平成27年度予算特別委員会質問要旨(農政環境部)
質 問 日:平成27年 3月 9日(月)
質 問 者:永富 正彦委員
1 今後の水田農業のあり方について
国では平成25年12月、「攻めの農林水産業」のため、新たに農政改革の方向性が示されました。米政策の改革として、生産者が国による生産数量目標に頼らずに自らの経営判断に基づいて生産が行えるよう環境整備を推進していくとしています。つまり、過去40年以上にも渡って実施されてきた「減反制度」が平成30年に廃止されることになるわけです。併せて、現在、生産調整に協力する農家の所得を補償するために実施されている米の直接支払交付金制度についても平成29年度で終了することが決定しています。
社会経済の国際化により、これからの日本の農業も世界市場で通用する成長産業へと変革が迫られており、そのためには、個々の担い手の経営者としての意識改革とともに、農地を最大限に活用していくことが必要と考えます。
本県は、農地の9割以上が水田であることから、今後も、米を中心とした作付体系の中、野菜や麦・大豆を始め、地域の特産物を組み合わせた幅広い営農活動を展開していくことが必要であると思います。
そこで、県として、いわゆる「減反廃止」後の平成30年以降を見据え、どのような水田活用を目指していくのか、当局のご所見をお伺いします。
2 水田農業を担う担い手の確保・育成について
食産業のグローバル化や健康志向ということもあり、近年、海外において和食が大きな注目を浴びており、その影響を受けて国内においても米を中心とした食事が見直されるなど、日本の農業にとって明るい話題も出てきています。
一方で、本県の水田農業を支えている担い手の現状についてみると、全国と比べて兼業農家の割合が高く、また65歳以上の農家が全体の68%を占めるなど高齢化が進んでおります。今後とも、酒米で有名な「山田錦」など全国に誇るブランド米を安定的に生産していくためには、生産基盤の強化、つまりは担い手の確保と育成が大きな課題となっています。
今定例会において知事の提案説明にもありましたように、最優先に取り組むべき課題は地方創生です。人口減少社会が現実のものとなってきている中で、地域を元気にして豊かにしていくためには、農業分野における担い手の確保、特に若手の新規就農者を一人でも多く育てなければならないと思います。
県では、「ひょうご農林水産ビジョン」に基づいて、平成32年を目標として新規就農者の確保や認定農業者、集落営農組織の育成などに取り組んでいますが、農協改革など農業をめぐる情勢が流動化している状況において、将来にわたって水田を最大限に活用していくためには、これら意欲ある担い手の確保と育成をより一層推進していく必要があると考えますが、当局のご所見をお伺いします。
3 今後の米づくりの方向性と水稲品種対策について
米づくりをはじめとする日本の主要な農業が今大きな岐路に立たされています。先ほどの質問でも触れましたが、食産業のグローバル化により米を中心とする和食が注目される一方で、TPP交渉の結果次第によっては、今後、日本の米が海外との激しい競争を強いられることが予想され、さらなる生産コストの低減が求められます。
また、米づくりは気象条件に大きく左右されるため、日照不足や低温といった天候不順により収穫量が左右されるだけでなく、品質低下を招いてしまいます。
近年では、全国各地において、香り・食味等の品質に優れたブランド米が栽培され、様々な銘柄で販売されるなど米の品質が向上し、高温や日照不足に負けない高品質な米づくりに向けた技術開発も進められています。
本県においても、キヌヒカリやヒノヒカリなどのブランド米が各地域で作付けされており、私の地元である稲美町の「万葉の香」など地域の特色を生かした高付加価値化商品に力を入れています。
米をめぐる情勢は、国内では米の消費量が依然として減少傾向にあるなど厳しい状況が続いていますが、海外市場への展開や地球環境の変化、産地間競争、農業従事者の推移、さらには消費嗜好の変化を踏まえ、本県らしい特色ある品種を導入するなど今後の米づくりに活路を見いだせるのではないかと思います。
そこで、今後、生産コストの低減や高品質化、品種対策について、どのように展開していくのか、当局のご所見をお伺いします。
4 ため池条例に基づくため池等の保全について
第324回定例県議会の一般質問において、「ため池の保全に関する今後の取組について」質問を行いました。そこで、知事は「ため池の保全、防災・多面的機能の活用など総合的に対応する観点から、ため池の保全に関する条例の改正を検討する。」と答弁され、県では、この条例を短期間で検討され、「ため池の保全等に関する条例」として本県議会に上程されました。
改正前の条例はため池の設置や管理について規制することを目的としていたのに対し、新たな条例はため池管理者にため池や疏水の機能の保全を義務づけるとともに、県民をはじめ多様な主体が自然環境の保全や地域住民の交流の場の創出などに努めるとしたものであります。これはため池や疏水の持つ多面的機能の発揮の促進を謳ったもので、時代に即した内容であると期待しています。
ため池や疏水は、美しい田園風景にとけ込み、我が県の農村の原風景として評価できるものであり、ため池等は次世代に引継ぐべき地域の貴重な財産であります。
特に、神戸市からいなみ野台地へ農業用水を導水する「淡山疏水」は、昨年9月に世界かんがい施設遺産に登録されました。また、東播磨のいなみ野ため池ミュージアムで保全活動に取組む舞台である「いなみ野のため池群」や「淡山疏水」の水利施設は、国のため池百選や近代化産業遺産にも選定されるなどの評価を受けています。
これらの水利施設は、先人のたゆまぬ努力や近年のため池協議会活動等により維持保全されており、地域ぐるみの保全という意味では、文化財そのものの評価のみならず、ため池協議会などが地域の風土に根ざした保全活動を展開している点において、今後、地域の貴重な財産を次の世代に引き継いでいくためにも、例えば、「日本遺産」への登録なども視野に入れた幅広い保全活動の展開も必要ではないかと思います。
そこで、条例の理念であるため池等を次の世代へ継承していくためには、管理者をはじめ関係者それぞれが条例の趣旨を十分に理解し協力していくことが重要と考えますが、今後、ため池等の保全についてどのように取組んでいくのか、当局のご所見をお伺いします。