9月17日開催の委員会において、新行革プラン3年目の総点検における課題と検討方向
に対する各会派の意見が開陳されました。我が会派として、次のとおり意見を陳述しました。
新行革プラン3年目の総点検における課題と
検討方向についての会派意見
兵庫県では、阪神・淡路大震災からの復旧・復興のために疲弊した財政の改善を図り、安全・安心な社会を求める県民の要請に的確に対応できる持続可能な行財政構造基盤を確立するため、平成20年10月に新行財政構造改革推進方策を策定し、定員・給与、事務事業など、行財政全般にわたる改革を進めております。
しかしながら、新行革プラン策定以後、昨年8月の政権交代による国の政策動向の変化や地方分権の進展に加え、リーマンブラザーズの経営破綻を起点とした世界的な経済不況が生じるなど、本県を取り巻く行財政環境及び経済状況は大きく変化しております。
行財政構造改革の推進に関する条例により、3年毎に行財政全般にわたる総点検を行うにあたり、もとより、この3年間の推進において、安全・安心を求める県民の思いに応えてきたのか、定員削減や大幅な給与削減に対して職員のモチベーションが維持できたのかなどの検証が不可欠であり、とりわけ現場職員への聞き取り、県民へのパブリックコメント実施等を通して、この3年間の改革における、課題、成果をしっかりと把握する必要があります。それを検証した上で、今回の検討にあたっては、それらの点を踏まえて、持続可能な行財政改革を基本とすることは勿論ですが、財政面の削減ありきの見直しではなく、県民の理解と協力を得る為にも、政策面からもしっかりと検討・協議を行っていくべきと考えます。
このたびの、新行革プラン3年目の総点検における課題と検討方向についての検討、協議にあたっては、我が民主党・県民連合は、これまでからも主張してきたように、次の4つの視点が重要であると考えております。
一つ目は、経済格差や地域格差が拡大している中で、医療・福祉、教育、治安、そして投資事業も含め、県民だれもが納得できる優先順位をとらえた改革であることが必要であります。
二つ目は、これまでの財政フレームについては、政府が発表した経済成長率に過去25年間の兵庫県の経済成長率との乖離率(0.85)を乗じて算定しておりますが、実際の経済成長率とは乖離しており、また、経済は生き物であり、国の政策動向などに左右されることから、何度も財政フレームが見直されております。短期間での財政フレームの変更は極力さけるべきでありますが、残り8年を見通した上、持続可能なフレームにすることを基本とするのは勿論のことですが、硬直した考えではなく、大胆に見直しすることも含め、より実態にあった財政フレームとすることも検討すべきと考えます。
三つ目には、県民の理解と協力を得て、的確に改革を進めていくためには、今後とも、各部署、現地の事務所等でより徹底した協議を行うとともに、県民に一番近い距離にある現場の職員の声を反映し、大切にした改革を行うことも必要であります。
そして最後に、この新行革プランの策定・推進は、本来の目的である、医療・福祉、教育、治安など県民の安心・安全を高めるため将来にわたり持続可能な行財政基盤の確立するための改革であることを改めて肝に銘じ、集中と選択をより明確にし、検討するべきと考えます。
以上の4つの視点を踏まえた上で、今回の総点検にあたって、各施策につきましては、今後の委員会の中で、詳細に述べてさせていただきますが、我が会派は、現地の声を聞くべく、調査を行い、その調査結果も踏まえながらそれぞれの項目について意見をのべさせていただきます。
まずは、財政運営についてであります。
「平成21年度の兵庫県の決算見込み」では、国際的な経済不況を背景にして兵庫県内の経済・雇用情勢は急激な悪化をたどり、それに伴い法人関係税をはじめとする県税は前年度比1,043億円減と大幅な減収となりましたが、4度にわたる国の補正予算により、歳入については、地方交付税や臨時財政対策債を合わせることにより、実質的に増加となっております。また、歳出についても、人事委員会勧告による給与の引き下げや県独自の給与カットにより前年度に比べ323億円も人件費が減額になるなど、収支で黒字を確保しておりますが、現実には、地方交付税や臨時財政対策債などの国の手当てや人事委員会勧告等による給与の見直しがなければ赤字が拡大し、悪化していることの認識をしっかりと持つべきであります。
一方で、国の経済対策に伴う基金造成を含む国庫支出金が906億円増加して、2,813億円となり、これらの基金等を活用して、本県の経済対策等を実施してまいりました。本県の厳しい財政状況を踏まえると、今後もこれらの国の政策を活用して、相乗効果を生み出すような施策を県として展開していくことも必要であります。
知事は、「借金依存はよくないが、長期的に起債を活用しながら財政運営の健全化の道を探る」と言われておりますが、このような厳しい状況において、税金が生きた使い方となっているのか、今後の財政収支のバランスをどう取っていくのかの検証を進めて行く必要があります。例えば、事業を確保するために起債などの財政の手当てが、財政をより悪化させていないか、県民の生活にとって、また将来の県政運営のための事業かについて、しっかり優先順位を決めての事業推進が求められているのか検証を行うべきであります。
次に、県税について、前年度に比べ個人県民税は30億円減、法人関係税は913億円減と落ち込みが大きく、22年度において消費に一部の持ち直しや設備投資の下げ止まりの動きはあるものの、引き続き厳しい状況を覚悟しなければなりません。そのために各年度の税収の見通しによる目標改善を細部にわたって進めていく必要があります。
次に、組織、定員についてであります。
まず、組織再編後の実態を知るための一助として、この度、我が会派は、昨年の新型インフルエンザ対策や佐用町の大水害の対応で、西播磨県民局、光都土木事務所が県民の命を守れる体制であったのか現地調査を行いました。
その調査で、組織再編において、県民局における防災機能が総務部門に統合され人員削減となった結果、対外調整を行う防災課機能と県民局内調整を行う総務課機能が錯綜し、保健部門、土木部門との一体化した動きがとれなかったとの意見が出ております。また、指揮命令系統については、個別業務に関する本庁事業課・事務所ラインと人事管理に関する人事課・県民局・事務所ラインが二重構造となっており、効率的な業務執行になっていないとの意見も出されました。また、現在、佐用川等の復旧・復興事業が進められていますが、5年間で約500億円という大きな事業であるにも関らず、事業量に見合った人員の配置がなされず、過酷な長時間労働となり、さらに佐用に配置するため他の事務所から人が抜かれ、そこでも事業の進捗にも影響が出かねない状況が生じているとの声を聞いております。大震災を経験し、危機管理の重要性を認識している兵庫県が、つぎはぎしながら、事業を推進するのでは、県民の信頼も失うことになりかねません。
また、今回の調査により、県民局・事務所の組織改編にあたって、地域課題を熟知している県民局が、本庁に対して提言しうる権限を持たせなければ、県民局の現地解決型総合事務所として本来の役割は果たせないということも再認識いたしました。併せて、災害時の迅速な対応等のために県民局傘下の現地事務所の権限強化も必要と考えます。
土木事務所を例に挙げましたが、同様にこの3年における健康福祉事務所、農林水産振興事務所、農業改良普及センターなどの再編に伴う評価と課題をしっかりと捉えた上で、組織体制を検討する必要があります。
定員の見直しにあたっても、財政改革のための一律削減ではなく、毎年の事業量の精査による必要な定員数を前提に決定する必要があります。
さらに県民局のあり方については、地方分権の進展、合併後の市町の行政体制の整備や政令市・中核市の状況等を踏まえ、再編された県民局や地方機関の状況について必要な検証を実施し、また県と市町との役割をさらに精査し、県民局が果たす役割を十分明確にした上で、検討する必要があります。
次に、給与についてであります。
これまで給与については、人事委員会勧告を踏まえた対応と新行革プランに定める給与の抑制措置を講じてきたところであります。
人事委員会勧告は、公務員の労働基本権制約の代償措置として、公務員に対して適正な給与を確保するものであり、能率的な行政運営を維持するものであることから、人事委員会勧告の趣旨を尊重するべきであります。
しかしながら、現在の人事委員会勧告では、民間と公務員の給与格差について、自治体が抑制措置をとっているにもかかわらず、減額される前の給与と比較して、民間より高いと報告しており、実態とはかけ離れたものとなっており、公務員に対して適正な給与を確保するものとなっていません。
給与の抑制措置について、新行革プランに基づく県独自の給与削減が3年目となり、全職員平均で年間40~50万円の減額となり、突然の減額措置で、生活設計に大きな支障が生じており、さらに、このような削減措置に加え、本年も予想される人事委員会のマイナス勧告が続けば、職員のモチベーションに支障を来たすことは明白であり、他会派からも本会議や常任委員会で指摘がありましたように、今回の給与の見直しにあたっては、人事委員会の勧告は尊重するものの、これ以上職員の士気を損なうことのないようにするべきであります。
県職員は、定員・給与の削減という厳しい行財政改革の最中にありながら、職務遂行のため、懸命の努力をされていることも、今回の調査で、強く感じとることができたことを付け加えておきます。
次に、事務事業についてであります
事務事業については、多岐にわたることから、今後の委員会における質疑等の中で、各事務事業について会派の意見を述べさせていただきますが、
例えば、前回に提案されたスクールアシスタント配置事業については、国の地方交付税措置ができたことから、県補助事業としては廃止し、市町事業へと移管することとし、3年間の経過措置として、県の補助単価と交付税単価の差額の1/2を助成するとしております。この事業は、発達障害児等が全国的に増加する中、教育現場や保護者から、その必要性の声を多く聞き、国に先駆けて兵庫県が独自に実施されてきたものであり、高く評価されているものであります。
しかしながら、国の交付税措置により、当該事業については市町へ直接交付税措置はされているものの、市町の財政力が違うことから、この3年間の県の措置があっても、現実は、市町によっては、十分に措置されていない現状があります。財政上の理由からこの事業が停滞することは許されず、県の最重要施策の一つの柱である「教育」を考えるとき、もう一度検討するべきであると考えます。
さらに、県民の生活と生命に直結する医療・福祉分野については、これまでの行革による見直しで、どのような影響が出たかを検証した上で、この分野の今後の方向性を具体的に示す必要があります。特に認知症などの介護分野で支障が生じているとの意見もあることから、今後は、各論として、委員会で述べさせていただきたいと思います。
次に、投資事業についてであります。
「新行革プラン」で精査されたとはいえ、他府県に比べ依然高い水準にある投資事業規模をさらに精査し、真に必要な事業とその優先順位を定めたうえで、事業推進を図る必要があります。また、事業実施においては、トータルコストにおいて最も合理的な整備手法を採用するなど、事業費の削減に努めるとともに、予算の内訳や使途の妥当性、事業の実施過程の透明性を確保するほか、費用対効果の事後検証を行うなど、県民への説明責任を果たし、特に事業費の一部を市町や団体に求めるものについては、費用負担について市町等の十分な理解と協力を得ながら推進することを求めます。
一方で、大型プロジェクト事業を見直し、地域生活関連投資事業について予算を確保する必要があります。その上で、1.5車線道路や歩道の設置、河川改良については、本川・支川合流部の優先的な安全確保や堆積土砂の除去、堆積土砂を活用しての堤防補強等の工夫を行い、安全・安心の事業を推進するべきであります。
次に、公的施設についてであります。
地域性の強い施設や市町立施設とすることで一層の利用促進や経営の効率化が見込まれる施設については、市町へ移譲又は移管するとし、市町への移譲の推進や交渉が整わない施設については廃止を含めたあり方検討とすることとなっています。しかしながら管理水準を県が維持することが困難なため、市町へ移譲する施設について、市町が引き受けるのに消極的になることは当然のことであり、財政支援も含めて主体的に地域の活用効果を引き出すためにもより詳しい説明が必要と考えます。
また、公的施設における指定管理者制度導入については、公共性・安全性、利用の公平性等に十分に配慮しながら、公募制を積極的に推進することとし、指定管理者の選定に当たっては、透明性や公平性を確保するため、評価項目や配点の事前公表等に加え、サービス要求水準の設定根拠の明確化を推進する必要があります。
また、指定期間については、運営に対するノウハウの伝承や雇用が不安になるなどの課題もあることから、現行の標準指定期間を延長することなど、制度運用の改善に努めるとともに、指定管理者制度を導入した施設については、管理者の業務実態の把握に努めるとともに、得られた評価結果が指定管理者の業務改善に反映されるように留意する必要があります。
次に、公社等外郭団体についてであります
公社等については、経費、契約、職員給与等の実態が明らかにされているとはいい難い状況にあります。
9月の常任委員会では、公社等の理事長を参考人として招致していますが、報告内容が定型化し、課題についての説明も不十分です。また、監査委員の監査対象とならない団体についても、監査体制の強化や、十分な情報開示を行い、いずれも透明性の確保と効率的な運営を図る必要があります。
また、県からの派遣職員や県OB職員は、在職期間が短く、運営に対して長期的な展望や責任が持ちにくいことなどから、一律の基準で見直すのではなく、配置に当たっては、各団体の実態を踏まえた対応を行う必要があります。
総務省では、2013年までの5年間に限り公社の解散か業務廃止を条件に「第3セクター等改革推進債」を認めるなど、公社の見直しを推進しております。県として、例えば土地開発公社などの重い金利負担を考えれば、債務の処理は急務となります。
しかし、県の将来負担率に大きく影響する公社改革については、公社等経営評価委員会の審議のみならず、各公社が公共の目的から見て本当に必要なのか、議会として委員会を立ち上げるなど財政面・政策面の両面からの根本的な仕分けが必要と考えます。
また、公社等外郭団体の事業、とりわけ、福利厚生分野の事業については、安易に財政面からの見直しだけではなく、その事業の存置意義も含め、様々な角度からその必要性の有無も検討すべきと考えます。
終わりは、自主財源の確保についてであります。
新行革プランでは自主税源の確保として、課税自主権の活用を掲げ、法人事業税超過課税・県民緑税の延長を提案しております。
昭和51年から継続されている法人事業税超過課税は、現在7次となり、長年にわたり県内企業からの貴重な税財源でありますが、その効果についての開示は明確ではありません。現在の財政政状況が厳しい時こそ、有効な活用によって県民の期待に応えることが重要であります。
また、法人事業税超過課税は、産業分野における事業の一般会計の単なる補てんになってはならず、昨年10月に開始された法人県民税超過課税が少子対策事業に充当され、少子対策に大きく寄与したように、法人事業税超過課税についても、企業などが将来を見据えた成長への取り組みができるような事業に充当する必要があります。
また、県下企業の99%を占める中小企業は、兵庫の強みであるものづくりを支える大事な基盤ですが、昨今の経済状況により、かなり厳しい経営環境におかれております。そのため、法人事業税超過課税については、中小企業をはじめとする県下企業の経営改善や体質強化などに充当し、兵庫県産業の底上げを図るための重点化も必要と考えます。
また、5年前に新設された県民緑税について、この5年間の県民緑税の使途の整備効果についての報告があり、大きな成果を得たとのことです。本来、防災や環境などの課課題については一般会計において重点化し、対応しなければならない施策でありますが、新たな財源を確保することにより、より確かな施策展開が求められます。一方では、都市緑化事業などの都市部への予算と「災害に強い森づくり」などにかかる郡部への予算の配分の割合についての課題などもあります。
その延長にあたっては、既存事業の単なる延長だけではなく、広範な県内森林の課題解決や地球温暖化防止のための都市緑化など、長期的計画における県民緑税の役割について明示すべきであり、県民に負担を求めるものであることから、当然、費用対効果も含めて検討する必要があると考えます。
最後に、県民の生活と生命に直結する医療・福祉、教育、治安など、改革の対象となった各分野においては、組織の統廃合や原則的な一律削減の対象にはなじまない課題が少なくありません。そのため、限られた財源の中、優先順位を見極め、より徹底した見直しを行うとともに、県民・市町・関係団体等の声を十分に踏まえたプランとし、県民の協力と理解のもと、実効ある県民本位の行財政構造改革とすることを要望して、我が会派の意見といたします。