第315回兵庫県議会 一般質問(平成24年12月10日)
質 問 者:栗山 雅史 議員
発言方式:分割
おはようございます。民主党・県民連合の栗山雅史でございます。
今回の一般質問の大きなテーマは「本格的に到来した人口減少社会にどのように向き合うか」ということであります。
ご承知のように、日本の人口は2004年の1億2778万人をピークに減少に転じました。
国土交通省の資料によりますと、日本の人口は鎌倉幕府成立時に757万人、その約420年後の江戸幕府成立時に1,227万人、更に約260年後の明治維新の時には3,330万人だったと言われています。そして、1900年には4,384万人となったのですが、20世紀のおよそ100年の間に約8,000万人が増え、1億2千万人を超えました。20世紀の100年が急激な人口増加時代だったことがお分かりいただけるかと思います。
一方、国立社会保障・人口問題研究所によりますと、2050年には日本の総人口はおよそ3,000万人減少して9,515万人と1億人を切り、2100年にはなんと4,771万人になると推計されています。これは、1908年(明治41年)とほぼ同じ人口で、要するに21世紀の100年間では、逆に約8,000万人が減少すると予想されているのです。皆さんにはそんな実感がおありでしょうか。
兵庫県も同様に、2055年には398万人に減少すると推計されております。現在の人口からおよそ160万人が減少する兵庫県を約40年後に迎えることになります。日本人男性の平均寿命は79歳程度とされていますから、私は現在38歳ですので、その時に存命である可能性があります。
いずれにしても、日本人はこれから急激な人口減少の時代を生きていくことになるという事実を受け入れ、それを前提にした行政を行わなくてはならないということを強く意識する必要があります。
1 人口減少社会における街のあり方について
さて、それでは質問に入ります。質問の第1は「人口減少時代における街のあり方」についてです。
私がこの質問をしようと思ったきっかけは、実は前回の議会における我が会派の前田議員の質問に対する井戸知事の答弁です。
「今後の人口減少社会への対応」という質問で、前田議員は「緩やかな街の移転・消滅・統合に軸足を置いた施策が必要ではないか」という質問をされましたが、知事はその答弁の冒頭に「大変刺激的な提言だ」と言われました。
私はその言葉に逆に驚きました。長期ビジョンやまちづくり基本方針において、将来的な生活機能の集約や村移りの方向性を示しているにもかかわらず、そのような第一声だったことに驚いたのです。しかし、続けて知事は「そのような視点が必要となるという時点や地域もあることは事実だ」とも答弁されました。
おそらく頭の中では、『人口減少に対する何らかの施策が必要であるが、それを今から声高らかに取り組むべきだろうか、いや、むしろ今は縮小していく地域に元気を与えたい、活性化の方が先だ』、そのような率直な想いが、反射的に「大変刺激的」という言葉になったのではないかと思います。
私も地域の活性化を図ることに異論はありません。しかしながら、人口減少していく社会を冷静に見つめ、地域の活性化と並行して、それに対応する方策を進めていくことが、長い将来に責任を持つべき政治、行政の役割ではないでしょうか。
さて、これまでの国や地方自治体の長期計画や法の規制緩和などは、人口維持もしくは増加を前提に設計、法制化されてきました。しかし、それはもはや時代錯誤となってきました。いま必要なことは、そのような20世紀型の発想からの脱却です。人口や産業が減っても生活の質が低下しないように、街の計画的な縮小を進める施策を講じるべきです。
人口減少と聞くと、地域の衰退というイメージが強くなりますが、そうではなく、人口が減少していくという事実を冷静に受け止め、その前提のもとに「無計画な縮小を防ぎ、計画的な縮小を図ること」が重要なのです。計画的な街の縮小を図ると同時に、自然環境の再生や、公共交通の見直し、商店街の再構築、景観の再生などにも繋がっていきます。
人口や産業の減少を前提にすることは勇気がいります。しかし、そこを躊躇していると、取り返しのつかない禍根を残しかねません。まちづくりの前提が大きく変化しているにもかかわらず、従来と同じ発想でまちづくりを進めてしまうと大きな失敗を招きます。
今後はそのような視点に立って、例えば庁舎、学校、県営住宅等のファシリティ、道路、港湾、下水道等のインフラなど、あらゆる県有施設の整備・管理運営を含めて、将来の街の在り方を再検討するべきだと思っています。現在は、それらの多くに膨大な維持補修費が費やされており、これからも増加していく傾向にあります。
加えて、津波対策などの新規のインフラ整備も予定されていますが、そのすべてについて、必要性や利用状況を十分に踏まえた整備・管理運営、統合が求められます。つまり、縮小していく街とファシリティや社会基盤をどのようにベストミックスさせるべきかを考えねばならないのです。既に、日本と同じく人口減少しているドイツや、アメリカの一部の地域だけでなく、国内でも北海道などで人口減少時代に向けた様々な取組が進んでいます。
兵庫県では、現在、来年度からの8年間を計画期間とする新たなまちづくり基本方針の策定に取り組んでおられます。この基本方針や、また21世紀兵庫長期ビジョンなどにおいて、人口減少社会における街づくりを一層意識した総合的な指針を明確に打ち出すことを是非検討していただきたいと思います。
そして、その指針を踏まえ、公的施設の総量の抑制等も含んだファシリティマネジメントの視点に立った取組みや、また必要性や利用状況を踏まえたインフラの整備及び進みゆく老朽化対策と適切な管理運営など、より一層、効率的で本格的な取組みを進めて行くべきだと考えますが、知事のご所見をお聞きします。
2 景観支障建築物等への対策について
質問の第2は「景観支障建築物等への対策」についてです。
兵庫県では、昭和60年に「景観の形成等に関する条例」を施行して以降、魅力ある景観形成を積極的に推進して来ました。その後、平成16年の景観法の施行により、市町の景観行政団体化が進む中、県にはこれまで以上に広域的な視点に立った取組などの新たな役割が求められるとともに、他にも新たな課題に直面していると聞いております。
そのような中、県は「これからの兵庫の景観形成制度のあり方」について景観審議会に諮問し、9月~10月に実施されたパブリックコメントを経て、11月16日にその答申が手渡されました。
この答申では、「広域景観形成の推進」、「景観支障建築物等への対応」、「土地利用を踏まえた大規模建築物等の景観誘導」など、大きく4点の提言がなされています。今後、この答申をもとに景観条例の改正案をまとめ、来年2月の県議会に上程する見込みであると聞いておりますが、私はこれらの提言のうち「景観支障建築物等への対応」について注目しています。
この点、答申では、現状を次のように分析しています。
『近年、幹線道路等において、閉鎖・老朽化して放置されたパチンコ店やドライブイン等が増加し、破損や腐食を生じた外壁、屋根等の外観が良好な景観の阻害要因となっている事例が見られる。少子高齢化や人口減少、それに伴う経済活動の縮小傾向等を考慮すれば、今後こうした景観支障建築物等はさらに増加すると考えられる。
全国的にも同様の問題が散見され、国レベルでの検討が進められているが、未だ有効な対応策は提示されていない。
一部の自治体では、景観支障状態の改善を命令等できる仕組みを創設する独自の取組が行われているところであり、本県においてもその対応が求められる』。
この一部の自治体というのは和歌山県であり、通称「景観支障防止条例」として、本年1月1日に施行されました。
さて、再び答申に戻りまして、この現状に対し、答申では、以下のように提言されています。
『使用・管理されることなく放置され、破損、腐食等を生じた建築物等は、良好な景観形成の阻害要素となり、特に、多くの観光客等が訪れる景観形成地区や主要幹線沿道等においては、こうした建築物等の存在が県全体のイメージ低下にもつながりかねない』。
私も、このような状況について大変憂慮しており、良好な景観の創造と保全のために、提言にあるような条例改正による仕組みが確立されることは大変良いことではないかと考えております。しかしながら、これを進めるにあたっては、建築物所有者の財産権等をはじめ、さまざまな難しい課題を抱えています。
そこで、提言が指摘する「景観支障状態」とは、どういうものを想定されているのか、またどのような対策を取っていかれるのか、当局のご所見をお聞きします。
3 水ビジネスの海外展開について
質問の第3は「水ビジネスの海外展開」についてです。
昨今、国と地方自治体における水ビジネスとしてのインフラ輸出が注目を浴びています。その背景には2025年には約100兆円に達するとの世界的な市場拡大が見込まれている現状があります。2009年12月に政府が公表した「新成長戦略」にアジアにおける水分野のインフラ整備支援が盛り込まれたことも、水ビジネスが注目されるきっかけの1つとなりました。
国では、水ビジネスを含むインフラ輸出を所管する経済産業省が「水ビジネス・国際インフラシステム推進室」を設置しております。また、下水道を所管する国土交通省では、ベトナム、マレーシア、サウジアラビアなどの所管大臣に対してトップセールスを実施、ベトナムとは下水道分野の協力関係を強化する覚書も締結しています。
地方自治体の取組としては、東京都では、都が出資している株式会社を中心に「国際貢献ビジネス」としての水ビジネス展開を行っています。実施方針を発表し、国内企業50社にヒアリングを実施、マレーシア、ベトナム、インドネシア等にミッション団を派遣しています。都は、漏水率の低さ、料金徴収率に代表される高い水道技術をもって、維持管理業務や課金システムなどの分野に参入しています。
その他、北九州市や滋賀県でも取組があるほか、神戸市も地元企業への援助を通じた神戸経済の活性化、技術・技能伝承を目的とした公的な仕事と位置付け、国際的な水インフラ整備を進めています。神戸市は、自ら率先して海外展開をするというよりも、海外展開を志向する企業からの要請に基づき、パートナーシップ協定を締結し、援助を行うという方針で動いています。
一方、我が兵庫県でも「革新的膜工学を核とした水ビジネスにおけるグリーンイノベーションの創出プロジェクトキックオフイベント」を10月に開催しました。文部科学省と経済産業省及び農林水産省より、地域イノベーションの創出に向けた主体的かつ優れた構想を持つ「地域イノベーション戦略推進地域(国際競争力強化地域)」として指定を受け、文部科学省の「地域イノベーション戦略支援プログラム」にも採択されています。
今後、総合的膜工学拠点である神戸大学・先端膜工学センターを核として、大型放射光施設SPring-8やスーパーコンピュータ等を活用する革新的分離膜の開発と、水ビジネス分野における産業化拠点の形成が進むことを期待しています。こうした取組みは、海外で県内企業が活躍する場を創出することにつながるものであり、県としても、積極的に推し進めていただきたいと思いますが、現在の取組み状況についてお聞きします。
4 関西広域連合における広域的事務連携の効果について
最後の質問は、「関西広域連合における広域的事務連携の効果」についてであります。
平成22年12月1日、「関西から新時代をつくる」として、志を同じくする関西の2府5県が結集し、地方分権改革への主体的な行動として、関西広域連合をスタートさせました。
全国初の府県域を越える広域行政組織の取組として注目されて以来、ちょうど2年が経ちます。
初代連合長に就任された井戸知事は、先月22日の連合委員会における選挙において再任されました。井戸知事におかれては、新たな気持ちで広域計画3年間の最終年を迎えられたのではないでしょうか。
さて、関西広域連合は昨年の東日本大震災において、各府県が担当の被災県に入る「カウンターパート方式」等によって、効果的な支援を展開することができました。井戸知事の力強いリーダーシップのもと、いち早く復興支援に取り掛かることができ、同時に関西広域連合の存在意義を全国に示すことができたことは、私たち兵庫県民にとっても誇りに感じるところでありました。
また一方で、関西広域連合は、国の出先機関の受け皿となるべく、国や関係機関等に対し、積極的に働きかけてこられました。今後、国会への法案提出、審議を経て、国の権限移譲の実現が期待されるところであります。
このような取組が注目されている関西広域連合ですが、2年を経過した今、改めて私は、関西広域連合が基本的に取り組むべき、または目指すべき目的を、規約や広域計画などで確認してみました。それらによりますと、国の出先機関の移管よりもまず先に、「関西全体として、スリムで効率的な行政体制への転換」を目指し、「広域で処理することによって住民生活や行政効果の向上又は効率的な執行が期待できる事務」について、「早期に実施可能な事務から取り組む」とされています。いわゆる広域にわたる防災や観光、産業振興、環境保全など7分野の事務を通じて、広域的連携の意義を追求されようとしているわけであります。
この点、確かに広域医療への取組としてドクターヘリの配置・運航に取り組まれるなど、部分的に効果のあった例もいくつかあると感じています。しかし、住民の立場で率直に申し上げますと、このような一部の事例を除き、広域連合が私達の暮らしを向上させたという実感があまり湧かないのが現状であり、防災分野以外では、現在のところ、住民にその存在価値が見えにくいのではないかと感じております。
関西広域連合は、他の地域に先駆けて始まった取組です。これまでの取組の成果をしっかり分析し、同時に現在の課題を検証して広く情報発信するとともに、これからもその存在意義をさまざまな分野で発揮していく、そのような役割が関西広域連合には課されているのではないかと思います。
そこで、この2年間における7分野の広域的事務、広域的課題を通じ、住民生活や行政効果の向上、効率的な事務執行の観点でどのような成果があったと認識しているのか、とりわけ兵庫県への効果について、知事のご所見をお聞きします。