第308回定例会(2月)一般質問
2011年2月22日(火)
1 県立尼崎病院と県立塚口病院の統合再編に伴う跡地利用について
まず、1点目は、県立尼崎病院と県立塚口病院の統合再編に伴う跡地利用についてであります。
尼崎と塚口の両県立病院については、統合再編検討委員会の提案を踏まえ、2つの病院の高度専門医療を引き継ぐとともに、救命救急センターや総合周産期母子医療センターの設置などより一層の医療機能の充実を行うため、統合再編して新たな県立病院を建設されますことを、地元尼崎市民を代表して、知事はじめ関係者の方々に心より御礼申し上げます。
統合再編基本計画では、その新病院の用地は、公共交通機関等によるアクセスもよい、尼崎市の中心部に位置する、市立尼崎産業高校跡地に決定いたしました。
新病院の建設には、総事業費約340億円を要し、平成26年度の開院を目指して、整備が進められると聞いています。施設概要は今後の設計等により変更がありうるとのことですが、地上12階建て、建築面積10,000㎡、延べ床面積66,000㎡、ベット数730床と西日本有数の規模を誇り、24時間救急を断らない、医療内容を考えると西日本一になるのではないかと、尼崎市民だけでなく、阪神間の住民も大変期待を寄せています。
この大きな事業に対しては、近年景気の低迷や大きな工場の撤退発表等やや暗い話題の多い地元経済界からも、久々に明るく元気になるニュースであると大変な期待が集まっています。ご承知のとおり、地元尼崎市は昔から中小企業が盛んなまちであります。現在は、景気動向に左右され、縮小を余儀なくされている企業もありますが、技術力が優れた企業は数多くあり、その力は新病院の整備に十分に役立てるものであると考えています。そのため、新病院の整備にあたっては、その技術力が活用され、地域の経済効果がより高まることを期待しています。
一方、この2つの病院の統合後の活用については、県立尼崎は現施設の再利用、県立塚口は既存建物の撤去を前提とした検討を行うとされていますが、阪神間では近年大きな工場の撤退発表等が相次いでいる状況もあり、跡地利用に関する地域住民の不安を含め、非常に関心が高まっております。特に、塚口病院跡地については、既存建物が撤去される方向ということで、その跡地の活用策の動向には地元住民が注視している状況にあります。
そこで、統合再編に伴う両病院の跡地利用について、どのように取り組んでいかれるのか、県当局の見解をお伺いします。
2 山手幹線の大阪府側との接続について
質問の第2は、山手幹線の大阪府側との接続についてであります。
「山手幹線」は戦災復興事業の一環として1946年に計画が具体化、64年目の平成22年10月24日に兵庫県側は全線開通いたしました。計画が具体化した後、長い期間にわたり事業は停滞しておりましたが、阪神・淡路大震災の後、「山手幹線」の防災上の重要性がクローズアップされ、兵庫県、尼崎市、大阪府、豊中市の協議会で話し合いがもたれ、神戸市長田区から尼崎市の戸の内までの約30キロの兵庫県内の工事は進捗しました。
しかし、立派な道路は、旧猪名川の手前でストップし、大きな道路標識があり、右側への矢印で大阪・豊中へと細い道へと誘導されますが、その迂回路も狭隘なため、隣接する地域の住民にとっても安全性の面で大きな問題があるとの声も高く上がっております。大阪府側の接続道路の三国塚口線は未整備という現状にあり、そういう中で、大阪府とは「三国塚口線・山手幹線連絡調整会議」で協議を重ねていることは存じておりますが、未整備のままでは期待された防災道路としての機能も十分に発揮できません。
そういう中で、平成22年12月1日、総務大臣の許可を受け、関西広域連合が発足しました。井戸知事が初代の連合長に就任され、兵庫県民にとりましては、大変栄誉であり、井戸知事への期待が高まっております。
特に、阪神・淡路大震災を体験している県民にとりましては、広域防災担当がわが兵庫県であることにも、大きな関心が寄せられております。被災地から、また被災した方からの意見を大いに取り上げ、他地域にさきがけて広域防災体制の整備が急進すると注目されております。
16年前の大震災同様、自然災害はいつ起こるかわかりません。大阪湾高潮対策協議会においても、想定を超える巨大高潮発生時には、国道43号及び2号はゼロメートル地帯であるため、冠水により通行不能が予測されるとの報告が出されております。そのためにも、災害時の代替輸送手段としての、阪神間を東西に貫く幹線道路「山手幹線」が大阪府にとりましても必要不可欠であることは言うまでもありません。
関西広域連合長であります井戸知事は、昨日の我が会派の中田幹事長からの代表質問の答弁において、「府県域を超える防災体制をつくる」と明言されました。まさに、このご答弁どおり、まずは事業半ばで中途半端で終わっているこの山手幹線と大阪府側の接続を実現させることで、有言実行の初代連合長として、後生に名前が残ると思います。
そこで、知事にお伺いいたします。このような状況を踏まえ、山手幹線の大阪府側との接続について、これまで以上に強く大阪府に働きかけていただきたいと思いますが、昨日の知事の答弁からも期待して、知事の今後のご決意をお伺いします。
3 武庫川下流部における堤防強化等の治水対策について
質問の第3は、武庫川下流部における堤防強化等の治水対策についてであります。
武庫川水系の治水対策については、武庫川流域委員会等での様々な議論を踏まえ、いわゆるダムによらない治水対策を行う「武庫川水系河川整備計画案」を県としてとりまとめ、昨年12月3日に国土交通省に同意申請が行われました。それに基づき、平成23年度から42年度の長期にわたり、戦後最大洪水流量に対応する河道掘削や堤防強化、遊水地整備等の総合的な治水対策に取り組むこととされています。
尼崎市の武庫川は、普段はのどかな川で、河川敷では少年野球、ラグビー、サッカー、グランドゴルフさらに、井戸知事も昨年10月にご視察頂いておりますようにコスモス畑もあり、尼崎市民にとりまして憩いの場です。
しかし、穏やかな川も、昭和9年9月の室戸台風、昭和13年7月の梅雨前線、昭和25年3月の温暖前線、昭和25年9月のジェーン台風、昭和42年7月の豪雨、平成11年6月の大雨により周辺に甚大な被害を引き起こしています。
その中でも、徳島県に上陸し、淡路島、神戸市垂水区付近を通過した昭和25年9月3日のジェーン台風は「死者22人、負傷者228人、行方不明者6人、全壊473戸、半壊7,410戸、流失196戸、床上浸水18,679戸、床下浸水6,951戸、田畑冠水260町歩、堤防決壊33箇所、崩壊39箇所、破壊52箇所、橋梁決潰8箇所、破壊6箇所」さらに、「台風の襲来と大阪湾満潮時が一致し、高潮を引き起こし、堤防を乗り越えた海水が尼崎や西宮市を浸水させた。武庫川の堤防決壊。同時に高潮が押し寄せ、阪神電鉄本線以南一帯は水域と化」したことなど、武庫川の氾濫、破堤の記憶が尼崎市民の脳裏に焼き付いています。
つまり、尼崎市は武庫川の下流部にあり、洪水と海の満潮時が重なった時の被害は計り知れないモノがあると考えます。
また、下流部の堤防沿いに、村の時代から、先祖代々住み続けている住民にとりましては、大正時代以前より堤防決壊等によって、生命・財産のすべてを失ってきた歴史を忘れることはできません。水害から生命・財産を守るために、今後も降りかかるであろう、決壊後のダメージを少しでも減らしたい、という堤防強化の念願が一世紀以上にわたってあります。先祖より受け継いできた土地を守るために、一生懸命防災に取り組んでこられた住民の思いを汲み取り、不安を少しでも取り除くことが行政の使命であるとも考えます。
しかしながら、武庫川の堤防の現状を見てみますと、護岸の老朽化が進み、そこに草が生え、素人目には大変、危険な状態のように写り、ひとたび洪水が発生すれば容易に侵食され、破堤に至るのではないかと地域住民の方々も大変危惧いたしております。
ご存じのように尼崎市は人口密度で兵庫県内で1位であり、市域の約1/3が海抜ゼロメートル地帯でありひとたび破堤すればその被害は甚大です。ダムによらない治水である以上、河道掘削、堤防強化工事が重要だと考えます。
そこで、昨今の頻発する水害から県民の安全安心を守るためにも、武庫川下流部における堤防強化等の治水対策が重要と考えますが、今後どのように取り組んでいこうとしているのか、お伺いします。
4 耐震化の推進について
(1) 防災拠点となる公共施設の耐震化について
質問の第4は、耐震化の推進についてであります。
まず、防災拠点となる公共施設の耐震化についてお伺いします。
昨年9月に消防庁より「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査結果」が発表されました。それによると、平成21年度末時点での耐震率の全国平均は70.9%、兵庫県は若干高い71.6%で、全国14位となっており、軒並み90%近い耐震率となっている神奈川、愛知等の東海地震に係る都県と比べると大きな差となっていました。阪神・淡路大震災を経験した者としては、兵庫県の耐震率が他府県に比べ予想以上に低く、大変な驚きも感じております。
調査対象となっている地方公共団体が所有又は管理する防災拠点は、社会福祉施設、文教施設、県民会館・公民館等、体育館、診療施設、警察・消防施設等ですが、まさに、地震災害の発生時には災害応急対策の実施拠点や避難所になるなど、県民の命の拠点となる場所であることは、言うまでもありません。
阪神・淡路大震災以降も、世界的には中国・四川、カリブ海のハイチ等で大地震が発生しており、国内においても新潟県中越及び中越沖などで死者を伴う地震が多数発生しております。近い将来、南海・東南海地震等の発生が危惧される中、防災拠点となる公共施設の耐震化の推進は急務と考えます。
そこで、県として、これまでに「防災拠点となる公共施設の耐震化」にどのように取り組まれてきたのか、また、今般の調査結果を受け今後、どのような対策を推進していこうとしているのかお伺いいたします。
(2) 学校施設の耐震化について
次は、公共施設の中の学校施設についての耐震化についてお伺いします。
学校施設の耐震化率は昨年4月現在、全国平均で73.3%、それに対し県内の状況は、幼稚園65.7%、小中学校73.9%、高等学校66.1%、特別支援学校71.6%と、震災を経験した県としては、決して誇れる数字ではないと思います。
特に、私の地元であります尼崎市の昨年4月現在の公立小中学校の耐震化率は28.6%と、全国平均と比較し45ポイントも低く、県下でもワーストワンという状況であります。尼崎市の発行している、洪水ハザードマップに掲載されている避難場所である公立小学校、中学校の耐震化も遅れているのが現状です。
国の平成22年度補正予算「安全・安心な学校づくり交付金」によって、約42%と向上する見込みと聞いておりますが、全国平均と比べてかなり低い状態には変わりありません。
学校施設は、児童生徒などが1日の大半を過ごす学校生活の場であるだけでなく、地域コミュニティの拠点として、さらに災害時には地域住民の応急避難場所となる防災拠点であり、その意味からも学校施設の耐震化の向上は喫緊の課題であります。
そういう中で、国においては、平成23年度予算案において、公立学校施設について、耐震化及び老朽化対策を中心に計画的に整備を行い、耐震化率を85%まで引き上げる予定と伺っております。多くの公立小学校・中学校の設置主体は市町であり、県下各市町においても財政状況が大変厳しい中、学校施設の耐震化をより進めていくには、県としても県下各市町の実情等を国に伝え、より活用しやすい支援制度の実現に努めるなど、市町が行う学校施設の耐震化への支援の充実に努めることが不可欠であります。
そこで、公立小中学校の耐震化について、耐震化が遅れている各市町への指導を含め、県としてどのような支援を行っているのかお伺い致します。
5 買い物難民への支援について
質問の第5は、買い物難民への支援についてであります。
身近な商店の撤退・閉店や、交通手段の不足によって、食料品など日常の買い物が不自由になる高齢者らが増えています。経済産業省では、このような「流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品等の日常の買い物が困難な状況に置かれている人々」を「買い物弱者」いわゆる買い物難民と定義し、この買い物難民は、推計によりますと高齢者を中心に全国で約600万人もいると言われております。
この問題は、山間部の過疎地だけの問題と思われがちですが、高度成長期に開発された都市近郊の団地などでも問題が起きております。その背景には身近な商店の減少が影響していると考えます。平成19年の全国の商店数は約114万で25年間で3割以上も減少しております。中小の商店の撤退・閉店が著しい一方、大規模店は増加しております。
そういう中で、国においては、経済産業省の「地域生活インフラを支える流通のあり方研究会」で、こうした現状に対し行政と民間事業者、地域住民が連携して取り組むべきと提言し、買い物弱者応援マニュアルの策定等を通じ、買い物難民問題解決に向けた取り組みを行っているほか、今年度補正予算事業による国の「地域商業活性化補助事業」、いわゆる買い物弱者対策支援事業では、全国で48件が採択され、そのうち尼崎市の武庫元町商店街振興組合が一般社団法人シニアライフコミュニケーションクラブと協力して行う、特売クーポン付き高齢者専用情報誌の作成や、市内の住宅団地を中心に1日3回程度宅配を行う事業に、国より515万円の補助金が支給されることが決定いたしました。
この商店街の付近のパークタウン西武庫は、老朽化した県営団地の立て替え後に建てられ、それまで住んでいた方々は高齢者の方が多く、新たな住民も加わり、近隣に大規模店ができた反面、身近な昔からある商店街の中で、店を閉めたところも出てきており、徒歩で買い物に行く高齢者には不便な状況が生じてきています。
また、今後、人口減による市場規模が縮小した場合、大規模店が撤退すれば、買い物難民の問題はさらに進んでいくのではないかと危惧されます。さらに、この買い物難民の問題を放置すると、昨今話題となっている「無縁社会」「消えた高齢者」等の問題の深刻化にもつながることは必至であり、早急な対策が求められます。
県においても、あらゆる角度から商店街活性化への事業は展開しておられますが、買い物難民への支援という視点での対策に取り組んでいく必要があると考えます。
そこで、買い物難民への支援について、商店街の活用とあわせ、県として今後どのように取り組んでいこうと考えているのか、お伺いします。
6 地籍調査の推進について
質問の最後は、地籍調査の推進についてであります。
報道によりますと、外国資本による日本の森林の購入が進んでおり、政府も法改正を含む対策に動いていると聞いております。林野庁と国交省の調査によると、2006年から4年間に外国法人または外国人による森林取得件数は25件、森林面積は558ヘクタールで、25件中、1件が神戸市の2ヘクタールが買収されたと言うことです。このことは、安全保障の見地から、さらには、地球規模で淡水が急激に減少するなか、水源林を保全するという観点からも、注視しなくてはならない課題であり、森林等の取引に届け出を求める条例を制定するという自治体の動きの新聞報道もありました。
私は、自治体としてそのような取り組みを行う前に、国内であまり進んでいない地籍の明確化を行い、森林の保有状況を把握する必要があると考えます。
日本における地籍調査の山間部の実施率は42%に止まっており、一方、ドイツ、フランス等の実施率はほぼ100%と言われています。その結果、日本では、不動産登記も正確な山林状況を表していません。よって、売買の際の評価も難しく、森林管理を行う際においても、所有者不明のため管理が行き届かなかったりするため、多くの森林の資産価値が低く、所有者の森林所有意識が低い一因と考えられています。
このような点からも、地籍調査の推進は、森林の取引届け出等の対策検討を行う上で必要であることはもちろんのこと、それにより人々を育む水源林としての森林の資産価値を高め、森林所有者の土地所有意識を高めることにつながり、日本の森林の適正な管理に資する上で、早急な明確化が求められます。
そういう中で、国においては、円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策として地籍整備を加速させるとしています。また、本県としても、平成26年度までに単年度実施面積が100キロ平方メートルになることを目標として取り組んでおられますが、平成21年度末の面積ベースでの進捗状況は19%、全国36位と、全国比較でも進んでいるとは言い難い状況にあると思います。
さらに、調査の進んでいない山間部においては、所有者の高齢化や集落の存続自体が危ぶまれる地域も多くあり、今後、ますます地籍調査での土地境界の現地確認等の実施が困難となってくることも想定されます。特に、兵庫県は日本の縮図と言われております。県の財産である豊かな森林資源を守り、他府県からの遅れを取り戻すため、対策支援を早急に進める必要があると考えます。
また、森林以外においても、市町村が地籍調査を実施することが困難である都市部の地図混乱地域の地図作成業務を法務局で実施しており、地籍調査の結果と合わせて、登記所備付図面作成作業の促進が図られております。
登記所備付地図の整備の遅れは、不動産の流通業務や公共事業の円滑な実施を阻害したり、適正な課税を困難にしたり、様々な問題点が指摘されております。国の地域主権戦略会議でも、登記・供託事務等の国の出先機関の事務・権限の移譲が検討されており、県においても関係団体等の意見を十分に聞きながら、円滑に地籍調査の推進が行われるよう取り組んでいただきたいと思います。
そこで、本県における地籍調査の進捗状況と進まない理由、また、今後どのように地籍調査を進めていこうと考えておられるのかお伺いします。