度重なる自然災害による深刻な被害や、本格的な人口減少社会の到来と急速な少子高齢化に伴う医療・年金などの社会保障制度に係る諸問題、厳しい就職・雇用事情などによって、将来に対する県民の不安感は払拭されない状態が続いており、県民生活の安定に向けた実効ある施策が求められている。
我々、兵庫県議会民主党・県民連合議員団は、多くの県民の寄託に応えるべく、議会の果たすべき役割や責任の大きさをしっかりと自覚し、真の成熟社会の実現に向けて、今後とも積極的な議会活動に取り組んでいかなければならない。
本県においては阪神・淡路大震災後、南海トラフ大地震に備え防災・減災の取り組みを強化してきたが、甚大な被害を出した東日本大震災の発生によって社会情勢は大きく変化し、自然災害に対する県民意識は高まっている。
また、昨年12月の笹子トンネル天井板落下事故以来、社会基盤施設の老朽化対策の重要性についても県民に広く認知された。本県の総合的な防災・減災対策や社会基盤施設の老朽化対策を県民に示し、県民の安心感を醸成することは喫緊の課題である。
加えて、新型インフルエンザをはじめとする感染症などによるリスクも高まる中、くらしの安全・安心の確保や危機管理の確立は喫緊の課題であり、環境や資源、エネルギー問題といった地球規模での解決が求められている。
もとより、本県においては、震災からの復興過程で発生した借入が依然として財政を圧迫する中、国からの地方交付税減額に加え、引き続き増嵩する社会保障関係費確保のため、地方単独施策に取り組むための投資的経費や行政経費を削減するなど、依然として厳しい状況が続いている。
そういった中、本年度は平成20年度に策定された「第2次行革プラン」の総点検を実施するにあたり、時代の変化や県民のニーズ等を踏まえて、限られた資源のさらなる選択と集中を徹底するとともに、県民に県の基本姿勢の説明に努め、施策の有り方やその優先順位について十分な理解を得ることが必要である。
我々は今後とも県民の生命と生活を第一とする施策を重視し、将来に希望を持つことのできる「ひょうご」の創造に向け、引き続き取り組んでいかなければならない。
以上を踏まえ、兵庫県議会民主党・県民連合議員団として、以下8つの社会像をめざして、2013年度基本活動方針を定める。
◆持続可能な兵庫をつくる8つの社会像と方向性
1 県民の参画と協働で「地域主権社会」を目指します
中央集権の社会システムからの脱却や、行財政構造改革に取り組むとともに、地域の住民一人ひとりが自ら考え、主体的に行動し、その行動と選択に責任を負う「地域主権社会」を目指します。
地域の自主性及び自立性の向上
県の政策・調整機能の強化と関西広域連合の機能強化に取り組み、国からの権限・税財源の移譲を実現します。同時に県と市町の役割分担を明確にし、県から市町への「県内分権」に取り組みます。
行財政構造改革の推進
県民生活を第一とする「選択と集中」を基本とし、第2次行革プランの総点検に取り組みます。また、徴収率の向上や自主財源の獲得などによる歳入確保政策に取り組みます。
参画と協働による「新しい公共」の実現
地域の住民一人ひとりが自ら考え、主体的に行動し、その行動と選択に責任を負う参画と協働を促進し、「新しい公共」を支える仕組みづくりに取り組みます。
2 お互いに支え合う「健康福祉社会」を目指します
超高齢社会を迎えるにあたり、県民がお互いに支え合うことができる医療・福祉制度の構築に努め、全ての県民が生涯にわたって地域の中で暮らし、学び続けることができる「健康福祉社会」を目指します。
健康づくり対策の推進
県民が心身ともに健康的な生活を送るため、定期検診の受診率の向上、生活習慣の改善など、県民自らが健康への意識を高められるよう、県民の健康づくりと疾病の予防に取り組みます。
地域医療の確保
医療機関の適切な役割分担、相互連携を進め、医療機関間の連携が有効に機能するシステムの構築に取り組みます。また、小児科、産科、麻酔科などの診療科偏在及び地域偏在の解消にも取り組みます。
高齢者福祉・介護の充実
高齢化率世界一である日本において、高齢者が住み慣れた地域社会の中で元気に暮らし続けることができるよう、介護予防、認知症対策など、「生活の質」の維持向上に向けて取り組みます。
障がい者福祉の充実
障がい者(児)が、障がいの種類、程度にかかわらず、もてる能力や個性を最大限発揮し、社会の一員として自立できるよう、障がい者の雇用促進や社会参画の推進など、障がい者福祉の充実に向けて取り組みます。
生活困窮者支援の充実
生活困窮者に対して、保健・医療の確保、安定した居住場所の確保、就労支援や生活支援の充実など、自立に向けた総合的かつ実効性の高い支援に取り組みます。
少子化対策の総合的な推進
ワークライフバランスの理念のもと、男性も女性も働きながら子育てすることが評価される社会への転換を目指し、若者世代への支援や子育て支援など、総合的な少子化対策に取り組みます。
消費者保護の推進
消費者被害の未然防止や被害拡大防止に向けて、消費者トラブル・消費者被害情報の収集と迅速な情報提供等を図るとともに、消費生活センターにおける相談体制の充実など、消費者保護の推進に取り組みます。
自殺対策の推進
「いのち対策室」を中心に、精神保健的な視点にとどまらず、社会・経済的な支援を図り、県民全体での自殺予防対策推進に取り組みます。
3 生き抜く力を育み「子どもが輝く社会」を目指します
全ての子どもに対して個性や発達に応じた教育を提供し、豊かな心や生涯にわたって学び続ける姿勢、さらには主体的に生き抜く力を育むことで「子どもが輝く社会」を目指します。
児童生徒の発達段階に応じた教育環境の充実
人間形成の基礎・基本や基礎学力の確実な定着に向けて、心豊かな子どもたちを育む教育環境の整備に取り組みます。また、体験教育などを通じて一人ひとりの個性・能力を伸ばすと同時に、いじめや問題行動などの未然防止を含めた児童生徒の発達段階に応じた教育環境の充実に取り組みます。
特別支援教育の充実
社会の中で生きていく力を育むことができるよう、インクルーシブ教育の理念を徹底し、児童生徒一人ひとりのニーズに応じた教育を推進するとともに、就労支援対策の強化や教育環境の整備など、特別支援教育の充実に取り組みます。
特色ある高等学校教育の展開
個性や能力を引き伸ばすことができるよう、創意工夫を生かした特色ある教育活動や学びたいことが学べる魅力ある学校づくりなど、多様で柔軟な高等学校教育の展開に取り組みます。
県立大学の自律的かつ効率的な運営
県立大学が兵庫県における学びの拠点として、兵庫県が輩出すべきより多くの有為な人材を社会へと送り出すと同時に、地域社会への還元、社会貢献を目指し、あらゆる分野において、産官学連携の拠点として、より一層の役割を担える環境づくりに取り組みます。
芸術文化・スポーツの振興
伝統文化や伝統芸能などの継承や若手芸術家をはじめとした芸術・文化の担い手の育成などの芸術文化の振興に取り組むとともに、競技力の向上や生涯スポーツ社会の実現などのスポーツの振興に取り組みます。
生涯学習の推進
すべての県民に対し、生涯にわたって学び続ける機会を提供し、その学びを地域社会に還元できる生涯学習の推進に取り組みます。
4 命を守る「危機管理型社会」を目指します
阪神・淡路大震災から復興してきた経験やその取り組みを礎として、自然災害やあら
ゆる事件・事故からの被害を最小限に抑えられるよう、県民の命を守る「危機管理型社
会」を目指します。
防災・減災の徹底
地震や津波、豪雨などの自然災害、大規模事故などに迅速かつ的確に対応するため、ハード面の防災対策を進めるとともに、想定を超える災害・重大事故に対しても被害を最小限に抑えることができるよう、ソフト面の減災対策にも取り組みます。
東日本大震災の被災者・被災地に対する支援体制の強化
兵庫県が関西広域連合の中でリーダーシップを一層発揮して、被災地及び被災自治体への支援を継続的に行える体制の強化に取り組みます。
防災副首都の関西誘致
首都圏における非常事態に備え、首都機能のバックアップ体制や関西における首都代替機能を早急に構築するとともに、企業の本社機能の関西誘致にも引き続き取り組みます。
総合的な地域安全対策
犯罪のハイテク化や国際化など、犯罪の質の変化に柔軟に対応できるよう、警察組織・人員の効率的な運用や初動捜査体制の整備など、総合的な地域安全対策に取り組みます。
5 雇用を創出する「産業活力社会」の実現を目指します
若者、女性、高齢者、障がい者など働く意欲のある全ての人々が、能力を発揮し、安心して働くことのできる雇用機会の創出に努め、公共事業依存型の地域経済から転換を図り、新しい時代にふさわしい雇用を中心とした「産業活力社会」を目指します。
産業活性化対策の推進
兵庫県の誇るものづくり力や先端技術を活かした産業活性化を通じた雇用の創出を推進します。とりわけ、介護、環境、観光の分野に重点を置き、兵庫県から世界に発信する産業を育てていきます。
雇用就業対策の推進
企業ニーズ、社会ニーズを踏まえた機動的・効果的な職業訓練の実施による就業力の向上など、若者、女性、高齢者、障がい者及び外国人のそれぞれの能力を活かした雇用就業対策を推進します。
観光振興
多彩な地域資源を活かした交流人口の拡大に向けて、関西広域連合と連携した大型観光交流キャンペーンによる全国からの観光客誘致や地域ぐるみの交流の仕組みづくりなど、観光振興を図っていきます。
6 持続可能な「環境循環型社会」を目指します
兵庫県の豊かな自然環境を次世代に残していくため、環境教育をはじめとする普及啓
発に加え技術開発支援、経済的支援などを一体的に推進することにより環境負荷の低減
に取り組み、限りある資源を有効に活用する持続可能な「環境循環型社会」を目指しま
す。
実効性あるエネルギー対策の推進
エネルギーの安定供給と省エネルギーの推進等の課題に対応するため家庭や企業での省エネルギー・節電行動などを着実に推進するとともに、自然エネルギー普及など実効性あるエネルギー対策の推進に取り組みます。
地球温暖化対策等の推進
国が示した温室効果ガス排出削減目標の達成に向けては、事業者に対する温室効果ガス排出抑制の自主的な取り組みや取り組みが十分でない企業に対する指導の強化など、産業部門における排出削減を中心に積極的に進め、地球温暖化対策に取り組みます。
環境の保全・再生の推進
県民総参加による森づくり、様々な主体の参画と協働による「里地」・「里山」の保全・再生、瀬戸内海の豊かで美しい「里海」としての再生など、自然環境の保全・再生の取り組みを一層推進します。
農林水産業の活性化
担い手対策、ブランドづくりの強化や農林漁業者による6次産業化への働きかけなど、農林水産業の活性化を図ります。
7 地域特性を活かした「快適で潤いのある社会」を目指します
社会基盤の整備・保全を通じて「日本の縮図」と言われる兵庫県の地域特性を活かした「快適で潤いのある社会」を目指します。
社会基盤の整備・保全
将来の劣化を予測して維持管理・更新を計画的に行うアセットマネジメントの導入・推進や、「備える・支える・つなぐ」プログラムの推進など、社会基盤の整備・保全に取り組みます。
総合的な交通施策の推進
交通政策を専門に担当する庁内横断的なセクションを設置し、交通事故防止、交通量の削減、公共交通の利用促進、交通安全対策、高齢者の移動手段確保など、地域の課題や政策と関連づけた総合的な交通政策の推進に取り組みます。
都市機能の適正立地の推進
地域の実情に沿った最適なまちづくりを進めるため、市街地への都市機能の集積やニュータウンの再生など、都市機能の適正立地に向けて広域的な視点を取り入れた市町の都市計画マスタープランの再整備を支援します。
都市緑化・緑地保全の推進
県民まちなみ緑化事業の全県展開をはじめ、市民・企業・行政をはじめあらゆる主体の参画と協働による全県的な都市緑化・緑地保全の推進に取り組みます。
ユニバーサルデザインのまちづくり
県民総参加によるユニバーサルデザインを推進やバリアフリー新法に基づいた公共交通、公共施設等の社会基盤の整備・リニューアルなど、ユニバーサルデザインのまちづくりを進めます。
8 多様性を認め合う「こころ豊かな共生社会」を目指します
人権尊重を基本理念とし、県民がお互いの価値観や多様性を認め合い、個人や組織の
活力を活かす「多文化共生社会」を目指します。
人権尊重の行政と教育の推進
高齢者や障がい者、被差別部落関係者、在日外国人等への差別撤廃に向けた政策を推進するなど、人権尊重の理念が社会規範として定着するよう取り組みます。
男女共同参画社会の実現
県民、企業、市町等の積極的な意識改革を進めるなど、実効性のある施策を展開し、男女共同参画社会の実現に取り組みます。
多文化共生社会の実現
地域の構成員である外国人県民が直面する課題解決のための取り組みを進め、誰もが安心して教育を受け、働き、生活していくことができるよう多文化共生社会の実現にむけて取り組みます。
国際交流の推進
友好・文化・経済等をはじめとする各分野において、外国人県民との相互理解を深め、積極的な国際交流の推進に取り組みます。