議会の動き

小池ひろのり議員が質問(決算審査・総括審査)を実施

第306回9月定例会 決算特別委員会質問 (総括審査)
2010年10月20日(水)

1 行革の3年目の総点検について

 平成21年度の兵庫県決算では、一般会計の歳入は2兆1,692億円、歳出は2兆1,643億円で、翌年度に繰り越す財源を除いた実質収支は、約2億円の黒字となっております。
 しかしながら、国際的な経済不況を背景にして、兵庫県内の経済・雇用情勢は急激な悪化をたどり、県税が前年度比1,043億円減収し、国の補正予算による地方交付税や臨時財政対策債による歳入が増加すると共に、歳出については人事委員会勧告による給与の引き下げや県独自の給与カットにより、前年度に比べ323億円もの人件費の減額により、黒字を確保したものであります。この黒字確保は、行革における人件費の削減の効果が表れたものと言えます。
 しかしながら、現在の人事委員会勧告では、民間と公務員の給与格差について、自治体が抑制措置を取っているにもかかわらず、減額される前の給与と比較して、民間より高いと報告しており、公務員に対して適正な給与を確保するものとなっていません。先週の15日に発表された人事委員会勧告では、行革による給与抑制措置を含めると民間給与より、月額で19,938円、5.04%下回っているにも関らず、給与抑制措置を除いた民間との比較で、平均年間給与9万円、1.4%の引き下げを勧告しております。本来、人事委員会勧告は、公務員の労働基本権制約の代償措置として、公務員に対して適正な給与を確保するものであり、能率的な行政運営を維持するものとありますが、そうなっていない状況であります。
 これが実施されれば、職員のモチベーションに支障を来たすことは明白であり、今回の行革の3年目の総点検における給与の見直しにあたっては、人事委員会の勧告は尊重するものの、これ以上職員の士気を損なうことのないようにするべきと思われます。
 また、公社等の見直しについては、公社等経営評価委員会の審議のみならず、各公社が公共の目的から見て本当に必要なのかという観点から、統廃合を更に検討すべきと考えます。今後、議会として委員会を立ち上げるなど財政面・政策面の両面からの根本的な仕分けが必要と考えます。
 さらに、行革のこの3年間の取り組みが、我が会派の主張である、安全・安心を求める県民の思いに応えてきたのか、定員削減や大幅な給与削減に対して職員のモチベーションが維持できたのかなどの検証が不可欠であり、とりわけ現場職員への聞き取り、県民へのパブリックコメント実施等を通して、この3年間の改革における課題、成果をしっかりと把握する必要があります。
 そこで、これらの視点を踏まえて、県の厳しい財政状況の下、さらなる選択と集中を徹底させると同時に、行革3年目の総点検を、今後、どのように行い、公表していくのか方針を伺います。

2 関西広域連合の設立について

 我が会派は、本格的な広域行政の実現に向けた第一歩として、組織を立ち上げ、その上で、予算措置や移譲が可能な事務・権限を国に対して強く求め、地域から地域主権改革を進めていくことが必要と考え、関西広域連合の設立に賛同し、10月6日に関西広域連合の規約案を議決しました。
 現在、2府5県において9月定例県議会に規約案が上程され、大阪府を除く府県で既に議決されており、設立に向けて着実に前進しております。
 しかしながら、8月の広域連合に関する特別委員会の意見開陳でも述べさせていただいたように、広域連合議会における各府県の議員定数の配分や議員報酬などの課題もあり、また、県民にとっては、認知度が乏しいことから、関西広域連合について市町や県民への周知に引き続き努める必要があります。
 さらに、関西広域連合の運営にあたっては、全関西の府県の参加が重要であり、今回参加を見送った奈良県の加入を、兵庫県としても今後も呼びかけていくべきと考えます。
 そこで、今後の設立に向けて、これらの指摘した課題についてどのように対応するのか、また、設立というスタートラインに立った現状で広域行政の実現に向けた知事の決意をお伺いします。

3 兵庫県の経済・雇用対策について

(1) 若年者雇用の支援について

 この件については、部局審査において、宮本委員より、質問させていただきましたが、今まさに来春卒業の高校生の就職活動が本格化しているこの時期に、依然として厳しい雇用状況であることから再質問させていただきます。
兵庫県内の8月の求人倍率は0.52倍で、近畿6府県で最も低く、24歳以下の無業者が前年同期より100人以上増えるなど、ITバブル期崩壊後の就職氷河期並みの大変厳しい雇用状況です。
 さらに、卒業時に正社員にならなければ、その後、正社員になれる可能性が低くなり、不安定な非正規雇用の就労が余儀なくされ、安定した収入を確保することが困難になることから、一段と新卒者の就職支援が重要となってきております。
 また、就職先として、学生の希望と求人との間に、ミスマッチが存在し、就職直後の退職もありえることから、そのミスマッチを解消するための施策を展開していかねばなりません。
 今後、成長が見込まれる介護や福祉、農業などの分野へのミスマッチも考えられることから、産業労働部だけではなく、全部局を上げて、新卒者を初めとする若年者の雇用を支援する必要があります。
 そこで、県として、若年者の就職支援について、どのように取り組んでいくのか方針を伺います。

(2) 兵庫経済の成長戦略について

 6月18日に、菅総理が日本再生の一環として「強い経済」の実現を目指して、2020年度までの今後11年間の平均で、実質年2%、名目年3%を上回る経済成長を打ち出されました。多岐にわたる政策の中でも、特に4つの分野-環境、健康、観光、アジアにおいて計500万人程度の雇用を創出することを目標とする「新経済成長戦略」を策定しています。その経済成長を実現するために①環境・エネルギー、②健康、③アジア、④観光・地域活性化、⑤科学・技術・情報通信、⑥雇用・人材、⑦金融を戦略分野とし、特に、環境・エネルギー、健康、アジア、観光・地域活性化の4分野で123兆円の需要創出、499万人の新規雇用を見込み、現在、緊急経済対策として様々な施策を展開しております。
 兵庫県においても、20年に「ひょうご経済・雇用活性化プログラム」を策定し、そのプログラムの基本事項として、ものづくり産業を起点とした兵庫経済の成長シナリオとしております。
 しかし、内容については、目指す分野が網羅的で、そのためにどのような施策に重点が置かれているのか不明確です。兵庫県経済が厳しい状況の中で、兵庫経済の成長戦略を明確にして、強い兵庫経済を構築する必要があります。例えば、今後、需要が拡大すると予想される介護・福祉分野について、サービス提供の面だけではなく、それを支える介護機器の開発・生産などにも焦点を当てて支援を行うなど、兵庫県として成長を目指す分野を定め、その成長について重点的な支援を行うべきと考えます。
 本年は、次期経済・雇用プログラムの策定の年でありますが、兵庫経済の成長戦略について、どのように考え、どのように施策を展開して行こうと考えているのか、ご所見を伺います。

(3) 海外事務所の必要性について

 この件については、本会議の一般質問でもさせていただきましたが、兵庫経済の活性化にも大きく関連することから、再度質問させていただきます。
 兵庫県香港事務所は、行財政改革によって、平成20年3月に閉鎖されました。しかしながら、中国経済が発展する中、中国との交流がこれから本番という時の閉鎖は、兵庫県経済の成長戦略にも大きく影響を及ぼすことになり、もっと長い目でみる必要があったと思います。21世紀はアジアの時代と言われています。中国が好き嫌いという問題を越え、もはや中国を無視して日本経済の発展はないと考えます。
 海外事務所は、工場進出或いは日本製品の輸出支援の面でも、現地で何が望まれ、何が必要かという的確で最新の情報という点で、海外事務所からの生の情報に優るものはありません。また、現在、日本を訪れる観光客は、アジアから7割、東アジアからは6割と言われており、中国の富裕層の観光ビザの発行が緩和されたことにより、誘客のプロモーションを積極的に展開すれば、間違いなく兵庫県の発展につながります。
 さらに、海外事務所は地域文化の交流拠点でもあり、日本文化等を紹介することで相互理解を深め、友好交流を促進させ、国家間の紛争を乗り越え、平和・地域の安定に貢献するものと確信しております。
 一般質問において、知事は、現地駐在員の増員や連絡員のネットワークの活用など多面的に検討する旨の発言がありましたが、根無しの草では駄目で、拠点としての海外事務所を再設置し、兵庫経済の成長戦略に位置づけ、経済・人的・多文化交流のアジアの拠点とするべきと考えますが、ご所見を伺います。

4 今後の兵庫県農業について

 国では今後の食料、農業、農村の基本的な施策として、新たな食料・農業・農村基本計画を策定し、戸別所得補償制度に加えて、「農業・農村の6次産業化」や「食料自給率の目標を50%に引き上げる」などの施策を表明しました。
 同計画の特徴としては、水稲を中心とした農業経営において、米以外の転作作物による需給調整から、米粉用や飼料用等の新規需要米、すなわち米を作りながら需給調整することも可能としております。さらにその販売を農協に頼るのではなく、自らが販売していこうとする意欲ある農家を支援すると共に、これまでなかなか取り組みがされていなかった、米における6次産業化にも道を開くものだと考えます。
 先般の部局審査における上野議員の質問において、本県の7月末の新規需要米の作付計画面積が、昨年の3倍以上との答弁をいただきました。本県での同計画に基づく取組成果が着実に出ているものと評価します。また、戸別所得補償制度は、新規需要米等の販売ルートを独自開拓する等の意欲ある農家への支援により、大規模経営の促進、農家の自立につながると思われます。また、本県では農家の約80%が兼業農家であることから、我が国の農村や農地の維持には不可欠な、零細・兼業農家への最低限の支援制度となっており、未来を見据えた制度設計となっていると考えます。
 一方、昨年夏の政権交代以降、国では農業政策の大きな転換が行われていますが、国の新たな計画がめざす「農業生産性を高め、食える農業にする。さらに、食料自給率を高める」という方向での施策は、前政権時代から継続的に推進されていることであり、兵庫県においても、これまでの取り組み推進を軸にしながら、先に述べた国の新たな計画の特徴を踏まえた本県独自の検討を加え、兵庫県農業の推進につなげていくべきと考えます。
 また、部局審査では「県民全体で農林水産業を支える」との農政環境部長からの答弁もいただきました。まさにその通りであり、県民理解のもと、県民一丸となって取り組むべきと考えます。
 そこで、国の新たな食料・農業・農村基本計画を踏まえた兵庫県農業の今後の方向について、県民一丸となった取り組みという観点も含め、知事の見解をお伺います。

5 口蹄疫を始めとした家畜伝染病対策について

 今年4月に発生した家畜伝染病・口蹄疫は、宮崎県内5市6町に感染拡大しました。
 感染力が強い特性もあり、病気が発生した農場の家畜やワクチン接種を行った家畜を含め、約29万頭の牛や豚が殺処分されました。
 兵庫県も含めた全国からの獣医師の応援による懸命な防疫活動により8月末にようやく終息宣言が出されました。
 幸い、本県の家畜への感染はありませんでしたが、牛肉、豚肉が輸出できないなどの影響があります。過去、本県において、平成16年の高病原性鳥インフルエンザ等の家畜伝染病が発生しており、宮崎県の口蹄疫の検証結果等を踏まえ、本県の家畜伝染病対策にも考察を加えていくべきではないかと考えます。
 国では、口蹄疫対策検証委員会により現在、最終報告に向けて検証を行っていますが、先月15日に発表された「これまでの議論の整理」では、「初動の対応が不十分」や「国・県・市町村の連携不足」が指摘されており、今後は、家畜防疫員による定期的な立入検査や、国主催による全国一斉の防疫演習により防疫体制の点検や改善、県境付近での発生に備えた隣接県同士の連携・協力体制の準備等が改善方向として示されています。
 県としては、国の最終報告を受けて検討する部分もあるかと思いますが、先に指摘した部分は宮崎県で発生している段階から指摘されていたことでもあり、本県で発生した場合への対応として、早期に検討しておくべきではないかと考えます。
 そこで、初動確保のための早期発見に向けた職員の資質向上も含めた、家畜防疫体制のさらなる整備や、近隣府県等との広域連携による取り組みがまず必要かと考えますが、この点も含めて、今後、口蹄疫を始めとした家畜伝染病対策をいかに改善していこうと考えているのか伺います。

6 治療を必要とする長期入院患者等への対応について

 次に、治療を必要とする長期入院患者等への対応についてお伺いします。
治療の必要がなくなっても入院を続ける「社会的入院」を解消するため、平成14年の診療報酬の改定により、180日を超えて入院する患者への保険給付の枠が狭まり、患者の自己負担が増加することになりました。また、一般病棟等については、入院患者の入院日数で入院料に差がつくことから、経営のために患者の早期退院が進められていると言う実態があります。その結果、急性期を過ぎた患者の一般病棟等における長期入院が困難となってきております。
 90日を超えて入院する場合は、入院診療報酬が低減され、「一般病棟入院料」等が低い点数となるため、療養型病棟への転院が進められております。しかし、現実には受け入れる療養型病棟も少ないことから、介護施設への移転や在宅で治療を行う必要あります。しかし、介護施設等の整備が間に合っていない現状では、在宅治療が中心となり、高齢者の家族にとっては大きな負担となっております。
 在宅で看護・医療ができれば越したことはないですが、大きな後遺症を持った患者や高齢者が、在宅で治療を継続できる環境は十分ではありません。介護保険制度に期待したものの、介護施設も十分でないことから、多くの患者や高齢者、その家族から、この制度の改善の声をよく聞くところであります。
 そこで、このような状況を、県としてどのように認識し、どのように対応しようとしているのかお伺いします。

7 スクールアシスタント配置事業について

 県教育委員会では、ひょうご教育創造プランにおいて、ひょうごユニバーサル社会づくりの理念にもとづく特別支援教育の充実をかかげ、小学校等の通常の学級に在籍する障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けた取り組みに対し、きめ細かに支援されております。
 特に、LD、ADHD、高機能自閉症等様々な障害のある児童生徒に対し支援等を行うスクールアシスタントの配置は、全国に先駆けた兵庫県独自の取り組みであり、全国に誇れる教育施策として大いに評価されて良いものと考えます。
 そういう中で、このスクールアシスタント配置事業については、国の特別支援教育支援員の配置に係る地方交付税措置ができたことから、平成22年度末までの3年間の経過措置として、県の補助単価と交付税単価の差額の1/2を助成するとした上で、県補助事業としては廃止され、市町事業へと移行することが、平成20年度末に策定された新行革プランで発表されました。
 この事業は、発達障害児等が全国的に増加する中、教育現場や保護者から、その必要性の声を多く聞きます。さらに、しっかりとした支援の下で障害のある児童生徒を通じて、他の生徒に「やさしい心」を育むなど、心の教育にも大きな好影響を与える場合もあると聞きます。
 また、国から市町へ直接交付税措置はされているものの、各市町の財政力が違うことから、この3年間の県の措置があっても、十分に措置していない市町もあるという現状があります。
 新行革プランについては、現在、条例に基づく3年目の見直し作業が行われています。行財政構造改革調査特別委員会の意見開陳でも述べましたが、我が会派においては、このような現状を踏まえると、財政上の理由からこの事業が停滞することは許されず、県の最重要施策の一つの柱である「教育」を考える時、再検討するべきであると考えます。
 そこで、スクールアシスタント配置事業のこれまでの成果を伺うとともに、様々な障害のある児童生徒に対し、学校生活上の介助や学校活動上の支援をするための新たな制度も含め、今後の取り組みについて伺います。

8 取り調べの可視化について

 この件については、部局審査において、池畑委員より、質問させていただきましたが、再度、認識を聞かせていただきます。
 捜査段階から公判まで日本の刑事裁判では、自白が重視されております。しかし、そこから脱し公正な裁判を確立するための決め手として、全面可視化の必要性が叫ばれて久しい状況であります。これまでの冤罪事件の被害者や弁護士らによると、捜査当局は身柄を拘束した容疑者に対し、強圧的な追及や言葉巧みな誘導尋問を行い、立件や起訴に好都合な自白を引き出してきたと言われております。本来なら物証の重視を刑事裁判の前提としなければならないはずで、証拠を裏付ける容疑者の供述も、任意性が保証されてこそ信頼できるものとなります。
 一般市民が参加する裁判員制度が、昨年5月にスタートした際、裁判員に判断材料を提供するため検察側は一部に限って録音・録画を試行しました。しかし、可視化の対象を広げることには「供述をためらわせ捜査に支障がある」として消極的であり、兵庫県警も真相解明に影響が出ると言う観点から強い懸念を示しておられます。
 しかしながら、密室での容疑者の取り調べの結果、足利事件の菅谷さんのような冤罪事件を二度と出さないためにも、さらに大阪地検特捜部の証拠改ざん事件で失った警察・検察に対する信頼を取り戻すためにも、可視化は避けられないものと考えますが、県警のご所見を伺います。