行財政構造改革調査特別委員会「第2次行革プラン3年目の総点検における課題と検討方向」民主党・県民連合意見
本県では、平成20年10月に新行財政構造改革推進方策を策定、平成22年の3年目の総点検を経て、今回で2度目の総点検が行われることになりました。今回の見直しは、ちょうど行革の折り返し点に当たるということもあり、単なる3年間の総点検に留まらず、平成30年度の収支均衡などの目標達成に向け、今後5年間の方向性や取り組みをより明確かつ具体的に示すことが重要です。
そのためには、今まで行革プランを推進してきた中で、果たして「安全・安心を求める県民の思いに応えてきたのか」「持続的可能な行財政に向けた体制の構築はできているのか」「定数削減や5年にわたる大幅な給与削減の中、職員のモチベーションは維持できてきているのか?」等々の検証が不可欠です。
今後、企画部会案の作成にあたっては、職員からの意見はもちろんのこと、パブリックコメントや各種会合などあらゆる機会を通じて県民意見を聴取し、これまでの改革における課題や成果についてしっかりと把握していくことが必要です。また、国の政策動向の変化や、地方分権の進展をはじめとして、行財政環境及び経済状況の変化をしっかりととらえ、将来、すなわち平成30年度以降も持続可能な財政構造となるような改革案を提示していかなければなりません。
今から述べる行革の総点検・検討方向性に関しては、我が民主党・県民連合が、これまでからも主張してきたことも多く含まれていますが、以下の視点が重要と考えています。
まず第1は、前述したように、今回の行革検討方向は、行革11年間の最終のあるべき姿を見通し、その先の将来をも見据えた持続可能な行革プランでなくてはなりません。
そこで、持続可能な将来を見通した兵庫県の姿を示すには、「財政フレーム」において、平成31年以降の数値も一定の年度に亘って示すべきだと考えます。もちろん、数値は現状に即して毎年精査するとしても、より長期の財政フレームを示すことにより、兵庫県の将来、持続した行革の姿や県政運営の姿を県民に見せることができると考えます。
第2は、県民に対して事業の優先順位を明確にするという視点です。経済格差や地域間格差が拡大している中で、医療・福祉・教育・雇用・治安など県民の生命や生活に対するニーズは複雑・多様化しています。限られた財源の中、これらの課題に対応していくためには、投資事業はもとより、政策的経費についても、県民が納得できる優先順位を明確にした上で改革を進めることが必要です。
第3は、現場の声を大切にするという視点です。行革を進めるにあたって、今まで以上に県民の声を大切にするということは言うまでもありませんが、同時にこれまでの行革の取組によって定員を大幅に削減した状況下において、残された課題に対応していくためには、県民に一番近い距離にある現場の職員の声を反映していくことが必要です。そのためにも、本庁と地方機関が連携し、県民の(もしくは現場の)声を大切にした改革を進めなければなりません。
第4は、今後の社会情勢を見据え、改めてゼロベースで見直していくという視点です。人口減少局面を迎え、既存の各施設、公社等々は、その規模、在り方、費用対効果を考えたとき果たして県行政・県民の視点から妥当かどうかも聖域なくゼロベースで改めて検討すべきと考えます。
以上の4つの視点を踏まえた上で、各施策については、今後の委員会の中で詳細に議論を行う予定をしておりますので、本日は主な項目に反映させていくべき方向性について以下述べていきたいと思います。
1 財政運営について
まずは、財政運営についてです。
「平成24年度決算」の規模は、社会保障関係費が増加の一途をたどる一方で、中小企業制度資金貸付金が515億円の減、公社等への貸付金が351億円の減となったことから、前年度に比べ減少となっています。収支は、歳入において個人県民税が年少扶養控除等の廃止により増加するなど県税等が前年度比で77億円の増となる一方で、国庫支出金の交付金が110億円の減となったものの、第2次行革プランに基づく改革の実行により、実質収支は5億96百万円の黒字、実質単年度収支でも3億49百万円の黒字が確保され、実質公債費比率は前年度比2.2ポイント減、将来負担比率は前年度比6.7ポイント減など財政指標等からは、着実に推進されている様子が窺うことができます。
しかしながら、行革プランで掲げられた平成30年度の収支均衡などの目標を達成することは絶対条件として、それにとどまらない意欲的な取り組みが必要です。とりわけ、退職手当債、行財政改革推進債が行政サービスを受益しない将来世代への負債であること、今後の地方財政計画の展望が決して明るいものではないことを考えると、さらなる財源対策の圧縮や要調整額の解消についても視野に入れる必要があると考えます。
次に、県税の決算額については、個人県民税や法人関係税等の増加などにより前年度から93億円増加しており、徴収歩合についても、個人住民税等整理回収チームの市町派遣や特別徴収の徹底など、個人住民税の徴収対策の推進により、全国平均を上回る目標を達成しているところであります。しかしながら、未だ、200億円を超える収入未済額があり、適正な課税捕捉と併せて更なる収入確保に取組んでいく必要があります。
また、県税以外の私債権にかかる収入未済額についても100億円を超える状況となっており、今年度設置した債権管理推進本部を中心に、中小企業等高度化資金や県営住宅の使用料・弁償金、医療費未収金などをはじめとする収入未済額の縮減による収入確保についても積極的に取組んでいく必要があると考えます。
2.組織、定員、給与について
次に、組織、定員、給与についてであります。
①組織・定員について
組織体制の見直しにあたっては、今まで行ってきた本庁の部局・課室等の在り方や、部長・局長等の職などの見直しや、地方機関における健康福祉事務所、農林水産振興事務所、農業改良普及センターなどの再編に伴う評価を行い、課題を明らかにした上で検討する必要があります。
定員の見直しに当たっては、歳出削減を目的とした一律削減では真の改革とは言えません。毎年の事業量に基づき、必要な定員数を精査した上で決定するべきです。
また、地方分権が進展する中、県と市町との役割をさらに精査するとともに、さらなる県から市町への権限移譲を見据え、今後の県民局が果たす役割を十分に明確にした上で、県民局の在り方を検討していく必要があります。併せて、合併後の市町の状況や政令市・中核市の状況など、県内の市町の状況が多様であることを踏まえ県民局や地方機関の再編状況についても検証をしていく必要があります。
②給与について
平成30年度以降も持続可能な県政を標榜する中で、その任務を担うとともに、業務の根幹を成すのは県職員、すなわちマンパワーであることは言うまでもありません。
政策課題が多様化し、根本の仕事の量はさほど変わっていないにも関わらず、大幅に定員が削減されている現状の中で、さらに、財源確保だけのため、全職員に対して多額の給与抑制を行っていることは、「このままで県職員のマンパワーを十分に活用し、持続可能で健全な県政を進めることができるのか?」不安を覚えざるを得ません。
先の行革審議会や県民会議の中では、職員の給与抑制措置の是正や、職員のモチベーション維持・向上に努める等の強い意見が出されたと聞いています。
今後も、兵庫県に有能な人材を確保するためにも、給与に関しては、正常化に向けて早急に取り組むべきだと考えます。併せて、改革の検討方向として、最終的には職員給与削減のみに頼らない改革案を提示すべきだと考えます。
3.事務事業の見直しについて
次は事務事業の見直しについてであります。
●事務事業全般について
今回の見直しの検討の方向性の中では、ゼロベースでの見直しに加え、開始時3年以内の新規事業について重点的な見直しが示されています。
しかし、あらゆる事業をゼロベースで見直すのであれば、見直しにあたっては、従来の「廃止するもの(見直しをするもの)を洗い出し、廃止や見直しをすることについて説明をする」という手法から、事業ごとに目的とそれを達成するための年限(終期)を設定し、終期を経た事業を継続する場合は、改めて事業継続の理由を示すなど、事業見直しに関する視点をあらかじめ明確しておく必要があります。
以下、事業の見直しについて、意見を述べていきます。
①県市町の類似事業の見直し、事務の共同処理拡大による効率化について
1点目は、県市町の類似事業の見直し、共同事務の拡大による効率化についてであります。
県当局は、当初「二重行政、類似事業はない」という姿勢でありましたが、今回の検討の方向性の中で「二重行政の見直し」を掲げた点は大いに評価しているところです。今後、県と市町の二重行政の見直しについては、「身近な行政サービスは市町」「広域的な課題は県」という基本的な役割分担に基づき、積極的かつ大胆に実施するべきです。特に見直しに当たっては、事業におけるわずかな内容の差異や対象の差異を強調するのではなく、事業目的、事業内容に一定の重複が見られる場合は、原則として見直すという姿勢が必要です。
また、県と市町による事務の共同処理の対象拡大による効率化についても、積極的かつ大胆に進めていくべきです。現時点では、具体的な事業が示されていませんが、今後の企画部会案の中で具体的に示されることを期待しています。
②地域の夢推進事業について
次に地域の夢推進事業についてあります。
厳しい財政状況の中、現地解決型の県民局独自の予算としての位置づけは評価できるものの、本庁からハード枠、ソフト枠について使途の割合が決められていることに加え、事業内容からは地域特有の課題解決という趣旨に合致していないものも多くみられます。「地域の夢推進事業」の趣旨に見合う事業として、地元市町との調整も含め、地域住民の願いを取り入れた、抜本的な事業の在り方を今一度、本庁、県民局とも見直すべきです。
また、方向性には示されていませんが、「チャレンジ枠」については、設立趣旨、予算規模からも本庁部局だけでなく、住民代表である議員も含め、幅広いアイデア、意見を求めるべきと考えます。
③調達改革について
3点目は調達改革についてです。
検討方向の中で述べられているように、入札に関しては低価格調査を行うことや社会貢献を入札条件に加える総合評価入札の拡大は望ましいと考えます。しかしながら、その一方で物品調達に関しては、まだ改善の余地があり、歳出削減の手法の導入も検討するべきであります。国においても文部科学省等で取り組んでいる物品調達の改革、リバースオークションについて早急に検討し、歳出削減に向けた取組を進めていくべきです。
4.投資事業
次は投資事業についてであります。
①新規事業について
まず1点目は新規事業であります。
社会基盤整備プログラム」では「備える」「支える」「つなぐ」という方針が示されています。さらなるインフラ整備の必要性は十分認識するものの、今後の人口減少社会を見据えると、限られた財源を考えたとき、インフラ整備の拡大方向には慎重にならざるを得ません。したがって、防災・減災対策やインフラの老朽化対策・長寿命化など、不要不急な投資事業を除き、新規の投資事業は、基本的に削減していくという発想で見直していくべきであります。
「何よりも、県民の命を守ることに軸足を置き投資事業の選択と集中を行っていくべきです。
また、新たに事業を行う際には、①事業選定の透明性、公平性、公正性を確保したうえで優先順位を県民に明らかにすること。②公共事業を行う以外に他のソフト対策では代替できないこと。③将来のランニングコストに加え、発行する県債の償還に係る費用の算定も明らかにすることなど、将来にわたって県民の理解が得られるように取り組んでいくことを求めます。
さらに、事業費の一部を地元市町に求めるものについては、費用負担について、市町等に対して十分な理解と協力を得ながら推進することが必要だと考えます。
②維持管理コストについて
2点目は維持管理コストについてであります。
維持管理コストについては、今後ますます増加していくことが予想される中で、中長期的な視野に立って維持管理コストを計算することが必要です。県有施設・社会基盤の維持管理の際は、徹底したアセットマネジメントを行う必要があります。
③県営住宅について
次に県営住宅については、平成32年度に5万戸程度とし、約1割を削減する方針となっています。今後の人口減少社会を踏まえれば、総量の規制は必要です。一方で住宅困窮者への対策も重要な政策課題であることから、市町や民間との役割分担を図ったうえで、新規建設を極力行わず、建替え等が必要になった場合には民間活力を導入するなど、新たな住宅政策を検討していくべきです。
5.公的施設、公社・外郭団体等
次に、公的施設、公社・外郭団体等についてであります。
①公的施設について
1点目は、公的施設についてです。
公的施設においても、人口減少社会を迎えていることを前提として、中長期的な視点から総量を規制していく方向での見直しを進めるべきです。とりわけ、地域性の強い施設、利用者に地域の偏りがある施設については、引き続き市町への移譲等に取り組み、地元市町へ移譲する際にはこれまでと同様に当面の間、従来の維持管理レベルが維持できるよう、財政支援、人的支援も含めて地元市町の理解を得ながら検討していくべきです。
②公社・外郭団体について
2点目は、公社・外郭団体についてであります。
まずは、全ての公社・外郭団体について改めてゼロベースから見直すことを求めます。とりわけ、同種のテーマを扱う公社・外郭団体については統廃合も含めて抜本的な見直しを求めていくとともに、全国的に民営化などの取り組みも実施されていることから、さらに聖域なく議論を深めていただきますようお願いします。
また、公社・外郭団体において共通する課題としては、派在職期間が短い県派遣職員・県OB職員が中心となった運営では、長期的な展望に基づいた取り組みが難しい一方、責任の所在が不明確になることがこれまでより指摘されているところです。そこで、ぞれぞれの団体の存在意義に立ち返り、その必要性について見直していくことが必要であると考えます。 収入に占める県からの補助金・委託料などが多い公社・外郭団体に関しては、これらの団体が実施する事業が他の民間団体において実施することができないか精査するなど、さらなる見直しに向けた検討を行っていく必要があります。
さらに、土地開発公社等、多くの負債を抱えている団体に関しては、「第三セクター等改革推進債」の活用も見据え、県全体での将来負担の改善に取り組んでいくべきであります。
また、前回の第2次行革プラン策定時の検討方向として協議事項とされた項目の中で、今回も同内容を検討方向としているものが見受けられます。これでは結論を出さないことと変わりがありませんので、検討期限を明らかにしていくことが必要であります。
この際、特に但馬空港ターミナル株式会社について意見を申し上げておきたいと思います。過去の議論の中では、「北近畿豊岡自動車道の延伸に伴い、在り方を研究する」ということでありましたが、今回の検討方向では「東京直行便等の受け入れを目指す」となっており、改革の方向性としては逆行しているという印象を抱かざるを得ません。但馬空港に対する県の補助金も含めた関与の在り方について早急に方向性を示していくべきです。
その際「交通環境の変化に伴う空港の在り方」が、今後の但馬空港の在り方を左右する議論であり、幅広い観点からの議論を行い、抜本的な見直しを行っていくことを求めます。
6.自主財源等
次に自主財源についてです。
県民緑税や法人税の超過課税などの継続については、厳しい財政状況下では一定やむをえないものと考えますが、その使途についてはより明確に県民に示していくとともに、事業効果についても県民に丁寧に説明し、継続することに対して県民理解をさらに求めていくことが必要です。
また、職員住宅については、危機管理上必要な官舎、地域事情から必要性の高い住宅を除き、必要性が低くなった住宅や、利用率の低い住宅、老朽化した住宅等については、今後段階的に廃止、売却を進め、新たな財源を生む出す努力を行っていくべきであります。
7.まとめ
県民の生活と生命に直結する医療・福祉、教育、雇用、治安など、改革の対象となった各分野においては、一律削減の対象にはなじまなないというのが、繰り返しになりますが我が会派の一貫した主張であります。
したがいまして、限られた財源の中、優先順位を見極め、より徹底した「選択」と「集中」を行うことが必要であります。
一方、今回の総点検では、この6年間で行革により県民生活が大きく後退した点がないか検証をするとともに、今後も県民・市町・関係団体等の声を十分に踏まえたプランとし、県民本位、生活者重視の視点に立った行財政構造改革とすることを再度主張いたします。
最後に、行革は県民の理解と協力なくしては成り立たないのは言うまでもありません。財政状況の現状、この行革に至った経緯や目的、組織・定員削減、県職員・議員を含めた給与・報酬カット状況、投資事業の内容、事務事業の見直し等々、あらゆる場面での広報を活用し、これまでの行革プランの進捗状況を含め、県民に説明責任を果たさなければなりません。改革に最も必要な県民の理解と協力を得た中で、持続可能な兵庫県政を構築することを強く望み意見表明といたします。