議会の動き

上野英一議員が質問(予算審査・総括審査)を実施

第308回2月定例会 予算特別委員会質問(総括審査)
2012年3月14日(水)

1 選択と集中による県政の推進について

(1) 施策の「選択と集中」と財源対策について

24年度予算案を新聞社は「にじむ苦心の井戸色」と評していますが、厳しい財政状況の中で、21世紀長期ビジョンのもと、少子高齢社会福祉ビジョン、ひょうご経済・雇用活性化プログラム、ひょうご農林水産ビジョン2020など各分野の推進施策を展開され、さらに東海・東南海・南海地震等への備え、総合的な治水対策の推進や災害に強い森づくりなど防災・減災対策を盛り込んだまさしく「にじむ苦心の労作」と私も考えています。

知事は、今県議会等においても、第2次行革プランの着実な推進を基本に「選択と集中」を徹底し、県民ニーズに的確に応える施策を重点的に展開するとともに、行財政全般にわたる改革の推進をゼロベースから行った旨述べておられました。

一般会計の予算規模が、前年度の94.7%、1,125億円下回る2兆160億円の規模となり、事務事業も新規事業との差し引きで132事業減とした、まさに「スクラップ・スクラップ&ビルド」予算であるということが伺えます。

知事の説明によりますと、中小企業融資貸付金の23年度分が計画よりも減少したことと、公社等貸付金を自前で公社債を調達してもらうことにより、中小企業制度融資貸付金が対前年度比501億円の減、公社等貸付金が対前年度比351億円の減となったことが大きく、さらに定員の削減や給与の見直し、退職手当の減などにより人件費は対前年度比156億円の減等々によるとされています。

また、県税と地方交付税などを合わせた歳入の一般財源総額は前年度から17億円増加する一方、公債費や社会保障関係費の増に伴って収支不足額がなお780億円に至っていることに対しては、退職手当債や行革推進債の発行と県債管理基金の活用で対応を図る一方、県債発行の平準化のため借換債の発行、これはその借換え全体は変えないにしても23~26年度間において従来の借換え率を大きく変更するなど、県債の償還・管理面においても、財政運営の(老獪)テクニックを駆使されて乗切ろうとされています。

一方、次世代に負担を残す県債に関しては、前年度を26億円下回る1,401億円の計上に止まったものの、県債残高は臨時財政対策債分のウェイトが大きいとはいえ、過去最高の3兆8,923億円となっています。

財政状況審査の際に我が会派の山本委員の質問によって明らかにされたように、県債残高に対する金融機関への利子負担見込みが年間約811億円超に及んでいる状況は、今後の市場金利の動向によってリスク管理が厳しくなることも予想され、山本委員の伊丹市の予算規模は660億円で、またその後の新聞報道では、加古川市の一般会計予算規模に匹敵するとのことで、やはり適切な対応が必要と考えます。

そこで、平成24年度予算編成にあたり、どのような基準で施策・事業の「選択と集中」を行われ、その結果としてどの程度の財政効果を見込まれたのか、併せて、起債に出来るだけ頼らない財源確保の必要性をどのように認識しておられ、どのように取り組もうとされるのか知事の所見を伺います。

(2) 但馬空港の見直しに向けた議論について

これまで、財政収支見込・フレームを巡り、とりわけ経済成長率や税収の見込みが甘いのではないか、あるいは国による緊急経済雇用対策や人事院勧告、医療費報酬改定等々の条件変更などによるフレームの対応をその都度各議員が説明を求めてきました。

それらを聞いておりまして今私が思っていますことは、いかにフレームの前提条件が変わろうと平成30年度には実質公債費比率18%水準、将来負担比率(震災影響を除く)250%水準、県債管理基金積立不足率 平成19年度の2/3水準等々の財政運営の目標は、確実に達成するとの当局の強い自信を感じています。

ならば、増え続ける社会保障関係費などの行政需要を行う財源をいかに確保するのかということです。一つには、定員削減(3割)による総額人件費の削減、これは3年間で既に15%の達成、二つに消耗品や印刷費などの事務費の見直し、これらも多くが既に見直されたと考えます。残るは事業において知事のおっしゃるスクラップ・スクラップ&ビルドです。

県土整備部の部局審査の際に我が会派の岸口委員が言いましたが、本当に但馬空港は但馬地域の振興においてその役目を果たしているかどうかということです。但馬地域の振興を考えたときに、城崎温泉、湯村温泉をはじめとする温泉、山陰海岸ジオパーク、とりわけ香住海岸は素晴らしいものだと思います。カニや但馬ビーフ、スキー場等々素晴らしい観光資源を持っています。その観光資源を活用、観光客に堪能してもらいゆっくりと泊ってもらうためには車のドライブ、汽車、あるいは自転車等の旅があるかと思います。

但馬空港には、空港管理費、運航対策費、空港公園維持修繕費併せて4億7千万円が投じられ、但馬空港推進協議会の運賃補助も入れれば莫大な金額と言えます。
一度真剣に但馬空港のあり方と方向性について検討する委員会設置等が必要な時期に来ているのではないかと考えますがご所見をお伺いします。

2 命をまもる県政の推進について

安全・安心の基盤をつくる県政の推進にあって、何よりも大切に考えなければならないのは命を大切にする・命を守る取り組みではないでしょうか。
その施策の代表例として、今回、我が会派としては、自殺抑制対策と併せて、動物愛護に向けた取り組みを伺いたいと思います。

すなわち、人においてその命が大切なように、動物の命についてもその尊厳を守ることが大切で、人と動物とは生命的に連続した存在であり、生きとし生けるものを大切にする心構えのもと、施策に反映させることが欠かせないとの考えを基本に据えて質問に入ります。

(1) 自殺抑制対策の一層の推進について

昨年の決算特別委員会総括質問や今回の部局審査で我が会派の藤井委員が質
問してきましたが、「県民のいのちを守る」取り組みは「県民の安全・安心の基盤づくり」に繋がる最重要課題であるという観点から自殺対策の一層の推進に向けた質問をいたします。
ご承知のように、全国の自殺者数が平成23年に30,651人であり、平成22年版厚生労働白書によると先進7か国の中では、我が国の自殺率は最も高く、15歳から34歳までの若い世代の死因で自殺がトップなのは我が国のみです。

(部局審査でも藤井委員が申し上げましたが)本県の自殺者数は、平成9年から平成10年にかけて987人から1,452人へと約1.47倍に急増して以来、昨年まで1,300人前後で推移しています。

平成28年までの残り5年間で自殺死亡者数を1,000人以下にするという目標の達成向けて年次計画を立てたうえでいかに取り組むかが肝要です
厚生労働省の「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」によれば、自殺に至るには主に4つの要因が背景にあると言われ、国の統計でも自殺の原因として健康問題、経済・生活問題、勤務問題等の割合が高くなっていることからも、自殺対策はもとより一部局の取り組みのみで完結するものではありません。

また、うつ病など、精神衛生上の対策を中心とした取り組みだけでは、目標
達成は難しいのではないかと考えられ、部局横断的な取り組みに加えて、自殺抑制を県民運動として取り組むことが必要と考えます。

部局審査の際に、藤井委員が申し上げたように、例えば、交通安全対策委員会にあっては、各種団体も構成員として参加しており、ストップ・ザ交通事故県民運動の成果もあって、交通事故の死者が平成3年の489人から平成23年の198人に減少、ピーク時である昭和44年の740人からは4分の1になっているとのことです。

こうした効果を期待すべく県民運動を進めるためには、例えば、まず県内でモデル地区を指定したうえで県民参加のもとで県民運動推進会議を開催するといった方法も考えられます。
健康福祉部局審査の際に、久保部長から年次計画を含めた対応を行う旨積極的な答弁を頂いておりましたが、自殺抑制に向けた県民運動の果たす役割を改めてご認識いただくとともに、その具体化に向けた当局の決意について伺います。

(2) 動物愛護に向けた適切な取り組みについて

内閣府の調査によれば、全国の1/3の家庭で何らかのペットが飼われている現状にあり、飼い主との絆や癒しなどの面から見ても、まさに家族同然の存在といえます。

しかしながら、平成20年に全国の自治体に持ち込まれた動物の数は、犬・猫合わせて計315,107頭にも昇る中で、行政処分がなされたものはこれも合わせて、287,095頭にのぼる一方で、返還・譲渡された動物の数は、計42,161頭と、処分率が91パーセントにも及ぶ状況にあります。

しかしながら、部局審査の際に藤井委員が申し上げたが、熊本市動物愛護センターでは“殺処分ゼロ”の取組が行われています。

同センターは、性格の良い犬でさえ殺処分される現実に直面し、市民協働の観点から獣医師会、動物愛護団体、ペットショップや盲導犬使用者などを構成員として動物愛護推進協議会を設置し、市民協働による返還率を高める取り組みに加え、引き取ってもらえるよう、しつけ直しなどの取り組みにより劇的に殺処分数を減らした結果、平成5年度には1,794匹の犬を殺処分していたのが、平成21年度以降の生存率は9割を超えるに至りました。

本県動物愛護センターにおいて平成22年度に収容及び引き取りした犬と猫の合計頭数5,326頭のうち、殺処分となったのは約97%の5,145頭である実情と比較すれば、隔絶の差と言わざるを得ません。

平成20年3月に策定された本県の「動物愛護管理推進計画」には、「動物愛護の高揚は、人を含めた動物に対する生命尊重意識の高揚として県が取り組むべき重要課題」と位置づけられているにもかかわらず、動物愛護に関する予算、いわゆる『譲渡等生命を守る対策』に関連する予算が約14百万円であるのに対して、『動物処分業務』に関わる予算は、その2倍以上の29百万円で殺処分に重点が置かれているかを物語っています。

この予算を見る限り、動物愛護推進計画の趣旨が活かされていないと断ぜざるを得ません。
こうした実情を打開し、推進計画の平成25年度見直しに向け、本県においても、せめて生存率を5割に高める具体的な取り組みが必要ではないかと思います。

そのためにまずやらなければならないことは、飼い主を探すことのできる期間を熊本のように10日~2週間程度に延長したうえ、その期間内に集中的かつ広範的にケーブルテレビやウェブサイト、新聞、学校等において迷い犬・猫等の情報発信を徹底することとあわせ、その間に動物が待機しておけるよう、現在1センターあたり5~6頭に過ぎない動物愛護センターの保管・収容能力(キャパシティ)を熊本並みの60頭分へと大幅に拡充する取り組みが必要であります。これは現在の敷地面積でも充分可能なことと考えられます。

そこで、「動物愛護推進計画」にある生命尊重意識の高揚に向け、その実効性を上げる取り組みをどのように進めていかれるのか、当局の所見を伺います。

3 地域における多文化共生社会の実現について

人口減少時代を迎え、また経済のグローバル化によって人の国際移動がさらに活発化すること等を考えると、外国人住民にかかわる課題は、近い将来において大きな社会的課題になっていくものと考えられます。

本県でも、「国際交流」を柱として地域の国際化を推進してきたが、地域社会の変化を勘案した場合には、「多文化共生」今後の大きな柱として、推し進めていくことが必要になると考えます。

総務省が2005年に設置した「多文化共生の推進に関する研究会」では、地方自治体が地域における多文化共生を推進する上での課題と今後必要な取組について、「コミュニケーション支援」、「生活支援」および「多文化共生の地域づくり」の3つの観点から検討され、検討結果として「多文化共生推進プログラム」が作成されました。

中でも、産業労働部の審査において、我が会派の山本議員が質問した医療通訳システムの導入は、地域住民の生活・命に関わる問題として、特に重視すべきと考えられます。

すなわち、外国にルーツをもつ日本語の理解が不十分な住民は、日本語を習得するまでの間、病気になっても言葉の壁により十分な医療サービスを受けられない場合も多く、特に集住地域はあまりない一方で、外国人の数は決して少なくない本県では、細かな言語的ニーズを意識した医療通訳システムを確立し、県内広域で展開していくことが求められます。
神奈川県では、2002年から医療通訳システムのモデル事業を実施し、助成終了後には、各関連機関の協働でシステム継続が出来ています。

この神奈川県のように、システム運営に係る経費を多様な機関が分け合う形は、兵庫県でも参考にできる形ではないかと思われますし、申し上げてきた多文化共生社会の実現に向けた大きな一歩になり得ます。

外国人住民も、日本国民と同じ地域住民の一員であることの認識のもと、地域社会の構成員として共に生きていくことができるよう、医療通訳システムを始め、多文化共生社会の実現に向けた県の認識と取り組みを伺います。

4 消費者サイドの視点に立ったひょうご農林水産ビジョン2020の推進について

部局審査の答弁では、「ひょうご農林水産ビジョン2020」の4つの基本方向に沿った施策として、農業分野では担い手育成を図るため新規就農者確保事業や、農業生産力の強化を図る野菜増産プロジェクト事業、ブランド化・6次産業化などに予算を重点配分しました。

また、農林水産ビジョン2020において、具体的・野心的目標を掲げた、産業としての力強い農林水産業の実現のためには、農畜産物の生産技術や農業経営に係る知識等をもって農家に直接接して指導する普及指導員の活動は、極めて重要であり、これまでにも具体的な成果を上げている旨の答弁をいただきました。それらはいわゆる生産サイドの取組であり、少しずつ成果が出ていることも理解します。

今回は、消費者サイドの観点から、6次産業化による流通販売のあり方、もっと言えば、生産者サイドの値段で消費者ニーズに沿ったおいしく安全な農産物を如何に効率的に生産・販売する仕組みを構築できないかという観点から質問します。

例えば、千葉県の農事組合法人和郷園と株式会社和郷、熊本県の農業生産法人都城園芸組合と有限会社新福青果、山口県の株式会社秋川牧園、株式会社大潟村あきたこまち生産者協会と私が視察を行ったところですが、地域の生産者と法人が資材の共同購入、栽培技術の修練や土壌・残留農薬調査、生産物の加工から販売までを行い、それらはまさしく6次産業化といえる取り組みでした。そしてそれらは、加工・販売の部分が非常にしっかりしている点がポイントです。

そこで、県として「ひょうご農林水産ビジョン2020」の取り組みの中で、消費者サイドと生産サイドをつなぐ施策をどのように展開されるのか、特に消費者の理解や信頼を得るためにも、申し上げたような、生産者組合と法人との連携による生産・加工・販売の一体化に如何に取り組んで行かれるのか伺います。

5 総合的な治水対策の全県展開について

総合治水条例に対して、私は高く評価をするだけでなく大きな期待を持っています。
部局審査では、条例制定を踏まえ、第8条に絞って今後の河川整備予算の確保を含めどのように進めていくのかお尋ねしました。

それに対して、下流からの改修に時間を要することから下流流下能力見合いの改修や巻堤による堤防補強などの河川整備を行うとともに、条例をよりどころとして市町、県民等と一体となって、流域での貯留、遊水機能の維持などの流域対策、二線堤・輪中堤の設置、建物等の耐水化、防災情報を活用した避難の確保などの減災対策を推進することにより、河川整備と相まって、地域の安全度を向上させるとの答弁をいただきました。

総合治水条例は本当に素晴らしい内容で、県民、開発者、県・市町のそれぞれの義務と役割を定め、河川・下水道対策として、河川整備、下水道整備により「ながす」、流域対策として、開発に伴う調整池の設置及び保全、雨水貯留浸透機能の付加及び維持、雨水貯留容量の確保、出水時における河川へのポンプ排水の抑制、土地の遊水機能の維持、森林整備による保水力の維持及び向上により「ためる」、減災対策として、浸水が想定される区域の指定、浸水による被害の発生に係る情報の伝達、浸水による被害の軽減に関する学習、浸水による被害の軽減のための体制の整備、訓練の実施、建物等への耐水機能の付加、二線堤、輪中堤等による集落の浸水による被害の防止、浸水による被害からの早期の生活再建への備え(共済、保険への加入)により「そなえる」、加えて、土地利用計画策定者・県民等と連携することにより、浸水時の被害を減らすとされています。

この素晴らしい哲学を、県民、開発者、県・市町がどのようにして、それぞれが義務と役割を認識して実効あるものにするかにかかっています。そこで、とりわけ県民や開発者に対してどのように周知徹底を図り理解を得ようとされているのかについてお尋ねします。

6 自転車事故の防止と安全・安心対策の推進について

自転車による交通事故は深刻化しており、警察庁によれば、平成23年の自転車が、当事者となった交通事故件数は、144,017件で、平成17年から減少傾向にあり、10年前の0.82倍となっておりますが、交通事故全体に占める割合は漸増傾向にあり、10年前の1.13倍と高い水準になっています。

同じことが県内でも言え、ここ数年、毎年8,400件程度の自転車関係事故が横ばい状態で発生しており、特に全人身交通事故が減少傾向で推移している反面、そのうちの自転車関係事故の占める割合が、増加傾向で推移するなど極めて憂慮される状況であります。

そのような現状の中、昨年、警察庁が発出した通達により、各都道府県警察では、自転車通行環境の確立や自転車利用者に対するルールの周知と安全教育の推進、指導取締りの強化について取り組んでいることと思います。

しかし、自転車が原則車道を通行しなければならなくなると「危険である」等の県民の意見を多く耳にするところであり、現在の自転車通行環境では、原則、車道通行を徹底することは困難と考えます。

県では、平成24年度と平成25年度の2カ年にわたる対策として、歩道や路肩のカラー舗装などによる自転車通行空間の確保と歩行者の安全対策を実施すると聞いています。

そこで、自転車事故の防止に向けた安全対策を推進するために、悪質な違反者に対する取締りはもちろんのこと、どのようにして歩行者や自転車の安全な通行空間を確保しようとしているのか、また、歩行者と自転車の分離対策や、自転車と自動車の分離対策を行う上で、規制の連続性を保たせるなど利用者に配慮した交通規制を行う必要もあると考えますが、道路管理者との連携も含め、県警としてのご所見を伺います。