質 問 日:令和4年12月7日(水)
質 問 者:竹内 英明 議員
質問方式:分割答弁方式
1 大規模な太陽光発電施設における防災対策の総点検とその結果対応について
(1)2022年6月の報告以降の対応状況 (まちづくり)
先月7日付の神戸新聞朝刊1面に「太陽光発電広がる拒否感 姫路や宝塚 住民、パネル崩落を懸念」という記事が掲載された。太陽光発電は再生エネルギーの中核として今や脱炭素社会の形成に必要不可欠とされているが、一方で森林を伐採して大規模に開発を行い、自然破壊といった状況を生む場合もある。
また、民家にほど近い山林の中腹や斜面に設置された場合、豪雨や台風によるパネルの崩落等も懸念される。実際に姫路市林田町では2018年7月に豪雨によって大規模に崩落し、その危険性が大きく指摘されることとなった。
県では2017年に太陽光発電施設等と地域環境の調和に関する条例を制定し、5千㎡以上の面積の施設について一定の規制を設けたが、2018年3月には、50ha以上と更に大規模な施設について、森林等の面積の基準を強化し、自然を守る考えを前面に押し出した。
当時、姫路市北部では約170ha(甲子園球場43個分)という極めて大規模な計画が持ち上がり、4万8千人以上という住民の反対署名が集まるなど、大規模な反対運動がおこっていたが、この規制強化により結果として、申請が取り下げられた。住民は安堵したものである。私は、この県の対応について高く評価している。
そんな中、2021年7月に、静岡県熱海市の土石流災害で死者行方不明者28人という大災害が起こった。静岡県の調査によると、地下水が流れ込んでいたことに加え、固さや排水対策が不十分な高さ50メートルの不適切な盛り土が造成されたことで、常に水を含みやすい状態だったと指摘されている。
兵庫県でもこの災害を受けて、当初盛土に隣接する太陽光発電施設が原因かと報道されたこともあり、県内の太陽光発電施設における防災上の措置に関する独自の総点検を実施した。その結果は今年6月に公表されているが、全1,154件の点検対象のうち、概ね安全性が確認されたが、一方で、事業者不明等により未報告の施設が15件、報告があっても安全対策を確認・指導中というものが3件あった。
県条例の対象は5千㎡以上と大規模なものだけであるが、経済産業省が認可している発電事業者にもかかわらず権利の転売等で実際の所有者が不明という施設もあったそうだ。
そこで、今回の総点検結果について、6月以降の対応状況も含めて、当局の所見を伺う。
(2)盛土規制法に基づく、人家等に被害を及ぼしうる太陽光発電施設の規制について(まちづくり)
さきの神戸新聞が取り上げた姫路市夢前町の事例もそうだが、小規模の施設については、独自に規制を拡大した市町を除き、県条例では規制の対象とはなっていない。そこで熱海の土石流災害を受けて国会で改正された宅地造成及び特定盛土等規制法、通称、盛土規制法に基づく規制ができないのか質問したい。
この法律では、都道府県知事等が、盛土等により人家等に被害を及ぼしうる区域を規制対象として指定し、その規制区域内で行われる盛土等は許可及び届出の対象となる。
国土交通省の盛土等防災対策検討会における法令運用についての質疑応答記録をみると、盛土規制法では、残土処分や太陽光発電・風力発電の設置を目的とした盛土も規制対象となるのかという質問に対して、従来規制対象としていた宅地造成に限らず、幅広く盛土行為を規制することとなる。ご指摘の残土処分や太陽光発電・風力発電の設置を目的とした盛土も規制対象であると回答している。
都市計画法では、太陽発電施設自体は建築物・特定工作物に該当しないため、開発許可は不要となっている。盛土規制法の規制はこれまでの太陽光発電施設に対する規制について大きな転換となり、その区域の指定はかなり広範囲となることが想定される。
そこで、この法律によって、規制区域や許可基準が整備されると、人家等に被害を及ぼしうる山林などの傾斜地等に太陽光発電施設を設置することがかなり難しくなるという理解でよいか、当局の所見を伺う。
2 姫路市内の県立・市立高校普通科が統合により5校減ることについて(教 委)
県立高等学校教育改革第三次実施計画に基づく県立高校の統合についてである。生徒の減少が進んでいるという少子化の現実は理解している。現在48歳の私が中学3年生だった頃と比べて、現在の15歳の生徒数は半数程度となっている。学校の数を減らさずクラス数を減少させて学校を存続させてきたが、教科担任制や一定の選択肢のある部活動維持を考慮すれば、ひょうご未来の高校教育あり方検討委員会で示された、普通科・総合学科で1学年6~8学級、職業学科で1学年3学級以上が望ましい学校の規模ということも理解している。
一方、第4学区の統合案を見ると、県立姫路南・網干・家島の3校が姫路南の校地に、県立福崎・夢前の2校が福崎の校地に統合されることになっている。網干高校の通信制は残るものの、普通科は3校が減ることになる。
いずれも姫路市内の学校だが、姫路市では市立の飾磨・琴丘・姫路の3校も2026年度から1校に統合される計画が持ち上がっている。新設用地の確保が困難なため暫定的に姫路高校の校地に統合する方針が示されているが、この市立3校は各6クラスで計18クラス、定員割れもしておらず、仮に新たに最大10クラスの学校を設けたとしても8クラス320人分の定員が減ることになる。大幅な定員の減少である。
今回の県の統合案では県全体で6組14校が対象となり、8校が減ることになるが、姫路市内では県立3、市立2の5校も減る。高校の設置者が県と市にわかれているため、それぞれ別に統合計画を考えてしまった感さえある。
まず、県教育委員会はこうした背景や事情を丁寧に説明しなければならないと考える。なぜ第4学区では統合により姫路市内の高校だけが減るのか、姫路市の普通科高校が市立校も含めて5校も減るのは少しやり過ぎと考えないのか。結果として、市立の統合状況をみれば、公立高校を志望する姫路市内の生徒が市外に通わざるをえなくなる場合が増える。
そこで、こうした急激な高校統合計画となったことについて、姫路市とどういった協議を行ってきたのかを含めて、当局の所見を伺う。
3 住民に身近な社会基盤整備、渋滞交差点の解消や道路拡幅・歩道設置について
昨年度知事が示した県政改革方針の中で、行財政基盤確立のための投資水準の見直しが示され、投資事業の削減が行われたが、一方で、県民の安全安心に直結し、要望の強い道路や河川の日常的な維持修繕を充実させるための県単独事業が導入された。
県単独か補助事業かは別にして住民の安全安心や利便性向上のための住民の要望は極めて多岐にわたる。その中で今日は小さくても重要な地域課題を取り上げたい。
(1)県道大江島太子線の下太田交差点の右折レーン設置による改良(土 木)
1つは姫路市内を通る県道大江島太子線の下太田交差点の改良についてである。この交差点は2019年6月12日付け神戸新聞社会面に「通過に3回以上信号待ち、渋滞交差点解消へ新計画」という見出しの記事に写真入りで取り上げられた渋滞交差点である。2019年改定の社会基盤整備プログラムに掲載され、着手されることになったが、実現による渋滞解消効果は極めて大きい。
そこで、現在の進捗状況と完了の見通しについて当局の所見を伺う。
(2)県道大柳仁豊野線の道路拡幅・歩道設置(豊富町・西工区)(土 木)
もう1つは、同じく県道の大柳仁豊野線(豊富町・西工区)の拡幅、歩道設置である。この道路は、近隣の9年制の義務教育学校、豊富小中学校の児童生徒が通学路として使えば利便性の高い道路だが、歩道がなく、危険ということで迂回して通学している。
また、近隣の高校生も自転車で利用しているが、自動車との接触による事故などが発生しており、先だって、途中の市道との交差点に信号機が設置されることになった。その際に、当該小中学校の校長先生からなんとか通学路として使えるように歩道を設置してほしいという要望も受けた。
そこで、当該事業についても現在の進捗状況と完了の見通しについて、当局の所見を伺う。
4 県立病院への提案
(1)病棟へのWi-Fiの導入による入院患者の利便性向上 (病 院 局)
県立病院の入院患者の方にWi-Fi環境を提供したいという観点から質問したい。 というのもこの夏にはりま姫路総合医療センターに入院中の知人から直接メッセージをもらったが、病室や談話室のどこにもWi-Fiがないというものだった。別の退院した方からは、コロナ禍で面会は禁止され、家族と会うことはできないので、スマホのビデオ通話アプリを使って子どもとビデオ通話をしたが、通信量が定額分を超えるなどして出費がかさんだと聞いた。
これは何もはりま姫路総合医療センターに限ったことではない。全国的な課題で、コロナ禍で入院患者の孤独を救うために、1つでも多くの病院の病室に無料Wi-Fiをといったスローガンを掲げ、2021年 1月に発足したのが、#病室Wi-Fi協議会であり、メディアでも大きく取り上げられていた。
そこで県立病院(13病院・1診療所)の実状について調べた。
入院患者の病棟で無料Wi-Fiが使えるのは、災害医療センター、リハビリテーション西播磨病院、粒子線医療センターの3病院。丹波医療センターは特別室の8室のみ利用可能。加古川医療センターもコロナ等の感染症により面会制限がある患者のみ使用可能とのこと。がんセンターではポケット Wi-Fiを売店にて有料で貸し出していた。
一方、外来患者向けとして県庁舎にも整備されているHyogo Free Wi-Fiがロビーで使える病院が7、入院患者も利用可能な食堂で使える病院が1あったが、外来向けよりも入院患者向けのほうが必要性が高いと考える。
携帯やWi-Fiの電波が医療機器や電子カルテ等への与える影響については以前から指摘されていたが、#病室Wi-Fi協議会メンバーの一人で情報通信技術に詳しい、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の川森雅仁特任教授は、適切な管理をすることで対応ができるとHPで指摘している。
昨今、病院で最低限のリモートワークをする人もおり、長期入院者は、定額制のポケットWi-Fiや据え置き型のルーターを病院内に持ち込んでいる人もいるそうで、適切に管理されない機器を持ち込ませて、病院の業務用Wi-Fiと電波干渉を起こしといったトラブルもあるという。こうしたことが起こる背景に病室で患者にWi-Fiを開放していないことによるトラブルだという意見もある。
病院の開院後に新たにWi-Fiを整備するより、開院前に整備をしておけばコスト削減にもつながる。
そこで、先ごろ建替整備の基本設計概要が公表されたがんセンターではWi-Fi設備を導入すべきであり、他の既存の県立病院でも先の3病院のように病棟でのWi-Fi整備を実施してもらいたいと考えるが、当局の所見を伺う。
(2)日勤・夜勤の制服の色分けによる残業削減効果と働き方改革(病 院 局)
看護師の制服色分けで残業を大きく減少させたといわれている病院がある。熊本市にある熊本市医師会熊本地域医療センターがその一つ。看護師ドットワークスというHPによると、同病院では就業前の早出および終業後の残業が常態化していたそうだ。
そこで、当時の院長の廣田医師が考案したのが、日勤の看護師を赤のウェアで、夜勤の看護師を緑のウェアでわけること。
同センターでは、日勤の看護師は54名、夜勤の看護師は20名いたそうだが、それぞれに違う色の服をきてもらうと、勤務終了まぎわの人を捕まえて、仕事を依頼するということがなくなったという。声をかける側に色分けで意識が一目で伝わるから、ということであった。
全員白の制服だったら、見た目上、夜勤と日勤の人の見わけがつかない。アメリカンフットボールの攻守のユニホームが異なることをヒントにして当時の院長が2014年に導入したということだが、結果的に導入前後で、残業は年間110時間、つまり月10時間近くあったものが、1人あたり年80時間もの残業が減少したという。日勤の人が深夜に勤務していたら、服が違うから目立つ。早く帰ればと声をかけてあげられる。
ウェアを変えるだけで、働き方改革になるなんて最初は半信半疑だったが、すでに導入した県立病院がある。県立はりま姫路総合医療センターであるが、こちらの導入の狙いと成果はどうなのか。
そこで、5月に開院したばかりで前年との比較などが難しいと思うが、成果があがっているということであれば他の県立病院にも順次導入していけばいいと考えるが、当局の所見を伺う。
5 財政指標「将来負担比率」の全国ワーストからの脱却について(財 政)
齋藤知事は財政規律を後回しにするリフレ派ではなく、逆に財政の健全化を見据えているとお見受けする。ならば兵庫県が制度導入の2007年度決算以来全国ワーストの財政指標である、将来負担比率の全国ワーストからの脱却を目指すべきと提案したい。
県の新行革プランが始まったのは2008年度であるが、あれから13年が経過した2021年度決算においても、全国ワーストである。これによって、本来例外的であるはずの給与抑制措置が長期間継続され、正当化されている感もあるほどだ。
今年10月の県人事委員会報告では、管理職手当における給与抑制措置について、「減額措置が長期にわたり常態化している。職員のモティベーションの維持・向上や人材確保の観点からも、速やかに解消されるよう要請する」とこれまでで最も強い表現で解消に向けた要請が行われている。22年間も継続されているが、減額措置期間の明示や何らかの指標改善に応じた減額措置の終了目安などを出すべきではないかと思う。
そのためにも、将来負担比率の全国ワーストからの脱却など、県民からも県の財政も少しは良くなってきたと認めてもらうことが必要である。
そこで、兵庫県の将来負担比率は2021年度決算で315.1%であるが、こうした数値は県民にとってわかりにくいもので、まずは、わかりやすい、相対評価、都道府県間の相対順位で中程をめざすなど、そうした目標設定をあわせて併用して、全国ワースト脱却を目指すべきであると思うが、当局の所見を伺う。
6 但馬空港滑走路延長についての齋藤知事の考え(土 木)
齋藤知事は昨年7月の選挙の際に、刷新というスローガンを掲げられた。刷新には、大きな投資事業の見直しも必要となると思うが、伊丹庁舎の整備の一旦凍結や大規模アリーナの整備の検討自体の凍結は示されたものの、但馬空港については コウノトリ但馬空港のあり方懇話会での議論を踏まえ、但馬地域の振興のために但馬空港において取組むべき施策について慎重に検討とされた。
慎重に検討という言葉が行政用語として一般的には何を意味するかは巷間知られるところだが、外向けには明確になっていない。
昨年9月の定例県議会の中で我が会派の向山議員から知事の考えを問うたが、その段階では、明確ではなかった。あれから1年以上がたち、同懇話会から5月に中間報告も出された。そろそろ知事の判断が示されるときである。
知事は先月17日の記者会見の中で、県庁舎の建て替えに関連して、その建て替えコストは当初720億円、物価高騰により1000億円、いや倍になる可能性もあるという話をされていた。但馬空港の滑走路延長にしてもコロナ前の試算では2000メートル級の延伸には400億円程度が想定されたが、県庁舎同様に鋼材やコンクリートが使われることから過去の想定コストでは賄いきれないということになろう。
但馬空港に東京・羽田直行のジェット機の定期便が就航することは理想としてはいい話だが、本県の財政状況を考えた時にすぐにできるのか。井戸前知事は滑走路端安全区域(RESA)の確保が義務付けられる2027年3月までの整備(設計着手)と同時に延長する考えだったと思うが、私は厳しいのではないかと考える。
本県の財政状況は先に指摘した将来負担比率で全国ワースト、今後、実質公債費比率も悪化して国の起債許可団体へ移行することが見込まれている。
そこで、慎重にという言葉をもう少し明確にして、滑走路端安全区域(RESA) と一緒に延伸する可能性については難しい、ジェットの就航が可能な滑走路の延長はRESAとは切り分けて長期的な課題であると明確にしておいたほうがいいのではないかと思うが、当局の所見を伺う。