質 問 日:令和3年12月7日(火)
質 問 者:前田 ともき 議員
質問方式:一問一答方式
1 井戸県政からの守破離と議会歴史との対話を踏まえた齋藤県政
知事選の争点の一つは継承か刷新か。継承は前例踏襲のコピペ運営で文句はでないが、刷新で選ばれると早期に変化を実感できない場合、「誰が政治家になっても同じ」と政治不信に逆戻りしてしまいます。
齋藤知事がおっしゃっている「守るべきものは守り、変えるべきところは変える。」には、センスとスピード感に加えて知識と経験も問われます。従って、兵庫県で初仕事の齋藤知事は早期に兵庫県政を熟知する必要があります。
迫る予算編成は最重要であり、その前に押さえておくべき点がある。それが議会議事録です。県政課題を網羅的・多角的・効率的に収集する方法は議事録の速読が最適です。また、議事録を通じて井戸県政の守破離も実現できます。
まず「守」は、師や流派の教えや型を確実に身につける段階。経営者も首長も相談相手はおらず、最終決定は己。トップは孤独と指摘されます。井戸県政の答弁を通じて学ぶことで、知事としての思考回路、守るべきものを学ぶことができるのです。
次に「破」は、他の師や流派の教えも良いものを取り入れ、発展させる段階。
官僚は前例踏襲が多い。過去の井戸県政の答弁に引きずられた県政運営を懸念しています。議会質問では県政に改革や改善点を指摘する提言も多くあります。斎藤知事の目線で答弁実績を見て、軌道修正すべきポイントも多いのではないでしょうか。修正すべき点はどんどん変えていきましょう。
最後の「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。斎藤知事は事業をゼロベースで見直すことを宣言されています。これは是非とも進めてほしいのですが、守と破が出来て初めて離。ゼロベースです。
そして、離を支援するのは議会の役目でもあります。枕詞のように使われる、議会は言論の府、そして伝統。その根幹は議事録です。予算編成や事業評価を行政の視点のみでレクされると、意思決定のための情報としては不十分です。確かに予算は議会の議決を経ていますが、こちらの思いは100%賛成もあれば1%賛成の事業もあり、反対要素は、議事録に発露します。行政の視点に+議会の声を反映させることで参画と協働の実現が図られ、初めて的確な政策判断が実現されるのです。
また、その声は現職議員だけではありません。議事録を読むことで、元職議員を含めて、先達の残してきた議論の積み重ね、議会の伝統に敬意を表しつつ県政運営に当たることができます。
齋藤知事は、直近10年間の県議会本会議・予算&決算委員会議事録を分析した上で、どのようにお感じになったのでしょうか。その上で、「守るべきところは守り、変えるべきところは変える」という井戸県政からの守破離を実現する必要があると考えますが、齋藤県政が変えるべきところは何なのか、知事のご所見を伺います。
2 職員の採用力強化とリボルビングドア
(1)採用力の強化と爆速出世への道
具体的な改善点を主張していく。職員採用試験の筆記は日本人事試験研究センターでいいのか?民間志望者もチャレンジできる、SPI・GABなどの追加も一考の余地があると考えます。
また、大卒者向けの試験会場は神戸4・東京1で妥当なのか。九州・中部からよそ者・優秀な人材を取りに行く積極性も必要です。私の就活時の話ですが、外資コンサルは東京での1次面接から3万円くらいの交通費を出してもらえた。優秀な人材採用にかける投資の重要性を実感しました。金はないが、今は技術がある。遠方学生の交通費負担軽減のため、1次ではウェブ面接も導入すべきです。面接する側のスキルも一朝一夕では身に付きません。更なる面接官向け研修と採用後の評価の関係についても検証していく必要があります。日本は解雇規制が厳しく、公務員はより顕著です。生涯の伴侶を選ぶ仕組みとしては現行の採用プロセスでは不足しているのではないでしょうか。
また、採用の多様化も必要です。自治体DX・ICTの結果がでない。その一因として専門人材が行政内に不足していることが挙げられます。総合土木・環境科学・電気・機械職採用があって、エンジニア・ICT関連がないのはおかしいのではないでしょうか。また、民間と比べて十分な報酬を提示できない自治体は勤務エリアが兵庫5国限定や職種限定採用など民間に負けない柔軟な採用形態の拡充が必須です。
さらに、優秀な人材は爆速で出世できるキャリアパスを整備すべきです。県では、幹部候補生を養成する行政特別研修がありますが、対象は主査級で、概ね35歳以上であるのに対し、出向キャリア30代課長はおかしいのではないでしょうか。学生時代の成績だけで官僚の出世スピードが固定される現行制度に風穴をあけるべきです。大学同期で民間にいったコンサルは35歳、年収1500万円、マネージャーと比較して、県庁の自分はまだ主査?年収は?やりがいは?優秀な人材が採用できないのはあたりまえです。主査・課長など幹部昇格に必要な在級年数や経験年数は撤廃することでキャリア断念組も含めて全国から優秀で成長志向が強い人材を集めると同時に、年功序列が大前提のぬるま湯体質には火をつける必要があります。これら指摘を踏まえた、具体的な改善策を伺う。
(2)外部人材の活用:リボルビングドア
県議として10年間行政職員と接点をもって感じたこと。
決められた枠の中で確実に業務を遂行するスキルはピカイチです。
しかし、生え抜き職員だけでは刷新や未来の創造は不可能です。
私はこれまでICT、広報、ファンドレイジングなど民間主体のチーム作りを提言し、既に幹部クラスは実現しています。今後も県庁新卒では養成できない分野の人材拡充が必要です。
県職員の競争倍率は新卒約4倍に対して、社会人経験者は数十倍。氷河期世代も対象とした試験とは言え、拡大余地、いい人材を採用するチャンスは大きいと言えます。新卒の重要性は理解していますが、今後は現職員の比率を新卒8割、中途2割レベルの規模感に拡大させていく必要があるのではないでしょうか。行政or民間ではなく、どちらも重要です。混ぜることで化学反応が起こります。デジタル庁では初の本格リボルビングドアが実現。幸いなことに民間人材も受け入れ体制ができつつあります。
ビズリーチの調査では68.5%が「官公庁の仕事に興味がある」と回答しているほか、「リボルビングドア」は83.7%がキャリア形成における有効性を感じています。民間は副業を推進し、テレワークで労働時間に余裕も生まれた結果、優秀な人材が週2などで参画できる余地が生まれています。非常勤、数か月単位のプロジェクト採用など多様な時間軸の働き方を大幅拡充させ、中途フルタイム市場には出てこない優秀な人材の取り込みを強化すべきです。
今後、ハイスペック層の働き方はお金を稼ぐ収益職と、NPOや行政スポットなど社会貢献職に分けて同時並行で走らせる考えになるでしょう。
また、指針・中期計画時の審議会委員の人選は刷新すべきです。委員のキャリアを見ても、役所と代り映えのない意見・新しい視点が生まれる余地が少ないメンバーがほとんど。侃侃諤諤の議論、役所のシンクタンク機能、斬新な提言を求めるなら、審議会のメンバーは知事が直接選定すべきです。
これら指摘を踏まえた外部人材活用の強化策について具体案を伺う。
3 職業学科の再編とギフテッド教育
(1)職業学科の再編
今年3月のひょうご未来の高校教育あり方検討委員会報告書 に追加すべき考え方を提言する。まずは職業学科。大規模に再編成すべきだ。「職業教育を主とする学科の在り方検討会」では、『農業・水産・家庭科は求人が少なく、学科の教育内容と職業との関連性が弱まっており、職業学科の意味が薄れている。』と指摘されているが、未だに3科15校存在している。職業学科は今後の成長産業・高付加価値職種に編成すべきではないか。
一方、民間企業では社内人材のリスキリングに大きな投資をしている。この分野の先駆者AT&Tは、2008年時点で「25万人の従業員のうち、未来の事業に必要なスキルを持つ人は半数に過ぎず、約10万人は10年後には存在しないであろうハード関連のスキルしか持っていない」と把握していた。また、2020年1月のダボス会議では「第4次産業革命により、数年で8000万件の仕事が消失する一方で9700万件の新たな仕事が生まれる」と予測されています。
職業学科の役割に地域の産業・社会を担う人材の育成があるのは承知しているが、あくまでそれは現段階の産業・人材ニーズです。しかし、数十年後はどうだろうか。
また、スマート農業にiconstruction、地域産業もDXしなければ生き残れない時代です。DXは全産業に必要であり、付加価値が高く、所得向上につながりながら人手不足の状況、それがICT。なのに、その分野の職業学科はゼロです。
兵庫県のデジタル田園都市はICT職業学科への全集中から始まる。
これら趣旨から乖離した職業学科は廃止、もしくは普通科に転化させるべきではないだろうか。また、職業学科はICTを大きく拡充させ、卒業後の職種につながる学科のみとすべきでないだろうか。
これらの指摘を踏まえた今後の職業学科の再編・見直しについて伺う。
(2)異才を伸ばせ!ギフテッド教育の推進
次にギフテッド教育の推進について提言する。日本の教育には「特定分野に特異な才能=ギフテッド教育」の視点が欠けていないか。 定義は様々だがギフテッドは人口の数パーセントで世界各国は早修や拡充の様々な教育プログラムを提供している。 森鴎外は東大医学部予科に年齢詐称で2歳低く12歳で入学したそうです。日本が低成長なのは異能・はみ出し者を排除・抑圧する社会も要因だ。ノーベル賞の真鍋教授のスピーチは記憶に新しい。「私は日本に戻りたくない」「なぜなら調和の中で生きる能力がないから」。
(発達障害と才能を併せ持つ子供)2Eは親から理解されず、教師からも扱いにくい存在として感じられる場合もあります。孫正義育英財団など民間主導で立ち上がりつつあるが、これに応募してくる人は周囲の発掘・支援と理解があったラッキーな存在と言えます。才能は埋もれ、潰されていたギフテッドもいるはずだ。
認識能力テストCogATなどでの全県調査や教員がギフテッドを見落とすことのない研修などギフテッド発掘プログラムを創設すべきだ。
一方で、兵庫のSSH・SGHは全国的に見ても素晴らしい取組ですが、高大接続は地域高校の存続中心の考えから早修へも拡充させるべきです。これに加えて、県立大学でサマープログラム、飛び級入学や3年次卒業生制度を導入し、成績優秀者は学費無料にすることで、大学まで一気に突き抜けることになります。また、高校の飛び級は認められていないが、例えば国への特区申請により飛び級・早修を可能とする教育を実現すべきです。
今後、県立高校教育改革の議論を進めるにあたり、最大級のギフテッド発掘・支援体制を兵庫県が国に先駆けて構築していく必要があると思いますが、兵庫からの異能創出、ギフテッド教育の推進についての考えを伺う。
4 議員の不当口利きゼロ作戦
自治体運営は二元代表制だけではなく、議院内閣や議員が副知事になる特別職兼業モデルでもいいと考えている。
投票の洗礼・住民から直接付託を受けた公選職として、全体最適の意思決定、介入ならいい。職員では判断できない、価値観、未知の分野、公選職だから許される意志決定もある。従って、議員の存在は重要だ。
しかし、国会議員事務所による融資仲介、知事によるスポーツイベント演出への口出し、職員への市会議員による不当要求など、最近は議員の行政への不適切な介入事例が散見される。
議員が特定団体・個人と行政を仲介することや、施策に口出しすることを否定するものではない。複雑な行政ルール・施策・事業の改善に共に解決していくことも必要だ。しかし、それは大前提として、私利私欲のためではない。善良さ・高潔さが必須である。一方で、残念ながら、邪悪な政治屋の存在も否定できない。
従って、政治と行政の接点をお天道様のもとに晒しして牽制する必要がある。また、公開することで善意の取り組みがやりやすくなるのです。
私自身、議事録に記録される会議体以外では、できるだけ個別の団体・個人の名前は出すことを控え、疑義を持たれないようにしている。本当はいいサービス・技術はもっと紹介したいし、改善すべき点を議論したいのだが、非公開の場ではやりにくい思いが在職来ずっとあった。
しかし、不適切な介入を公表する制度があれば、善意の取り組みも堂々と積極的にできるようになる。更には、志を持った職員によこしまな政治屋の仕事をさせることはモチベーション低下や倫理観の欠如につながる由々しき問題であり、職員を守るためにも必要な牽制だ。
例えば、神戸市は市政の透明化の推進及び公正な職務執行の確保に関する条例があり、年間3万件の事例が登録されている。一方で兵庫県ではそのような制度は設けられていない。
知事公約はフルオープン。天網恢恢疎にして漏らさず。県会議員からの要望等を適切に記録し、 一定の基準を定めた上で、対象応対記録については 定期公開していく制度を創設すべきと考えるが、いかがか。
5 子育て支援の所得制限は撤廃を!
少子化担当大臣が創設され14年が経過した。結果はでたか?
2022年10月からは、見直しによって年収1200万円以上の世帯は児童手当がカットされます。少子化対策は国策であるが、国民が求めているのは大臣ではなく、当たり前の政策です。所得制限やクーポンによる余計な事務経費を見ると税金を払うのが馬鹿らしくなります。子作りから社会人まで、不妊治療、保育料、高校・大学授業料から養育費まであらゆるタイミングでお金がかかります。各種給付、控除がありますが、所得制限の壁が存在します。
例えば、年収1200万円の1馬力、4人子供世帯はどうなのか?あらゆる支援 から見放され、所得税・住民税率は高額で税が引かれた後に子育てコスト4人分を捻出することになります。一方で年収600万×2馬力、世帯年収1200万円世帯ならどうでしょうか?・・・
また、例えば、年収1200万円のひとり親は、所得税から健康保険、年金を引いて、手取りは約850~900万円です。ひとり親控除から外れ、児童手当は無し、高校授業料は有料、大学奨学金は借りられず、ワンオペ子育てで疲労という状況になります。懸命に働き、納税して、この仕打ちです。コロナ10万円給付金を契機として、不公平感が高まりつつあります。
事業ごとの所得制限は個別最適で、全体最適になっていないのでは?
家族構成や控除・助成などがからみ、子育て、教育、住宅、医療、介護も考慮すると複雑で変数が多い所得制限。可処分所得は逆転が生じていないのか?
この問題提起は若年がん患者妊孕性温存治療費助成などでも指摘してきた。
今年の夏、内閣府規制改革・行政改革担当大臣直轄チームが分析レポートを発表した。これによると、各種給付の所得制限の限度額や限度額の根拠を、政策に役立つ形で整理し、分析した先行研究はほぼないとしているが、例えば、共働き世帯(子二人)では、児童手当の給付額が所得制限により減少することから、夫年収が約 918 万円と約 960 万円を境に可処分所得が逆転する可能性などを指摘している。しかし、これら分析でも携帯・食費・塾などの養育費は考慮されておらず、可処分所得逆転や実態を把握するには不十分といえる。
ここで問題提起。「ひょうご保育料軽減」や「不妊治療ペア検査助成」など、兵庫県が独自に実施する子育て支援の所得制限は全廃すべきでないだろうか。子育て世帯は現役世帯、所得税を落としていただける世帯であり、その層を流入させるには雇用と子育て環境。そして、自治体の影響力を行使できるのは子育て環境です。
突き抜けた子育て支援は、情報伝達力の強化にもつながります。全国に先駆けて、兵庫県独自の子育て施策に関する所得制限は撤廃すべきと考えるがいかがか。