会派の動き

2026年度当初予算編成に対する重要政策提言(全文)

 2026年度当初予算編成に対する重要政策提言

2025年9月5日

Ⅰ 県民の「命と暮らし」を守るために

1 経済対策の充実

(1)事業者への独自支援策の充実

  円安や関税措置、物価・人件費高騰などの影響を受けている事業者に対し、県独自の支援策を充実させること。

(2)雇用の安定を図るための施策の充実

  女性・高齢者・障がい者・性的マイノリティとされる人など働く意欲のある多くの人の権利が脅かされることのないよう雇用の安定を図るための施策を充実させること。また、キャリアアップの機会提供に努めること。

2 県民生活の安定化

 原油価格や物価の高騰が家計や経済活動に大きな影響を与えていることから、県民生活の安定化に向け、特に生活困窮者や子育て世帯等への支援を強化すること。

Ⅱ 「地域主権社会」の確立に向けて

1  地域の自主性及び自立性の向上

(1) 県内分権の推進

 市町の自主的・主体的な取り組みを支援し、権限移譲にも積極的に取り組むこと。その際、市町と県の対等な協力関係のもと、市町の実情を踏まえて進めるとともに、受け皿づくりを支援すること。

(2) 規制改革の推進

 県独自の規制及び行政手続きについては、地域活性化や県民生活向上の視点から、不断の見直しを行うこと。

2  参画と協働の推進

(1) 県民の参画と協働の充実

 これまで兵庫県が培ってきた「県民の参画と協働」について、後退させることがないよう、様々な機会を設けて充実を図ること。

(2) 多様な主体による参加の促進

 審議会等において、公募による女性や若者の委員を一定割合確保するほか、事業を企画する段階から広く県民の参画を得るなど、多様な主体の参加を促進し、その意見を反映させること。

Ⅲ 「持続可能な行財政基盤」の確立に向けて

1  持続可能な県政の推進

(1) 持続可能な県政の着実な推進

 持続可能な行財政基盤を確立するため、令和4年3月に策定した「県政改革の推進に関する条例」及び「県政改革方針」に基づき不断の改革に取り組むこと。不要不急または費用対効果の低い事業は中止し、物価高騰などによる家計や企業経営等を支える取組にリソースを集中させること。ただし、県民生活に直結する医療・福祉・教育などに関しては慎重に対応すること。

(2) 職員の働き方改革

 職員のワーク・ライフ・バランスの向上と効率的な業務遂行の実現を目指し、柔軟で多様な働き方の推進を図ること。

 また、休暇・休業制度の活用促進、超過勤務の縮減を図るとともに、業務の削減、簡素化、効率化と業務量に応じた人員の配置を一層促進すること。

 さらに、会計年度任用職員制度の運用にあたっては、引き続き、きめ細かく実態を把握し、非正規職員の賃金・労働条件の更なる改善に努めること。

(3) 投資事業の改革

 将来世代に過剰な負担を負わせないよう過度な投資事業は慎むとともに、将来にわたって発生する負担額を明示すること。

 また、事業の実施にあたっては、その必要性と優先順位、費用対効果を明確にするとともに、実施過程の透明性を確保し、一定金額以上の公共工事に関しては、事業効果の事後検証も確実に行うこと。

2  組織改革の検証

(1) 組織体制

 部局間の連携の促進、県と市町との役割分担の明確化、適切な人員配置等により、効果的な行政サービスが提供できるよう、組織体制の不断の見直しを行うこと。

 また、専門的な知識や経験、技術が円滑に継承されるよう人材の確保・育成に取り組むこと。

(2) 公社等外郭団体の改革

 公社等外郭団体については、監査委員の監査対象とならない団体であっても、出資者として監査体制の強化や十分な情報を開示するなど、透明性の確保と効率的な運営を求め、その存在意義や必要性を絶えず検証すること。

また、専門機関としての組織体制とする観点からも、県派遣職員や県退職者の登用は、最小限にとどめること。

3 県庁舎建替えと県有施設の最適化

(1) 元町周辺再整備と県庁舎の建替えについて

 新たな民間投資を呼び込むような活力あふれる元町周辺整備に向けて、神戸市と緊密な連携を図りながら早期に着手すること。県庁舎等の再整備については、県民サービスの低下や業務効率化を阻害しない職員の配置計画をもとに検討を進めること。

 また、建替え完了までの間においても、災害発生時の拠点としての機能が求められるほか、現庁舎で働く職員の安全を確保する必要があることから、現庁舎で働く職員の耐震不足への不安、職場環境の悪化、ストレスの改善などに対する対策を講ずるよう努めること。

(2)保有数量調整と管理運営について

 県有施設については、人口減少社会を前提に廃止も選択肢の一つとして、その管理運営に係る基本方針や具体的な整備計画を定め、全庁的な保有総量について不断の見直しを進めること。民間事業者のノウハウを活用することにより、効率的で質の高い管理運営が期待できる施設については、原則として公募により最適な指定管理者を選定すること。

Ⅳ 「健康福祉社会」の実現に向けて

1  健康づくり対策の推進

(1) 県民の健康づくりの推進

 より多くの県民が健康上問題なく日常生活を過ごせる「健康寿命」の延伸を目標とし、健康寿命全国1位を目指して取組を進めること。

 特に、食生活の改善や運動不足・ストレスの解消など、県民一人ひとりによる生活習慣の改善や、社会全体での健康づくりの支援を拡充するとともに、歯の健康づくりや受動喫煙の防止、心の健康づくりの推進など体系的な取組を行うこと。その際、「健康経営」理念を普及し、官民を問わず経営的視点からも働く者の健康管理を促進すること。

(2) がん対策等の推進

 企業の健康診断等における検査や市町の個別勧奨等の予防対策において、各主検診やワクチン接種を推進することに加え、より早期の発見と治療を図るため、正しい知識を身に付けるがん教育、啓発の充実を図ること。

 さらに、がんとの共生社会を踏まえた、地域医療連携推進法人を設立し、県立のがん治療施設のあり方をはじめ、がん患者相談支援センターの充実やメンタルヘルスケアの強化を図ること。

 併せて、AYA世代のがん対策については、妊孕性の温存やアピアランスケア、就学・就労支援など、生活の質に注目した対策を積極的に推進すること。

2 地域医療の確保

(1) 地域医療の確保

 地域の医療連携を推進するため、2次保健医療圏域を単位とした医療機関の適切な役割分担、相互連携を進め、新設や再編統合を検討する県内医療機関に県立病院をはじめとする先進病院の知見を活かした技術的・財政的サポートを行うとともに、かかりつけ医の普及・定着等在宅医療の推進に取り組むこと。

 また、県内における救急体制の格差解消に取り組むとともに、積極的に各市町間における広域連携体制の構築を進めること。特に、小児科、産科、麻酔科などの診療科偏在及び地域偏在の解消を図るため、兵庫県地域医療支援センターを中心に、就労環境の整備やへき地医の養成などに積極的に取り組むこと。

 さらに、県内市町立病院への支援や看護師不足に対応するため、看護師等の確保対策を進めること。

(2) 県立病院の円滑な運営

 医療ニーズの高度化・多様化、医療技術の進歩に対応し、県立病院の役割である高度専門・特殊医療を中心とした政策医療の提供など、より良質な医療を提供できるよう診療機能の高度化・効率化に引き続き努めること。

 コロナ禍後の患者の受療行動の変化等により、患者数が減っている現状においても、適切な公的負担の下で、自立した経営が確保できるよう、経営状況の推移の分析を十分に行い、医療資源の有効活用や職員の経営意識の向上及び計画的な経営改善に取り組むこと。

 さらに、インシデント・医療ミス、医療事故の発生予防に向けて、安全対策に取り組むこと。

3  高齢者福祉・介護の充実

(1) 介護サービス基盤の充実

 地域包括支援センターの機能強化や地域医療と介護事業の連携強化、重層的支援体制の構築などにより、地域ケアの総合的な推進を図ること。

 併せて、地域間でのサービスに格差が生じないよう指導・助言すること。

 また、増加する高齢単身者の生活支援や権利擁護に係る施策拡充に努めること。加えて、介護福祉士を含む介護職員の更なる処遇改善やキャリアアップへの支援等により、介護人材を確保するとともに、介護人材の養成を積極的に推進すること。

(2) 認知症対策の推進

 認知症高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、認知症サポーターの育成支援、認知症疾患医療センターの拡充、認知症サポート医の養成に引き続き努めること。

 さらに、若年性認知症についても、認知症カフェなど当事者や家族の交流の場を支援するとともに、職場などの理解促進に努めること。

4  障がい者福祉の充実

(1) 就労・社会参加支援の充実

 障がい者の自立に向けて、就労のほか、スポーツや芸術文化を通じた社会参加を支援すること。

 特に就労については、教育機関・福祉関係機関やハローワークと連携を図りながら、ジョブコーチを活用した職業訓練、職業指導に積極的に取り組むとともに、障がい者支援に積極的な企業の開拓に努めること。

 また、原材料価格の高騰による収入減等により苦境に立たされている作業所に対し販路拡大等、必要な支援を行うとともに、引き続き障がい者就労施設の工賃の向上を図ること。

(2) 障がい者の生活支援の充実

 障がい者が地域の一員としてその生き方が尊重され、安心して当たり前に暮らせるよう、障がい者の生活支援の充実を図ること。

 また、障害者差別解消法についての県民への周知や関連施策の積極的な推進に引き続き努めること。

 特に、精神障がい者への支援については、家族への支援の観点も踏まえ、精神科医や社会福祉士の訪問・看護の充実を図ること。

 加えて、障がいのある子どものいる保護者が子育てと仕事を両立できるよう、長時間受入れ可能な施設の整備など、支援を拡充すること。

5  少子化対策の総合的な推進と子ども支援

(1) 保育サービスの充実・強化

 保育所や学童保育の待機解消をはじめ、休日・祝日・早朝・夜間における保育など、多様な働き方や家族形態、県民のニーズに対応した保育サービスの展開を支援すること。

 また、病児・病後児保育施設の拡充、医療的ケアの必要な障がい児保育施設の充実を図ること。

 また、質の高い保育人材の確保や更なる処遇改善に取り組むこと。

(2) すべての子育て家庭に対する支援と子ども支援の充実

 シングルマザー、シングルファーザーへの支援、第3子以降への経済的支援、ワーク・ライフ・バランスのさらなる推進、長期休暇中の子育て支援など、誰もが安心して妊娠・出産・子育てができる環境を整備すること。

 また、不妊症・不育症に対する社会、企業の理解を深める取り組みに注力すること。

 さらに、子どもの権利条約4原則を踏まえた「こども基本法」の趣旨を適切に県行政へ反映すべく、「子どもの権利条例」の制定等、子どもの主体的な意見表明を支援すること。

6 総合的な自殺対策の推進

 「自殺者ゼロ」に近づけるため、いのちと心のサポートダイヤルの周知、ひきこもり相談支援センター等での相談体制の充実、精神科医療の適切な受診環境の整備など、実効ある対策を推進すること。

 また、自死遺族への支援にも取り組むこと。

7 児童虐待・DV・要保護児童対策の推進

(1) 児童虐待防止対策の推進

 児童虐待の予防に向けた子育て支援に加え、出産前後の両親など早い段階からの子育て支援の更なる充実に努めること。

 さらに、各学校においても、担任や養護教員を始めとする全ての教職員により早期発見・対応できる体制整備を行うとともに、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置の拡充や、関係機関との相談体制の充実を図ること。

 (2) DV・家庭内暴力対策の推進

 関係機関の密接な連携の下、相談体制や被害者へのサポート体制の強化、加害者への教育の充実や民間施設も含めた被害者保護施設の整備促進など、効果的な抑止及び被害者の救済・支援に取り組むこと。

(3) 社会的養護の充実

 様々な理由により家庭で生活できない子どもたちを家庭的環境の中で養育する施設の充実に向け、児童養護施設の小規模化や人材の確保・育成等の専門的なケア体制の整備など、「子どもの最善の利益のために」「社会全体で子どもを育む」という理念に基づいた、きめ細かな社会的養護が行える環境整備や予算の拡充を図ること。

 里親制度や養子縁組・特別養子縁組制度の普及・促進についても、引き続き注力すること。

8 生活困窮者対策の推進

(1) 高齢者等の貧困対策の推進

 問題を抱えた高齢者が孤立しないよう、地域の行政関係機関が連携を深めて情報を共有し、セーフティネットの役割を果たせる体制づくりに努めること。

 また、生活困窮者自立支援法に基づき、生活困窮者への支援体制を強化するため、中間的就労などの支援策の展開をはじめ、改正法により努力義務化された就労準備支援事業、家計改善支援事業について、県内市町間における格差を是正し、全体的な底上げを図るなど、生活困窮者の自立支援強化に努めること。

(2) 子どもの貧困対策の推進

 「貧困の連鎖」を断ち切るため、地域における居場所づくりやすべての子どもへの学習機会の提供などの市町の取組を支援すること。

 また、物価高で継続が困難となる「子ども食堂」含め、民間の取組を支援すること。

9 被爆者援護の充実

 高齢化する被爆者の相談事業を充実するとともに、被爆二世健康診断事業受診者の更なる拡大を図ること。

Ⅴ 「子どもが輝く社会」の実現に向けて

1  児童生徒の成長段階に応じた教育環境の充実

(1) 成長段階に応じた教育環境づくりの推進

 少人数学級の着実な推進などにより、基礎・基本の学力の確実な定着や、一人ひとりの個性・能力を伸ばすことなど、児童生徒の成長段階に応じた教育環境づくりを推進すること。

 部活動の地域展開により家庭の経済事情で体験格差が生じないよう、市町への財政支援を検討すること。

(2) 「生きる力」を育む教育の充実

 子どもたち一人ひとりの豊かな心を育み、主体的に生きる力を育成するため、これまで取り組んできた「自然学校」や「トライやる・ウィーク」等の成果の検証を行い、職業体験教育へ転化させるのではなく、心の教育という当初の趣旨を十分に踏まえながら事業を進めること。

 また、自らの力で生き方を選択していくために必要な能力や態度を身に付けるため、キャリア教育の充実を図ること。

(3) シチズンシップ教育の推進

 本県の将来を担う主体的な県民をより多く育てるため、自らが属する社会における役割と権利に関する認識を培い、参加型民主主義を理解、実践するための必要なスキル、価値観を身につけることを目的としたシチズンシップ教育を効果的に推進すること。

 また、SNSなどの適切な利用についても理解を深めるよう取り組むこと。

(4) 平和教育の充実

 戦後80年を経過し、戦争体験者が少なくなる中、戦争体験の継承と平和教育の更なる充実を図ること。

(5) いじめ、不登校等への適切な対応

 校内サポートルームをはじめ児童生徒が安心して過ごせる居場所を確保し、校長のリーダーシップの下、未然防止、早期発見、早期対応に努めること。

 また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、不登校支援員、養護教諭や不登校担当教員等の人的配置の強化を念頭に置きつつ、未然防止のための体制整備や、複雑・多様化する問題行動の要因への対応を早急に進めるとともに、ひょうご不登校対策プロジェクトの更なる充実を図ること。

2 教職員の勤務環境の改善

 多忙化している教職員の勤務実態を踏まえ、未配置問題の解消、勤務時間の適正化やメンタルヘルスケアをはじめとする教職員への支援体制の充実、業務・研修のあり方の見直し、業務の総量削減、思い切った業務の分離・委託の検討など、勤務環境のさらなる改善を図ること。

 特に、スクール・サポート・スタッフについては、市町における持続的な配置が可能となるよう、補助率の見直しを含めた対策を検討すること。

 部活動の地域展開に関して、県教育委員会のリーダーシップの下、中学校部活動改革推進プロジェクト等に基づき、大会運営の取り扱い、保護者の負担軽減等、現場に混乱が生じないよう最大限の配慮を行い情報提供に努めること。

3 教育機会の充実

 生まれ育った環境に関わらず、あらゆる人が教育を受ける機会を確保し、返済に苦しむことのないよう、給付型奨学金制度の充実を図るとともに、貸与型奨学金の利用に関しては、生徒や保護者に対し、返済にかかるリスク等に関する説明を十分に行うこと。

 また、学校以外の場における多様な学びを確保する観点から、フリースクール等との積極的な連携と、フリースクール等の場で学習等を行うための支援制度の確立を国に強く要望すること。

 さらに、外国につながる児童や生徒は増加傾向にあり、県立高校入試における「外国人生徒にかかわる特別枠選抜」の拡充をはじめ、多国籍化・多言語化に対応した指導・支援策を一層充実すること。

4 特別支援教育の充実

 発達障がいの特徴に応じた教育環境の整備やキャリア教育等、将来を見据えて長期的視点に立った教育を展開すること。

 また、障がいを「社会モデル」「人権モデル」として捉えた真のインクルーシブ教育を目指して、普通高校内に特別支援学校の分教室を拡大するほか、スクールバスの利用を可能とするなど、共に学び合う環境の整備を行うとともに、指導する教員の確保及び専門性の向上に努めること。

 さらに、特別支援教育の人材の増員に向け、学校生活支援教員や特別支援教育コーディネーターの専任加配を国に対し強く要望すること。

5 特色ある高等学校教育の展開

 個性を尊重する多様で柔軟な高等学校教育を推進するため、各校の創意工夫を生かした特色ある取組や、学びたいことが学べる魅力ある学校づくりを積極的に促進すること。

 特に、定時制・多部制・通信制高校については、多様化する生徒に対応するため、現状に即した高校づくりを進めること。

6 私立学校に対する支援の充実

 公教育の一翼を担う私立学校については、経営の安定に資する経常的経費の支援に加えて、部活動の全国大会出場など特別な活動にかかる臨時的な経費についても、その捻出が厳しいことから支援を行うこと。

 さらに、私立小中学校への助成、県外私立高校通学者への補助についても充実させること。

7 県立大学の自律的かつ効率的な運営支援

 税の公平な配分の観点からも県立大学の無償化に関する効果について様々な観点から検証を行うこと。

 また、地域社会への還元、社会貢献、県政への連携といったこれまでの大学運営における視点も踏まえ、県立大学のあるべき姿を確認しながら自律的かつ効率的な運営が行えるよう支援すること。

 さらに、県立大学の教育研究の充実に加え、多様化する社会ニーズに対応できるよう不断の大学改革を行うとともに、就職支援や広報の強化等により、選ばれる大学を目指してブランド力向上を図ること。

Ⅵ 「危機管理型社会」の実現に向けて

1 危機管理体制の充実

(1) 防災・減災対策

 本年3月に公表された南海トラフ地震の被害想定見直しを踏まえた必要な対応を講じ、計画的な基盤整備やシステムを構築すること。

 また、能登半島地震を踏まえた、防災DXの推進やドローン技術の活用等の対策に努めること。

(2) 災害時要配慮者及び避難行動要支援者への対応強化

 災害時に障がい者や傷病者、高齢者、外国人、乳幼児などの要配慮者及び避難行動要支援者の安全を確保するため、平素から医療機関のみならず、警察、消防などを含めた様々な関係機関との連携と役割分担、的確な情報共有体制、支援体制を構築すること。

(3) 避難行動への支援

 最新の「避難所運営等避難生活支援のためのガイドライン」を踏まえ、避難行動に対する意識の高揚と正しい理解を深めてもらうため、市町とも連携し、更なる避難訓練の強化に取り組むこと。

(4) エッセンシャルワーカーへの支援策の充実

 県民の生活基盤やライフラインの維持のために必要不可欠な仕事に従事するエッセンシャルワーカーの重要性を広め、処遇改善やメンタルヘルスケア体制の充実、人材確保策を積極的に推進すること。

2  防災副首都の関西誘致

 わが国全体の危機管理能力を向上させるため、首都圏における非常事態に備えた首都機能のバックアップを行う仕組みの早急な構築が必要であることから、関西を国土・防災・有事に関する法律や計画等に位置づけるとともに、首都代替機能の設置促進に向け引き続き取り組むこと。

 併せて、企業の本社機能の関西誘致についてもより積極的に進めること。

3  治安の向上

(1) 犯罪の抑止と徹底検挙

 犯罪のハイテク化や国際化など社会の変化、犯罪の性質の変化に柔軟に対応するため、警察組織・人員の効率的な運用や初動捜査体制の整備など、捜査力・執行力の充実・強化を図ること。

 さらに、年々新たな手口で、悪質、巧妙化する特殊詐欺や生活経済事犯、サイバー犯罪などの予防に向け、取締りの強化や関係機関との密接な連携による啓発活動を行うこと。併せて、オンライン上での違法品の売買や闇バイト、援助交際、誹謗中傷などに対し、有効な規制の検討を含め、犯罪抑止に取り組むこと。

 また、外国人労働者が増え続ける中、国や県の監督官庁と連携して、外国人労働者が勤務する企業の把握や就労実態、賃金など、あらゆる情報の把握に努めるとともに、悪質な事業者による違法な働かせ方を未然に防ぐことで、外国人犯罪の防止に努めること。

 (2) 信頼される警察行政の推進

 生活者視点に立った警察活動を展開するため、自治体・自治会等とのネットワークを活用し、より地域の課題に沿った要望・意見の的確な把握と適切な対応に努めること。

 また、積極的な情報公開や取調べの可視化による警察行政の透明性の確保を進めるとともに、警察官の不祥事に対し、警察官の資質向上に向けた取組を行うなど、自浄機能の強化を図り、信頼される警察行政の推進に取り組むこと。

(3) 犯罪被害者支援の充実

 犯罪被害者、家族の精神的負担を軽減し再び平穏な生活を営むことが できるよう、犯罪被害者等を援助する団体への支援を行うこと。

 なかでも、性犯罪被害者は心身ともにダメージが非常に大きく、回復に向けた支援が必要であるとともに、裁判等においてプライバシーが侵害される不安が大きいことから、被害者に寄り添った長期的かつ総合的な支援体制を構築すること。

(4) 警察署人員の確保及び最適化と働きやすい職場づくり

 警察署人員については、常に多数の欠員が続いており、内定辞退者や早期退職者も毎年多数出ることから、治安の維持や県民の安全安心のために、欠員の解消に向けた取組や柔軟な人的支援を行うほか、有給休暇はもとより産休・育休の取得促進など性別を問わず働きやすい職場づくりに取り組むこと。

 また、人口減少や犯罪動向を踏まえ、警察官1人当たりの犯罪や交通事故等が多い地域への警察署の人員を拡充するなど、人員の最適化を図ること。

(5) 再犯防止対策の推進

 わが国の犯罪は減少傾向にあるものの、検挙人員に占める再犯者率は高い水準にあり、安全・安心な地域づくりのためには再犯防止対策が重要である。再犯防止を進めるためには仕事と居場所確保が重要であることから、保護観察者等への就労支援を拡充するとともに、満期釈放者への支援を推進すること。

Ⅶ 「産業活力社会」の実現に向けて

1  産業活性化対策の推進

(1) 経済情勢に打ち勝てる活力ある兵庫の産業の構築

 ものづくり産業を支える中小製造業や基幹産業、大学、「スーパーコンピュータ」、「SPring-8」、「SACLA」等の知的資源を有機的に結合することにより、あらゆる技術分野において産業活性化を図ること。

 また、企業等に対して改正産業立地条例の活用を促しつつ、国内外の優れた企業、研究所の戦略的な誘致に取り組むとともに、産官学連携や関西イノベーション国際戦略総合特区の活用を推進し、地場産業の活性化、起業や雇用創出を図ること。

 (2) 中小企業の自立と地域経済の活性化の推進

  (公財)ひょうご産業活性化センターや工業技術センターの機能強化・充実を図り、中小企業における開発力・技術力を高めるとともに、知的財産の創造・蓄積・活用を支援し、情報通信や防災など次代の兵庫経済を担う多様な成長産業の創出を図ること。

 また、「中小企業の振興に関する条例」に基づき、事業継続、人材確保、経営・技術支援、海外展開支援や社会情勢の変化に対応する適切な経営支援、オンリーワン企業の創出を行うこと。

(3) ものづくりを支える人材の育成

 ものづくりの優れた技術・技能を有する匠や企業内人材の育成、技術の産業化を担うプロ人材の育成など、ものづくりを支える技術・技能、特に、科学技術人材の厚みと資質の向上を図るとともに、学校教育段階から職業生活の各段階に応じた総合的・体系的な人材育成の仕組みを構築すること。

(4) アフター万博の取組

 「ひょうごフィールドパビリオン」の取り組みで培ったネットワークや知見を活かし、県内の多彩な地域資源を活かした「魅力ある観光地づくり」を進め、持続的な国内外からの誘客促進、魅力的なツアー造成等による兵庫観光ブランド力の向上を図ることで、具体的な経済効果アップにつなげること。

2  雇用就業対策の推進

(1) セーフティネットの構築

 企業に対して雇用維持や労働法令遵守、長時間労働抑制を積極的に働きかけるとともに、過労死等の防止や労働者の権利擁護に対する関連機関との連携を強化し、悪質な案件については公表すること。

(2) 雇用対策の充実

 企業ニーズや社会ニーズを踏まえた機動的・効果的な職業訓練の実施を進め、就業力の向上を図ること。

 また、求人・求職の適切なマッチングの推進やワークシェアリングによる雇用機会の拡大等により多様な人材の安定した雇用の創出・確保を図ること。

(3) 中小企業の人材確保

 奨学金返済支援制度の更なる利用促進など、実効性のある対策に取り組むこと。

 また、定着率の向上を図るため、働きやすい職場環境の整備などについて、企業や業界に働きかけること。

3 多様な働き方の実現

(1) ワーク・ライフ・バランスの推進

 「仕事と生活のバランスひょうご共同宣言」等を尊重し、大企業だけでなく中小企業も含め多様な働き方が可能となるよう、企業における働き方の見直しを支援すること。

 また、育児介護休業、短時間勤務制度、フレックスタイム制度など働きやすい職場環境づくりを推進するため、助成金制度が積極的に活用されるよう周知を図ること。

(2) 女性が活躍できる働く場等の確保・創出

 女性が能力を活かし、生き生きと働くことができる場の確保と創出に努めるとともに、起業など積極的な取組に対して支援すること。

 特に、妊娠・出産・育児・介護等によって不利益が生じないよう、企業に対する働きかけを強化するとともに相談体制を充実させること。

(3) 非正規雇用の待遇改善

 勤労者の生活の安定・充実、社会保険の空洞化防止等の観点も踏まえ、非正規雇用から正規雇用への転換を促進すること。

 また、正規雇用と非正規雇用の均等待遇・均衡処遇の実現に向けて、賃金のみならず、教育訓練機会の均等についても公的教育訓練機関と企業内教育訓練との連携などにより取り組むこと。

4 カスタマーハラスメント防止条例の制定に向けた取組の推進

 「サービス等を提供する側と受ける側がともに尊重される社会」の実現を目指し、一部の消費者による行き過ぎたクレームや迷惑行為、不当な要求等のカスタマーハラスメント(悪質クレーム)による被害者を守るとともに、その抑止・根絶を目指した「カスタマーハラスメント防止条例」(仮称)の制定に努めること。

 また、実態調査と対策に関する研究を行い、未然防止や相談窓口の機能充実と周知、倫理的な行動を促すための啓発活動や消費者教育を実施すること。

Ⅷ 「環境循環型社会」の実現に向けて

1  実効性あるエネルギー政策の推進

 エネルギーの安定供給と省エネルギーの推進等に対応するため、県自らが率先して、省エネルギー・節電行動を推進するとともに、家庭や民間に対しても積極的に促進すること。

 また、水素、太陽光、風力、小水力発電をはじめとしたエネルギー源の多様化や再生可能エネルギー導入促進に向けた取組を、施設設置箇所周辺環境等への十分な配慮を前提として進めること。

2 温室効果ガスの排出抑制

 2050年カーボンニュートラルに向けて、エネルギー多消費事業者等の温室効果ガス排出抑制の自主的な取組を一層促進するなど、産業部門における企業の排出抑制対策の強化を図り、実効性を高めるとともに、再生可能エネルギーへの転換を促進すること。

3 気候変動による様々な影響への適応に資する取組の推進

 記録的な豪雨や高温など気候変動による温暖化がもたらすと考えられる様々な影響から、県民生活や社会経済活動への被害を回避・軽減するための取組を推進すること。

4 農林水産業の活性化

(1) 安全・安心な農林水産物の安定供給の実現

 力強い農林水産業を確立するため、多岐にわたる分野での取組・支援強化を図り、自給率を上げていくこと。特にコメの適正価格での安定供給が求められていることから、国に対して流通の円滑化や増産に向けた支援を強く要請すること。

(2) 食と農への理解促進

 農業・食体験活動や、生産者と消費者の交流活動を通じて食と農への理解の促進を図り、地産地消を推進すること。

 農業を核とした地域づくりを図る農村RМОにも積極姿勢で臨むこと。

(3) 農畜水産物ブランド戦略の推進

 消費者のニーズを把握し、ブランドとしてふさわしい品目の選定や品質の改善、新品種の開発などを通じて、他県産よりも優れた商品の生産を図るとともに、地域団体商標の活用など、効果的な宣伝活動を実施することにより、輸出を含めた販路拡大を引き続き推進すること。

 5  農山漁村振興と担い手対策の推進

(1) 農地・農業用水の保全

 農地や農業用水は、農業生産の基盤としてだけでなく水源涵養等の公益的機能を有するという観点で、農地、農業用水路、井堰、ため池等の整備・保全等の取組に対して支援を行うこと。

 また、ため池等の農業用水利施設における水難事故防止対策や老朽化等による災害時の決壊防止対策を徹底するとともに、ため池の治水・利水活用の取組を推進すること。

 (2) 担い手対策の推進

 農林漁業への新規参入に対する技術研修や財政的支援など、意欲と能力のある者の参入を促進するとともに、農山漁村で経験を積む外国人技能実習生に対する受入れ支援や農福連携の一層の推進を実施すること。

Ⅸ 「快適で潤いのある社会」の実現に向けて

1  社会資本ストックの有効活用

 「つくる」から長く大切に「つかう」へと視点を変えた取組を一層進めること。

 さらに、社会資本ストックの維持・更新を着実かつ戦略的に進めていくため、民間の資金、経営能力、技術能力を活用した仕組み・手法を積極的に取り入れること。

2 総合的な交通施策の推進

(1) 地域課題に対応した交通政策の推進

 「ひょうご21世紀交通ビジョン」を念頭に、公共交通の利用促進、交通安全対策、渋滞の緩和、交通弱者支援、バス運転手の確保支援など、地域課題や政策と関連づけた総合的な交通政策を推進すること。

 なお、厳しい経営環境に陥っているJRローカル線など公共交通事業者の状況と課題を把握・共有し、地域にとって必要不可欠な路線については維持に向けた支援を国に求めること。

(2) 県内空港の最適化に向けて

 本年4月18日神戸空港に国際チャーター便が就航したが、令和12年(2030年)前後の国際定期便の運用開始に向けての空港アクセスの強化を含めた状況整備を国に強く要望すること。

 また、コウノトリ但馬空港の今後のあり方については、費用対効果を十分に考慮し、県民の納得する方向性を示すこと。

(3) 総合的な交通安全対策の推進

 交通事故を防止するため、関係部局が連携して交通実態の的確な把握・分析を積極的に進め、総合的な交通安全対策を推進すること。

 特に、自転車保険への加入促進及びヘルメットの着用、高齢者への啓発実施などに重点的に取り組むこと。

 また、道路の利用実態に応じて、適切な速度規制の見直しや道路標識、信号機の最適化を図ること。

3 都市のあり方の適正化と緑化推進

(1) 空き家対策の推進

 空き家活用支援事業の利用促進を図ること。

 また、本県への流入人口を増やすため、他府県からの転入者に限って、民間賃貸住宅を住宅用に賃借する者に、一定額を家賃補助する制度や、空き家状態となっている賃貸住宅を活用するための家賃補助制度を創設すること。

(2) 都市緑化・緑地保全の推進

 防火や水害低減など防災能力の強化という観点から、都市緑化を促進し、緑あふれる美しいまちづくりを推進すること。

 また、県民緑税の使途について、県民の理解を得られるよう、花粉症対策や市町が行う緑化事業への支援など対象事業の範囲を拡充すること。

4  安心して暮らせるまちづくりの推進

(1) バリアフリー・ユニバーサルデザインのまちづくり

 すべての県民の社会参加を促進する視点から、バリアフリー新法に基づき、公共交通、公共施設等の社会基盤の整備・リニューアルを進めること。

 また、民間施設の整備・リニューアルについても同様の協力を求め、高齢者や障がい者が安心できる公共空間のバリアフリー化を一層強力に推進し、すべての人が社会参加できるユニバーサルデザインのまちづくりを引き続き推進すること。

(2) 生活安心住宅の確保

 安全かつ安心できる持続可能な住生活が確保されるよう、長期優良住宅の普及促進をはじめ、「省エネ化」「バリアフリー化」「耐震化」を目的とした既存住宅の活用・改修を促進すること。また、県営住宅については優先入居対象者への周知、効率的で効果的な整備を進めること。

5 芸術文化の振興

 より多くの県民が芸術文化に触れる機会を増やし、豊かな感性の涵養に資するため、美術館・博物館等芸術文化に係る県有施設について、「ひょうごプレミアム芸術デー」に加え、入館料無料化デーを実施するとともに、県内各地への収蔵品貸出しを推進すること。

併せて、パブリックアートの普及促進を図り、県民や本県を訪れた旅行者等が身近に「芸術文化立県ひょうご」を感じられるよう取り組むこと。

6 スポーツの振興

 競技団体に対する競技力の向上や国体派遣への支援充実等を通じた競技スポーツの強化に向けた取組を進めること。また、県民の健康寿命の延伸を目的とする観点から、スポーツ・運動施設の整備促進や誘致等を進め、県民がスポーツに参画する機会を増やす取組を推進するなど、「スポーツ立県ひょうご」の実現を目指すこと。

Ⅹ 「こころ豊かな共生社会」の実現に向けて

1  人権尊重の行政と教育の推進

 「部落差別の解消の推進に関する法律」に基づき、部落差別の解決に向けた取組の一層の推進を図ること。

 また、「兵庫県人権教育及び啓発に関する総合推進指針」に基づき、障がい者、在日外国人等に加え、性的マイノリティとされる人等に対する差別や、インターネットによる人権侵害など様々な人権課題についても教育、研修・啓発活動を推進すること。その際、学校、企業や地域における関係機関のネットワーク構築に留意すること。

 加えて、すべての県民が安全で安心して生活できるよう、「差別・偏見等の人権侵害のない社会づくり条例」(仮称)の制定に努めること。

2  男女共同参画社会の推進

 性別に関わらずすべての人が個性や能力を発揮できる成熟した男女共同参画社会づくりに引き続き県が率先して取り組むことで、県民の意識定着、更なる推進を図ること。

3 多文化共生社会の実現

 「ひょうご多文化共生社会推進指針」に基づき、社会情勢の変化に対応しながら、これまで以上に日本人県民と外国にルーツをもつ県民が相互理解を深め、共に地域の構成員として支え合い、協働して地域づくりを進められるよう支援すること。また、外国人学校の独自性を尊重し、支援を継続すること。