議会の動き

石井健一郎議員が一般質問を実施

第309回定例会(6月)一般質問
2011年6月23日(木)

1 原子力発電に関する考え方について

 質問の第1は「原子力発電に関する考え方」について、2点お伺いします。

(1) 原発に対する知事の基本的スタンスについて

 まず、「原発に対する知事の基本的スタンスについて」です。
 この度の東日本大震災では、地震に伴う強い揺れと大津波が東北地方から関東一円までを襲い、更に福島第一原子力発電所で深刻な大事故を引き起こしています。
 想像を絶する自然災害を前に人間の予想などは無力ですが、これまでマグニチュード9を超える地震や10メートルを超える津波を予想する専門家の声がなかった訳ではありません。不都合な事実から目を背け、都合の良い範囲に「最悪」のラインを引く身勝手さもあったのではないかと感じます。いつかくることはわかっているが、普段はできるだけ考えない。もし、自然災害に遭えばそれが到底納得できなくても、天災として受け入れるしかないという一つの宿命なのかもしれません。
 その一方で福島第一原子力発電所の事故は天災や宿命とは別に考えなければなりません。人が作ったモノである以上、不都合な事実から目を背け、都合の良い範囲に「最悪」のラインを引く身勝手さはあってはならないものです。また、原発の事故はいつかくることはわかっているが、普段はできるだけ考えないという類のモノではありません。人知の及ばない自然災害と比べれば、はるかに容易に予測することが出来、予め回避しなければならないし、そうでなければ世の中に存在してはいけないものです。そういったことからもこれは明らかに人災です。
 東京電力は「これまでの想定を超える津波だった。考えられる部分での津波対策は講じられていた」としています。しかし、原子炉の冷却に欠かせない発電機を通常用電源も非常用電源も仲良く海沿いに並べ、東電が言うところの「想定外の津波で」水をかぶり故障し全て動かなくなった、東北電力から電気を引くのに何日もかかったというようなことは、私たちがある程度は信頼していた電力会社のあるべき危機管理の姿として笑えない冗談にもなりません。
 津波対策にしても過去において今回規模の津波が度々起こっていると指摘されていたことを考えても、津波に負ける原発を何十年も運転していたが、たまたま今まで震災に遭わなかったから大事故が起こらなかっただけで「原発は絶対に安全」とは言えないということが明らかになりました。
 東日本大震災後、私たちは日本のエネルギー政策、特に原子力発電の是非についてこのままでいいのかということを改めて考えています。
 そもそも、原子力発電の利点は一定量の核燃料を長期的に発電のエネルギーとして使うことができるという点ですが、一方で、核反応が長期間継続して起こるという長所は、いったんその制御を失うと重大な事故につながるという欠点でもあります。
 核燃料はそれ自体及び核反応によって育成される様々な放射能を持ち、もし環境に放出され拡散すれば、長期にわたって生体に悪影響を及ぼし、飛散した地域が長期にわたって耕作不能な地となり人も住めなくなってしまう、一度事故が起これば取り返しのつかない重大な事態にもつながります。だからこそ核エネルギーの利用については慎重にならなければならない。このことを私たちは何となく理解はしていたのです。
 その上で、私たちが核エネルギーの利用という道を選んだのは、資源の乏しい日本にとって原子力発電がエネルギー政策を安定させる有効な手段と考えたからです。これまで、反原発の動きが大きくならなかったのは原発は絶対に安全である、重大事故は起こらないという暗黙の信頼があったからですが、今回の原発震災で、そのような信頼関係は木っ端みじんになりました。
 風力、水力、太陽光などの自然エネルギーを用いた発電はエネルギーを安定的に供給し、さらに効率よく需要側に届けるには今のシステムではおぼつかないのが現状であるということも理解をしていますが、信頼関係が吹き飛んだ今、 国民の中に、地震や津波の多いこの国で、もし事故が起きれば重大な事故を招きかねない原発を操業し続けることへの深刻な懸念が生じています。
 また、全国の原子炉の使用済み核燃料を再処理する青森県六ヶ所村の再処理工場の本格運転に目途が立たない中、個々の原発が保管する使用済み燃料は増える一方である上、仮に本格運転が始まっても、その過程で生じる高レベル放射性廃棄物の受け入れ先が全く見通しのつかない現状では、そもそも今後、原子力発電を継続していけるのか自体が疑問です。
 記者会見での発言をお聞きすると、知事は、安全性のコントロールの目処が立たないならば原発をやめる、もしくは縮小していかざるを得ないと考えておられるようです。安全性のコントロールの目処が立たない原発の存続があり得ないのは当然ですが、たとえ、安全性のコントロールの目処が立ったからと言って、この100日間に福島第一原発で起こった深刻な事故は取り返しのつかない大きなダメージを日本に与えていることからも看過するわけにはまいりません。
 現時点で、原子力発電所で発電するエネルギー全部を自然エネルギーに代替することは非常に難しいことは承知をしていますが、まず一つには、今回の原発事故を受け、また、使用済み核燃料の抱える現状の問題を踏まえ、私はやはり「脱原発」の方向へシフトすることが県民の思いに通じるのではないかと考えますが、知事のご所見を伺います。

(2) 関西地域における原発の安全性確保について

 次に、「関西地域における原発の安全性確保について」です。
 現在、本県内には原発は設置されておりませんが、近隣である福井県内には多くの原子力発電所が稼働している上に、この若狭湾周辺の原子力発電所には老朽化した原発が多いという問題があります。また、やはり過去において大きな地震が起こっているという事実も見逃せません。
 使用電力の半分以上を原子力発電所に依存している関西の現状を考えれば、これを止めろと言うことはできないでしょうが、東日本大震災級の災害に耐え得る改修工事を早急にして欲しいというのは、関西地域の全ての住民の願いであると思います。この度の福島第一原子力発電所の事故や周辺地域における状況を目の当たりにしている中で、改修工事が終わるのが数年後という計画では到底納得できるはずがありません。
 現在、福井県知事は、国が福島第1原発の事故原因を踏まえた新たな安全基準を設定し、関西電力がこれに対応したことを確認できない限り再稼動は認められないとの方針を示していますが、県民の命を預かる知事として当然の判断です。
 井戸知事におかれましても、県民の安全・安心を守る県知事として、また関西広域連合の連合長として、原発立地県である福井県と歩調を合わせ、周辺府県とともに、国と関西電力の双方にしっかりと申し入れを行い、今後の関西地域における原子力発電所の安全性確保に早急に取り組んでいくべきと考えますが、知事のご所見をお伺いします。

2 節電対策について

 質問の第2は、「節電対策について」です。
 この度の東日本大震災に伴い、東京電力と東北電力管内では、夏場ピーク時間帯における使用最大電力の需要を企業、家庭とも去年に比べマイナス15%とする目標を設定しました。 一方、関西電力も、大企業から一般家庭まで一律に昨夏ピーク比15%の節電を求めています。
 関電社長は、「原発の再稼働の時期が明確でない。顧客から節電が必要なら早期に示してほしいと言われた。夏が目前に迫ってきたので苦渋の選択をした」と節電要請は原発停止による電力不足によることを強調していますが、どうして首都圏と同じ15%で、時間帯もピーク時のみならず午前9時から午後8時までと長いかということについて明確な説明はないようです。
 今回の節電要請と同時に、関電は今夏の電力需要の想定を「平年並み」から「猛暑」に変更し、今年3月に公表した供給計画でのピーク需要にさらに約100万キロワットプラスし、3,138万キロワットまで引き上げましたが、同じ西日本でも中国電力などは「猛暑」とは想定していないようです。また、予想しにくい気候を要素に入れる一方で実際の電力需要の増減は見込んでいないともしています。
15%節電の根拠についても猛暑時の電力不足分6.4%に予備率として5%を足した11.4%に、「節電が必ずしも同じ曜日や時間帯にならないことを考慮し、15%に設定した」と発表しています。
 しかし、いずれもその根拠が不明確であり、知事も約100万kW積み増しの根拠や需要量を想定方法等に疑問が残るとし、フレーム自身の精度をもう少し上げて説明しないと、直ちにわかったということにはならないと発言していますが、全くその通りで私も含めて多くの県民も疑問に思っています。
 そもそも、震災後に、関西電力では関西では電気の供給に問題はないとしていたにも関わらず、震災から3ヶ月も経過した後に、原発停止による電力の供給不足を理由に節電要請し、「原発再稼働に全力を挙げる」などと発言する感覚は私には理解できません。今取り組むべきは「原発再稼働に全力を挙げる」ではなく「電力供給に全力を挙げる」ことであるはずです。関電はこの度の原発事故の当事者ではありませんが、震災後の3ヶ月間、刻一刻と事態が悪化する福島第1原発事故の様子を目の当たりにしながら、関電の経営陣は一体何を考え、何をされていたのか甚だ疑問です。
 そもそも、真夏の日中における、ほんの一時的な大量ピークの電力需要をまかなうことを目的として、原発の再稼働を強引に進めたりすること自体が極めて不条理な話です。そのピークの電力需要の大半は企業や自治体、学校等組織的な活動によるもので、以前から私が申し上げている通り、基本的には家庭の電力需要の問題ではありません。
 大阪府の橋下知事のように「原発を動かさないといけないと煽るために節電要請を打ち出してきたとしか思えない。」ととられてもしかたがありません。15%の根拠となる資料の積極開示等を含め、関西電力の真摯な対応が待たれます。
 いずれにしろ、従来より環境適合型社会の実現を目指す我が国にとって、節電は引き続き重要な課題の一つであることは間違いありません。そういった意味では今回の原発事故により電気の大切さを改めて国民が認識をしたこの大きな節目の時にライフスタイルの転換を進めることは意義があります。
 今回の関西電力の節電要請により、節電に対する県民の意識は否応なしに高まるとともに、県をはじめ各地方自治体においても率先して節電計画を実行しています。そのことをもって間違っているとは思いませんが、私はこのことに多少違和感を感じます。
 東電や関電が要請する節電は、真夏の日中に使用される電力需要のピーク時に供給量が追いつかなくなると大規模停電につながる可能性がある。そうならないようにその時間帯には15%節電して欲しいということです。つまり、ピーク時以外の時間帯に電気を使用せずに15%節電しても電力会社の意図する節電にはなりません。しかし、環境適合型社会の実現をめざしCO2を削減するという観点からは、これはまさに正しい節電であり、私達はこの二つの節電の意味をしっかりと考えなければなりません。
 例えば冷水器の使用停止や室内灯の間引きは節電には違いありません。しかし、電力会社の節電要請に応えるのであれば夏の需要ピーク時に取り組むだけでいい訳ですが、環境問題を考えて実施するのならば、冷水器や余分な電灯はそもそも撤去すべきでしょう。
 現状を見ておりますと、どうもその当たりが混同されており、現在の節電のやり方は「欲しがりません、節電までは」、というような節電対策のためなら何でもOKのような進め方は、ややヒステリックな印象を受けます。
 サマータイムの導入もそうです。県では率先して節電に取り組むことを見せることに意義があるとしていますが、サマータイムのそもそもの趣旨は節電というより、仕事を早く終わった余暇時間を有効活用しようという意味合いであったと思います。堅実な行政手腕を誇る井戸知事にしては珍しく、あまり議論もなくやや拙速に導入を決めてしまった感があり、その思いとは別に新聞等では結局開庁時間が45分伸びただけで節電に逆行するといった厳しい指摘もあります。
 原発から自然エネルギーへという意気込みで太陽光発電や風力発電にシフトするのも良いことです。しかし、今までそれらが普及しなかった背景には、効率性が悪いなど何らかの理由があるはずで、そのことは精査する必要があります。原発事故が起こったからと言って一気呵成に取り組むのではなく、費用対効果を十分に精査し、それから実施することが必要でしょう。
 社会全体のエネルギー量を削減するという観点から、エネルギー効率化や省エネがよく挙げられますが、それだけでは不十分です。仮に太陽光発電の機械が環境に優しいとしても、その製品を一斉かつ大量に消費すれば、大量の資源とエネルギーを使用することになり、かえって環境悪化を招くことにもなりかねません。実際に日本のエネルギー消費が増大している事実や、地球温暖化の主な人為的負荷とされるCO2は一向に減少しておりません。環境問題を視野に入れた省エネでは、最終的なエネルギーの消費をいかに抑えるかが重要です。 私たちは今まで、絶えず生活レベルの向上をめざしてきたこととも相反する問題であり、一朝一夕に解決できるものではありません。
 節電の意義は大切でありますし、しっかりと推進していくべきではあります。しかし、あまりにも今回の電力不足報道に漠然とした不安を感じている時に、そのこととは直接関係のない節電まで求めることは経済活動や私たちの生活にも大きな影響を与えますし、過度に負担をかければ熱中症等思わぬ事故が起こりかねません。また、のど元過ぎればで夏が過ぎたら元の木阿弥ということにもなりかねません。本来の節電が目指すもの、あるべき姿をしっかりと踏まえ、長いスパンで取り組んでいくことこそが重要であると思いますが、当局のご所見をお伺いします。

3 応急危険度判定と家屋被害認定調査について

 質問の第3は「応急危険度判定と家屋被害認定調査について」です。
 地震発生後、通常はまず、建物の応急危険度判定が開始され、その後、罹災証明の発行等につながる家屋被害認定調査が始まります。最近では、応急危険度判定の調査結果の用紙には、「罹災証明のための調査は別に行われる」旨が明記されるようになったとはいえ、まだまだ応急危険度判定と家屋被害認定調査を取り違える被災者は少なくないと聞きます。中には、応急危険度判定結果に基づいて貼られた「危険」(赤紙)という表示を見て、住宅を解体せざるを得ないと大きな誤解をする被災者もあるようです。
 この問題は、阪神・淡路大震災以降から繰り返し指摘されているものの、なかなか改善が進まないのが現状です。
 先月半ばに、我が会派として、東日本大震災の被災地調査に参りましたが、これら二つの調査自体は災害を重ねるごとにシステム化され、円滑に行われるようになってきているとは感じましたが、それぞれの調査の意味や目的は未だ被災者へしっかりと理解されていない面があり、そのため前述のような大きな誤解が生じることにつながっています。
 この問題を解決するには、応急危険度判定の意味や目的を、被災者一人ひとりがはっきりと認識できるよう調査結果用紙に明記するとともに、日常における住民への防災教育等でもこれら二つの調査についての説明を行い、その理解を深めていくような地道な取り組みが大切であると考えます。また、応急危険度判定士の養成研修においても、被災者に対して二つの調査の意味をわかりやすく説明することの意義を浸透させることも求められます。加えて、長期的にはこれまでも何度となく議論されている応急危険度判定と家屋被害認定調査の二つの一元化について、再検討する必要があるように思います。
 そこで、一元化の可能性を含め、今後のこれら二つの調査のあり方について県としてどのように考えているのか、また、これらの二つの調査に係る県民の理解を得るため、県としてどのような取組を進めているのか、当局のご所見をお伺いします。

4 首都機能バックアップ構想について

 最後の質問は、「首都機能バックアップ構想について」です。
 東日本大震災で震度5強を記録した東京都内では、交通網がストップ、計画停電による混乱や日用品の買い占め騒動も起きたことは記憶に新しいところです。それを上回る地震が起きれば、大パニックになり首都機能が停止することは想像に難くなく、東京の街や首都機能の震災に対する脆弱さを見せつけました
 また、直下型の大震災がおこれば東京だけの被害では終わりません。東京は政治・経済の中枢機関が集中しているため、これらの機能が麻痺すれば、国内が大混乱に陥る可能性が極めて高く、そのような中、首都機能を代替できる副首都構想、首都機能バックアップ構想が改めて急浮上しています。
 この副首都構想では東京都の石原都知事も首都機能移転反対から東京への過度な集中は好ましくないと立場を変えたことが報道されている他、国においても首相が国会答弁で首都機能代替の必要性に踏み込み、国土交通省も危機管理都市構想に向けた動きを本格化しています。また、関西広域連合も、過日、政府に対し「首都機能バックアップ構造の構築に関する提言」を提出しました。
 この提言は、危機的な状況が生じて首都機能が機能しなくなった時に、首都機能をどこかで替わって行える仕組みを事前に用意しておくことが必要であるとしており、東京との距離、また、現実に東京に次いでインフラやソフトの集積がある関西が首都機能のバックアップを担うという考え方は大変現実的であり評価できるものです。
 提言のとおり、マスコミや企業、あるいは各企業の分野別の全国団体が東京にある中、東京が万が一の時の対策を事前に考えておく必要があります。首都機能が麻痺した時には代替機関が動き出すという対応を事前に用意しておいて、事前に訓練なども重ねることが大切であり、この提言を踏まえた取組は積極的に進め早期に具体化して行くべきです。
 その一方で、NEMIC―国家危機管理国際都市構想を推進するため、政府が国土交通省内に新しい課を設けるほか、国会の危機管理都市推進議員連盟が超党派で副首都構想の実現に向けて急ピッチで作業を進めています。また、橋下大阪府知事が、首都機能バックアップ構想を巡って、石原東京都知事と本格的な協議を開始するとの新聞報道がなされるなど、様々な動きがあるように思います。
 阪神・淡路大震災やこの度の東日本大震災の例からも明らかなように、災害はいつ発生するかわかりません。このことを考えれば、井戸知事は、連合長として、また、防災担当府県の知事として、国としっかりと連携し、まずは前述の提言に基づく取組を早急に進めるとともに、様々な動きがある中で、関西広域連合の構成府県間の意見調整をしっかりと行うなど、より一層、議論を深めていくべきと考えますが、知事のご所見をお伺いします。