議会の動き

◆18年12月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方  討論

代表質問  栗山 雅史 議員

一般質問  上野 英一 議員

代表質問

(栗山 雅史 議員)[発言方式:分割]

1 関西広域連合長としての地方分権の推進について
2 県庁1、2号館建て替えまでの耐震補強の必要性について
3 児童虐待対策について
4 受動喫煙対策について
5 児童生徒の朝食の喫食について
6 外国人労働者について
(1)就労状況と賃金について
(2)生活について
7 国際化の進展における治安対策について

質問全文

質問日:平成30年12月7日
質問者:栗山 雅史 議員
質問方式:分割

1 関西広域連合長としての地方分権の推進について

平成22年12月1日に関西広域連合が設立されてから丸8年を迎えました。この間、井戸知事は設立以来、連合長として構成府県・政令市とともに、、関西全体の地方創生に向けた戦略である「関西創生戦略」の策定をはじめ、「関西防災・減災プラン」、「関西観光・文化振興計画」などの広域計画等を策定されるとともに、その具体的な広域事務としてカウンターパート方式による災害対応や広域連合管内を二重・三重にカバーするドクターヘリ運航など、広域的な行政課題への実績を重ねられてきました。

その一方、関西広域連合設立にあたっての一丁目一番地とも言うべき「東京一極集中の是正」を目指して取り組んできた「国出先機関の丸ごと移管」や、「国の事務・権限の移譲」については実現に至っていない状況にあります。関西広域連合として掲げる目標としては、当面の移管対象機関として、「経済産業局」、「地方整備局」、「地方環境事務所」の3機関について「丸ごと移管」を求めるとともに、3機関をはじめとした国出先機関の事務・権限の一部であっても移譲を求め、最終的には7省12系統の出先機関の移管をめざすとしています。

先般の広域連合委員会で井戸知事は5期目の連合長に再選され、記者会見では「今後2年間で分権社会の実現に向けて、役割や今後の方向性を示すとともに、各分野事務局の業務を深化させることはもとより、連合に期待される各構成府県市の取組に係る情報の共有化を各分野で進めたい」と語っておられたことから、今後の手腕に期待するところです。

そこで、関西広域連合による国出先機関の移管やさらなる国の事務・権限移譲をはじめとする地方分権の推進に向け、どのように取組んでいかれるのか、今後の見通しも含めて連合長を務める知事のご所見をお伺いしたいと思います。

2 県庁1、2号館建て替えまでの耐震補強の必要性について

本年7月31日に発表された県庁1号館の耐震診断結果を受けて、この間急速に県庁周辺地区を含めた本庁舎の再整備について検討されるようになりました。構造耐震指標「Is値」といわれる数値が、2009年版で0.30~0.93という結果と発表され、災害時に防災拠点となる庁舎に求められる耐震性能を満たしていないことが判明しました。

1号館だけでなく、2号館やここ議場棟についても、拠点庁舎に必要な耐震性能を満たしていないということ、また県民会館についても築50年を経過して老朽化が進んでいることなどから、県庁周辺地区の再整備について現在急ピッチで検討されるようになっています。

今後の50年の県庁周辺のあり方を考えると、県庁周辺の施設も含め、また元町駅からの地区全体の再整備を検討する必要性が高くなってきていることから、鋭意取り組まねばならない課題だと認識しているところです。

しかしながら、1点大変心配に思うのは、仮に県庁1号館が新たに建てられる方針となった場合に、新たな県庁舎が建てられるまでの間、現在の県庁1号館には何の耐震補強も施されないのか、ということです。県庁1号館には職員が現在約1,800人働いています。

最近お示しいただいた県庁建て替えの複数の案によりますと、新庁舎の完成は早くても2026年頃や2029年頃とされています。今から8年から11年の間、大地震が起きた場合に倒壊または崩壊する危険性があるという診断をされている建物の中で、生命の危険を感じながら仕事をさせるのかと思うと、やはり心配でありますし、何らかの対策が必要ではないかと思うのです。

一方で、県や神戸市などでは、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」に基づいて、不特定多数の方が利用する一定規模の大規模建築物、つまりは病院やホテル、旅館、商業施設などですが、それらに耐震改修を求めています。

神戸市が発表している資料によりますと、Is値で0.15のサンパルビルの地上4階から10階部分や0.3未満の有馬温泉の旅館などでは既に再整備や耐震改修等を検討・実施するなど、対策を進めています。民間に対して耐震改修を求めている以上、例え節約を求められるような公的機関である県であっても、県庁舎の耐震改修は必要なことではないでしょうか。ましてや、災害時には県内各地の被災地などに適時、適切な支援や指示をする主体となる県庁舎ですから、県庁舎自体が倒壊や崩壊をしていてはいけないのです。

そして、大方が兵庫県民でもある県職員の生命を守ることは、雇用主としても、人道的な意味でも重要なことではないでしょうか。耐震に関する費用がかかって、最終的にはそれを取り壊すことになったとしても、建て替えまでの期間が長いだけに、それは必要な経費ではないかと考えています。

管財課ではその後、地震波形を用いた詳細な耐震診断を行ったと聞いております。その診断によると直下型地震においても長周期地震においても、建物は倒壊しないと推測されるとされていますが、建物に大きな損害が発生し、地震後は継続使用できないと結論付けています。

県庁周辺地区の再整備に目が行きがちな状況にある中で、本来考えるべき重要な点に目をつむってはいないか、置き去りにしていないかと感じています。

県庁1号館の建て替えまでの、県庁1号館の耐震補強についてどうするべきか、知事にご所見をお伺いしたいと思います。

3 児童虐待対策について

児童虐待の防止については、県の児童課をはじめ県内各地のこども家庭センターや市町、警察、医療機関、学校、幼稚園、保育園、住民などの取組みによって、数多くの通報を受けて未然防止などに取り組んでいるところです。

しかし、残念ながら子どもたちの命を救えなかった例が全国でも散見される現状があります。また、ここ5年間で、こども家庭センターで受けた児童虐待相談件数は2,343件から5,221件と2倍以上に、一時保護件数は450件から694件と5割以上増えるなど、深刻さは増すばかりのように感じています。国としても2022年度までに児童福祉司を2,000人増員するなど対策強化に取り組む方針ですが、各地域においても出来得る対策をさらに講じていくべきだと考えています。

そのような中、神戸市会では自民、公明、こうべ市民連合の3会派が「神戸市こどもを虐待から守る条例」を11月議会に議員提案し、今年度中には成立の見込みと聞いております。市が児童相談所に弁護士を置くことや、重大事案について市会に報告を義務付ける内容となっています。他の条例制定の取組としては、たとえば茨城県で先月14日に子どもを虐待から守る条例が可決されていますし、東京都がこの2月定例会への条例案の上程を目指し検討を進めているなどの動きがあります。

兵庫県は、児童相談所/こども家庭センターを神戸市以外で県下に5ヶ所設置していますが、神戸市会がこのように対策強化に取り組む方向であることを受けて、条例の制定の必要性などについてどのように感じておられるでしょうか。

また、児童虐待への対策は、多くが「事案が発覚しつつある段階から、対策が必要となる段階」という、いわゆる事後の対応となっていますが、私は虐待そのものを発生させないような親への教育、つまりは子どもとの接し方や叱り方などについての知識の習得や情報の提供などが必要ではないかと感じています。自身が育った経験則に基づく誤った子育てや躾をしないよう、出産前後の両親への情報提供などが本来もっと重要視されるべきではないかと考えますが、当局の児童虐待防止に対する今後のご所見をお伺いしたいと思います。

4 受動喫煙対策について

現在、本県では受動喫煙の防止等に関する条例の改正について検討が進められています。兵庫県受動喫煙防止対策検討委員会では、昨年度からの委員会の議論の中で、現行条例の見直しにあたって、基本方針として特に子ども等、これは20歳未満の者及び妊婦を指しますが、受動喫煙から守る観点を中心に「法律より一歩進んだ対策の実施」を求めるということを結論付けたようであります。具体的には、「受動喫煙は、ある意味虐待ではないか」との意見がある中で、私的空間・家庭の対策、屋外の対策、飲食店の対策が掲げられました。

私的空間・家庭の対策では、居宅等での子ども等と同空間での喫煙の禁止や、子ども等が同乗する自動車内の喫煙の禁止などにも言及され、まさに法律よりも一歩進んだ対策を目指す内容となっています。

兵庫県が平成25年4月に施行した「受動喫煙の防止等に関する条例」は、この平成30年で条例施行から5年が経過したことから見直すタイミングになっています。受動喫煙に関する取組みや機運としては、東京オリンピックを意識した東京都の取組みや、大阪府議会においても主要3会派が「子どもを受動喫煙から守る条例案」を共同提案する方針を発表しています。先日決まりました、健康をテーマにした大阪万博を意識した取組みとも窺えます。

このようにして、子ども等を受動喫煙から守るための動きが、世間一般にさらに強まってきていると感じています。兵庫県も来年2月に条例改正案を提出予定と聞いておりますが、子ども等の受動喫煙を防止するための積極的な姿勢と取組が示されることを期待する県民も多いと思われます。

そこで、検討委員会の答申などを受けて、県はどのような方針を考えているのか、そのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

5 児童生徒の朝食の喫食について

ある新聞の報道で、広島県が今年度、県内の2~3ヶ所で「朝ごはん推進モデル事業」というものに取組んでいるということを知りました。県内のすべての子どもたちが朝食を食べることができる環境を整備して、「確かな学力」と「学力に必要な生活習慣」を身につけるために今年度から始めたモデル事業ということでした。

主に夕食を提供する「こども食堂」の取組みに続いて、朝食を提供する事業が始められたことを知り、改めて朝食の重要性・必要性の高さを感じたと同時に、広島県や協力されている地域や企業などの奉仕の精神や熱意を感じたところです。

朝食の重要性・必要性については、もはや説明する必要はないと思います。「体内に不足しているエネルギーの補給」や「体温を上昇させ、身体や脳を活動的にさせる」こと、「体内時計のリズムを整える」ことなど、大人にも子どもにも大変重要なものであることは言うまでもありません。しかしながら、文部科学省の全国学力・学習状況調査によりますと、児童生徒の朝食の喫食率は低下傾向にあるようです。

兵庫県においても、健康福祉の保持の観点から平成18年に「食の安全安心と食育に関する条例」を制定するとともに、条例に基づき「食育推進計画」を策定し、食育の推進を進めてきています。また教育の現場においても教育創造プランの基本的方向として「健やかな体の育成」があり、「朝食を毎日食べる児童生徒の割合」という指標が示されています。平成29年度では小学校で85.9%、中学校で82.4%、高校で80.7%となっており、15%~20%弱の児童生徒が少なくとも週のうち1日以上朝食をとっていないことがわかります。

平成30年度の目標としてはそれらを上回る目標値を掲げておられますが、近年の推移を確認しますと低下傾向にあり、朝食の必要性について食育を通じて感じさせているとは言うものの、その成果は芳しくない現状であると言わざるを得ません。

県教育委員会として、朝食の喫食率を高めるためには、食育だけでは限界があることは明白なわけですから、これまでとは異なる取組み、例えば広島県のような取組みが今後必要となってくるのではないかと考えますが、ご所見をお伺いします。

6 外国人労働者について

現在、国会で審議されております「出入国管理及び難民認定法」改正案の審議状況を見ておりますと、日本はいよいよ本格的に、多くの外国人の皆さんと、地域で共生していく時代になるんだと、強く自覚することになりました。

新制度によりますと、5年間で14業種、最大34万5千人の外国人労働者を受け入れるということです。初年度は最大約4万7,500人との試算が公表されています。改正案が成立すれば、まさに来年の4月から、兵庫県においても外国人労働者を年に数千人という規模で迎えることになると思われます。

そしてこれは、人口減少と高齢化で人手不足が続く日本にとっては毎年、おそらく中長期的に継続されていく制度になるのでしょう。そうした場合、行政や我々県民は、外国人との働く環境や生活環境の整備などの共生について、さらに真剣に考える必要があるのではないかと考えています。

私は、これから多くの外国人労働者を迎えるにあたって、きちんと整えていかないといけないこと、そして心配なことが大きく3点あります。それは「労働」、「生活」、「治安」です。

「労働」では、既に問題となって表面化している技能実習生や留学生の低賃金、長時間労働などの労働基準法違反の疑い、「生活」ではゴミの出し方や夜中に騒ぐなどの問題をはじめ、文化や風習の違いによる様々なトラブル、「治安」ではこれは労働の問題と密接に関係しますが、低賃金などを理由に職場から失踪し、窃盗などの犯罪に手を染めることなどです。まず「外国人労働者の増加」に対して、県として今後どのような対応が必要かについて質問をしていきます。

(1)就労状況と賃金について

最初に外国人労働者の就労状況と賃金についてです。

国会での審議でも明らかになったように、国内には既に多くの技能実習生や留学生の方が就労しています。厚生労働省がとりまとめている外国人雇用状況を見ますと、平成29年10月末現在で約128万人の外国人が労働に従事しているとあります。

在留資格別に見て最も多いのは身分に基づく在留資格、つまり永住者や日本人の配偶者などで約36%を占めていて、次に多いのが留学生で約20.3%、次いで技能実習生が約20%と、この3者で約8割を占めています。本県の状況を見てみますと、5,762社に29,621人がいると届け出られています。そのうち技能実習生が7,586人で25.6%を占め、全国より少し割合が高くなっています。

技能実習生制度で現在問題となっているのが、低賃金や長時間労働を苦にして多くの失踪者が発生していることです。法務省の発表によりますと、平成24年から30年上半期までの6年半で32,647人の失踪者が出ているとなっており、いまだ増加傾向にあり、大変大きな問題と認識しています。

そこで気になるのは、兵庫県当局として、県内企業などでの技能実習生の労働実態、そして受け入れている企業などの実態をどの程度把握しておられるかということです。技能実習生を受け入れている企業が具体的にどこで、何社あるのか。

そして技能実習生がどの程度の賃金を得ているのか、それは最低賃金を上回る適法な額であるのか。企業は労働基準法を違反していないかなどの実態です。また、失踪した者の数や在留資格が切れて不法在留しているものがどの程度いるのか。

そして、そうした外国人人材を雇い入れている企業があるのかどうか。これらは入国管理や労働基準監督署など国が所掌するものと認識していますが、兵庫県内企業の人手不足の解消を図るべく県として施策を展開し、多くの県内企業と連携しているでしょうから、県内企業及び技能実習生などの実態について県としても適切に把握しておくべきではないかと考えますが、把握されておられる状況についてお尋ねします。

(2)生活について

兵庫県内には既に10万人を超える在留資格を持つ外国人が生活をしています。先ほども申し上げたように、入管法が改正されると今後も右肩上がりに外国人住民が増加していくことが予想されます。

外国人や雇い入れる事業者などがまず直面する問題は「住まいの確保」です。法務省が昨年6月に公表した外国人住民調査報告書によれば 部屋探しで入居を断られた人は4割にも上っています。ある企業では、外国人専用の寮を建てて対応するなどのケースもありますが、最終的には県営住宅や市営住宅などの公営住宅に住まうことになり、県内にもそのようなケースが存在します。同じ地域、同じ建物に住まう日本人にとって、外国人とどのように共生すれば良いか困惑することも多いという声も聞いており、ゴミ出しや夜間の騒音などの生活マナーなどでトラブルになっても適切に解決できないなどの問題があるようです。

県では「外国人県民インフォメーションセンター」を設置され、外国人の暮らしや医療、社会保障、住居や教育などの様々な相談に応じて来られました。外国人が兵庫県で暮らすにあたって一定の役割を果たされていることについては認めているところです。その一方で懸念されるのは、先述したような外国人と共生をする日本人、県民の皆さんからの不安や苦情や相談です。

ある調査によりますと、国内在住の外国人のうち、「日本への定住を希望し、日本人と積極的に交流したい」と考える人の割合が約60%程度あるのに対し、「外国人と積極的に関わっていきたい」と考える日本人は約10%だということです。外国人労働者をこれから多数迎え入れる我々日本人は、「共に暮らしていく」ということにもっと理解を深め、円滑に暮らしていけるような取組みや働きかけが必要になってくるのではないでしょうか。

外国人住民との共生は古くて新しいテーマでありますが、今こそ外国人、日本人双方への基礎的情報の提供や理解の促進などの取組みが必要だと考えますが、県の考えをお聞かせいただきたいと思います。

7 国際化の進展における治安対策について

次は治安対策についてです。

先ほどもご紹介したように、職場での低賃金による生活苦から窃盗などの犯罪に手を染めることを余儀なくされる外国人、特には技能実習生や留学生たちが増えてきています。なぜ罪を犯すようになったのか、どのように対策すべきなんでしょうか。

技能実習生制度を巡っては、実は国際社会の厳しい目が注がれてきました。最も具体的な指摘をしたのはアメリカ国務省の人身取引報告書です。報告書で指摘されたことを引用しますと、「主にアジアからの移住労働者は男女ともに、政府の技能実習制度を通じた強制労働の状態に置かれている」とか、「借金による束縛、暴力または強制送還の脅迫、恐喝、パスポートの取り上げ、その他の精神的な威圧手段を用い、被害者の移動を厳しく制限する」と書かれています。

同種の指摘は、国連人種差別撤廃委員会の最終見解や国連自由権規約委員会の最終見解などにも見られます。失踪が相次ぐような状況を生み出すこの技能実習制度の仕組みは根本的に見直し、外国人が日本人と同様の収入を得て、同じように暮らしていけるようにすることが国に求められます。

さて、技能実習生のみならず、外国人労働者が増加し、国内のグローバル化はますます進展すると考えられます。罪を犯す可能性のある外国人労働者が現状存在することについて、警察当局としてはどのように見つめているでしょうか。

また、犯罪を未然に防ぐ、あるいは被害を軽減するなどの対策を講じることはできるでしょうか。先ほど質問しましたように、兵庫県をはじめ、国の監督官庁と連携して、外国人労働者が勤務する企業の把握や就労実態、賃金など、あらゆる情報の把握に努めていただくことで、何かしらの対策ができるのはないかと考えますが、県警察のご所見をお伺いします。

栗山 雅史

(選挙区:西宮市)

一般質問

(上野 英一 議員)[発言方式:分割]

1 積極的な地域支援について
(1)地域再生大作戦の成果と啓発について
(2)コミュニティビジネスによる地域創生の実現について
2 統一地方選に向けた取組について
3 不登校対策について
(1)フリースクール等との連携や支援について
(2)不登校の子ども達への対応について
(3)夜間中学における学び直しの機会の提供について

質問全文

質 問 日:平成30年12月10日(月)
質 問 者:上野 英一 議員
質問方式:分割方式

1 積極的な地域支援について

2014年5月、増田寛也氏を座長とする日本創成会議・人口減少問題検討分科会が「増田レポート」と後に呼ばれる提言を提出し、それを受けて9月に発足したばかりの第二次安倍改造内閣が「まち・ひと・しごと創生本部」を設置して以来、すでに4年が経ちました。このままでは、少子化と人口流出で維持困難な自治体(消滅可能性都市)が出ると、増田レポートが恐怖心をあおることで、そもそも地方創生は始まったという覚えがあります。

この地方創生の関連予算は、地方創生交付金や事業費、その他政府の様々なプロジェクトをあわせ、当初予算ベースで2017年度には1兆7,761億円、2018年度には1兆7,844億円の予算が付けられています。しかし、結果として、目立った成果は上がっていないように感じます。

地方創生の実質的な目的は、地方の経済成長と人口増加にあったといってよいと考えており、県の地域創生戦略でも、人口対策と地域の元気づくりとして10項目の基本目標により取組を進められておりますが、地域の暮らしにおける現状はもっと厳しいものとなっているのではないでしょうか。

そこで、以下2点について伺います。

(1)地域再生大作戦の成果と啓発について

中山間地である神崎郡では、私が県会に選出されてからの12年間でも、人口減少・高齢化が一段と進み生活基盤が崩れつつあります。特に、高齢者を中心に交通手段の確保、買物手段の確保に困っているのが現状です。

私は10月の初めに、高知県で開催された自治労の全国自治研集会に参加をしてきました。第2分科会「まちの元気を語るかよ~町ん中と山ん中の活性化~」に出席をしましたが、高知県においても地域活性化については相当な課題であり、積極的な取組みを展開されているようで、その中での講座②では、高知県産業振興推進部・地域産業振興監・物部川地域担当者から「集落活動センターを核とした地域の維持・活性化の取組」の講演を受けました。

県勢事情にもよりますが、高知県では、7ブロックに分けてそれぞれに地域振興監を置き、7ブロック全体では約70人の職員を配置しています。県は市町職員と一緒になって、廃校になった小学校区単位で集落センターを設置して、さまざまなソーシャル・コミュニティビジネスを展開しているとのことでした。

その取組としては、

①集落活動サポートとして、草刈り、農作業等の共同作業の実施やよろずサービスの実施。②生活支援サービスとして、食料品、ガソリン等の店舗経営、移動販売、宅配サービスの実施。過疎地有償運送の移動手段の確保。③安心・安全サポートとして、高齢者等の見守り活動の実施。あったかふれあいセンターとの連携。デイサービス等の福祉サービスの実施。④健康づくり活動として、健康づくり事業の実施。健康活動づくりの拠点づくり。⑤防災活動として、防災研修、自主防災活動の実施や防災拠点づくり。ヘリポートの整備。⑥鳥獣害対策として、集落ぐるみの防除対策の実施。ジビエ(鹿肉、猪肉)の取組み。⑦観光交流活動・定住サポートとして、自然や食等の体験づくり、宿泊施設の運営、交流イベントの実施、移住相談窓口の開設。⑧農林水産物の生産・販売として、集落営農、耕作放棄地の解消、地域資源を生かした有望品目づくり、薬草、山菜など新たな作物への挑戦。⑨特産品づくり・販売として、地域資源を生かした加工品づくり、直販所の開設・運営。⑩エネルギー資源活用として、小水力、太陽光発電等の導入、エネルギーの売電等のしくみづくり。⑪その他の活動として、冠婚葬祭サービスの実施、行政事務等の受託など様々な取組を進める集落センターの設置を県と市が一体となって行っています。

また、財政面での支援として、これらの活動に対し、3年間を限度に集落センターの設置等に、市町・県がそれぞれ1/2ずつトータル6千万円を措置しているとのことでした。

兵庫県においても、もちろん過疎化、高齢化等の進展により、多自然地域を中心に地域の活力が失われつつあることから、平成20年度から地域の自主的・主体的な取組による賑わい創造や活性化のため、地域再生大作戦に取り組まれています。今後も少子高齢化の影響から逃れられない状況の中で、地域を維持していくためには、このような取組はますます重要となってくるのではないでしょうか。

そこで、地域再生大作戦の具体的な取組の成果を伺うとともに、県内にはまだまだ多くの問題を抱えている地域があると思います。これら課題を抱えている地域が他地域の先進事例を参考にするためには、これら成果を広く情報発信し、県民に知ってもらう必要があると思いますが、どのような取組をされているのか、あわせてお伺いします。

(2)コミュニティビジネスによる地域創生の実現について

私の住む神河町旧寺前村は11集落で約1,300世帯ですが、地域唯一のスーパーマーケットが、昨年9月に倒産・閉店となりました。何の前触れもなかったため、たちまちに高齢者をはじめ住民には大きなショックと、日々の買い物に不自由をすることとなり、多くの住民の方々から、私をはじめ町役場や町議会議員、区長さん方に何とかして欲しいとの声が寄せられることとなりました。

この対応として、11集落の区長さんたちと協議の結果、運営会社(株)寺前村振興公社を立ち上げて寺前楽座「まちの灯り」として、今年の7月30日にグランドオープンしました。総務省の地域経済循環創造事業交付金のほか、寺前財産区からの支援など8,200万円の資金を確保し、運営会社の代表取締役には私が、専務取締役に最初から立ち上げに共に奔走をした町議会議員、幹事に代表区長外が就任しました。

実際には取締役全員が無報酬です。資金もそうですが、立上げにあたって何よりも、リードを取る人間が必要であったこと、そして地域に暮らす住民が主体となってはじめて、行政の支援が受けられることになったと考えています。将来的には、移動販売車や買い物送迎バスの運行、弁当の宅配サービスまで行いたいと考えています。

また、隣の宍粟市波賀町でも同じ状況になっており、現在、議論がなされています。比較的人口減少の問題が深刻でない福崎町でも、移動販売車の運行が10月から週4日4ルートで商工会が実証実験を行っています。福崎町の中心部では、大型スーパーや24時間スーパーなどが数多く展開をしていますが、移動販売の利用状況は盛況です。高齢者だけでなく、子育て中のお母さん達が、子供を連れて多く買い物に訪れています。

このように、多自然地域等における地域課題は多種多様であり、先に述べた高知県の集落センターが掲げる課題も広範にわたっています。このような課題解決の方法として、コミュニティビジネスの活用があるのではないかと考えています。それぞれの地域課題をその地域の県民が主体となり、行政や地域企業を巻き込んで解決することができれば、コミュニティの再生や働き場づくり、県民の協働よるふるさと意識の醸成などにつながるのではないでしょうか。

しかし、地域の県民が主体になる、すなわちリーダーの養成・誕生がなくてはなりません。

そこで、多自然地域等の地域課題を解決して地域創生を実現するためにも、コミュニティビジネスの積極的な展開とリーダーの養成が不可欠であると思いますが、ご所見をお伺いします。

2 統一地方選に向けた取組について

来年4月には統一地方選挙が行われる予定ですが、選挙においては、これまでも兵庫県だけでなく、全国的な問題として「一票の格差」と「投票率の低さ」があると考えています。

この「一票の格差」については、我々議会において、昨年度、議員定数等調査特別委員会の中で色々と議論を重ね、私もこれまで3期に亘り、特別委員会の委員として議論に参加をしてきました。

その結果、来期以降の議員の総定数を1名減の86人にすることを決めた所でありますが、その議論の中では、近年地方部における人口減少により、生活基盤そのものが失われている大きな地域課題を生み出していること、そのため、合区による議員定数の削減は、地域課題の解決と云う観点からも由々しき問題であるという意見もあり、今後も地域代表選出のあり方として特例選挙区の扱いについて調査研究することが、委員会報告書に記載されることとなりました。

先の積極的な中山間地支援の質問でも述べたように、地域課題の解決に向けた取組において、リーダーの役割を果たす中の一人として、県会議員の新たな役割が生まれているのだと考えています。

私個人の意見ではありますが、選挙区の配当基数0.5を下回る場合の扱いとして、公職選挙法第15条第2項にあるとおり、選挙区の人口が、議員1人あたりの人口の半数以上にならない場合は強制合区の対象となる規定となっています。私は、今こそ人口減少という時代背景を考えて、強制合区の根拠である「議員1人あたりの人口の半数以上」を「議員1人あたりの人口の4割以上」あるいは「3割5分以上」と公職選挙法の改正がなされるべきだと考えています。

本題に戻りますが、一票の格差については議会において積極的な議論を行い、今後の検討課題は残ったものの、県民の意思を県政に反映する機能を十分に発揮できるよう検討を行ってきたところでありますが、一方、実際の投票率が低ければ、一票の格差の是正等に向けた議論は生かされず、十分県民の意思が反映されないのではないかと懸念します。

来年は統一選であることから、投票率は上がるものと考えられますが、2016年に実施された参院選と2017年に実施された衆院選では、全体の投票率が約1ポイント減少しているのに対して、18歳では3ポイント以上、19歳では約9ポイントの減と若者の投票率の減少が大きくなっています。これからの日本を支えていく若者にもっと政治に関心をもってもらえるようにしていかなければならないのではないでしょうか。

そこで、来年の統一選に向けてさらに投票率を上げるために、どのように周知等に取り組まれるのか、特に若者の投票率向上に向けて、これまでの投票率の結果を踏まえて、どのように改善されようとしているのか、ご所見をお伺いします。

3 不登校対策について

今国会で改正入管難民法が成立しています。労働者不足の解消が目的で、その解決策が、手っ取り早く外国人労働者となっているのだと考えていますが、同時に国内の多様な人たちの労働参加を図ると云うことも重要であると考えています。

昨年度の全国における、年度間に連続または断続して30日以上欠席した不登校者数は、小学校から高校生までおよそ19万3千人に上り、その約半数が90日以上の長期欠席者であります。また、不登校の子供たちがそのまま、ひきこもりになる可能性も高いのではないかと推察されます。

今年、内閣府は初めて40から64歳の実態調査に乗り出すことを発表しましたが、ひきこもりの人たちは、40歳以上も含めると、およそ100万人と推計する専門家もおり、この人たちが社会参加をすれば本人にとっても、社会にとっても経済的価値は相当なものとなると考えられます。そのためにも、不登校生徒たちを無くすることが重要ではないでしょうか。

そこで、以下3点について伺います。

(1)フリースクール等との連携や支援について

平成29年度全国の公立学校で不登校生徒数は、小学生34,732人(0.55%)、中学生104,295人(3.38%)、高校生37,493人(1.68%)計176,520人(1.51%)。兵庫県では、小学生1,490人(0.52%)、中学生4,979人(3.63%)、高校生830(0.78%)計7,299人となっています。

小・中学生の不登校生の内、フリースクール等何らかの学びの場に通っている児童生徒は約2~3%、適応教室での対応は約10%程度と言われています。多くの児童生徒が自宅にひきこもったままでいます。

県では、不登校担当教員の配置、県立但馬やまびこの郷の運営、県立但馬やまびこの郷サテライト事業の実施等の①「不登校対策のための推進体制の整備」や、②「未然防止のための取組」、③「早期発見・早期対応のための取組」等を行っていますが、限界があるのも事実であります。不登校の生徒達とマンツーマンでじっくりと話を聞き、自らの心を開き自らの立直りを支援するには、今の体制では限界があるのではないかと考えます。

そこで、教育機会確保法が成立をし、不登校児童生徒への対策としてフリースクールの活用については9月議会で谷井議員が質問し西上教育長の答弁もありましたが、学校以外の場における学習活動等多様な学びの確保の観点から、フリースクール等との積極的な連携と支援、例えば県内のフリースクールとの定期的な意見交換や調査、また、実際に通う生徒個人に対する通学定期の証明や就学支援金の支給等の支援を行うべきではないかと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

(2)不登校の子ども達への対応について

小・中学校において、不登校でも、ほとんどの場合卒業証書は授与されています。不登校等で進路発見が困難な状況にありながらも、自分の生き方や進路を見つけたいという人への支援のための一つに県立神出学園があります。

神出学園は、私立生野学園を参考に設立されたと聞いておりますが、生野学園の取組は、全寮制で生徒と教員が寝食などを一緒にしながら、常に1対1の状態に近く、とことん話を聞き、寄添いを中心に生徒の自立・立直りを図っておられます。週末にはそれぞれ家庭に帰り、家族との関係を構築され、また、親の会があり2か月に1度泊りがけで保護者同士の交流があり、学園祭や運動会などにも親の会も積極的に参加をされています。

それは、卒業後も継続されています。30年間で900人以上の卒業生を出しており、殆ど退学者はいなく、就職しても生野学園を第2の故郷として、今だに多くの卒業生が訪れているだけでなく、親の会の活動も続いています。

しかし、このような学校の存在が、不登校で悩んでいる子供たちの元に情報としてなかなか届かないこともあると聞いています。

そこで、不登校の子供たちに対する情報提供等、進路指導はどのようになっているのか、お伺いします。

(3)夜間中学における学び直しの機会の提供について

夜間中学の充実について、これも9月議会で谷井議員から質問をされておりましたが、私の方からも関連して質問したいと思います。

学び直しの場の一つとして、夜間中学が挙げられますが、県内では神戸市立兵庫中学校北分校、同丸山中学校西野分校、尼崎市立成良中学校琴城分校があります。また、篠山市では、夜間中学がないため、ボランティアが自主的に夜間中学を運営している所もあります。

現状の夜間中学は県東部に偏っていますが、姫路市を含む東西播磨地域には1,400人超の中学未就学者がいると言われており、姫路市において、有志が中心となって夜間中学設置の動きがあると聞いており、先日公立の夜間中学の設置を考えるセミナーが姫路市民会館で開催されたとの記事も見ました。

尼崎や神戸は交通の便もよく、通いやすい場所ではありますが、兵庫県は東西・南北ともに広い県土を有しており、せっかく行きたいとの希望をお持ちになっても、物理的な制約で断念せざるおえない可能性も考えられます。そのため、県西部等においても夜間中学の設置が期待されているのではないでしょうか。

そこで、夜間中学における学び直しの機会の提供について、県の方針と現在の取組状況をお伺いします。

上野 英一

(選挙区:神崎郡)