議会の動き

岸口実議員が一般質問を実施

第311回定例会(12月)一般質問
2011年12月9日(金)

1 国家危機管理国際都市構想(NEMIC構想)と関西復権・兵庫の発展について

 質問の第1は、「国家危機管理国際都市構想(NEMIC構想)と関西の復権・兵庫の発展について」であります。
 本年6月定例会において、高橋しんご議員、石井健一郎議員のお二方より首都機能バックアップ構想についての質問が続きました。これらの質問に対し知事からは、関西広域連合による「首都機能バックアップ構造の構築に関する提言」をもとに、既存の施設、機能が充実する関西こそが最適な都市圏であることや、首都機能継続計画の策定や実践訓練によって時間と費用をかけずに国家危機管理体制が構築可能であるとし、関係府県や経済界とも連携し国へ働きかけたいとの旨のご答弁がありました。

 私も関西こそが首都機能をバックアップできる最適地との考えに大いに賛同するところですが、より期待したいのは、有事の際の危機管理の場のみならず、これを契機に東京一極集中から脱却した平時からの関西の復権と兵庫の発展です。

 そこで注目をしたいのが、「国家危機管理国際都市構想(NEMIC構想)」です。平成15年12月定例会でわが会派の石井秀武議員が取り上げましたが今一度質問したいと思います。
 今年8月にJリサーチ出版より国家危機管理国際都市建設推進検証チームが編集した『副首都建設が日本を救う』が出版されましたが、NEMIC構想は首都機能をバックアップするとともに、関西をアジアのビジネスと観光のゲートウェイとなることを目指し、危機管理中枢部を備えた行政・国際ゾーンはじめ次世代住環境、都市物流、国際ビジネス、コンベンション、セントラルパーク、メディカル、ダウンタウンなど約500haの敷地に8つのゾーンを備えた人口20万人の都市を建設するものでカジノ建設についての言及もあります。

 いくつかの候補地に絞り込んだうえで、その優位性を比較していますが、土地の所有状況・交通アクセス整備状況などの条件が整う伊丹空港がその最適地として示されています。この伊丹空港前提とした場合の試算ですが、新都市建設整備にかかる事業費は4兆円とされ、そのうちJ-REITの活用などにより3兆円の民間資金導入を目論み、その経済効果は山田浩之京都大学名誉教授の試算によると7兆円にものぼると予測されています。

 またこの構想の歴史的意義について「1つは、首都圏のバックアップ機能を完成させること。2つは、アジアにおける都市開発の目玉として日本の更なる発展に大きく寄与すること。3つは、関西経済の復興、即ち双眼的な国家構造の樹立である。」と記されています。

日本社会を東京圏と関西圏の二眼レフ構造に変えることはまさに歴史的意義のある国家プロジェクトであり、東日本大震災に見られた国家の脆弱性の補完に加え、関西の復権に多大なプラス効果が生まれます。残念ながら関西広域連合での取り組みでは有事の際の首都機能のバックアップ構造の構築はできますが、それだけでは関西の復権と兵庫の発展に繋がりません。

 伊丹空港が最適地かどうかの議論は次回にしますが、NEMIC構想が兵庫の発展に資するものにしなければなりませんし、大阪都構想を強力に推進する新大阪府知事・新大阪市長の動きも目を離せません。

 このような中、国の平成23年度第3次補正予算に内閣官房及び国土交通省に官邸や首都機能のバックアップに関する検討を行うための調査費が計上され、副首都構想が動き出しはじめています。

 そこで、関西広域連合で取り組みを進める国家危機管理体制の構築に加え、NEMIC構想に云う双眼的な国家構造の樹立を目指した副首都を関西・兵庫の発展に資するように積極的に誘致すべきと考えますが、知事のご所見を伺います。

 最近は、少子・高齢化と人口減少、円高不況による産業の空洞化はじめ将来に明るい兆しを見出すことができないキーワードばかりです。未来に向かって心躍る構想が不可欠です。知事の期待膨らむ答弁を期待します。

2 災害応援時の市町間連携の強化について

 質問の第2は、「災害応援時の市町間連携の強化について」です。

 東日本大震災の発生直後の3月13日には、関西広域連合より被災県に対する支援について、構成する府県を割り当てたカウンターパート方式により行うことが表明されました。各府県が重複することなく、また偏ることなく迅速的に被災地支援を行うことが出来たことは大きな成果であります。また、先月16日には、これらの成果を踏まえ、同方式により関西広域連合と九州知事会との間で、地方ブロック間で全国初となる災害時相互応援協定が締結されました。これからも引き続き、連合長としての知事のリーダーシップによりこれらの取り組みが全国に発信され、浸透していくことを期待しています。

 本県では、大規模災害が発生した場合、県と県内市町による応援活動を迅速かつ円滑に実施するために、平成18年11月に県と県下すべての市町による「兵庫県及び市町相互間の災害時応援協定」が結ばれ、応急対策及び応急復旧に必要な資機材、物資、職員の提供・派遣などの応援内容や経費の負担、平時の活動などの項目が盛り込まれています。

平成21年の台風第9号による災害発生時には、この協定にもとづいて、県・市・町職員の派遣をはじめ様々な支援が行われました。後日、災害検証委員会によりまとめられた報告書によれば、平常時からの防災訓練や各種行事における県と陸上自衛隊との「顔の見える」関係や、県内市町や民間団体等による支援体制などがそれぞれ円滑に構築されていたことが、有効な対応に結びついたとする一方、市町合併により情報収集を行う手段が少なくなってきていることや、応援協定の規定では費用負担は原則、被応援市町が負担すると定めているが、実際には被応援市町の状況を考慮し、応援市町が負担しており、応援協定の規定と現実との間に齟齬が生じたことなどが指摘されています。

ただ、応援市町の担当者は、「費用の負担は災害と言うこともありお互い様であったことや、要した費用も少なかったことから市の負担が可能。阪神淡路大震災を経験した職員が少なくなっており、派遣により災害現場を経験することは貴重な財産。」と言われており、費用の負担よりも応援活動に係る人材の育成、ノウハウの蓄積のほうが重要な活動となっていることがわかります。

 一方、東日本大震災支援でも見られましたが、市町間の個別の応援協定などにより支援を行ったケースもありました。私の地元明石市では、大阪府八尾市との間で、また特例市36市との間で災害時応援協定が結ばれるなどそれぞれ市町の独自の取り組みも併せて進められています。それぞれの取り組みを否定するものではありませんが、地域的な偏在が生じないような仕組みが必要であります。平常時から地域の道路、施設の所在など特性を少しでも知っておくことが支援の質の向上につながります。

 「顔の見える」関係をベースとした連携を高めていくために、県民局の呼びかけにより管内の市町の防災担当者が集まり、研修や情報交換を行っているとは聞いていますが、市町職員の人事交流を進めていくなど圏域を超えた市町間の結びつきを強くしていくことも必要ではないでしょうか。また、その次のステップとして、関西広域連合内の府県を超えた市町村間の連携強化を計画的に図っていくことも重要です。

 そこで、県内の市町間の連携強化に向けて、県の果たすべき役割をどのように認識されているのか、今後の取り組みの方向性とともに、ご所見をお伺いします。

3 こども家庭センター機能の充実・強化について

 質問の第3は、「こども家庭センター機能の充実・強化について」です。
 NHKで「やさしい花」というドラマ番組が放映されました。ある日シングルマザーが育児ストレスから我が子に虐待を始めてしまい、近隣の住人や社会がどのようにこの親子と係わるのかを問いかけた番組です。自称育メン中の1 人の親として思わず見入ってしまいました。
 特にストレスの多い生活環境の中で子育てをされている方々にしてみれば、「早く寝なさいと言っても寝ない。食べなさいと言っても食べない。ゲームをやめなさいと言ってもやめない。」というような、ごく当たり前の日々の育児の中で、仕事のストレスや経済的不安などいくつかの条件が重なれば、つい子どもに対して声が大きくなってしまうことや、「明日、わが子に虐待を始めてしまうかも知れない。」と思うことは、程度の差こそあれ、誰にでもあるのではないでしょうか。
 昨年、全国の児童相談所が対応した児童虐待件数は5万件を超え、虐待件数はここ20年で50倍を越えています。一昨年の死亡事例は約50件で、1週間に1人の割合で子どもが命を落としています。県のこども家庭センターに寄せられた児童虐待に関する相談は過去最高の1,688件となり、姫路市で発生した2歳の男の子に対する虐待事件は記憶に新しいところです。ドラマの虐待は1時間で終わりますが、実際の虐待には終わりがありません。それだけに虐待の防止はもとより、早期発見、早期対応の充実が求められます。

 児童虐待を受けた若しくは受けたと思われる子どもたちの安全確保などのために、保護者などと分離する必要がある場合には、児童福祉法に基づき、一時保護が行われます。中央こども家庭センターに設置されている40人定員の県の一時保護所には、昨年度1日あたり28.5人の計415人が保護されました。その内訳は、中央こども家庭センターが8.1人、同じく西宮10.0人、川西6.4人、姫路3.9人、豊岡0.1人となっており阪神間へのニーズの偏在が見られます。確かに昨年度の実績を見ると定員に余裕がありますが、甚大な不適応障害を起こす子どもを保護した場合、複数の職員による特別な支援が必要となり他の子どもを保護することが出来ないとも聞きます。

また他府県の県所管分の設置状況をみると、10万人あたりの定員は、京都府の3.79人、神奈川県の2.28人、千葉県の1.90人に対して、本県は0,99人に留まっているなどの一時保護所の課題が浮かんできます。

 次に一時保護所での受け入れが困難な場合は、児童養護施設や乳児院、警察などの機関へ一時保護の委託が行われますが、昨年度は355人で、一昨年度の229人と比べて急増しています。中でも児童養護施設、乳児院への委託は前年より倍増しています。

 県の一時保護所は、平成5年度に中央こども家庭センターへ統合され、機能強化・専門職員の資質の向上が図られましたが、先に述べたとおり、近年、虐待相談の増加と相まって、一時保護、児童養護施設等への一時保護委託が急増しているもかかわらず一時保護所が県下1カ所であるが故に、一時保護所に頻繁に出向き子どもとの面接を重ねていかなければならないセンターの職員にとっては、時間的なロスや肉体的な負担も少なくないと聞きます。

 そこで、児童虐待相談が増加の一途をたどり、重篤なケースが後を絶たない今日において、虐待された子どものセーフティネットであり、非行少年なども含め今後の支援を決定する上で不可欠な行動観察などを行う極めて重要な場所である一時保護所の県の現状についての認識と、県下複数配置や定員の増加も見据えた、今後の一時保護所のあり方について知事のご所見をお伺いします。

4 高校の新規学卒者の就職率向上に向けた取組について

 質問の第4は、「高校の新規学卒者の就職率向上に向けた取組について」です。
 東日本大震災や景気の低迷によって職を失った方々はじめ、高齢者、中高年者・若年者、障がい者とそれぞれの立場に応じた雇用対策は県政の重要課題であります。その中で、今回は卒業を控えた高校の新規学卒者の就職についてお尋ねします。

 高校の新規学卒者の就職率の状況は、景気の回復とともに平成16年3月の94.5%から上昇を続け、平成20年3月の99.1%をピークに、平成23年3月には96.1%へと低下しています。求人数の推移も同様となっており、平成16年3月は6,576人から上昇を続け、平成20年3月の11,353人をピークに、23年3月には6,624人へと半数近くにまで減少しています。しかしながら、求人数が激減したとはいえ、平成23年3月の就職希望者数は5,527人で、求人倍率は1.0倍を割っておらず、求人企業とのミスマッチの解消に向けた取り組みを進めることにより、就職率の向上を図ることは可能です。

 このミスマッチは、大学の新規学卒者にも見られます。平成24年3月の大学・大学院卒業予定者の求人倍率は、従業員1,000人以上の企業で0.65倍に対し、1000人未満の企業で1.86倍となっており、中小企業が新卒労働市場で苦戦していることが窺えます。

 先日、日本経済新聞に奥平寛子岡山大学准教授による、大学生の就職活動を中心とした「新卒採用問題解決の方法」と題したコラムが7回にわたって、掲載されていました。
 新卒採用市場は一般的に、一定のタイミングで求職者が市場にあふれ出す市場の「混雑」という性質を持つことから、雇用主は、他の雇用主たちも同時に採用活動をしていることを気にせざるを得ず、他の雇用主よりも少しだけ内定を出す時期を早めたり、本当に雇いたいとする候補者は他の雇用主からも内定をもらっている可能性が高いと考えられることから、いわゆる「安全パイ」の候補者に内定を出すなど、より多くの優秀な人材を獲得したいというインセンティブを雇用主に与えるとしています。

 また、雇用主にとって、内定を出した学生が受理するかどうかを検討する時間は、大きな損失となりえること、また、候補者にとって、雇用主から内定受理を迫られることは、他の雇用主の下で働く選択肢を検討できず、市場の「厚み」を失うと述べられています。そこでこの市場の「混雑」と「厚み」の弊害を解消させる仕組みとして2つの提案がされています。

 1つは、米国の研修医の新卒採用で成功し、7年前から日本の臨床研修医採用でも導入されている「集権的マッチング制度」で、雇用主と求職者の希望を第三者が調整する仕組みです。病院は受け入れたい学生の順位を、学生は働きたい病院の順位をそれぞれリスト化し、それをもとに第三者が内定するまでマッチングを繰り返すもので、これにより市場の「混雑」は解消できるとしています。

 そしてもう1つは、米国の経済学博士号取得予定者の採用で利用されている「スクランブル」と呼ばれる敗者復活戦をお膳立てする方法であります。3月のある時期までに内定を得られていない候補者と適任者が見つからず採用選考を続ける研究機関は、米国経済学会のサイト上への登録を行い、その後互いに情報公開し、研究機関は興味ある候補者に直接連絡を取る方法です。これにより市場での選択肢を豊富にするという意味で市場の「厚み」が保たれるとしています。

 就職を希望する高校の新規学卒者が、社会への第一歩である就職活動で躓くことは、ニート、フリーター、ワーキングプアなどさまざまな社会問題につながっていきます。このことは単なる労働問題に止まらず、晩婚化、未婚化、少子化、所得格差と教育格差、労働意欲、年金制度、治安など社会全体に負の連鎖をもたらすこととなり、その影響は計り知れません。

 一方、中小企業にとっても、新卒者の確保は経営を左右させる重要事項であることから、求人にかかるコスト圧縮と長期化は避けたいのが本音ではないでしょうか。
 そこで、先の方式を踏まえ、県が積極的にマッチングにかかわることが重要であると考えますが、高校の新規学卒者の就職率の向上に向けて、求人企業と就職希望者のミスマッチの解消について、今後どのように取り組んでいくのか、ご所見をお伺いします。

5 東日本大震災で発生した災害廃棄物の受け入れについて

 質問の第5は、「東日本大震災で発生した災害廃棄物の受け入れについて」です。

 東日本大震災の本格的復興に向けた12兆1千億円規模の国の第3次補正予算が成立しました。この中には放射能汚染への懸念から難航する災害廃棄物の処理について、災害廃棄物処理事業費3,860億円が盛り込まれたことや、野田総理自ら全国都道府県知事会議の場で「政府としても安全対策に万全を期すので協力をお願いしたい。」と災害廃棄物の受け入れに言及したことから、本格的な処理が進むことが期待されます。

井戸知事におかれても、いち早く関西広域連合での災害廃棄物の受け入れを表明されたことは、一人の県民としてうれしく思います。

 東日本大震災により岩手・宮城・福島の3県から通常排出される廃棄物の数十年分とされる約2,300万tもの災害廃棄物が発生し、その内約1,500万tは仮置き場へ搬入されたものの焼却・埋立などの処理が進んでいません。国では福島県で発生したものは県内で、また岩手・宮城県で発生したもののうち県内での処理能力不足により処理できないものについては県外で広域処理し、平成26年度末までに終えるとしています。

 国が全国の各自治体などに対し広域処理を進めるために4月に実施した調査では、42都道府県の572市町村・一部事務組合などで処理を受け入れる意向があるとされました。また県下では34市・町・事務組合が受け入れ可能と回答していましたが、放射性物質に対する不安などから、10月には受け入れを検討しているのはゼロとなりました。10月の調査では「既に受け入れを実施しているか」や「受け入れに向けた職員派遣や具体的検討が行われているか」または「受け入れにむけた検討を行っているか」について尋ねたものであり、照会方法にも不備があったとはいえ、残念な結果です。

 知事も10月の定例記者会見で、災害廃棄物の受け入れについて「がれきの放射能汚染について、国の指導基準やガイドラインで明瞭にされていない」ことや「客観的科学情報も意外と十分に伝わっていない」ことなどの問題点を指摘され、「客観的科学情報も踏まえたうえで、不安のない形で受け入れて行くべき」であることや、「やみくもに何でも受け入れればいいということではない」との見解を表明されていました。さらに、追い討ちを掛けるように、処分の受け入れを検討していた、大阪湾フェニックス処分場における受け入れについても、埋め立て時の海水との接触により、汚染の恐れがあるとの報道がありました。

 今のところ東北地方以外で唯一受け入れを行っている東京都は、一昨日から試験焼却が始まりましたが、平成25年度までの3カ年で、50万tの木くず等の可燃性廃棄物、廃畳、混合廃棄物、焼却灰を処理するとしており、その基準は「東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライン(環境省平成23年8月11日)」によるとしています。災害廃棄物の受け入れを表明以降、東京都には多くの反対や苦情の声が寄せられていますが、ホームページで搬出先の放射能測定調査の結果などについて公開し、日々更新を行っています。

 お隣の大阪府でも、放射線による人体や環境への影響がないよう、災害廃棄物の処理指針の策定に向けた検討会議を9月より実施しています。一昨日に開催された検討会議では、参加者による不規則発言により会議は途中で打ち切られましたが、年内に指針を取りまとめる予定は変えないとのことであります。

 東日本大震災での災害廃棄物の受け入れを進めていくことは復興支援にもつながります。またその処理にあたっては、県や広域連合での広域処理は不可欠です。
 受け入れにあたっては、県民の十分な理解を得ることが必要であり、その判断のための前提となる災害廃棄物に対する現状の課題を、県民と共有しなければなりません。

 このような中、国は先月18日に岩手県、宮城県で発生した災害廃棄物の広域処理の安全性に関するガイドラインを改定しました。
 そこで、県としても災害廃棄物の受け入れに向けて研究・検討していく必要があると考えますが、現状の課題認識とともに、今後の方向性について、知事のご所見をお伺いします。