議会の動き

前田 ともき議員が一般質問を実施

 

第314回兵庫県議会 一般質問(平成24年10月1日)

                    質 問 者:前田 ともき 議員
                    質問方式:分割方式

以下4項目5問にわたり、知事並びに関係当局に質問をいたします。
なお、質問は分割方式により行います。

1 性的マイノリティへの理解推進について

(1)現状認識について
最初のテーマは、性的マイノリティへの理解推進についてです。
さて、性的マイノリティとは、セクシャルマイノリティやLGBTという呼び方もされております。
LGBTは、女性同性愛者レズビアンのL、男性同性愛者ゲイのG、両性愛者バイセクシャルのB、性同一性障害トランスジェンダーのTから構成されていますが、その他にも多様な性のあり方が存在します。
さて、この性的マイノリティの存在。実は国内でも人口の5.2%いらっしゃるという調査レポートが2012年2月に電通総研から発表されました。イギリス政府の調査では人口の6%など、諸説ありますが、どの国にも人口の5%程度は存在することが定説となっています。つまり、兵庫県内で約29万人、1学級に1人。この議場にも数人いらっしゃる計算になる訳ですが、皆さん方が身近に感じることがないのは、カミングアウトする方が10%以下とごく少数であり、そこには偏見や差別が存在するからです。
男性同性愛者の自殺リスクは異性愛者の約6倍と、最も高いリスクを示し、リスク要因として、いじめ被害者や薬物使用者を圧倒しているという調査結果も報告されています。更に、本年8月に閣議決定された自殺総合対策大綱には性的マイノリティが自殺の要因として取り上げられ、無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて、理解促進の取組を推進する。と記載しました。
この性的マイノリティ、数十年前までは精神病と認定されていた時代が長く続いていました。その後、同性愛については、1990年に世界保健機関が「いかなる意味でも治療の対象にならない」と宣言し、疾病の対象から除外され、2008年の国連総会では、「性的志向と性自認に基づく差別の撤廃と人権保護の促進を求める」声明を決議し、日本も署名しています。
現在では性的指向は好みの問題であり、多様性があって当たり前という考え方が一般的であります。
そうした中、世界各国では同性婚制度がオランダ・スペイン・スウェーデン等で法制化、夫婦に準じる権利を同性カップルにも認めるパートナーシップ法もイギリス・ドイツ・スイス等で制定されており、法整備が進んでいます。
また、性的マイノリティであることをカミングアウトした政治家も増加傾向にあり、アイスランドやベルギーでは首相が誕生し、パリやベルリン市長も同様です。
一方、日本では2004年に性同一性障害特例法により、条件を満たした場合、戸籍上の性別変更ができるようになっただけであり、同性愛に関する権利や理解については後進国であるといえます。
さて、わが兵庫県は、人権教育及び啓発に関する総合推進指針において、人権課題として障碍者や外国人、同和問題等を挙げておりますが、性的マイノリティは挙がっていません。性的マイノリティの方々が直面する問題の深刻さや人口等を考えると、今後大きな人権テーマとして挙げるべきであり、本県の「人権教育及び啓発に関する総合推進指針」にも盛り込んだ上で、積極的な対応策を講じるべきと考えています。
そこで、性的マイノリティの人々に対する差別、偏見、社会的不利益について、人権上の課題として、どう捉えているのか、今後どのような対策を推進していくのか、ご所見をお伺い致します。

(2)教育現場での取り組みについて
次に、教職員や児童・生徒への理解など教育現場での取り組みについてお尋ねします。 
この性的マイノリティの問題をどのように解決していくのか?最も大切な対応策は正確な知識を広く、啓発することだと考えます。更に、人格の形成の早い段階が望ましく、それはすなわち教育現場における取り組みが必要であるということです。
内閣府の人権擁護に関する世論調査でも、性的指向・性同一性障害者に関する問題としてトップに挙げられているのは理解不足です。
岡山大学が行った性同一性障害に関する調査によると、自分の性への違和感を自覚したのは、大半が小学生までであり、4人に1人が不登校を経験し、5人に1人が自傷・自殺未遂を経験しているとのことです。
唯でさえ、非常に多感で悩み多い時期である思春期において、子供たちが自身の性的指向について更に思い悩み、時として追いつめられてしまう実態が想像できるかと思います。
にもかかわらず、学校で同性愛について一切習っていないが78.5%、習っている場合でも、異常なものとして習っている生徒が3.9%、その他否定的情報として習っている生徒が10.7%と、全体で93%以上となっており、教育の遅れが露呈した調査結果も報告されています。
結果として、ホモやオカマといった言葉によるいじめ被害を受けた生徒の割合は約6割にも上っていることからも、性的マイノリティに関する正確な知識が子供たちに伝わっていないことが偏見となり、イジメにつながり、その後の社会生活や人生にも大きく影響していることが考えられます。
更には、日々、子供たちと接する教職員の方たちについても同様に対応が遅れています。
岡山県内の小中学校では24%が性別に違和感を持つ子供に接した経験を有しながらも、小学校教員で約38%、中学校教員で約63%がそれに対応できなかったと回答しています。おそらく本県においても、それほど大きな差はないと思われます。
そこで、教育長にお尋ねします。わが兵庫県下の教育現場において、性的マイノリティの児童・生徒に対する対応について、どのように行っているのか、また、児童・生徒に対する教育、教職員に対する研修はどのようになされているのか、今後の方針も含めてお伺いいたします。

2 スポーツ行政の総合的な推進について

質問の第2は、「スポーツ行政の総合的な推進について」です。
204か国が参加し、全世界で48億人がTV視聴したという、ロンドンオリンピック、パラリンピックの熱狂は今でも記憶に新しく、銀座での凱旋パレードには50万人もの人々が参加するなど、スポーツの素晴らしさを改めて実感した次第です。
さて、そのスポーツをめぐる行政の動きですが、2010年8月に、文部科学省がスポーツ立国戦略を策定しました。また、翌2011年6月にはスポーツを取り巻く社会状況の変化に対応すべく、スポーツ振興法を50年ぶりに全面改正し、スポーツ基本法として施行されました。従来はスポーツを教育活動の一環として位置づけていましたが、今回施行された同法では、「スポーツ権」の確立や、青少年の健全育成、地域社会の交流と再生、心身の健康の増進、社会・経済の活力の創造、我が国の国際的地位の向上等、スポーツの有する多様な役割を明確化するほか、営利目的のプロスポーツや障碍者スポーツも新たに法律の対象とし、地域スポーツクラブの事業支援、国際競技大会の招致・開催支援に特別の措置を規定するなど、新たな視点・施策が盛り込まれています。また、多様化するスポーツの役割を総合的に対応すべく、従来から、スポーツ庁構想があるのは皆さんご存知の通りかと思います。
さて、地方自治体においては、平成20年4月の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律の施行により、教育委員会所管の文化行政とスポーツ行政について、学校における体育及び文化財の保護、学校教育活動と一体不可分のものを除き、知事部局に移すことが条例制定により可能となりました。
これにより、スポーツのもつ多様な役割を総合的に推進していくには、首長から独立した教育行政中心の教育委員会では、スポーツ・ツーリズムやスポーツコンベンションの推進さらにはプロスポーツの支援、観光や産業の振興に関わる部分を扱うことには一定の限界があると考えられます。そのことから、既に16の都道府県がスポーツ行政を教育委員会から知事部局に移行し、沖縄県では文化観光スポーツ部を新設し、部長を民間から登用するなど組織・人事面でも新しい展開をスポーツの役割変化に合わせて対応しています。本県において、このようなスポーツの持つ多様な役割を総合的に推進していくには、教育委員会の枠組みを越えて、全庁的な推進体制を構築していく必要があると考えます。
そこで、以上の点を踏まえスポーツが広く国民に浸透し、スポーツ基本法も施行され、スポーツを行う目的が多様化するなか、県として果たすべき役割も広範になっていくものと考えますが、どのように対応していこうとしているのか、ご所見をお伺いします。

3 スポーツを通じた観光産業の振興について

質問の第3は、「スポーツツーリズムの推進とスポーツコミッションの設立について」であります。
観光産業の振興は私の重要テーマの一つでありますので、今回はスポーツツーリズムをテーマに質問いたします。
スポーツツーリズムは野球やサッカー、競馬などのプロスポーツを「見る」スポーツや、マラソンや登山、ゴルフなどの「する」スポーツを目的とする、ニューツーリズムの一つであります。財団法人日本交通公社の調査では、スポーツツーリズムの市場占有率は国内旅行で15%から20%と予想されているほか、スポーツビジネス社の報告でも、世界のツーリズム市場のうち10%を占めるとされているなど、スポーツを観光の目的とする層は意外なほど多く存在しています。
2010年、観光庁は観光連携コンソーシアム内で初めてスポーツ観光を取り上げ、翌年にはスポーツツーリズム推進基本方針を策定しました。また、スポーツツーリズムと地方のスポーツコミッション創出支援を目的とする一般社団法人スポーツツーリズム推進機構が設立されるなどスポーツをツーリズム資源として開発、推進していく機運は高まっております。
そして、そのスポーツツーリズムを総合的に支援する組織がスポーツコミッションであります。
スポーツコミッションは、スポーツ大会やイベント、合宿の誘致や運営・財政支援を行い、地域振興を行うものであり、2月本会議で私が質問したフィルムコミッションのスポーツ版といえるものです。
アメリカではスポーツコミッションが500を超え、スポーツ産業都市を標榜しているインディアナポリスは全米初のスポーツコミッションを設立し、400を超える国内・国際スポーツ大会が開催され、その経済効果は、累計で 30億ドルを超えると試算されています。競技団体本部の招致も積極的に進めており、全米陸上連盟や全米体操連盟を筆頭に 20以上のスポーツ統括団体がインディアナポリスに本部を置くなど、大きな成果を挙げています。日本でも2011年にさいたま市が日本初のスポーツコミッションを創設し、本年4月には関西経済同友会の主導で関西スポーツコミッションが設立されるなど、徐々に国内でも活発化しつつある状況です。
我が兵庫県を見てみると、見るスポーツとしては観客動員数でリーグトップクラスの阪神タイガースや、ワールドカップ優勝のなでしこジャパン主力メンバーを有するINAC神戸が本県に本拠地を置いています。また、するスポーツでもゴルフは日本初のゴルフ場である神戸ゴルフ倶楽部を有するほか、国内2位のゴルフ場数を誇り、ゴルフ場利用税だけで、約45億円の税収を本県に納められています。他にも、神戸マラソンや六甲全山縦走など本県には人気を博しているスポーツがたくさんあります。
これらは、立派な観光資源であり、一つの産業として、より成長させていくためには、しっかりとした組織と予算が必要であり、それが私の提言するスポーツコミッションの設立です。
そこで、わが兵庫県におけるスポーツツーリズムの取り組み方針とスポーツコミッションの必要性についてどのように認識されているのか、ご所見をお伺いします。

4 人口減少・高齢化社会への対応ついて

最後に、人口減少・高齢化社会への対応について、インフラを「使う」から「捨てる」へ、そして、縮小都市へ方針転換すべきとの観点から質問致します。
  先般、会派にてドイツ出張に行ってまいりました。目的の一つにこの縮小都市政策がありました。ドイツは、東西統一による急速な人口移転から、旧東ドイツでは急速な人口減少が進み、高い空室率と増加する建物とインフラの維持管理費用を削減すべく、建物の取り壊しを行う減築と人口移転施策を行っています。人口減少への先進的対応策として、非常に参考になりました。
さて、本県において、地方、特に小規模集落や多自然居住地域において、農地・森林保全を通じた環境・防災対策や伝統文化の維持、そして住民の住む権利の保護という目的から維持・活性化施策が進められてきています。
また、小規模集落元気作戦、交流人口の拡大や定住人口の増加といった人口増加策から、交通ならデマンド交通、産業なら農業の6次産業化や商店街活性化など、きめ細かく施策を実施されているところです。
しかし、私はこれらの施策は人口動態が今後もある程度維持されるという前提ならば機能するかもしれませんが、これから指摘する前提条件を踏まえて考慮した場合、根本的な解決策にはならないと考えています。
そこで、以下3つの観点から、今後は緩やかな移転・消滅・統合に軸足を置いた施策を実行すべきと提言します。
1つ目の理由は、人口減少です。
2050年の予想人口9515万人、04年の人口ピーク比からの人口25.5%減は、あくまでも全国平均の数値にすぎず、1キロメッシュでは、約66%の地点で人口は半減以下、更に居住地域の2割が無居住化=消滅地域となる状況が予想されています。
半減以下という急激に人口が減少していく地域において、これまでの交流・定住対策で人口減少をカバーすることができるでしょうか?市場規模が半減した商店が復活できるでしょうか?固定費比率の高い交通は補助金を使っても持続可能なのか計り知れず、局地的な対処療法では解決困難な問題です。
2つ目の理由は、街のライフラインでもある、インフラ維持管理コストの増加です。
日本総研の調査によると、社会資本ストックの更新・維持管理が財政上の課題として、既に顕在化していると回答した自治体は全体の73.5%。また10 年以内に顕在化すると回答した自治体をあわせると90.7%となっています。国土交通省の調査でも、2050年の1人当たりのストック維持更新費は兵庫県の場合で2010年の約3倍とされています。施設が老朽化し、今後、維持更新費が増加していくことを考慮すると、現在の長寿命化や指定管理、PPPといった管理コストの効率化だけでは上昇を抑えきることは難しく、長く「使う」ことも大事ですが総量を減らす「捨てる」発想に切り替えていく必要があると考えます。
3つ目の理由は、財政上の制約です。兵庫県の財政状況が既に全国ワーストクラスなのは今更言うまでもありません。
都道府県と市町村を合計した全国の地方自治体の歳出推移は、1999年~2008年の10年間で1割以上の約12兆円減少しています。その、最大の要因は、約13兆円減少した投資的経費であり、約半分の水準まで減少しています。今後は社会保障費の増大がある中で、予算の制約条件は厳しくなっています。
つまり、現在の水準の社会資本の関係コストや行政コストの維持は、今後の財政上の制約下においては持続不可能であり、ライフラインであるインフラを居住地域で「捨てる」訳にもいかないため、移転・統合によりコントロールされた無居住地域の創出とセットでのインフラ削減が必要です。
この考え方が全ての地域に合致するとは考えていません。守るべき地域も当然多くあるでしょう。しかし、従来からの維持・活性化一辺倒の政策からは方向転換を図り、移転・消滅・統合を支援する施策も選択肢として取り組んでいくべきと考えますが、知事・当局のお考えをお聞かせください。