第309回定例会(6月)一般質問
2011年6月23日(木)
この度の東日本大震災で亡くなられた方々へ心よりお悔やみ申し上げますとともに、被害に合われた方々へのお見舞いを申し上げます。先月、我が民主党・県民連合議員団は、東日本大震災の被災地に対する調査班を編成し、2回に分けて現地を訪問して調査を行いました。
私は宮城県の仙台・名取・石巻及び東松島の各市を訪れましたが、その調査を踏まえ、以下6項目にわたって質問を行います。
1 災害に備えた海岸保全のあり方について
(1) 兵庫県における高潮対策について
災害は忘れた頃にやってくるといいますが、今年3月に発生した東日本大震災では、特にそのことを思い知らされました。
かつて阪神淡路大震災を経験した我々は、どこに住んでいても、さまざまな自然災害を想定し、平常時からの危機管理意識や防災力を備えておくことの重要性を学びましたが、この度の東日本大震災では、通常考えている以上の災害が起こり得ることを改めて思い知らされました。
この度の東日本大震災では、特に巨大な津波が大きな被害をもたらしたわけですが、本県にあっては、津波に限らず、台風や発達した低気圧が原因となって発生する高潮による大きな被害が出る可能性があるといわれております。
特に三大湾といわれる大阪湾・伊勢湾・東京湾では、過去、室戸台風、キティ台風、ジェーン台風、伊勢湾台風、第2室戸台風等の大型台風が猛威を振るい、壊滅的な高潮災害をもたらしました。
また、過去に5,000名以上の死者や行方不明者を出した伊勢湾台風の際には3メートル台の高潮が発生したといわれておりますが、総延長約840㎞の海岸線を持ち、北は日本海、南は瀬戸内海及び太平洋に面し、それぞれ特徴のある海岸を有している本県では、高潮に対する万全の備えが欠かせません。
本県は、「海岸の防護」や「海岸環境の整備と保全」等の目的で推進する「海岸保全基本計画」を策定するとともに、高潮対策としては、防潮堤等の海岸保全施設の新設・改良を行うといった取り組みを進めてきました。
私の地元の神戸市垂水区を含む東播海岸でも、明石海峡の潮流等の影響から侵食が進み、台風時等に多くの被害が生じてきたことから、昭和36年度より防潮堤整備を、昭和44年度からは、消波ブロックの設置、離岸堤の整備等を、昭和57年度以降は、新たに高潮対策を兼ねて海浜を生み出す養浜工を、国・県・市町の連携のもと行ってきました。
神戸市垂水区では計画高潮位を2.8メートルとするなど、県内各エリアで計画高潮位が設定されて防潮堤整備が進められています。
しかしながら、高潮対策にあっては、地震で防潮堤が破損した直後に高潮に襲われるなどといった複合作用なども想定しておかなければなりません。
そこで、本県における海岸保全の現状と、今後の海岸の防護や利用面を含めた、高潮対策のあり方について伺います。
(2) 津波対策の現状と今後について
海岸の保全に際しては、東日本大震災のような、大規模な津波の発生を想定した対策を検討しておかなければなりません。
「ツナミ」という言葉が世界的に使われていることからも明らかなように、我が国もこれまで何度も大きな津波被害を受けてまいりました。
東日本大震災による津波被害は改めて申し上げるまでもありませんが、遡って1960年に南米チリで起きたマグニチュード9.5の大地震では、発生した津波が太平洋を越え、日本列島の太平洋岸に来襲した結果、波の高さは三陸で5~6メートルになって、北海道南岸、三陸沿岸を中心に大きな被害をもたらしました。
日本海側でも、1983年に発生した日本海中部地震では、速いところでは地震発生からわずか7分後に津波が押し寄せた結果、主に秋田、青森、山形県では、津波による多くの犠牲者がでました。
今後、近畿地方において最も甚大な被害が予想される地震津波として、和歌山沖を源とする南海地震の危険性が指摘されていますが、東南海地震を含めた津波による被害予想は、死者約8,600人、全壊建物約40,000棟などと言われています。
幸いにも我が県は、想定震源地からは、比較的離れており、南海地震津波による被害限定的と考えられていますが、例えば、太平洋沿岸地域で安政南海地震規模のマグニチュード8.4相当の地震が発生した場合には、淡路島の南部では、津波の第1波は地震発生から約50分で最高5.8メートルの津波が来ると予測されており、それに対する防潮堤の高さは1.8~6.4メートルとなっていることからも、必ずしも充分な備えとは言い切れず、淡路島の南西端に位置する福良港をはじめ、一部の地域については甚大な被害も考えられます。
東南海・南海地震発生と津波の脅威の高まりに備え、県民の生命、身体、財産を守るためにも、そのハード面の予防対策はこれまで以上に急ぐ必要があります。
そこで、本県における津波対策の現状と今後の方向性について所見を伺います。
2 東南海・南海地震等に備えた地域防災計画の見直しについて
海岸の保全は、地域の安全・安心を支え、国土を守るために重要ですが、人口や経済活動が沿岸部に集中する本県にあっては、特に危機管理に際しての避難のあり方が重要です。
大阪湾沿岸のゼロメートル地帯を中心とする地域には、特に高度経済成長期以降、急速に人口・資産等が集積していることから、一旦、大規模な浸水が生じれば、都市の中枢機能の麻痺により地域の社会経済は計り知れないダメージを受けることとなります。
一方、海面の上昇や台風の巨大化等、地球規模の気候変動に伴う自然環境や気象条件の変化は、高潮災害に対する沿岸域の危険性が、さらに高まると、懸念されています。
このような状況をふまえ、大阪湾沿岸において不測の大規模浸水が発生した場合、どのようにして人命を守り、どのようにして都市の中枢機能や社会・経済機能への影響を最小化させるかをあらかじめ検討しておくことが重要となってまいります。
高潮対策としては、大規模浸水が発生した場合を想定し、近畿地方整備局は、本県と大阪湾岸の自治体含む29機関で構成する「大阪湾高潮対策協議会」を設置し、平成22年3月には、関係機関が取り組むべき危機管理方策を検討する「大阪湾高潮対策 危機管理行動計画 ガイドライン」を策定して、高潮対策への取り組みを進めてきました。
津波対策としては、本県における地域防災計画において「津波からの防護、及び円滑な避難の確保に関する事項」として、体制整備や情報伝達の方法、避難対策や関係機関との連携などといった項目を設定し、具体的な対策のあり方を定めてまいりましたが、この度の東日本大震災のような事態を改めて考えた場合、今後起こるかもしれない不測の津波対策に対処するための改訂を早急に進める必要があると考えます。
知事は6月15日の本会議冒頭の提案説明の中で、「国の中央防災会議」の調査結果を踏まえた本格的な津波被害想定の見直しを行うまでの間、暫定的な「津波被害警戒区域図」を作成し、避難対策ガイドラインの改訂や、避難のあり方の点検を進める」と、津波被害対策の重要性を述べられましたが、津波に備えた県の地域防災計画を今後、どのように見直そうとされているのか、所見を伺います。
3 家庭と地域における太陽光発電の普及推進について
東日本大震災は、福島第一原子力発電所に対する甚大な被害を与え、我が国は原子力のあり方やエネルギー政策の見直しを迫られることになりました。
5月25日には、電力供給不足に対応するため、東京電力と東北電力管内において、15%の節電を求める使用制限が、経済産業省により発動されましたが、今後大幅な電力不足が予測される中、エネルギーの需給バランスを図るためには、再生可能エネルギーの活用をはじめとする抜本的な見直しが必要となっております。
また、5月17日に政府で閣議決定された「政策推進指針」でも、「環境・エネルギー大国戦略の見直しに向けた検討を開始する」などとされており、中でも、太陽光発電は、天然資源に乏しい我が国においても広く普及が可能なエネルギーとして注目を集めています。
太陽光発電装置は一般に設置時の初期費用が高額となりますが、メーカー間の競争によって性能向上と低価格化、施工技術も進み、維持経費は安価であることから、世界的に需要が拡大しております。
国では、太陽光発電システムの導入に対する「補助事業」を進めるとともに、
この度の原発事故を踏まえたエネルギー政策の見直しの中、太陽光発電を2030年に現在の15倍に増やすことなどを盛り込んだ「サンライズ計画」構想をまとめたと聞きます。
また、自治体においても、太陽光発電に対する補助金などを助成する取り組みが進んでおり、例えば一般住宅を対象に、太陽光発電への助成を行っている自治体数は都道府県と市町村をあわせて、650に至っており、本県でも20の市町が実施しております。
本県でもこれまで、再生可能エネルギーの普及拡大を進めるため、平成22年度までに太陽光・風力合計発電容量を30万キロワットに拡大する一方、「住宅用太陽光発電施設」設置世帯を40,000世帯に増やすことを目標とするなど、一般家庭での再生可能エネルギーの導入に取り組んでまいりました。
そうした中、兵庫県では県庁舎をはじめ、県有施設への太陽光発電設備を積極的に導入してきたことも手伝って、県民の環境に対する意識が高まり、太陽光発電設備の導入、特に住宅用システムの導入において、本県は全国的にも上位に位置づけられるようになったと聞ききます。
さらに、先般の知事の提案説明では、「家庭における太陽光発電設備の導入」を促進するため、「住宅用太陽光発電 設備設置資金貸付金」を創設し、さらに1キロワットあたり2万円の設置費補助を行うとともに、中小企業者に対する貸付金の融資限度額を1億円に拡充するとともに、償還期間を延長する措置を図る」などと、太陽光発電設備導入への意欲を述べられました。
そこで、家庭や中小企業を含めた地域における太陽光発電の導入促進に向けた、これまでの取り組み実績を伺うとともに、提案説明でいわれた施策の導入によって見込まれる効果、そして今後家庭や地域に太陽光発電を一層普及・浸透させるための取り組みを如何にすすめられるのかについて、知事の心意気も含めた所見を伺います。
4 小水力発電の推進について
東日本大震災による影響は、私たちに改めてエネルギー対策の重要性を認識させました。
今後は本県においても、省エネルギーの推進はもちろんのこと、太陽光・風力等の新エネルギーや、水力などの活用を一層検討する必要がありますが、次に「小水力発電」について質問をさせていただきます。
「水力発電」は、現在でもわが国の電力供給の約1割を占める重要なエネルギー源ですが、「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」という持続可能な社会を実現するにあたっても、二酸化炭素等を発生しないクリーンなエネルギーであることや、繰り返し使える再生可能なエネルギーであること、特に我が県は、山紫水明の自然環境に恵まれて、広い県土と山や谷・川を含む変化に富んだ地形と水資源が豊富であり、水力の優れた特性を考えれば、自然環境に配慮した、その活用を進める必要があると思います。
中でも、小水力発電は小さな小川にも設置が可能であり、数十~数千キロワット程度の比較的小規模な発電として、水量が確保できれば、経済的に有利で、出力の安定や電力品質への悪影響が少なく、比較的簡易な設備であれば短期間の建設が可能で、維持管理も容易に行える特徴を持っております。
主要先進国の中で低いとされる我が国のエネルギー自給率向上にも貢献できる国産エネルギーであるといえ、既にEU諸国やカナダなどが積極的に推進しておりますし、ヨーロッパの「小水力協会」などは、エネルギー不足に悩む開発途上国への普及拡大を目指しているとも聞いています。
また、工事が比較的簡単な場合が多く、発電設備を設置する際の地形の改変が小さいことから、河川水質や水生生物等の周辺生態系に及ぼす影響も小さい環境調和型エネルギーともいわれています。
さらに、例えば生み出した電力の一部を売って地域の活動資金に充てて地域の活性化に役立てることや、小規模な設置工事であることから、地域の施工業者に委ねることで、雇用の創出を図るといった効果も考えられます。
このように、小水力発電は、クリーンエネルギー利活用だけでなく地域振興や、コミュニティづくりへのきっかけとしても期待できるのではないでしょうか。
本県では、地域特性等を踏まえて、地球環境問題や防災に配慮した「 グリーンエネルギー推進プログラム」等に取り組んできましたが、小水力の利用可能地点・場所は本県内でも多いと推察されますし、地域の活性化とエネルギー自給を支える一環として、小水力発電の積極的な活用の検討が必要と考えます。
折しも東日本大震災に伴うエネルギー対策の重要性が議論されているとともに、地球温暖化対策が未だ解決途上に有るなか、特に小水力発電の推進に向けてどのように取り組まれるのか、所見を伺います。
5 被災地を支援する自治体間の相互連携について
東日本大震災では、被災地の多くで役場の機能そのものが大きな損害を受けたほか、津波被害や原発事故で多くの住民の長期避難が必要となったことから、被災自治体に対しては、震災直後から全国の自治体がさまざまな支援活動を展開しています。
大がかりな自治体職員の現地への派遣や、また各自治体の避難住民の受け入れなどが進められ、県や政令市が特定の自治体を集中的に支援するような工夫もみられる中、例えば全国市長会によれば、3月末時点での支援要請673人に対し、4月11日時点で、約400の自治体が約2,000人を派遣することを表明したとのことです。
その中にあって、例えば、今回、関西広域連合では、いち早く、各府県分担によるカウンターパート方式による被災地支援を採用し、本県と鳥取県・徳島県が「宮城県」を、大阪府と和歌山県が「岩手県」を、そして滋賀県と京都府が「福島県」をそれぞれ、「被災地対策」「支援物資等の提供」「応援要員の派遣」「避難生活等の受け入れ」の内容で応援する運びとなりました。
さらに、府県レベルの支援に加えて、神戸市でも「仙台市や名取市」へ職員を派遣、大阪市では「岩手県釜石市」に現地対策本部を置くことで、支援内容が釜石市役所の日常的な業務にも広げることが可能となるなど、一定の成果に繋がりました。
かつて、2008年に中国で発生した四川大地震では「四川省都江堰市と上海市」など、被災自治体と被災地外の自治体が一対一でペアを組んで復興を推進し、成果をあげたといわれております。
本県では、これまで計14陣にわたって宮城県北部沿岸市町への支援隊を編成・派遣するとともに、これまで県と市町等あわせて、のべ50,000人を超える職員の派遣を実施して、災害救助や物資搬送、被災者の健康相談や学校支援、道路復旧や被災住宅対策といった多方面からの被災地の支援を行ってまいりました。
去る5月に我が民主党・県民連合議員団が宮城県を訪問した際には、「兵庫県や神戸市のように阪神・淡路大震災を経験した県・市町による支援内容と、それ以外の自治体からの支援では、被災地のニーズ把握や、支援情報や技術的知識といった面で差が大きい」などという現地職員の声も聞かれました。
阪神・淡路大震災を経験した本県として、支援に取り組もうとしている他の自治体へのフォローが必要ではないかと考えさせられる意見であり、これから被災地が一層の、復旧・復興を進めていこうとする中で、より良い支援を効率的・効果的に進めるためには、支援する側の協力・協調体制をしっかりと構築していくべきと考えさせられます。
そこで、今回の被災地支援にあたり、本県と他府県及び県内市町との関係において、本県の有している情報やノウハウの提供や、「支援側自治体間」の相互連携の推進についてお聞かせ戴くとともに、本県が見直す「地域防災計画」にも、こうした「支援側自治体間」の相互連携の意義や必要性を反映させるべきではないかと考えますが、所見を伺います。