議会の動き

◆15年12月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方

代表質問  黒田 一美 議員

一般質問  石井 秀武 議員

代表質問

(黒田 一美 議員)[発言方式:分割]

1 兵庫における医療・介護の充実について

(1)地域包括ケアシステムの現状と課題について

(2)療養病床・介護施設等の確保について

2 TPP大筋合意による県内畜産業及び水産業への影響と対策について

(1)畜産業の対策について

(2)県産水産物の消費拡大について

3 個性あふれる「ふるさと兵庫」の地域活力の再生-移住・定着の促進について

4 郊外型住宅団地再生の推進について

5 世界に飛躍する兵庫の中小企業(オンリーワン企業)の創出について

6 義務教育における不登校児童等への対策について

質問全文

質問日:平成27年12月4日(金)

質問者:黒田 一美 政務調査会長

質問方式:分割方式

【分割箇所:1(1)、(2)、2(1)~(2)一括、3~4一括、5~6一括】

1 兵庫における医療・介護の充実について

(1)地域包括ケアシステムの現状と課題について

今から10年後の2025年には、団塊の世代が全員75歳以上になり、65歳以上の高齢者人口が3,500万人(人口比30%)に達するいわゆる「2025年問題」が懸念されている。それに伴い、慢性的な疾患を抱える高齢者や要介護人口も約1.5倍になると予想され、医療や介護の受け皿整備が大きな課題となっている。

そしてこのような事態に対応するため、昨年、いわゆる医療介護総合確保推進法が成立し、病院機能の適切な発揮だけでなく、在宅等での医療・介護を推進する体制、地域包括ケアシステムが動き出した。

県では、2025年を見据え、効率的かつ質の高い医療提供体制を確保するため地域医療構想の策定に向けて取り組んでいる。本年8月の医療審議会保健医療計画部会に提出された資料によると、高度急性期の病床数が約1,000床、回復期は12,000床ほど不足、急性期と慢性期についてはそれぞれ約10,000床、3,000床過剰であるとの見込みである。

もとより、議論を進めるスタート台の数値であり、議論が進むにつれて変わっていくものとは思うが、私が危惧するのは、大幅な病床不足が見込まれる回復期の患者への対応である。回復期とは、急性期を脱し、在宅・生活復帰へ向けた支援を行う段階であり、条件が整えば、在宅等での医療・看護へ移行していく。国も、昨年度の診療報酬改定で、在宅復帰促進の要素を盛り込んでいる。また、要介護となっても自宅や子どもの家等での介護を希望する人が多い中、在宅医療・介護の必要性は今後ますます高まっていくだろう。そうであれば、その受け皿となる在宅医療・介護の条件整備はどのような状況にあるのか、県としても不断に把握していく必要がある。

今後必要な病床数や介護施設数などの具体的な数値は、平成30年の保健医療計画と介護保険事業支援計画(県老人福祉計画)の同時改定に向けた作業の中で検討されていくが、そもそも、その数値的な目標が達成されるためには、在宅医療・介護を支える地域包括ケアシステムが円滑に機能していることが重要な前提条件となる。しかしながら私が知る限りでも、訪問看護・介護の現場では、医療機関や介護施設と同様、看護師や介護士不足の状況にあり、体制を維持するのが難しいとの声がある。また、ケアマネジャーにとっては医師との連携をよりスムーズにする必要があるとの意見もあるようだ。

そこで、現在県で把握されている在宅医療・介護を実現する上での地域包括ケアシステムの課題と、今後その解消に向けた方策の展開について、どのように認識されているのか、当局の所見を伺う。

(2)療養病床・介護施設等の確保について

私は在宅医療・介護を推進する一方で、核家族化が進む中、在宅での医療・介護を受けることができない人のために、医療機関や介護施設等の確保も重要であると考えている。これらが一定数確保されることによって、今大きな問題となっている、介護離職の減少につながっていくためであり、先日政府も「介護離職ゼロ」実現のため、現行の介護保険事業計画等に基づく特別養護老人ホームの整備の加速化と、介護施設及びサービス付き高齢者向け住宅、いわゆるサ高住の整備を前倒し・上乗せすると発表したところである。

本県においても、先に述べたとおり、医療機関については、地域医療構想の策定の中で慢性期の病床数を把握しているほか、介護関係では、第6期介護保険事業支援計画に基づき、特養や介護老人保健施設等の整備を計画的に推進している。また、県内に264件あるサ高住のさらなる展開のため、整備費の助成を今年度から拡充したところである。

一方で、国は要介護1以上の高齢者が入居できる介護療養型医療施設(療養病床)を、平成29年度末までに廃止するとの方針を打ち出している。特養への入居が原則として要介護3以上となった今、この施設の存在は大きいはずである。なお、県内に45施設あり、定員は2,150人であるが、これが実際に廃止されるとなると少なからぬ影響があると懸念している。

このような国の動向を見据えつつ、また地域包括ケアシステムのもと、在宅医療・介護を推進しつつも、他方で療養病床や介護施設等の必要数の確保を行っていくことが2025年問題の解決のためには必要だと考えるが、当局はどのような認識を持たれているのか、所見を伺う。

2 TPP大筋合意による県内畜産業及び水産業への影響と対策について

(1)畜産業の対策について

兵庫の力強い農林水産業の展開については、これまでに多くの議員から質問が出されてきた。

先日のTPPの大筋合意によって、これまで以上に多岐にわたる分野で、取組み・支援強化を図っていかなければならないが、今回お聞きしたいのは、国の影響評価で懸念されるとしている品目のうち食肉、特に但馬牛以外の牛及び豚についてである。畜産の中でも、鶏については、TPP不参加国であるブラジルからの輸入が9割を占めるということから、今回は質問しない。

さて、今回の影響評価では、牛肉について、和牛やその交雑種、中でも高品質なものについては、品質・価格面から輸入品との競合は少ないと予想されている。これは、世界ブランドである神戸ビーフを擁する本県にとっては、一見影響が限定的であるように思われるが、県内で肥育されている肥育牛はもちろん但馬牛ばかりではない。TPPにより輸入が増加するアメリカ産やオーストラリア産牛肉と競合する価格帯の乳用種、つまりホルスタイン種、ジャージー種等は県内33戸で1,630頭、交雑種、これは品質による分類を行わない場合の統計となるが、62戸で6,580頭が現在肥育されている。今後、これらの比較的安価な牛肉を生産している畜産家への長期的な影響が懸念される。

また、豚肉についてであるが、差額関税制度の維持により当面、輸入の急増は見込まれないものの、長期的には低価格部位のみの輸入増加による国産豚肉の価格の下落が懸念されている。本県においては、養豚業者は32戸と全国30位の飼育戸数であるが、現在ひょうご雪姫ポークのブランド化を進めるなど販売促進の取組みを強めているところであり、影響は避けなければならない。

TPPの合意による対策として、国際競争力の強化というと、本県ではどうしても但馬牛の品質向上対策に目が行くが、一般消費者にとっては、普段から手が届きやすい価格帯の牛肉や豚肉への影響の方が、生活に直接響く。地産地消推進の面からも、この価格帯の牛肉や豚肉が国際競争に敗れ、外国産に置き換わってしまうことは避けなければならない。

そのためには、どのような対策を講じることが効果的なのか。政府のTPP関連政策大綱は発表されたばかりであるが、現時点で検討されている支援の方向性について、当局の所見を伺う。

(2)県産水産物の消費拡大について

次に水産物への影響についてお聞きする。

水産物についての影響評価では、海藻類は韓国や中国といったTPP不参加国からの輸入が大半であることから影響は限定的、そのほかの水産物についてはすでに関税率が低いものの、長期的には畜産物と同様、価格下落が懸念されるということである。

しかし、このほかに、もう一つ懸念される影響がある。それは畜産物、つまり肉類の関税撤廃による価格下落により安く出回り、さらなる魚離れが進むことである。国レベルで見ると、平成18年に国民1人1日あたりの肉類の消費量が魚介類を上回っており、その後その差が拡大する一方である。TPPを契機に、それがさらに拡大する事態は防がなくてはならない。

本県においては、魚離れ対策として、水産物の消費拡大のため、県漁連とコープこうべの協働による、ひょうご地魚推進プロジェクトなどの取組みを進めている。しかし、このような取組みは、もともと魚をよく食べる消費者には比較的届きやすいものの、問題はふだん魚を食べない消費者にいかに魚を食べてもらうか、ということである。

魚離れについて、以前私は地元の神戸市漁業協同組合から対策の相談を受けていた。そのときは漁協の若手で構成される水産研究会で議論を重ね、県内の学校給食に地元産ののりやいかなごを活用してもらうことを提案し、献立で取り上げられる回数を増やしてもらった。学校現場では地場の水産物のおいしさを伝えることができると好評である。

このように好き嫌いが定着する前に、魚のおいしさを伝える取組みは一定効果があると感じるが、魚を食べる消費者層の拡大とそれに伴う地産地消の推進について、これまで以上に力点を置いて取り組まなければならない今、どのような方針で県産水産物のさらなる消費拡大を図ろうとされているのか、当局の所見を伺う。

3 個性あふれる「ふるさと兵庫」の地域活力の再生―移住・定着の促進について

ここでは地域創生に関連し、東京一極集中の是正にもつながる取組みの一つである、移住・定着の促進について伺いたい。

本県の場合は、昨年、10代・20代で4,941人、30代でも1,151人の東京圏への転出超過となっており、大学入学、就職や転勤、転職などが主な理由と推察される。なお、大阪府に対しても、2011年以降転出超過となっており、昨年は20代で2,128人の転出超過があった。

一方国全体で見た場合、昨年12月に策定された国の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」によると、35歳未満の若い世代で約10万人の東京圏への転入超過となっている一方、35歳以上は若干の地方への転出超過となっているとしている。また、東京都在住者の約4割、特に10代・20代男女の47%、50代男性の51%が地方への移住を検討したいと回答している。

そこで、社会増対策の一つとして、実際に移住を検討している人への相談体制の整備はもちろん、潜在的移住希望者への働きかけや掘り起こし対策に着目していくべきではないかと考える。

また、その掘り起こしにあたっては、都市部と多自然地域が比較的近接しているという本県の特徴が大きなPRポイントになると考える。正直、首都圏における兵庫の印象は、どうしても神戸のイメージが強いことから、兵庫の他の魅力を伝えることができていないように感じる。そして都市部住民は多自然地域に魅力は感じても、いざ移住しようとなると、仕事と生活の両面に不安を感じる人が多い。しかし、通勤圏内で都市部では味わえない豊かな自然を楽しむことができるとなると、心動かされる人も出てくるだろう。効果的なPRを行うことで、潜在的移住希望者の心理的なハードルを下げ、関心を兵庫に向けてもらうことが大切だ。

本県では今後移住・定着対策を本格化し、カムバックひょうご東京センターを設置するという。地域創生戦略によると、今年から平成31年までの5年間で、25,700人の人材流入増加を目標としている。この目標達成のため、若者に対しては仕事の創出を、ファミリー層や壮年層へは魅力の情報発信を行うとのことであるが、いずれにせよ大都市部の住民の心に響くような情報発信が不可欠である。心に一度響けば、長期間好印象を与えられる。潜在的移住希望者の掘り起こしと本県への誘導について、どのような展望の下、いかに取り組んでいくのか、当局の所見を伺う。

4 郊外型住宅団地再生の推進について

ここではいわゆる「オールドニュータウン」の再生について伺いたい。

そもそもオールドニュータウンという言葉の明確な定義はないということであるが、一般的には昭和30年代から40年代に開発された、1,000戸以上3,000人以上の居住が計画されたエリアで、周辺の地域と比べて人口減少や高齢化が進んでいる箇所のことであり、県内には約60箇所ある。このようなエリアでは、同世代の一斉入居及び同時期の画一的な住宅の大量供給が行われたことで、居住者の高齢化と施設の老朽化が一気に進み、建替えや、バリアフリー工事などの居住者ニーズに合わせた改築、住み替えが困難となり、大きな問題となっている。

私は、この問題について、地元にオールドニュータウンの象徴とされる明舞団地があり、住民の方とともに様々な課題に取り組んできた。明舞団地では、平成16年以降地域再生計画の対象地区として、明舞まちづくり委員会の運営や商業施設の開業・改修、学生シェアハウスなど、多角的な施策が展開されてきたが、目指す「再生」への道のりはまだ遠い。

明舞団地には、県営住宅をはじめとする公的賃貸住宅、戸建て住宅、そして分譲団地と様々な形態の住宅がある。私はかつて公社が分譲し老朽化が進んだ住宅へ、改修などの何らかの「手入れ」をすることが必要なのではないか、その手段として何か考えられないかと思っていた。しかし、分譲され、個人の資産となっている集合住宅へ、県などの行政機関が直接的な支援を行うことは実際には難しい。また例えば、高額のリフォームを提案したところで、高齢の居住者は二の足を踏んでしまう。そのような中、明舞団地では今年度、県が近隣大学の学生や地元企業を対象に自己負担10万円から30万円程度で可能な改修プランなどを募集し、選定された事業者等により4住戸のモデルルームの改修が行われた。これは、古くなってしまった物件に、再度資産としての付加価値をもたらすとともに、地域の大学や企業とも連携できる間接支援の良い事業だと思う。このような新たな視点での取組みを、県内で同じような課題を抱える団地へと広げていくことが大切だ。

県では、今後さらに課題が山積していくこのようなオールドニュータウンの問題に対応するため、大和団地(川西市)、緑が丘団地(三木市)等をモデルとして、郊外型住宅団地の再生の方向性や具体的な展開施策を盛り込んだ、郊外型住宅団地再生モデルプラン(仮称)をこの27年度に作成するとしている。

このプランの作成にあたり、先行して手がけてきた、明舞団地再生事業の経験をどのように評価し、どのような点を生かしていこうと考えているのか、所見を伺う。

5 世界に飛躍する兵庫の中小企業(オンリーワン企業)の創出について

私の地元の企業である有限会社大谷造園は、県内の中堅・中小企業の優れたものづくり製品や技術を顕彰する昨年度の「ひょうごNo.1ものづくり大賞」において、選考委員会特別賞を受賞した。受賞理由は、本業で発生する剪定枝葉を活用した植物性堆肥でありながらも、これまでの植物性堆肥の弱みである、土壌中の微生物の多くが生存できなくなる窒素過多の状態になることの改善などによるもので、大変先進的な技術が評価された。

このように兵庫県には優れた中小企業が多数存在し、経済を下支えしている。

そして本県経済の目指すべき姿を示すシナリオとして、昨年(平成26年)3月に策定した「ひょうご経済・雇用活性化プラン」では、兵庫の強みであるものづくり産業とサービス業のバランスのとれた産業力の強化、県民の多様な潜在力と政労使一体となった取り組みを生かした人材力の強化、国際化を先導してきた兵庫のネットワークを生かした国際力の強化、この3つの戦略としている。これらを着実に推進し、兵庫の産業の元気と県民の豊かさの創出につなげていかなくてはならないわけであるが、私は、この3つの戦略の目指すものは、まさに世界に飛躍する兵庫の中小企業・オンリーワン企業の創出であり、今こそその取組みを強化していくべきだと考える。

と言うのも、先の質問のとおり、TPP大筋合意によって県内の農林水産業へはマイナスの影響が懸念されるものの、工業品については、8割以上の品目の関税が即時撤廃となり、30年目までにほぼすべてが撤廃されるため、これまで中国などからの安い工業品に押されていた我が国の、特に製造業にとっては、輸出拡大の道が大きく広がる、まさに追い風となるためである。また、播州織など、本県が高い品質を誇る地場産品についても、今後の輸出展開が期待されるため、幅広い分野にわたる強力な支援が必要である。

現在の県の地域創生戦略の中でも、オンリーワン企業の創出は、地域の元気づくりの施策に位置づけられ、今後検討を進めていく主なKPI(重要業績評価指標)として、5年間で2割増加させるとしている。

9月定例会においては、中小企業振興条例も制定された。TPPも大筋合意となった。これまでも県では成長期待企業への支援などの取組みを行っているところであるが、このような中小企業へのいわば期待の高まりを背景に、海外展開のできる強いオンリーワン企業のさらなる創出を目指していく必要があると思うが、当局の所見を伺う。

6 義務教育における不登校児童等への対策について

私は以前より不登校対策に関心を持ってきた。特に義務教育の段階においてはたとえ1人であっても不登校の児童・生徒を出すべきではないという信念を持っており、このたびお伺いする。

文部科学省によると、不登校の定義は、年間30日以上欠席した児童生徒のうち、病気や経済的な理由を除き、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること、ただし病気や経済的な理由によるものを除く」とされている。

昨年度の本県の義務教育課程における不登校児童生徒数は、小学校で820人、全児童に占める割合では0.27%、中学校では4,099人で、全生徒に占める割合は2.57%という状況である。これに加えて、文部科学省の定める不登校の定義に満たない児童・生徒、つまり欠席が年間30日には達しないものの、不登校傾向の児童や生徒を加えると、その数は明らかに5,000人を越えると考えられる。

そして、不登校児童・生徒の割合の推移を見ると、平成22年度からの5年間での比較では、小・中学校ともにほぼ横ばいとなっている。

この間、本県ではどのような対策が取られてきたのか。

学校現場においては、不登校担当教員等による対応のほか、スクールカウンセラーを平成17年度から全公立中学校へ、平成18年度からは、小学校へ配置を拡充して対応にあたってきた。また、学校外施設としても今年度創設20周年を迎えた県立但馬やまびこの郷において、不登校児童生徒の学校復帰に取り組んできたところである。

しかしながら、もう少し見える形での状況の改善に結びついていかない理由として、県の対応以上に児童生徒側の変化が大きいのではないかと考える。

平成26年の公立校で不登校となったきっかけの本県調査を見ると、小中あわせて最も多かったのが「無気力」で27.0%、次いで「不安などの情緒的混乱」が22.7%、次に「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が14.0%となっている。文部科学省も全国的な傾向として同様の分析を行っており、学校に行くことに対する家庭の意識の変化や、無気力な児童生徒が増えていることを挙げている。

このような児童生徒側の事情・状況の変化を、学校現場であれば学級担任などがきめ細かく関わり、家庭とも連携しながら不登校を未然に防いでいくのが、本来のあるべき姿だとは思うが、先日の決算特別委員会においても我が会派が質問を行ったとおり、現場の教職員は日々、様々な事務に対応されるなど大変多忙であり、児童生徒の細かな変化や兆しをすくい取るのが難しい局面もあるだろう。

今後インターネットの普及等により、ますます社会の変化の速度が速まると予想されるため、さらに不登校になる要因も複雑・多様化していくと思われる。学校現場の教職員の定数には限りがある中、いかに効果的な不登校対策を取るべきか。県では最近の学校現場における問題の複雑化に対応するため、スクールソーシャルワーカーを含めた学校支援チームを平成19年度から展開しており、市町からの需要も高まっていると聞くが、その活用なども含め、これまでの実績を踏まえた、当局の所見を伺う。

黒田 一美

(神戸市垂水区)

一般質問

(石井 秀武 議員)[発言方式:分割]

1 県と神戸市の連携について

2 神戸空港の国際化を含む最大活用について

3 六甲山の再生について

4 都市周辺における農村地域の振興について

5 スポーツの振興について

(1)日本スポーツマスターズ2017兵庫大会に向けた生涯スポーツの振興について

(2)自転車競技の振興について

質問全文

質問日:12月7日(月)

質問者:石井秀武議員

質問方式:分割方式

1 県と神戸市の連携について

先月22日に行われた大阪府知事及び大阪市長のダブル選挙では、大阪都構想の再検討を主張する大阪維新の会の2候補が圧勝し、当選を果たしました。今後、大阪府、大阪市では、いわゆる二重行政の解消のために大きな枠組みを変えていくことの検討がなされていくこととなります。

一方、兵庫県と神戸市では、良好な関係のもと、しっかりと個別に協議が行われ、県市の東京事務所やシアトルの海外事務所の共同利用など、連携によるムダを省く取組みが進んでいると思います。また、中小企業の振興を図る外郭団体である兵庫県の「ひょうご産業活性化センター」と神戸市の「神戸市産業振興財団」に関しても、来年度の組織統合を見送る方針が先月発表されたものの、活動拠点は来年度からハーバーランドの神戸市産業振興センタービルに集約し、相談窓口を一本化することとしており、効果的な連携が着実に進んでいると思います。

今後、連携した取組みをさらに効果あるものとするとともに、その取組みを県民・市民の利便性や生活の向上につなげていかなくてはなりません。そのためには、施設の共同利用などのハード面での着実な取組みに合わせ、重複業務の解消や事業実施効果の向上につながる連携等をより積極的に行っていく必要があると考えます。

今回、中小企業支援の分野では組織統合も含めて検討されましたが、市の独自性を保つべき部分もあるということで統合は見送られました。ただ、拠点施設が同じビルに集約されるということなので、今後、より連携を深め、類似業務の効率化などにつながっていくことを期待します。

また、その他の分野での検討も必要であります。特に、観光、農業分野においては検討の余地があると考えます。そのためには、まず、各分野での県と市の推進ビジョン、計画等の整合性を図る協議を行った上で、同じ方向性で進める部分については、重複事業等を精査、実施主体の変更などを行っていくことで、効率的、効果的な行政サービスの提供につながり、費用削減等の大きな効果が期待できると思いますが、そのような体制になっているのか疑問であります。

知事は、以前の平成23年度の本会議でも答弁されていましたが、今年4月の記者会見においても、県と政令指定都市の間に二重行政は存在せず、それぞれの事業にそれぞれ必要性があり、もし二重性があれば神戸市とよく話し合いながらどちらかが主体的に取り組みたい、とされています。

ただ、その点に関しては、毎日新聞が行ったアンケートに対し、神戸市長は「二重行政があると感じている」と回答したことが報道されていましたし、県民の多くも同様に感じているのではないかと考えます。今回の「ひょうご産業活性化センター」と「神戸市産業振興財団」で行ったような検討を、さらに踏み込んで継続して行っていく必要があるのではないかと考えます。

そこで、兵庫県と神戸市に関しては、相互の連携や調和を意見交換する政策調整会議等も活用され様々な事業の意見交換等を行ってきていますが、特に、観光、農業等、各分野での連携の取組みをどのように行っているのか、今後の方針も含めて伺います。

2 神戸空港の国際化を含む最大活用について

まず、神戸空港の国際化を含む最大活用について伺います。

神戸空港は平成18年の開港以来、関西3空港の役割分担の中で、一地方空港であるという役割を前提に、一日30便、運用時間は7時~22時など運用に厳しい枠がはめられています。

また、平成26年度の国内線の旅客数245万人で、地方管理空港中第1位と多くの利用があるにもかかわらず、地方管理空港で唯一、国際線はオウンユースチャーター便と自家用機しか認められていない現状にあります。

地方管理空港の中で国際線の利用者が最も多いのは富士山静岡空港であり、平成26年度で約24万人と前年度より約8万人増加しています。インバウンドの増加に伴い、東京に近く交通至便であることが要因であると言われています。一方、神戸空港に関しては、平成26年度の国際線利用者数は統計上25人という数字が公表されていますが、神戸市中心地まで約10㎞で、かつ大都市である大阪にも近く、交通至便であり、かつ関空の国際線利用者が毎年増えている現状から、発着枠や運用時間の規制が緩和され国際化が進めば、同様に多くの利用者が見込まれると考えます。

さらに、インバウンド促進の観点で、神戸は京都、大阪に遅れをとっており、特に、台湾、中国、韓国などからの誘客は大阪に比べて極端に低い状況にあります。三宮駅周辺の再開発も具体化しつつあり、「うめきた」のように世界にアピールできるようなインパクトある開発は期待できないものの、海外からの神戸、兵庫の認知を向上させ、インバウンドを促進させる上でも、県としても神戸市と連携して、三宮駅周辺の再開発に先駆けて神戸空港の国際化にも取り組んでいくべきではないかと考えます。

一方、関空と伊丹空港については、先月、運営権売却について、オリックスとフランスの空港運営会社大手「バンシ・エアポート」の企業連合と基本協定を締結し、来年3月末に両空港の運営がこの企業連合に移管されることとなりました。神戸空港においても、神戸市が3空港一体運用に向けて、運営権売却に向けた準備を進めています。

私は、知事の積極的な海外訪問に関し、神戸空港の国際化が進むことで、より効果的に海外に兵庫県をアピールすることができ、兵庫の認知度向上と誘客の促進につながることは間違いないと考えます。

そこで、神戸空港の運営権売却が進められようとする中、現状の課題を克服し、神戸空港の国際化を含む最大活用に向け、兵庫県と神戸市が一体となって取組むべきと考えます。大変デリケートな時期であり、現段階では答弁しにくい面もあると思いますが、あえて知事にご所見を伺います。

3 六甲山の再生について

続いて、神戸の海の上にある空港から山に移動し、神戸のシンボルともなっている山、六甲山の賑わい創出による再生に関して伺います。

六甲山は、神戸港開港後にやってきた外国人により、山荘や日本初のゴルフ場建設などリゾート地としての開発が進みました。明治に入り、登山やスキーなどが行われるようになり、大正・昭和初期にはドライブウェイやロープウェイが整備され、市民の身近なレクリエーションの場となりました。昭和31年には瀬戸内海国立公園に指定され、自然保護と利用調整を進めながら開発が行われることとなりました。高度経済成長期以降、関西屈指の避暑地として多くの企業の保養所等で賑わいを見せていましたが、バブル崩壊以降の景気低迷やレクレーションニーズの多様化等により次々と保養所等は閉鎖され、当時の賑わいを失っていきました。私も、ほぼ毎年、六甲山の縦走大会に参加していますが、年々、賑わいがなくなってきていく状況を見ながら、再生に向けた取組みの必要性を感じていました。

そういう中、先月、六甲山の賑わいづくりに向け、保養所や別荘などの閉鎖された遊休施設の再活用などに関して、神戸市長が井戸知事と連携した取組みを進めて行くとの報道がありました。

聞くところによると、神戸市主体によるプロジェクトチームに県も参加し、議論が始まったとのことであり、そこでの今後の議論に期待したいが、保養所等が多くある六甲山上は、市街化調整区域であるとともに、自然公園法や風致地区における建築等の規制に関する条例などによる開発規制が多くあり、超えなくてはならないハードルも多いのが現状のようであります。

ただ、六甲山の再生は県・神戸市の双方にとって、兵庫・神戸の魅力向上のためには不可欠であることから、地権者等の理解等、別の課題も新たに生じるとも思いますが、県・市連携して、構造改革特区による開発規制の緩和を国に求めていくなど、今後も県として積極的に関与して、六甲山の再生に取り組んでいくことが望まれます。

そこで、県が、現在、把握されている六甲山の保養所や別荘などの現況を伺いますとともに、県と市が連携して取り組もうとする六甲山の賑わい創出による再生に向けた今後の展望についての見解を伺います。

4 都市周辺における農村地域の振興について

少子高齢化の進展や東京圏等への人口流出により、平成21年を頂点に人口減少傾向に転じた本県においては、人口の急速な減少と偏在化の進展を踏まえ、農山村地域の存続が危ぶまれる事態が想定されます。農村地域の活力の維持を図る取組みが必要であります。

9月定例会で議決された本県の「地域創生戦略」では、人口が減少しても活力ある豊かな兵庫を実現するための1つのキーワードとして「交流」を掲げ、交流人口により農村地域が持続することを、2060年の兵庫の姿として展望しています。

また、同戦略においては、地域特性を踏まえた展開方向が示されており、「大都市圏」及び「大都市に連担する準都市圏」では、重点的な取組方向として「大都市の魅力の更なる向上」「拠点都市機能の向上」があげられています。ただ、このような地域においても農村地域は存在し、その存続・維持を図っていくためには、やはり農業を軸とした賑わい創出や交流促進等が不可欠と考えます。

幸い、大都市近郊に位置することから、魅力ある取組みを行えば、交流促進等につながっていく可能性は高いと思います。例えば、交流人口増加に向けた市民農園の充実や、農業体験などの農業への親しみを向上させる取り組みのさらなる推進が期待されます。

また、先日、地域限定で農家に少量での酒類製造販売を認める「どぶろく特区」が、政令市で初めて西区と北区で認定されたことが神戸市より発表されました。農家民宿やレストランで自家製酒類を提供できるようになり、さらなる交流促進が期待されます。県としても、このような交流促進の目的に加え、従来からの住民はもちろんのこと、移住した都市住民も含めた農村全体での取り組みという観点も含め、農家レストラン等の農の6次産業化の推進が重要と考えます。そして、特に私は交流の中心となる人材の育成がポイントとなると考えますが、いずれにしても農村地域振興に向けた様々な農業関連の取組みの展開が望まれます。

そこで、農村地域の維持に向け、賑わい創出、交流促進に関する、人材育成を含めた農業を活用した取組みが不可欠と考えますが、今後どのように取り組んでいくのか所見を伺います。

5 スポーツの振興について

(1)  日本スポーツマスターズ2017兵庫大会に向けた生涯スポーツの振興について

シニア世代を対象としたスポーツの祭典「日本スポーツマスターズ2017兵庫大会」の開催まであと2年となりました。10月から各種目ごとに県下各地で開催地決定イベントが開催され、県民への周知、開催機運の醸成が図られています。

競技スポーツの全国大会が国民体育大会なら、生涯スポーツの全国大会が日本スポーツマスターズであると考えます。シニア世代で生涯スポーツに親しむ方が自己の技量を試す、また、かつて競技スポーツで活躍していた方のセカンドステージとなるなど、様々な形でスポーツを続ける方が目標とする場となっていると考えます。

2017年の兵庫大会の開催を控え、まず、このようなスポーツマスターズの位置づけを明確にし、そして県民へのPRに努め、県民に浸透を図る必要があります。その上で、生涯スポーツにおいても、競技団体と連携して、国体同様にマスターズ世代の参加者の育成を図るとともに、大会出場に向けてシニアの指導体制の構築、場の提供を推進していくことにより、裾野の拡大につながり、様々な形で生涯スポーツの振興に寄与するものと考えます。

日本スポーツマスターズ2017兵庫大会の開催は、まさに、生涯スポーツのさらなる振興の絶好の機会と考えますが、本県での開催を単なる一過性の開催イベントに終わらせないよう、生涯スポーツの振興にどのようにつなげていこうと考えているのか、ご所見を伺います。

(2)自転車競技の振興について

のじぎく兵庫国体からもうすぐ10年が経過します。県では、競技スポーツの全国大会である国民体育大会に向けては、兵庫県体育協会や各競技団体と連携して、選手発掘からトップアスリートの育成までの系統的な指導をはじめ、競技力の向上に努めています。

中でも、来年から女子が正式種目に追加される自転車競技については、競技力向上が望まれます。また、健康、エコの観点から、生涯スポーツとしてのサイクリング愛好家が急増する中、競技スポーツとしての自転車競技の振興を図っていく絶好のタイミングだと考えます。

現在、兵庫県における自転車競技の活動の中心は県立明石公園内にある自転車競技場であります。ジュニア育成教室から公式記録会など、自転車競技の競技力向上に、同競技場を活用して競技団体を中心に取り組んでいます。この自転車競技場は公益財団法人兵庫県園芸・公園協会が所有・管理を行っており、実情に即応した修繕や改修が困難な状況にあります。また、言うまでもなく、公園の一部としての機能より、県の自転車競技の中心施設としての機能の方が色濃いのではないかと思います。一方、兵庫県と同様に今回、関西ワールドマスターズゲームズ2021における自転車競技の候補地に手を上げている隣の鳥取県では、公益財団法人JKA、すなわち旧財団法人日本自転車振興会ですが、この法人と県の補助を受け体育協会が施設整備を行ったうえで、管理運営を行っています。

本県においても、スポーツの振興を担い、兵庫県自転車競技連盟が加盟をしている体育協会が管理運営を担っていく方がよいのではないかと思います。既に、明石公園内では弓道場が県体育協会の管理となっているケースもあります。日本スポーツマスターズ2017兵庫大会が行われるこの機をとらえ、施設の管理運営の方法について、兵庫県園芸・公園協会と県体育協会との間で協議を行ってはどうかと考えます。

また、活動の中心である明石公園周辺には、明石高校、明石南高校、伊川谷高校、伊川谷北高校をはじめ、多くの県立高校が立地していますが、それらの高校には部活動として自転車競技を行う高校がない状況にあります。絶好の競技環境にある周辺地域の高校等における自転車競技の部活動の実施を推進するなど、活動中心地周辺での自転車競技の振興に力を入れるべきと考えます。この点は他の競技スポーツも同様に、中心施設のある地域周辺での振興に取り組むべきと考えます。

さらに、日本スポーツマスターズ2017兵庫大会や、関西広域連合として関西ワールドマスターズゲームズ2021の開催が決定しています。このような機会を捉え、競技スポーツとしての自転車競技をさらに振興していくため、教育委員会においてもその体制づくりに取り組んでいく時期であると思いますが、ご所見を伺います。

石井 秀武

(選挙区:神戸市西区)