議会の動き

竹内英明議員が質問(決算審査・病院局)を実施

第310回9月定例会 決算特別委員会質問 (病院局)
2011年10月17日(月)

1 病院事業会計の黒字の検証について

(1) 患者数という量的な要素と1人当たりの収入という質的な要素について

 平成21年度の収益的収支 20億73百万円の赤字から、22年度は5億67百万円の黒字になった。前年度比26億40百万の収支改善である。
 県立病院の経営改革については、平成21年5月に県立病院改革プランが策定され、28年度の黒字化1600万円純利益が経営目標だったが、診療報酬の改定等を受けて23年4月に同プランの改定を行っていたが、21年の当初の予想では22年は8億9千万円の赤字だったので、2年前の予想からもプラス14億6千万円という大幅な収支改善がなされたことになる。
 前回、2年前にこの決算委員会でも質問し、厳しい指摘をしたが、現状がどうなのか今回も私なりに分析させていただいた。
 一般的に病院経営で最も重要なのは患者数と言われる。これは民間でも公立でも変わらない。平成21年5月の「県立病院改革プラン」でも、「患者1人1日当たり入院収益や外来収益は、『病院の収入分析をするうえで最も基本的な指標。料金収入を増加させるためには、患者数という量的な要素と1人当たりの収入という質的な要素が重要となります』としていた。
 まず入院。1日あたり入院患者数は2,830→ 2,913となり、83人増と2.9%増えている。しかし、このうち加古川医療センターのフルオープン化等に伴う病床数が108増した要因をみなければいけないので、病床利用率をみるが、82,4%→83,3%と病床利用率は0.9%の微増となっている。もう一つは、外来だが、1日あたり外来患者数は5,592 →5,574と18人減り、 99.7%。1日平均患者数は微減となっている。
 次に、1人当たりの収入について見る。
 入院単価51,566 → 55,310 +3,744 107.3%
 外来単価14,839 → 15,601 +762 105.1%
 いずれも5%以上伸びている。これは診療報酬の増額改定の影響とみて間違いないだろう。
 経営分析としては、患者数という「量的な要素」はさほど伸びていないが、1人当たりの収入という「質的な要素」が、かなりのプラス要因となったということだろう。
1人当たりの収入という「質的な要素」1人当たりの収入の対前年比、入院で7.3%、外来で5.1%の要因をどう分析しているか?

(2) 病院経営分析比較表による分析について

 診療報酬の改定は県立病院の自己努力ではどうにもならないが、他は経営努力。病院については官民比較というより、全国の公立病院との比較をすることで見えてくることが多い。
 調べてみると、総務省が全国の公立病院についての「病院経営分析比較表」というものを公表していた。HPにもあり、21年度決算分まで公表されている。
 比較されている経営指標だけでも見る価値はあるが、全国の傾向と比較してみると経営がよく見える、大変わかりやすい資料である。
 その中でも、平成22年度における給与費は46,749百万円と県立12病院の医業費用90,563に占める割合が51.6%(医業収益84,742に対して55%、総収益95,503の49%)と最大の費用となっているので比較してみると、人件費についての課題などよくわかる。
 年齢のばらつきが、多少あるとはいえ、全体として全国平均と比較してどうなのか?
 給与の比較をすると、公表されている経営分析表においては、準看護師の115.6%、医療技術員の115.3%と年齢が平均より少し高いとはいえこれらを筆頭に医師を除く全職種で全国平均より高くなっているが、医師だけは全国平均よりかなり低い90.6%。働いている場所は同じで、医師の場合は全国平均と年齢も同じなので、病院規模や地域だけでは説明が難しいと思うが、医師の給与だけが全国平均よりかなり低くなっている理由について説明願いたい。

(3)一般会計の負担について

 「病院経営分析比較表」には、一般会計の負担についても他会計繰入金対総収益比率という具合に比較されている。
 病院事業会計の収益的収支では、5億7千万円の黒字といっているが、126億円もの一般会計の繰り入れがあってのもの。つまりこの一般会計の負担がなければ赤字どころか、全く成り立たない。これが民間病院との決定的な違いである。また、これ以外にも病院の建設費用の負担などで42億円も負担しており、22年度だけで計168億円の負担をしている。
 新聞等に県立病院32年ぶりに黒字となると、県立病院が黒字ということは患者から利益をとるのかという人もたまに出てくる(議員でもいた)。先ほど一般会計から126億円入ったと言ったが、これは21年度より10億円多い。つまり、一般会計からの繰り入れがもし21年度と同額であれば、22年度も赤字だった(繰り入れ基準もあるので簡単に減らせないが)。新行革プランには、一般財源の負担する金額がわかりやすく記載されていた。これも認識しておかなければならない。
 病院事業に対する一般会計からの負担については、国も交付税措置により一定の支援を約束しているが、県は、交付税措置のない県独自の支援もしている。収益的収支126億円、資本的収支42億円の繰入金について、それぞれ国が繰入基準を設定していると思うが、基準の対象となる部分とならない部分の金額についてお答え願いたい。

2 県立リハビリテーション病院取得について

 最後に、改めて決算書を詳しく見てみると、企業債や他会計借入金の金額が多いことに気付く。償還する企業債には今度統合される尼崎病院の建設に係る償還分も含まれていた。建設費を返済している中で統合の準備が進んでいる
 その決算附属資料の企業債明細の中に、病院名としては見慣れない「本庁」という病院名があるのを見つけた。本庁には病院はないし、この項目自体が昨年まではなかったので、調べてみた。
 この借金は、本庁病院/借入資本金/発行日23.3.30=7,821=3,122[30年銀行等0.95%]+4,484[20年銀行等0.9]+ 215[4年銀行等0.6])。貸借対照表では「借入資本金」という科目に計上されていたので、それを頼りに調べたところ、「県立リハビリテーション病院」に行き着いた。23年3月30日に、病院局が県から2つのリハビリ病院の建物と電子カルテ等を購入し、その財源として7,821百万円の県債を発行した、その県債ということであった。
 県立リハビリテーション中央病院・同リハビリテーション西播磨病院といえば、それぞれ平成4年にリハビリ中央病院を立替え、西播磨については、18年に新設された病院で、現在も診療している。また、運営については県の外郭団体である(社)兵庫県社会福祉事業団が担当しており、契約方法が今年から指定管理者制度に変更されたことは承知している。
 ということで、県から県の病院局に建物の保有者が変わるだけなのに、新たに78億円も金融機関から借金をするということで驚いたが、県の財政担当者に問い合わせると、これらの建物は県が立替または建設当時に起債をして建設費用を賄った建物で、リハビリテーション中央病院・西播磨総合リハビリテーションセンターをあわせて現在も78億円の未償還残高が県本体にあるということであった。
 どういうことか、つまり、県の病院局と県本体の両方にそれぞれ78億円、合計156億円の県債が世の中に存在しているということである。
 同じ建物、決算時の価値は78億円しかないのに、県と病院局の両方が起債している、つまり、二重計上となっている。県の財政当局に更に意見を求めたところ、「病院局から県への所有権移転については建物と電子カルテ一式の対価として現金78億円を受け取った。そのため、いつでも県が過去に発行した県債の78億円全額を償還できる資金はあるが、もし繰り上げ償還するにしても相手の金融機関は運用しているので、繰り上げ償還ができない制度となっており、そのまま保有している」とのことであった。
 同じ病院の取得にかかる借金とはいえ、貸している側の金融機関がそれを担保にして抵当権を設定しているわけではないし、お互い知る話でもないので、それぞれの借金をきちんと返せば、相手方はそれで満足されることだと思うが、県民の立場に立てば同じ県なのに、それぞれが借金をしているということで、単純に言えば金利もその分かかっている。わかりにくい話だと思う。
 そこで、売った側の財政当局の担当者から、売買契約の方法や未償還残高については説明を受け、私なりに理解したので、こうした話をさせていただいたが、病院局の方も売買契約の際に一定の説明を受け、理解をされた上で、公印(管理者印)を押され契約したと思うが、私の理解で間違っていないか?

 病院事業として所有者を病院事業管理者にする必要があったことは理解する。しかし、売買契約をして所有権を移転して、当面払えない分については未払い金として病院の収益の中から割賦払いをする方法もあるし、県は様々な会計間でそれを実践しているのでそうした方法を使えば、外部の借金を二重にする必要はなかったと思う。
 1つの物件について2つの会計で起債が残っていても、それはたまたまで、こうしたことを禁じる規定もないようだ。しかし、悪用する人がいれば、同じ建物を転売していくと、2つでも、3つでも起債をしようと思えばできる。こうした手法で手持ちの現金を増やすことができるということである。しかし、こうしたことは本来議会がチェックすべき問題。23年2月の補正予算の議案の中にこの財産の取得について記載されていた、議案の形式としては問題がなかったことも自戒を込めてあわせて申し上げたい。しかし、またと言っては何だが今回もなぜか、今年の実質公債費比率が結果として、改善される結果になっている。もちろんこれはここで聞く話ではない。
ここは病院局であるから、黒字と言ってもまだまだ病院の経営は厳しいし、政治の考え方次第によっては、診療報酬を下げようとする人が政治を担うということもあるかも知れないので、そうしたことにも対応できる病院局であってほしいと思う。