第343回 定例県議会 一般質問要旨
質問日:平成31年2月22日
質問者:石井 秀武 議員
質問方式:分割方式
1 兵庫県立大学のブランド力向上に向けた取組の推進について
(1)就職支援体制の強化について
今年5月1日現在で、全国に大学は781校あり、その内公立大学は92校ある。学生数は約155千人。私が卒業した時点では39校、4万人ほどであったことからすると隔世の感がある。
数ある公立大学の中で県立大学が全国5位の学生数と有数の歴史を誇る学校として発展を続けていることは、OBの1人として誇らしく感じている。
今後も、我々OBが誇りを持てる大学であり続けてほしいと考えているが、社会経済情勢も刻々変化していくし、18歳人口は減少傾向にあることを踏まえると、大学間の競争はますます厳しくなっていくと思う。
特に、この4月、大阪府立大と市立大を運営する法人が統合されるが、やがては新大学の設置という流れになっている。その新キャンパスは大阪の都心部、森の宮が予定されていると聞く。受験生を集めるための大学の都心回帰は東京でも言われているが、県立大がこれからも優秀な学生を確保し続けていくためには、大阪の都心にできる公立大学というものは、少なからぬ脅威になるだろう、と考えている。県立大学が大学間競争に勝ち抜き、地域や社会に貢献し続けていくためには、選ばれる大学を目指した取組を鋭意進めていくことが重要である。
そのような中、県立大学では、2019年から2024年にかけての第二期中期目標の基本目標を「次代を先導する世界水準の大学」とした。世界水準というと、たとえば、イギリスの教育専門誌であるタイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が毎年発表している世界大学ランキング2019年版で、日本から103校の大学がランクインしているうちの1校に県立大学も入っている。ある意味で既に世界水準を満たしている、と言えるのだが、加えて、来年度、国際商経学部と社会情報科学部を開設し、国際社会で活躍できる人材を育成することや、姫路工学キャンパスが整備され、最先端の工学研究等を進めていくことなど時代の要請を的確に捉えた取組により、文系・理系ともに研究も教育もさらに水準があがるのではないか、と期待している。
こうした教育体制面での充実・強化に加え、後一歩、県立大学が受験生にとって魅力あるものになるように取り組んでいただきたいと考えているのは、ブランド力の強化であり、そのためには就職と広報の強化が必要だと考えている。
そこで、まず就職支援体制の強化について伺う。
県立大学の就職率を見ると、平成30年3月の学部卒業生の就職率は99.3%、平成29年3月の卒業生も99.3%と高い数字である。最近の売り手市場が反映されているにしても好調であると言える数字あるが、私は、この数字を課題と考えているわけではなく、今後の就職が課題と考えているのである。
私が申し上げるのは口幅ったいことであるが、現在の県立大学の好調な就職状況を支えているのは、旧神戸商大、旧姫路工大のOBであると考えている。たとえば旧神戸商大なら、かつてはダイエーの創業者や東芝、野村證券といった大企業の経営者を輩出してきた歴史がある。それぞれのOBが各企業でそれなりの地位にあり、県立大学卒業生を自分たちの後輩として評価し、採用につなげてくれているのだろうと考えている。
だが、それがいつまでも続くわけではない。やがて、そうしたOBも順次退職していく。それまでに、そのOBたちが築いてきた財産である企業とのつながりを最大限に生かして、県立大学卒業生のよりよい就職につなげていかなければならない。そのためには、たとえば理事長なり学長なりが、有力なOBに働きかける、トップセールスのようなことも行い、受験生に魅力的な就職先を維持あるいは新たに開拓していくことも取り組んでいくべきではないだろうか。さらに、就職支援体制を見ると、大規模な公立大学でもたとえば首都大学東京のキャリア支援課、大阪市立大学就職支援室など、県立大学に次ぐ規模の横浜市立大学は学生・キャリア支援課といった就職支援体制を整備している。それに対して、県立大学の体制は果たして十分なのか、就職支援に長けた専門人材による支援体制も検討していく必要があるのではないか、と考えている。
そこで、県立大学の就職支援体制について、これまでの取組について伺うとともに、今後どのように取り組んでいこうとしているのか伺う。
(2)広報の強化について
次に、広報であるが、県立大学で学びたい、子供を進学させたい、卒業生を雇いたい、というように県立大学に魅力を感じる人々をさらに増やしていくためには、伝える相手と内容により最適な手段を選んだ広報を行う必要がある。
県立大学でも広報活動は行っていると思うが、それは全国的に知名度の高い大学でも同様である。その中で、県立大学のことが記憶に残る広報を継続的に行っていくことが重要である。
まず県立大学の存在を広く認知していただくことは元より、県立大学は何をめざし、どういう教育・研究をしているのか、そして県立大学で学ぶことにより自分の将来にどういう展望が拓けるのか、などを明確に発信していかなければならないと考える。
そのためには、広報を戦略的に企画し、実施する体制の構築が必要ではないか。たとえば、県立大学よりも規模の大きい大阪府立大学や大阪市立大学は広報課や広報室を、首都大学東京では企画広報課を、北九州市立大学は広報入試課を、県立大学に次ぐ規模の横浜市立大学も広報室を持っている。それに対して、県立大学には専門的に広報に取り組む部署がない。広報を専門に取り扱う部署を作ることがむずかしければ、知事部局で広報官を置いたように、外部の人材をスカウトし、県立大学の広報を強化するという手段もある。メディアに取り上げられれば取り上げられるほど、またその媒体の種類や数が多いほど県立大学の認知度は高まり、よい印象を持つようになってくれる。そうした広報は、やはり専門の体制で戦略的に取り組むものではないのではないだろうか。
そこで、県立大学では、自身のブランド力についてどう評価しているのか、また、その向上のために今後どのように取り組んでいこうとしているのか伺う。
2 県庁舎のセキュリティ対策について
県庁舎には、仕事や県庁見学などで連日多くの来庁者があるが、一義的には職員の執務の場として、あるいは議員の活動の場であるため、行政文書や個人情報など外部へ流出させてはいけない情報を多く扱っている。
そうした情報の保護のためには、たとえば不審者の侵入に配慮するなどのセキュリティ対策に万全を期しておくことが重要だと考えている。本日は、来庁者の数や扱う情報量が多い本庁舎のセキュリティ対策に絞って伺うこととする。
県庁舎への出入りについては、午後6時以降になると1~3号館は保安室のある出入口からしか出入りができないようになっているので、ある程度のセキュリティは確保されているようにも思う。しかし、勤務時間中はどうなのだろうか。
たとえば、国の合同庁舎に入館時のセキュリティチェックがあることはご存じの皆さんも多いと思う。また、神戸地裁ではこの1月4日から、X線手荷物検査装置を導入したという報道があったが、危険物持ち込み防止のため、裁判所でもセキュリティの強化を図る動きがある。
地方自治体では、東京都庁がセキュリティゲートを設け、一時通行証の発行を受けなければ入庁できないようになっている。確かに、都道府県庁でここまですることが必要かどうかは議論の分かれるところであると思うし、誰でも気軽に利用できるオープンスペースも必要だとは思うが、個人情報保護、行政文書の管理の徹底、防犯といった観点からは、見習うべき点もあるのではないかとも思う。それは、よく他の自治体でも新庁舎再整備の際に、来庁者、職員、議員等の立ち入れる区画や動線の分離、セキュリティ・ゾーニングなどを考慮した整備を考えていることからもわかる。現在建設中の岐阜県庁舎では、共用エリアと執務エリアを区分し、ICカード認証設備等を設置するという。さらに、横浜市も現在新庁舎を建設中であるが、その管理計画を見ると、セキュリティの項で8ページにわたって、セキュリティ・ゾーニングの考え方や機械警備の導入などついて詳細に記している。
セキュリティ対策というものは、何かが起きてからそれにどう対応するか、ということも重要であるが、それ以上に、その何かが起こらないようあらかじめ対策をとって防いでいく、という考え方も重要だと考えるため、現在の勤務時間中のセキュリティ対策は、はなはだ脆弱に思っている。
県庁舎の再整備にあたっては、他の自治体と同様に防犯性を確保するためにセキュリティゲートの設置なども検討されるようだが、それはセキュリティの重要性が認識されているからであると思うのだが、では新庁舎ができるまでの間はどうするのか。
そこで、現在の県本庁舎のセキュリティ対策について、どのように取り組んでいるのか伺うとともに、今後どのように整備していこうと考えるのか所見を伺う。
3 ツール・ド・ひょうごの実施について
通学や買い物など日常の足として、また、サイクリングなどに子どもからお年寄りまで幅広く使われている自転車の保有台数は全国で7千万台を超えており、人口当たりの自転車保有数は世界でも上位にある。
平成29年5月に施行された自転車活用推進法は、環境負荷の低減、交通の混雑の緩和、国民の健康の増進に資するものであるから自転車の活用を推進しようという趣旨で制定された法律であり、自転車の活用促進を支える礎となっている。
私はこれまでこの場で、誰にでも身近な自転車を活用した地域振興について、ツール・ド・淡路や六甲山ヒルクライムの実施などを提案してきた。
残念ながら、いずれもまだ実現できていないのだが、その後、丹波でツール・ド・丹波を開催する動きがあるのを知った。丹波シティプロモーションの一環として、丹波市内100kmをコースとして、今年本大会を開催するという。県内の各地域での自転車を活用した地域振興策がまた充実するのを感じた。
他に、県が主催者として関わりを持っているものとして淡路島ロングライド150や山陰海岸ジオパークコウノトリチャレンジライドin但馬が開催されている。こうした大きな事業ではなくとも、自転車まちづくりの推進(阪神南)、ひょうご北摂スポーツサイクルの郷づくり(阪神北)、サイクリングde地域活性化(西播磨)といった県民局単位で自転車を活用した地域活性化に取り組まれている。
こうした自転車を活用した地域での取組をさらに広げ、県を代表する自転車イベントの実施を検討してはどうか、と考えている。
私が具体的な先進事例としてイメージしているのは、栃木県が開催している「ツール・ド・とちぎ」である。今年の3月に第3回目の大会が開催されることになっている。
栃木県は、自転車先進県を標榜しているのだが、「ツール・ド・とちぎ」は、国際自転車連合公認のレースとして国内外の強豪選手を迎え、県内全域を1回あたり3ステージのコースを設定し、2年で全市町を走破する、というものである。
主催は「「特定非営利活動法人ツール・ド・とちぎの会」、主管は「ツール・ド・とちぎ実行委員会」である。委員会の会長は、NPO法人の理事長で民間企業の代表者、県知事が名誉会長、宇都宮市長が副会長、その他経済団体の方々などが入っている。
財源として地方創生推進交付金を県と全市町(14市11町)が共同で申請し、活用している。平成29年の第1回と平成30年の第2回とで全県の市町を回ったので、この第3回は2回転目に入ることになる。
第1回大会は観客動員数約6万6千人、経済波及効果約10億9千万円、第2回大会は同じく約7万2千人、約11億1千万円だったそうだが、こうした効果だけでなく、地域住民、経済界、県や市町などがオールとちぎとして連携・協力して開催している、地方創生の象徴的な取組であるところに大きな意義があると考えている。
本県は、栃木県に比べて大都市部があり、島、海があるなど、バラエティに富んだ魅力的なシーンを満喫できるコース設定が可能であると考えている。
そこで、ぜひ、兵庫県でもツール・ド・ひょうごとして開催してはどうか、と考えるが所見を伺う。
4 ライフラインの早期災害復旧に向けた県の取組について
台風第21号による被害の中の一つとして、関西電力管内で延べ約220万軒という大規模な停電があった。強風等による電柱の倒壊や倒木・飛来物等による電線の切断などにより停電したもので、全面復旧は9月20日、つまり最も復旧が遅かったところは2週間以上かかったということになる。まだ残暑厳しい折りであったから、特に高齢者や病院・介護施設などに入っておられる方は大変ご苦労されたことと思う。
言うまでもなく、電気は重要なライフラインの一つであり、家庭生活や経済活動など様々な分野に大きな影響を及ぼす。そのため、早期復旧が望まれるわけだが、その復旧作業を一義的に担うのは、もちろん電気事業者である。
今回、復旧が遅れた原因は、被害が広範だったことに加え、道路上の倒木などで復旧・修理が必要な現場に近づけない、被害現場の多くが山間部で現地へのルートが限られており到着に時間がかかる、などだったという理由があげられている。阪神・淡路大震災の時の停電の規模は約260万戸で今回よりさらに大きかったが、1週間後には全面復旧したことと比べると確かに時間がかかっている。
今回の事態を受けて、関西電力では昨年9月に内部で「台風21号対応検証委員会」を立ち上げ、12月に報告を公表した。そこで課題としてあげられているのは、①停電の早期復旧、②お客さま対応、③自治体との連携の大きく3点である。この中で、私が特に注目したのは、先程もあった、早期復旧を達成するための課題として「障害物・土砂崩れ等により停電復旧に長期間を要した」というものである。
山間部において道路が倒木や崩れた土砂にふさがれ、作業員の立入がままならない場所があったことへの対応として、関西電力の報告では、自治体との早期連携に向けた事前協議を進めることと、関西電力自身が重機の導入等により障害物を除去することも検討していくとされている。ということは、この台風21号に被災した時点では、電力会社の復旧を担う人たちにそうした機能を備えていなかった、ということがわかる。今回ほど大規模な被害がこれまでなかったからわからなかった課題が浮かび上がった、ということであろう。
電力をはじめとするライフラインが停止して困るのは県民であることを考えると、今回のことを教訓として、自治体側からも早期復旧のためにできることを積極的に提示しながら事業者等と協力した取組を進めていくべきではないかと考える。
そこで、県としてこれまでライフラインの早期復旧に向けた事業者との連携についてどのように取り組んできたのか、また、今後どのように取り組んでいこうとしているのか所見を伺う。
5 県有環境林の有効活用について
平成29年度末現在、県の長期保有土地は約4,000haあり、その内、直ちに利活用が見込めない先行取得用地等である県有環境林が5割強、約2,180haあると聞いている。
また、企業庁では、播磨科学公園都市(第2・3工区、1,164ha)とひょうご情報公園都市(第2~4工区、215ha)に併せて約1,379haの事業進度調整地を持っているが、行財政運営方針では、県民・企業ニーズや事業採算性等を考慮の上、地元自治体等の理解と協力を得ながら、その利活用を検討するが、利活用が困難な場合は、長期的には環境林としての活用も検討する、とされている。今後の社会経済情勢にもよるが、その多くが県有環境林となる可能性があるのではないかと思っている。
県では、県有環境林の意義を水源涵養、CO2排出抑制などに求めているが、県土の67%は森林であり、そのうち県有環境林の占める面積は0.4%程度であるから、効果はそう大きなものでもないように思う。さらに、県有環境林の総面積は、現在でも芦屋市よりも大きいが、今後、企業庁の事業進度調整地が加わってくれば、さらに面積は増えていくであろうから、それが有効に利活用されずにいるのは非常に惜しいことだと思っていた。議会としても昨年、行財政構造改革調査特別委員会の報告書において、地域創生に資する事業などより効果的な事業への利活用の検討を行うよう提言している。
そのような中、県有環境林を活用して「狩猟者育成センター(仮称)」を整備すると聞いた。このこと自体は、鳥獣被害対策を進める上での有効活用であるから問題ないのであるが、これを契機として、県有環境林の利活用策について、もっと積極的に検討を進めていくべきではないか、と考えている。
たとえば、せっかくの豊かな自然環境を生かす意味でも、スポーツ施設などを建設あるいは誘致するということも検討してはどうだろうか。
そこで、県有環境林の今後の活用について、どのように取り組んでいこうとしているのか所見を伺う。
6 世界パラ陸上競技選手権大会の誘致・開催に向けた連携について
いわゆる障害者スポーツは、第2次世界大戦の時、脊髄損傷を受けた兵士のリハビリと社会復帰を目的として、イギリスのチャーチル首相らが治療の一環として取り入れたことが始まりと言われている。その最も大きな国際大会といえば2020年に東京でも開催されるパラリンピックであり、我が国では、前回、すなわち1964年の東京パラリンピックを契機として障害者スポーツが広まったのだと聞いている。
当初は医療的、福祉的な訓練としての意味合いが強かったものが、現在では我が国においても全国障害者スポーツ大会が国体直後に開催されるようになるなど、スポーツをスポーツとして楽しむ意識が高まっている。
しかし、日常で障がい児・者がスポーツに取り組む頻度は、障がいのない方々に比べるとまだまだ低い現状もある。適度にスポーツに取り組むことによって得られる効果やメリットをもっと発信していくことが必要であると思う。その発信の手段として効果が期待できるのが、一流アスリートが競技する姿を間近に見ていただくことだと思う。
そして、その絶好の機会がすぐ手の届くところにある。それは、先日、神戸市が2021年の世界パラ陸上競技選手権大会開催地に立候補したことである。他に立候補しているのはパリで、4月に決定されるという。
大会を主催するのは、国際パラリンピック委員会(IPC)で、1994年のドイツ大会以降概ね4年に一度、2013年のリヨン大会からは2年に一度開催されており、今年は11月にアラブ首長国連邦のドバイで開催されるが、これまでアジアで開催されたことはない。つまり、神戸市の開催が決まれば、アジアで初の開催ということになる。報道によれば、IPCは東アジアでの開催を望んでいるとのことなので、かなり実現の可能性が高い話だと思う。
本県では、これまで、今年のラグビーワールドカップ2019、2020年の東京オリンピック、・パラリンピック、そしてワールドマスターズゲームズ2021関西と国際スポーツイベントが続くことをゴールデンスポーツイヤーズと呼んでインバウンドの増加等に向けて取り組んできているわけであるが、ゴールデンスポーツイヤーズの締めのイベントとして、この世界パラ陸上競技選手権大会はふさわしいのではないか、と考えている。特に、2021年はワールドマスターズゲームズ2021関西が5月中、つまり2021年の前半で終わってしまうわけであるから、秋頃開催される世界パラ陸上競技選手権大会を加えることはゴールデンスポーツイヤーズの締めの年にふさわしいと考える。
そこで、障害者スポーツの振興を図る上でも効果の期待できる世界パラ陸上競技選手権大会の誘致と開催について、神戸市と連携を密にして取り組んでいってはどうかと考えるが、所見を伺う。
7 港湾の堤外地に係る防災対策ついて
本年9月4日に襲来した台風第21号による被害は、県内各地に様々な被害をもたらしたが、特に沿岸部は、これまでに経験のない高潮による被害を受けた。
コンテナが大量に流出したり、関西国際空港連絡橋にタンカー船が衝突して損傷し、通行止めとなったり、広域にわたって浸水被害が発生するなど、自然の脅威を改めて思い知らされることとなった。
中でも、特に堤外地とよばれる防潮堤外のエリアで被害が大きかったことと、それを要因として立地企業の中には県外移転を検討しているところもある、という報道がなされたことから、新たな課題が浮き彫りになったのではないか、と考えている。
それは、堤外地に立地する企業の防災対策について、何らかの支援が必要ではないか、ということである。
県のCGハザードマップの高潮による被害想定は、これまでの最高潮位を記録した第二室戸台風時の潮位をもとにしたものになっており、阪神間の堤外地はほとんど浸水が想定されている。
国交省が昨年3月にとりまとめた「港湾の堤外地等における高潮リスク低減方策ガイドライン」を見ても、高潮による被害リスクの高い港湾の堤外地に立地する企業は、自らの判断でそこに立地したのだから、企業自らが対策を実施することが基本とされている。
だが、行政としては、たとえば県の産業立地条例で工場立地促進地区に指定し誘致を促進している地区に、神戸ポートアイランド地区、尼崎臨海地区、兵庫区の南部地区などの堤外地が含まれている。
もちろん、企業の側も、補助金や税の減免だけでなく、物流や雇用など総合的にメリット・デメリットを勘案し、進出する場所を決めた結果、堤外地に立地されているのであろうことを考えると、堤外地ゆえのリスクも織り込み済みだろう、という考え方もできる。
しかし、一方で、県は優遇措置を設けて積極的に堤外地への誘致を行ってきているのであり、一旦立地した企業が流出するような事態を防ぐための策を講じるべきではないだろうか。
そこで、堤外地に立地する企業に対する浸水被害対策に係る支援について、どう考えているのか所見を伺う。
8 渋滞交差点の解消に向けた信号機制御のあり方について
道路の渋滞が長時間にわたると、県民の生活や経済活動に著しく時間的経済的な損失を生じるほか、沿道の大気汚染やCO2排出量の増加などの環境面や緊急車両がスムーズに走れないなど、様々な問題につながる。たとえば国土交通省の「交通流対策について」(平成27年3月5日)という資料を見ると、全国で一人当たりの年間渋滞損失時間は約40時間、乗車時間の約4割に相当するという。つまり、自動車を運転している時間の4割は、渋滞がなければ不要なものだということだ。また、年間12兆円の経済損失もあると聞くと、改めて渋滞対策に力を入れていくことが必要だという思いを強くする。
そもそも車の数自体も増えており、一般財団法人自動車検査登録情報協会のデータで乗用車の台数だけを見てみると、平成30年9月末現在、全国で約6,158万台であり、50年以上にわたって増加し続けているのであるから、渋滞の発生につながりやすい状況にあると言えると思う。
一般道路における渋滞の原因としては、工事や事故による車線規制や路上駐車などもあるが、その多くは車が集中しやすい交差点を先頭にした渋滞である。
たとえば、第二神明道路の大蔵谷インターから出たところにある神戸市伊川谷町の漆山交差点では、各方面からの車両が集中し、同交差点を先頭に渋滞が発生すると聞いている。
本県では、交差点における渋滞の解消・緩和のため、平成25年度に策定された「新渋滞交差点解消プログラム」に基づき、今年度いっぱいで70箇所ある渋滞交差点を半減するとしている。
こうした県土整備部によるハード対策とともに重要なのは、適切な交通管制である。県警では、車両感知器や光ビーコン、テレビカメラで収集した交通情報を分析し、交通実態にあった信号機の制御や交通情報の提供を行い、交通の安全と円滑を図っているとされている。
ちなみに、中国の杭州市で交通信号制御にAIを試験導入したところ、高速道路の渋滞が15.3%減少したほか、最もひどい渋滞をしていた道路も渋滞が8.5%減少し、通過時間は約1分短くなったという事例を記事で見たことがある。AIを信号制御に導入というのは、我が国ではまだ先のことだと思うが、いずれにしても、渋滞緩和には信号機の制御が果たす役割は大きいと考えている。
そこで、渋滞交差点における適切な信号制御への取組について所見を伺う。