第304回定例会(2月)討論
2010年3月18日(木)
第1号議案(平成22年度兵庫県一般会計予算)~第53号議案(公の施設の指定管理者の指定)について
私は、民主党・県民連合議員団を代表して、ただいま上程中の平成22年度当初予算、関連条例及び事件決議に係る第1号議案ないし第53号議案に対し、賛同する立場から討論を行います。
我が国経済は、ようやく底を打ち、輸出や生産に持ち直しの兆しが見られるものの、経済活動の水準は依然として低く、デフレや円高などにより経済の先行きは不透明感があり、内需の低迷を背景に、解雇や希望退職などの雇用調整が続いています。とりわけ今春卒業予定の高校生・大学生の就職率は、バブル崩壊後の就職氷河期の再来と言われるほど厳しい状況が続いており、若年者の就職率低下は、新たなニート・フリーターを生み出し、我が国経済、そして本県経済の停滞や少子化に拍車を掛けるという悪循環に陥りかねない事態となっています。
このような失業不安に加え、生活保護世帯の増加、所得水準の低下が続いており、その影響が医療・福祉をはじめ国民、県民生活の隅々にまで波及していくのではないかと危惧します。
我が会派では、こうした厳しい経済・雇用情勢、少子高齢化の進行と人口減少社会の到来を踏まえつつ、今定例会に提案された各議案に対し、本会議、予算特別委員会等を通じ、慎重に審議を重ねてきました。
これに先立ち、昨年11月には、平成22年度当初予算編成に対して、8つのテーマ計81項目にわたる申し入れを行いましたが、このような我が会派の主張や活動方針をもとに、以下、当初予算案などに対し、県民の目線、県民の立場に立って、意見を述べたいと思います。
まず、「真の分権型社会の構築と県民の参画と協働の推進」の中から、「行財政構造改革の推進」についてであります。
厳しい財政環境の中、「新行革プラン」に基づき「選択と集中」によって編成された予算案は、来年度の要調整額50億円の解消とともに、収支不足額の縮小が見込まれるなど、一定の改善も見られます。
しかし、これは地方税の大幅な減収への対応と、新たに地域の実情に配慮した雇用対策・地域資源活用臨時特例費が創設されるなど、国の地方交付税等の見直しによる一般財源の増額を主な要因とするものであり、法人関係税、個人県民税をはじめ県税収入の落ち込みは続き、さらに、多額の県債残高とその利子負担が、本県の財政運営を一層厳しいものとしています。
来年度は、新行革プラン3年目の総点検の年にあたりますが、事務事業では、老人医療費や乳幼児等医療費などの福祉医療の見直しによる県民への影響、また、投資事業については、必要性・緊急性など優先順位の明確化や、費用対効果など十分な検証が必要です。とりわけ但馬空港については、平成20年度に利用者数、搭乗率が過去最高を記録するなど、利用促進に向けた積極的な取り組みには一定の評価をいたしますが、今後の補助のあり方、必要性を改めて検証していく必要があるのではないかと考えます。
また、職員の給与については、新行革プランに基づく減額措置に加え、人事委員会勧告に基づき、過去最大となる期末・勤勉手当の引き下げ等の改定が行われましたが、定員削減の中でのさらなる給与削減には限界も予想されることから、果たして職員のモチベーションが保てるのか、大いに懸念を抱くとともに、将来にわたっての十分な検証・対策も必要と考えます。
我が会派は、新行革プランの作成に当たり、県民の生命と生活に直結する医療・福祉、教育・治安等については、極力、行革の対象とすべきではなく、「選択と集中」によってメリハリのある改革を行うとともに、県民誰もが納得できる社会的に弱い立場にある方々に光を当てた公平感のある改革に取り組むよう繰り返し主張してきたところであり、改革の対象となった各分野において、残された課題は少なくないと考えます。
新行革プランについては、厳しい社会経済情勢の中ではありますが、3年目の検証において、県民・市町・関係団体等の声を十分に反映し、県民の理解を得て、県民の視点に立った県民本位の総点検に取り組むべきことを改めて主張いたします。
次に、「健康福祉社会の実現」については、安心こども基金や法人県民税超過課税を活用した待機児童対策の推進、小児細菌性髄膜炎予防接種への支援など、財源確保の工夫とともに少子対策・子育て支援への前向きな取り組みが窺える点で評価をいたします。
しかし、この分野においては、児童虐待防止対策、恒常的な医師不足の解消に向けた積極的な取り組み、検診受診率の向上などがん対策の一層の推進、新たな感染症への対応、さらに、良質な介護を実現するためのマンパワーの養成や介護サービス基盤の充実、高齢者、障がい者福祉の充実に向けた取り組みなど、我が会派があらゆる機会を捉えて指摘してきた課題が山積しており、より一層の積極的かつ効果的な施策展開が求められています。
次に、「産業の活性化、雇用対策の充実」については、基金を活用した経済・雇用の早期回復に向けた各種の緊急対策を打ち出されていますが、地域の活力を取り戻すためには、このような緊急的な雇用就業対策だけではなく、中長期的な視点で継続的かつ安定的な雇用確保対策の強化とともに、ニート・引きこもりなど何らかの問題を抱えた若者も含め若年者全体に目を向けた施策を加速することが必要です。
さらに、現下の厳しい状況から一日も早く脱却するため、中小企業へのさらなる支援や、新たな成長分野である農業・環境分野などグリーン産業への積極的な支援を求めます。
次に、「新たな兵庫教育の推進」については、今定例会に「ひょうご教育創造プラン」策定後、最初の予算が提案されましたが、我が会派では、兵庫の教育をより前進させるため、プランの策定と実施に当たっては、教職員が子どもと向き合う環境をつくり、子どもを中心に据えた教育を実現するための実効ある施策、さらに教え込むのではなく、子どもの心を大切にした考え育む教育の実践など、繰り返しその充実と実効ある施策展開を求めてきた経緯があります。
ひょうごの未来を担う子どもたちを健やかにたくましく育むため、学校・地域・家庭がそれぞれの役割分担を明確にした上で、参画と協働のもと、少人数学級の着実な拡充などにより、基礎・基本の学力の確実な定着や、一人ひとりの個性が生かされる教育、さらに、情報・環境・福祉・人権・多文化共生など時代の要請に対応し、大震災を乗り越えた兵庫ならではの教育の推進に、さらに前向きに取り組み、「ひょうご教育創造プラン」を実効あるものとしていかなければなりません。
このほか、「環境適合型社会の実現」、「活力ある農山漁村づくりの推進」、「快適に暮らす社会環境づくりの推進」、「芸術文化・スポーツの振興」、「県民が安全で安心して暮らせる治安体制の充実と危機管理」などについても、重要課題として、着実かつ強力な取り組みを期待するとともに、昨今、米政策や総合的な交通政策、自殺対策をはじめ一部局だけの取り組みでは対応が困難な課題が多岐にわたっており、このような行政課題については、部局の枠を超えた全庁横断的な組織の設置とともに、施策の調整機能を一層強化すべきであることを申し上げておきたいと思います。
以上、来年度当初予算案に対する評価、より一層の取り組みが求められる重要な県政課題等について述べてきましたが、上程された予算案等の議案については、かつてない厳しい財政環境の中、現下の経済・雇用情勢や、少子化をはじめ本県の実態を踏まえた不可欠な事業を選択し、重点的に実施するために必要な額を確保したものであり、県政を取り巻く重要課題に対し、その解決と推進への努力が窺える予算となっている点で、評価をいたします。
しかし、前述したとおり、我が会派が、申し入れ、本会議など、あらゆる機会を通じて指摘してきた事項、そして新行革プランの対象となった各分野には、さらなる取り組みが必要な分野や精査すべき課題も少なからず残っています。
本定例会開会日に行われた提案説明において、知事は、「兵庫県が信頼される地方政府として十分な力を発揮できるよう、新行革プランの確実な実効とフォローアップを行い、持続可能な行財政構造の確立をめざす」と述べられました。
今回の行革は、決して失敗は許されるものではなく、県民・議会と一体となって取り組まなければ、改革は達成し得ないと考えます。その意味でも、新年度に予定されている新行革プランの総点検は、改革の成否を左右すると言っても過言ではありません。
知事におかれては、今後とも、県民の声を真摯に受け止め、新行革プラン全体が実効あるものとなるよう最大限配慮されるとともに、政府が地域主権を第一に掲げるこの機を逃さず、分権改革を加速し、「ふるさと兵庫の再生」に向けた強力なリーダーシップを発揮されることを強く要望いたします。
最後に、我が民主党・県民連合議員団は、「県民の生活が第一」と位置づけ、安全に安心して暮らすことのできる元気な兵庫づくりに全力で取り組む決意であることを表明いたしまして、討論を終わります。
ご静聴ありがとうございました。