第322回 2014年2月定例会 一般質問
質 問 日:2014年2月26日(水)
質 問 者 :竹内 英明 議員
質問形式 :一問一答方式
1 教育委員会制度の見直し(首長関与の強化)について
質問の第一は「教育委員会制度の見直し(首長関与の強化)について」です。
教育委員会制度の見直し、特に首長が教育に関与することを強化することが政府与党や野党の間でも議論されていますが、これについて伺います。
現在の教育委員会制度は、戦前、国家主義的な教育が行われたという反省に立って、教育行政の政治的中立性を確保することを大前提に昭和23年に創設されました。教育委員を有権者が選挙で選ぶという教育委員直接公選制こそ、委員会に党派的対立が持ち込まれる弊害を解消するため8年後に首長による任命、議会の同意制に改められましたが、その後は、国や都道府県の人事関与や委員会の予算・条例提案権の廃止などの変化はあったものの、大きく見直されることなく現在に至っています。
ところが、近年、いじめ事件など児童生徒の生命、身体、教育を受ける権利を侵害する重大な事態が発生し、委員会の責任が問われた際に、権限と責任の所在が不明確であること、すなわち教育委員からなる合議体としての委員会がトップであること、教育長以外の教員委員は非常勤であることなどの問題点が指摘されるようになってきました。教育委員長は教育委員会の代表として委員会を主催するものの非常勤であり、事務局を直接指揮・監督している常勤の教育長との関係も分かりにくいと言われています。
さらに近年、首長から、都道府県別の全国学力・学習状況調査で学校ごとの成績の公表などを求める意見や首長独自の学力向上対策が教育委員会に提案され、対立の構図が見られる自治体も出てくるようになってきました。直接選挙で選ばれ、予算提案権もある首長と教育委員会との意思疎通、連携に課題が出ているとも言えます。
そこで、現在、今国会への提案に向けて政府与党で検討されている「教育行政の最終的な意思決定の権限を教育委員会に残す一方、教育委員長と教育長を兼任するポスト(仮称)「代表教育委員」を設け、自治体の長が任命することで責任の所在を明確にする。また、首長は、教育委員や有識者らと構成する法定の(仮称)「総合教育施策会議」を主宰し、教育行政の基本的指針「大綱的な方針」を定めるなど、教委が担ってきた方針決定権を握ることになります。またいじめ問題等が起きた場合は再発防止策を講じさせるため、教委に是正措置も要求できることとしています。
これら新たな見直し案について、首長が教育行政により強く関与できるようになることに対して、知事の考えと、教育委員長には現行制度を変えることの必要性を日々の業務の中で感じるかについて考えを伺いたいと思います。
2 県立大学姫路工学キャンパスの整備、理系女子確保対策について
質問の第2は「県立大学姫路工学キャンパスの整備、理系女子確保対策について」です。
現在の県立大学姫路工学キャンパスは、旧姫路工業大学の本部書写キャンパスと言われてきたキャンパスです。旧姫路工業大学は昭和19(1944)年に神戸市で県立高等工業学校として創立され、県立工業専門学校への名称変更、昭和21(1946)年の姫路市への移転を経て同24(1949)年に姫路工業大学として姫路市において設立された歴史ある大学で、平成16(2004)年の県立3大学の統合により兵庫県立大学となっております。
このキャンパスの中で、昭和40年代前半に建設され老朽化した10施設を同じ敷地内で古い施設を解体しながら順次新しい施設に建て替える方針で、26年度予算では新しい本館の実施設計の予算約6,800万円が計上され、以降、平成35年度まで10年間をかけて総事業費約115億円で事業が実施される計画です。
整備の背景として「県立大学工学部・工学研究科は、本県はもとより全国の産業発展に貢献する人材を育成してきたが、現状の施設では、創造力あふれる人材の育成や新技術の創出等新たな時代のニーズに応えることが困難」とし、「少子化が進むなか、大学間の熾烈な学生獲得競争に打ち勝ち、より優秀なものづくり人材を輩出していく環境整備が必要」であるとしています。
理系の研究といえば、神戸市中央区にある再生医療の拠点、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターで先日新しい万能細胞「STAP細胞」作製を発表した小保方晴子研究ユニットリーダーが有名になりました。彼女だけでなく女性で理系の大学に進学する学生も増えているそうで、理系の女子を「リケジョ」と呼ぶそうであります。
しかし、現在の工学部の建物は、40年以上前に建設され、古くて狭く、トイレも男子用が大半という昔ながらの研究施設となっています。小保方さんの研究室がテレビに映っていましたが、まっ白い壁を背景にムーミンの絵が描かれるなど、旧来の研究室のイメージを変えるような部屋で、多くの女性が研究されており、大変驚きました。現在、工学部・工学研究科をあわせて学生1,991人中女性は156人と7.8%となっており、女性は少ないとのことですが、学習・研究環境も学校選択の重要な要素にもなると思います。
今回の整備にあたって、理系女子「リケジョ」も進学したくなるような整備とする必要があるのではないでしょうか。女性志望者が増えることによって男性の志望者が減ることもありえませんし、逆にリケジョをターゲットに志望者を確保する計画を立てることで学校全体の人気があがる可能性もあります。姫路工学キャンパスの建替整備についてどのような整備方針を考えているのか、特にリケジョ確保対策で考えていることがあれば伺いたいと思います。
3 兵庫県ドクターヘリの運航状況と県立姫路循環器病センターの整備方針について
(1) ドクターヘリの出動状況
(2) 準基地病院製鉄記念広畑病院の運航時期と役割分担
(3) 姫路循環器病センターの建替整備方針
質問の第3は「兵庫県ドクターヘリの運航状況と県立姫路循環器病センターの整備方針について」です。
昨年11月30日に県立加古川医療センターを基地病院として就航したドクターヘリについて、運航から3ヶ月が経過してようとしています。運航範囲は、同センターから50~70キロの圏内、播磨地域と丹波南部地域をカバーしています。原則として午前8:30から日没までの時間帯で運航すると聞いていますが、現在の出動件数(1日当たりも)をお聞かせいただきたい。
また、準基地病院となる姫路の製鉄記念広畑病院のヘリポートも来月3月22日に竣工の運びですが、準基地病院としての運航開始時期は異なると聞いております。運航時期の目途と、運航開始後の加古川医療センターとの役割分担はどうなるのかについてもお伺いします。
また、播磨地域には三次救急の県立姫路循環器病センターもあり、ヘリコプターの緊急離発着場の設置もされますが、こちらは平成30年度以降計画的に本格的な建替整備が予定されていると聞いています。昭和56(1981)年6月に開設され、わが国で初めての循環器専門の自治体病院として開設された経緯から循環器疾患の専門医療のイメージが強いわけですが、認知症疾患医療センターがあり、糖尿病センターの開設など様々な専門分野を有しています。
今年で設立33年目を迎え、施設等の老朽化も進んでいることから、病院構造改革推進方策において、平成30年以降の建替が明記されております。今後の建替整備にあたって現段階で決っている方針等があれば教えていただきたいと思います。
4 地方公営企業会計制度の見直し(地域整備事業会計の保有土地の時価評価)について
質問の第4は「地方公営企業会計制度の見直し(地域整備事業会計の保有土地の時価評価)について」です。
企業庁の地域整備事業ですが、財務諸表を見る限り、直近の24年度決算でも、自己資本276億円のほか、利益剰余金が222億円もあるなど、総資産2,116億円に対して(借入資本金を除く)資本が500億円を超えるなど一見すれば何も問題がない財務状態とみられてきましたし、議会で経営状況に関する質問があっても当局もそう答弁されてきました。
一方、平成24年2月に地方公営企業法施行令、同施行規則等が改正施行され、約46年ぶりに、借入資本金の資本から負債への移管や時価評価の導入など会計制度の大幅な見直しが行われることとなりました。大きな改革であることから2年間の猶予期間が設けられ、平成26年度予算及び決算から適用されることとなりました。
今県議会に提案されている第三次新行革プランをみますと、地域整備事業会計の保有土地の時価評価の結果は、進度調整地を除く帳簿価格408億円の土地が、136億円の評価損が出て、272億円になるということです。下落率は33%です。
また、おのころアイランドや夢舞台隣接地等の固定資産の再評価で60億円の減損が発生し、136億円の評価損とあわせ資産が196億円減少することとなりました。大変な見直しであります。
196億円の評価損は過去の利益剰余金(経営安定積立金209億円)の範囲内ということで312億円の資本がまだ残るので債務超過にはならなかったわけですが、これまで企業会計の実態をあらわす上で時価評価が必要だと何度となく指摘してきた私からすると、200億円近い欠損金が突然発生するようなこれまでの制度は何だったのだろうという思いがします。
また、今回評価減となった土地のほかに、播磨科学公園都市、ひょうご情報公園都市等の進度調整地が494億円あり、これは時価評価されていません。従来は原則として取得価額で計上されていた「たな卸資産」について、改正された地方公営企業法施行規則第8条第3項では、「時価が帳簿価額より下落している場合には、時価を帳簿価額とする」こととされているはずで、時価評価の対象とならない例外は「重要性の乏しい」事務用消耗品等に限られています。
早期に売却可能な土地ではないから進度調整地になっているのでしょうし、地価の下落だけでなく、過去には年利5%を超えるような高金利の企業債の発行によって取得した土地も含まれています。進度調整地についても時価評価を行えば、本当の経営状態に近い、今回の公営企業会計の改革の趣旨に合致した経営状況が明らかになると思います。
いずれにしろ進度調整地を取得原価のまま資産に計上し、低価法を採用しなかったことは大変重い判断だと思います。時価評価をすれば自己資本が大きく毀損される予想もたつ中での苦渋の選択だったと思いますが、他の自治体との並びも含めて本県だけが独自ルールというのはどうなのでしょうか。
民間企業の経営者なら財務を把握するために保有資産の実態を把握していて当然のことですし、議会も県民もこうした状況について知っておかないといけません。本当の経営状態に近い、今回の公営企業会計の改革の趣旨に合致した経営状況の開示をしていただきたいと思いますがどうですか?
5 法人県民税超過課税の延長と基金の運用果実について
質問の第5は「法人県民税超過課税の延長と基金の運用果実について」です。
今議会には法人県民税の超過課税を延長する兵庫県税条例の改正案も提出されていますが、超過課税は昭和49年に始まったもので、当初は、勤労者を初め、県民に、健康で心豊かな勤労者生活を増進するため、文化(カルチャー)、スポーツ、レクリエーションの活動の場を提供する、その3つの活動の頭文字をとってCSR事業の財源として1期5年でスタートしています。
当初は1%、4期以降は0.8%を財源として、CSR施設の整備と運営、ひょうごCSRクラブの活動支援を中核事業として実施、第5期までは全県的野外CSR施設などの整備を推進し、第6期はスポーツクラブ21、第7期は、県民交流広場事業など、現在の第8期まで勤労者福祉の向上をめざす、を基本に、少子対策を初めとする子育て支援も展開してきました。そこでこの超過課税の資金の状況を調べてみました。
この法人県民税超過課税の24年度末までの徴収金額は累計約1,279億円で、事業で使用したお金は1,252億円ということです。使っていない残りが約27億円。また、これだけではなく、金利が高かった時代に運用した超過課税の運用利子である運用果実が別に約326億円。つまり合計すると353億円ものお金がこの超過課税で残っている金額ということになります。
今回提案のあった第9期の提案では、5年間で130億円、単年度で26億円程度の税収がある見込みですが、使っていないお金が353億円残っていて、CSR施設の運営経費が将来的にも必要とは言っても既に市町に将来にわたる負担を一括交付して移譲した施設もあり、お金があるのになぜ延長するのかと受け取られる可能性もあります。
何年か前、与謝野馨さんが財務大臣をしておられた時代に国の会計に「埋蔵金」がある、ないという議論があったことを記憶しています。具体的には国の財政投融資特別会計や外国為替資金特別会計の運用益の積立金があるということで、実際に高い外貨金利により利益が出ており、財源探しの中で実際に数兆円が使われたと記憶しています。しかし、本県の場合、残念ながら、新たな財源として使える埋蔵金ではなく、既に活用されていました。
具体的にいうと、超過課税の積み立てられてきた現在の「勤労者福祉基金」の残高は24年度決算出納整理後8.5億円しかないことになっています。残る金額は、平成18年度の実質公債費比率の導入時に県債管理基金に集約され、うち262億円は企業庁の地域整備事業会計への貸付金として活用されています。すなわち神戸三田国際公園都市を展開した旧北摂開発事業特会に融資され、カルチャータウン等の造成費用等に充当された形となっています。
そもそも法人県民税の超過課税による収入は平成元年までいったん一般会計で収入され、その全額が勤労者総合福祉施設整備事業特別会計において収入されていましたが、平成2年度からは、基金の積立を一般会計で行い、事業費のみを特別会計に繰り出す方式に変更され、超過課税分の収入額はわからなくなりました。
私は、県の厳しい財政状況から、貴重な財源として今後も活用させていただきたいと考えますが、先の会派に対する超過課税の延長提案説明会でも超過課税については議員の中から大変厳しい声が多く出ていました。
超過課税は、使途の開示だけでなく収入の状況等も含めて特に慎重に取り扱わなければならないものであります。延長の是非を考える際に、こうした事実関係を明らかにし、納税者にわかりやく説明することも重要だと考えますが、予算や決算をチェックすべき立場の議員でも公表されている資料では税収や基金などの数値はわかりません。そこで提案します。
収支の状況などの説明責任をはたすため、支出だけでなく、超過課税収入も直接特別会計に入れ、他の会計と明確に区分して超過課税を経理すべきだと思うがどうか?