会派の動き

更新 12.07.01ドイツにおける現地調査を実施

○ 調査概要

日  程:2012年7月1日(日)~7月8日(日)

参加人数:13名

参加議員: 岸口、石井(秀)、大塚、越田、迎山、

藤井、黒田、小池、石井(健)、池畑、盛、

三戸、前田

出発前、3回にわたり事前勉強会を実施。

●事前勉強会①(6月13日)

ドイツ領事館・黒田氏、名鉄観光・小柳氏を迎え、ドイツの政治経済状況・旅行事情などを説明いただき、視察先選定の参考とした。

●事前勉強会②(6月18日)

ドイツ総領事・アレクサンダーオルブリッヒ氏を迎え、エネルギー問題、連邦制度、少子化対策、移民政策など、ドイツの諸事情について意見交換を行った。また、アウグスブルグの調査先について助言を頂くとともに、調査先の紹介を了承いただいた。ドイツ領事館・黒田氏、国際交流課・森安課長も同席。

●最終打ち合わせ(6月25日)

最終行程及び調査先の概要について最終確認を行った。

7月1日(日)夜、フランクフルト空港に到着し、2日から6日の正味5日間で7か所の視察を行った。

縮小都市問題や地方分権、環境問題から動物保護など、多岐にわたる行政課題について、ドイツ側の関係施設を訪問し、施設長など責任者から説明を聞き、日本の現状と比較した質疑などを重ねた。

全体の所感としては、東西ドイツを分断していたベルリンの壁が崩壊して今年で既に22年になろうとしている今でも、長年に亘る分断による負の遺産は全てが解消されたわけではないこと、エネルギー政策は先手先手で新たな試みが積極的になされていること、国民性として公共の精神が至る所に深く根ざしていることなどがあげられる。

以下、各所における視察の報告を行う。

視察報告レポート

【視察先①】Stadt Frankfurt an der Oder(縮小都市政策について)
調査日時:7月2日(月)11:00~14:00
応対者等:市経済担当課長と市議
調査目的:人口減少、高齢化、単身世帯化が進む中、いち早く減築・移転政策を進めるフランクフルトの政策について学び、本県施策の参考とする。

フランクフルト・アン・デア・オーダー市議会議長のFritsch氏より説明を受ける。

縮小都市対策はドイツ統一が影響。工場移転や若者の旧西ドイツへの移動により、人口は8万人から6万人に減少、20年後には4.8万人と予想。一方で、高齢者が中心に回帰、理由は病院・交通など都市インフラ利便性。01年~10年で住宅数は4.1.→3.4万に減少し、今後も1万戸減少予定。

空き家率10パーセント以下が目標とし、20万ユーロの予算で取り壊し予算を計上。
減築&移転も進めているが、既存住民とのコンセンサスが難しく、高齢者は特にコミュニティ崩壊懸念で反対が多く、個々説明を通じて理解していただくしか無い状況。

要旨

・減築が受け入れられた要因は、ドイツ統合による急激な人口移転による社会情勢、国・州による積極的な財政支援、多くの住宅を2大公営・財団が保有という諸条件。

・水道・道路などの周辺インフラの廃棄や集団移転などのドラスティックな都市縮小は旧東ドイツ都市圏でも住民との合意形成から難しい。

・人口減という量的な変化はもちろんのこと、高齢化・単身世帯化という質的な変化により、求められる都市のあり方は変化する。

質疑

Q:壊すのは公共住宅のみか、移転交渉プロセスは?
A:公共財団と業界団体保有の住宅が中心。東ドイツでは一般的で、国保有と労働者住宅から移行。
移転反対理由は、既存住宅は家賃が安いが移転すると高くなるのと、コミュニティ維持である。

移転強制力は無く、個々の膝詰め説得しかない。係争もできるが本市では事例なし。引っ越し費用は住居者負担なしである。
Q:都市中心部への流入の要因は?
A:1000人以下の町は医療や買い物が難しく、利便性を求めて移転する。
Q:取り壊し後の跡地利用は?
A:水道などインフラ保持のためすぐには、利用できない。空き地のままで解決策はまだない

所感として、急激な人口減少に機敏に対応しようとしても既存住民の合意形成が難しくドラスティックな施策は困難であると再認識させられた。

今後、わが県においても将来の人口動態を見据えたまちづくり基本方針が打ち出されるなど、来るべき時代に即した施策の実施を行っていくわけだが、激変緩和やインフラ投資の重複を防ぐ観点からも、できる限り早期に問題点を洗い出し、具体的な取り組みへ移すことが重要であるとの考えを新たにした。

【視察先②】連邦参議院(連邦制度について)
調査日時:7月3日(火)11:45~13:15
応対者等:広報担当
調査目的:それぞれが主権を持った16州で構成され地方自治が根付いたドイツの連邦制度について、連邦参議院を訪問し、その果たす役割について調査する。

ドイツ連邦共和国は、16の州から構成される連邦国家であり、各州は単に法人格を持つ地方公共団体ではなく、それぞれが主権を持ち、独自の州憲法、州議会、州政府、州裁判所を持つ国家である。

ドイツでは、第二次世界大戦のナチス台頭による敗戦の反省から、国主導での政治に関して監視機能を強化するため州の代表者からなる参議院制度を採用しており、全ての連邦議会にかかる法案が、この参議院にて審議され、各州はその人口に応じて投票権を有すことで、国政への発言権を有している。

連邦議会にかかる全法案の約35%程度に関しては、州に深く関連する法案(例えば州の財政に関連するもの)であることから、州が反対すれば法案が通過しないような仕組みとなっている。他の約65%程度に関しては、州は法案に対する投票権がなく、審議過程においての要望レベルとなる。

州が投票権を有する法案審議に関しては、連邦政府から法案が提出された後、参議院にて審議される。具体的には、消費税の増税(今回は19%→21%アップ)などは、州の財政に関わるものであるので参議院の決議が必要な法案となり、州の金融委員会を中心に6週間を掛けて審議を行う。

参議院にて法案が通過した後、立法議会である国の連邦議会(国会)の審議に掛けられ通過すれば、その詳細が定まった法案を参議院にて最終審議するという過程を経る。

質疑

Q:州の行政側が代表者を選ぶ参議院の仕組みは、純然たる民主主義にはなっていないようにも映るが国民はどう捉えているのか?

A:州自体に小国家があるイメージであるので、州にて代表が決められ、その推薦によって参議院の代表が決められるため、間接民主主義と捉えている。

Q:世界で唯一の制度であるが制度疲労は起っていないのか?

A:ある。そのため連邦制改革を行っている。例えば、機動的な法案成立がなされないことから、参議院が審議する法案の割合(35%)が少し減ってきている。その代わりに州自体の法律を作る事が出来るなど比重を変えている。

Q:連邦政府に対する批判は無いのか?

A:連邦制のあり方を根本的に問うような議論はある。日本やフランスのような中央政府にすべきだという議論はある。福島の原子力問題の後に、ドイツでは原発全廃になったが、これは国全体の問題という事で、州は国に対して意見を言う機会を得る事が出来なかった。また、太陽光発電の政府支援に関しては、連邦政府として、過剰になっているとの認識から、支援を打ち切りたいという意見が出ているが、州はこれまで投資を重ねており、双方の議論がすれ違っている。多くの問題はクリアになるが、個々の問題に関しては、制度的な問題が出てきたりしている。これについては、州の再編を行ったりしながら、調整を図ろうとしている。

Q:地方(州)同士の対立は、どう解決しているのか?

A:各州が有している議席を有効に使っているので、さしたる対立は生まれていないイメージがある。

Q:州人口に対する参議院での投票数の差が存在している点については、どう捉えているのか?

A:人口の数を票に重ねてしまうと連邦制度自体が成立しなくなるので問題としての意識は無い。

本視察は地方自治体のあり方を見直すいい契機となった。9月議会において、この視察を踏まえて石井政調会長が‘日本の参議院がドイツの連邦参議院のようなシステムを採用し、参議院が国と地方の協議の場の役割を担えれば、分権改革がさらに進んでいくのではないかと確信している’と述べたように、この制度は地域の声を吸い上げるという意味では大変意義あるものと感じた。

『国の出先機関の受け皿の問題で、都道府県と市町村など、基礎自治体の間で意見の食い違いが出てきている。いずれ国と地方の協議の場の重要度が増せば増すほど、今後問題となってくると思われる。もっと公式に地方の意見を国の施策に反映させるシステムが必要となってくるのではないか』との有識者の指摘もあり、州政府の首長や大臣から構成されているドイツにおけるこの制度は各州政府の代表が連邦政府に各州の意思を伝え、政策に反映させるシステムを採用しているという点で、今後の国と地方のあり方に大いに参考となるものであった。

【視察先③】NPO法人「緑が学校をつくる」(学校緑化の取り組みについて)
調査日時:7月3日(火)10:00~11:00、14:30~15:00
応対者等:広報担当
調査目的:エコロジーを基盤に子どもに緑豊かな学校空間を提供するためのコンサル等を行うNPO法人を訪問し、その取り組みについてレクチャーを受ける。また実地見学も行う。

ベルリン市内の幼稚園や小学校では、NPO法人『緑が学校をつくる』の支援を受け、30年前から校庭の緑化に取り組んでいる。

NPO法人『緑が学校をつくる』は、ベルリン市教育課から財政援助を受け1983年に設立された。予算は、EUから10万、ベルリン市から42万等、総額年間100万ユーロ(約1臆円)が組まれ、スタッフ5名で市内の370校の小学校を中心に、エコロジー改造計画の情報を提供し、コンサルティングを行い、校庭の緑化を順次進めている。

発足当時、この計画に賛成8割、反対2割であったのが、市内の学校の緑化がどんどん進むにつれ、反対校は取り残される感覚になり、今では400以上の幼稚園・小学校のほとんどがこのプロジェクトを受け入れるようになっている。

校庭の緑化は、校庭のコンクリートをはがして、子供達の要望を取り入れ、小さな森を創り、小屋や舞台や小川を設置し、よじ登れる空間を作り、自然に近い環境をかもし出すことで、都会の空間に不足がちな遊びと体験の機会を生み出している。そして味気ない画一的な校庭を変化に富む憩いの場に変え、生活空間としての価値を高めている。また緑化後のメンテナンスにも子供達の意見を尊重し、参加型の造形プロセスを取り入れ改善にも力を入れている。

ベルリンでは校庭を社会性育成の場として捉え、自然空間を楽しんだり、新しい体験を試みたり、リラックスする場の提供を目指している。もちろん緑化で大気の清浄にも役立ち、子供達の心が落ち着き、学習能力も高まると捉えられている。

説明を受け、まず我々の視察団から、事故を心配する質問が飛んだ。回答は「基本的にケガについては、子供達全員が保険に加入し対応している。一斉授業で、嫌々行動を強いられるより、遊びを取り入れ自主的に行動する方が、はるかにケガに率も低い」とのことであった。

日本では、校庭に石ころがあれば、子供達がこけてケガをしないようにと取り除いている。しかし、本当は道には石ころが付き物で、つまずいても出来るだけケガをしないようなこけ方を学ぶのが、自然に近い環境での体験教育だと実感。実際に社会に出れば、石ころだらけであり、無菌場で安全だけを追求している日本の味気ない校庭は、余りにも自然社会からかけ離れている教育であると感じた。

兵庫県では体験学習の一環として、小学校3年生の環境学習、5年生の自然学校(4泊5日以上)、中学2年生のトライアルウィーク、高校でのトライアルワークを非日常の体験として実施している。一方、今回視察したベルリンでは子供達の意見を取り入れた質が高い教育環境整備の下で、エコロジー改造プロジェクトがなされており、我々には全く学校と感じさせないような校庭で、日常的に体験学習を楽しんでいるように映った。

まさに緑が学校をつくるという名にふさわしい緑化計画であった。

【視察先➃】アウグスブルグ市庁舎・環境技術支援センター・分散型ヒートパワーエネルギー Onsite energy(環境・エネルギー施策について)
調査日時:7月4日(水)13:30~17:10
応対者等:アウグスブルグ市庁舎(市経済担当課長対応)アウグスブルグ環境技術支援センター(広報担当対応)分散型ヒートパワーエネルギー Onsite energy(広報担当対応)
調査目的:環境分野に焦点を当てた施策を展開するアウグスブルグ市を訪問しその取り組みについて調査する。環境技術支援センターというその中核を担う組織の役割、また支援を受けている企業訪問も行う。

1.アウグスブルグ市庁舎

経済担当課長より市の概要について説明。

尼崎市の姉妹都市でもあるアウグスブルグ市は、生産の都市であり、輸出率は約40%となっている。主な分野は、機械・電気システム・IT。例えば、航空機の部品・省エネ電球・カーボンワイヤー・リサイクルサークルであるが、今後もこれらのことで将来展望を図ってくことでイノベーション・マネジメントを進めていきたい、とのこと。

2.アウグスブルグ環境技術支援センター(UTG)

バイエルン州、アウグスブルグ市、アウグスブルグ・シュワーベン商工会議所、シュワーベン手工業会議所などが資金提供も含む支援者となって環境技術系のベンチャー企業のサポートをする施設。

要旨

若い環境技術企業のために、民間企業的な利益を指向しているのではなく、公的に促進されており、同様の施設は、ドイツ国内に400ヵ所あってバイエルン州に集中している。将来性があるとバイエルン州が考えている政策の一つ。UTGでは現在40社が在籍し、約250名が働いている。

センターの特徴

・エコ指向の建物内はクーラーを設置していない。断熱が良い設計。

・作業所、事務所を借用でき、種々の設備を共同使用することができる。(コピー機、湯沸かし等)

・検査用機器を数社で共同購入したり、研究所の共同利用ができる。

・種々のサービスを受けることができる。(郵便物の受け取りから必要な相手を捜すことなど様々な相談を受け付けている)契約期間は短いので自由に変えることができる。

◎設立背景

・環境技術が将来もっと成長すると信じている。

→どこの国でも必要になる。

・ドイツの損保会社では、昨年1年間に支払った保険金額は過去10年間と同額。

気候変動による被害が多かった。

これに対応するために環境技術が必要。

→50万人が就職しており、将来性がある分野

・福島原発事故によるドイツの対応は、原発を将来0%に向けていくこと。

→バイエルン州は60%が原発による発電量だった。

今年2月再生可能エネルギーの発電量が、原発のそれを上回った。

・環境技術は再生可能エネルギーのみではない。

質疑

Q:UTGが受け入れる企業とは?

A :起業者であり、まだ若い企業のみである。

しっかりとしたコンセプトを持っている企業であること。

テクノロジー分野から、あるいはセンターに有益な活動分野からの将来性を納得させることができること。

受け入れるかどうかの評価機関は、様々な分野の学者から構成している。

現在、申込者の80%が受け入れられている。

Q :ドイツでは、再生可能エネルギーの買い取り価格を下げてきている。コストダウン

が図られて価格が0になっても利益が出ると言うことなのか?

A :福島原発の事故以来、ドイツでは原発を段階的に減らし、2022年までに原発による発電を止めることにした。

これは再生可能エネルギーがコスト高であるかないかに左右されない。

そもそも太陽光発電の買い取り価格は年々下げていくことになっている。

買い取り価格は消費者が支払っている。

→契約する際に、再生可能エネルギーで発電している電力会社を選択し、原発や火力に比べ高い料金を理解した上で支払っている。

買い取り価格の減額が前倒しされたが、私は、2年早かったと考えている。

→再生可能エネルギーの電力量が、現在過半数となっていたはず。

全てを民営化しようとした政策は、私は間違いだったと考えている。

→例:送電線を数社が独占した。それらの企業は現状利益が出ているためそれで満足し、発電しても電力を受け取らないため、送電しようがない状態になっている。

→解決策:スマートグリッドというシステムが必要。

3.ガス発電事業者 MTOを訪問

事業内容・・・・ガス発電機を開発し、それにより電力を生産。

説明内容・・・・原発からの脱皮、温室ガス削減

再生可能エネルギーの割合を

2050年までに80%に

2020年までに50%に

課題

・送電線の拡大・充実が必要。

・送電線が近くを通ることによる住民の反対。

・エネルギー効率を上げることができるか。

・電力のみならず熱エネルギーも組み合わせて生産する。

・種々のエネルギー源を組み合わせることに対する、効率的で安定した送電方法→スマートグリッド

・地域で太陽光発電などにより発電し、地域で消費する。

質疑

Q:節電という取り組みはないのか?

A :すでに全国民的に浸透している。省エネタイプの家電しか売っていない。

グリーンの工場というプロジェクトが、来年動き出す。

→発電量が多く余剰電力が多い時間帯に、消費電力が多い企業が操業する。

所感

・ヨーロッパ諸国の送電線は相互に結ばれており、電力の取り引きがある。

・発電能力の過不足をカバーすると言うよりも、ヨーロッパの電力市場において生じる需給状況や価格の変動などに応じて、電力を相互に融通し合っているという意味合いが大きい。

・年間を通してみると、ドイツはここ数年輸出超過を続けており、国内で消費する以上の電力を生み出している。

・ドイツは、そのような前提から、様々なエネルギー政策が構築されている。

・ドイツは、以前原子力廃止に政策転換した頃から、再生可能エネルギー増の政策を採用し、再び原子力継続に政策を戻しても再生可能エネルギー増の方向性は保ってきた。

一つの例として、現地をバスで移動中に、太陽光発電パネルを様々な場所に設置してあるのを多く見かけた。

そして、ドイツはこれらの問題について約20年間議論をしてきた。

・しかし、単にそれだけではない日本とは異なる背景を、上述のように持っている。

・「再生可能エネルギーの生産コストに左右されず、必要であるので推進する。」と言うのは、そのために自国のエネルギーが不足したとしてもヨーロッパ電力市場というネットワークの枠内で考えれば良いと言う考え方があるためである。

・そのようなドイツでさえ、原子力発電の廃止は段階的に行うという政策である。

・日本の場合、同じようには確保できないにもかかわらず、電力エネルギー確保というのは至上命令であるため、「即廃止か継続か」という議論ではなく、安全対策を順次採りながら、一部を残す方向性がよいと考える。

廃止するのであれば、段階的に進めていくための議論が必要と考える。

・環境技術(再生可能エネルギー)は、雇用対策という面からも大変魅力的だと考える。

産業界における裾野の拡がりが、どのようにあるかを見極めることが必要だと考える。

4.分散型ヒートパワーエネルギー視察

ドイツのエネルギー事情については、原子力発電の停止時期のほか再生エネルギーの推進強化を基本方針の10件の法案を通してドイツのエネルギーコンセプトとして取り組んでいる。再生エネルギーを推進するに辺り、ドイツは再生エネルギー導入先進国としてすでに実績がある。その実績のうえでベンチャー企業などが研究開発しているものにも積極的に研究を支援し、商品として成り立つものについては採用している現状を見学、視察したいと考え今回の企業視察に至った。

説明と所感

環境テクノロジーセンターよりの紹介にて「onsite energy」を視察した。

センターの前に位置するこの企業は、生産した電気を送電するに辺り効率のよく送電をする機器を開発、研究し世界的に導入する企業だった。まず、ドイツのエネルギー事情について説明を受けた。その際に、日本でも問題になっている「発送電分離」の議論はこれからであるが、何度もこの議論が出ては消えている。ドイツでもこの送電についてはコストのかかるものであると同時に、送電ロスによる放電をいかにして少なくするかが大切と考えた所この事業に行きついたとの説明を受けた。

例えば、原子力の場合であれば送電するにあたり各家庭まで電気を送るのは-68%のロス。火力であれば-25%のロス。この機器を導入した場合は-4%との事だった。

日本には、この企業が今回の東日本大震災に辺り福島県へ導入ともお聞きした。コンテナにこの機器をコンパクトにまとめ商社と組み、大阪の西天満にも事務所を構えているなど、事前にテクノロジーセンター所長より説明を頂いたベンチャー企業との枠をはるかに超えているようにも見受けられた。

企業としての技術は当然「日進月歩」であり技術の良い悪いは現場での必要性、耐久検査など必要な項目は多々あるが、国が必要な技術を支援し、販売をも支援する。学ぶことは多いと実感した。

【視察先⑤】ごみ処理施設/ABFALLVERWERTUNG AUGSBURG (AVA) GMBH(ゴミ処理、廃棄物再生利用について)
調査日時:7月5日(木)9:00~11:30
応対者等:広報担当対応
調査目的:厳しい環境監査を受けた最新式のゴミ処理施設を訪問し、その廃熱利用や、排煙ガスの浄化などについて現場を見学しながらレクチャーをうける。また有機ゴミから高品質な堆肥をつくる技術についても調査する。

私たちの訪問したのはABFALLVER WERTUNG AUGSBURG CMBHというゴミ処理施設で、1991年開始、敷地面積235,000㎡、アウスブルグ市と周辺の85万人分のゴミ、年間298,000tも処理する大規模な処理施設。従業員は190名、広報担当者マルゴット・ヘミングさんが案内してくれる。

レクチャー室でスクリーンによる説明の後、現地を調査した。

説明と所感

分別収集は、①生ゴミ→(バイオ利用)②有価値ゴミ(プラスチック、紙―再利用)、③残余ゴミ(焼却処理)で、ゴミ収集ステーションに大きなコンテナを置き、黄色、緑色、茶色に色わけして分別している。

①の生ゴミ処理では、空気のにおい処理を自然の木々の層を作って通過させ浄化、消臭する。また肥料に再利用する等、丁寧に取り組まれている。
③の残余ゴミは約4~5日寝かせて、水分をなくしてから焼却する。有害ガスの発生にはかなり注意を払っており、90秒ごとに測定し各種有害ガス法廷基準値の1/10~1/5に抑えている。焼却によるエネルギーで電気を発電し当施設で使用。残りを地域各家庭に有料で供給している。焼却灰は過去に岩塩を採取した地下深い岩塩抗のあとに廃棄している。岩塩層は、有害物質を通さないとの説明があるが、地下水等への影響に疑問を感じた。

施設の屋上では270所帯の家庭を賄うソーラーパネルとなっている。

全体として、分別収集、分別処理は兵庫の方がきめ細かく行われているような感想を持った。

ただ、有害ガス対策と生ごみ処理については先を行っている感を受けた。バイオ再利用のため、生ごみを調理済みの物と素材そのままの物を厳格に分別し、質の高いバイオ肥料を作り出して付加価値化し一般向け販売するなど、先進的な取り組みは大変参考になった。

【視察先⑥】ミュンヘン動物の家(動物愛護施策について)
調査日時:7月6日(金)10:00~12:00
応対者等:代表者対応
調査目的:動物の殺処分場のないドイツでのその保護施策についての取り組みを調査。『動物の    家』と呼ばれるシェルターを訪問し、里親探しの現状や運営方法についてレクチャーを受ける。ペット税についても考察を深める。

兵庫県では、「動物愛護条例」にもとづき、動物保護施策が進められてるが、残念なことに、動物(犬・猫中心)の保護というよりも、殺処分という施策が予算的にも先行している感が否めない。如何に犬・猫の返還率を高めるか、ペットの命を守る飼い主の責任・マナーの向上等々、25年度改定される「動物愛護条例」に我が会派としての考えを提案すべく「ペットの殺処分ゼロ」を実現しているドイツの保護政策の視察を行った。

ドイツでは、捨てられた犬猫、飼い主が飼えなくなった動物を絶対に殺さず、殺処分場はない。その代わりに里親捜しのための「動物の家」というシェルターが500以上存在している。

シェルターの運営は、民間の動物保護団体が行い、「動物の家」は全て民間のものであるとともに、会員の会費、遺産贈与、寄付で予算は賄っており、職員・獣医とともに多くのポランティアの活動で維持されている。

説明と所感

私たちが視察したミュンヘンのシェルターの一つである「動物孤児院」は、会員 2万人(ミュンヘン市の人口30万人)を擁し、年間会費として大人31ユーロ、65歳以上・子ども青年は10ユーロを徴収している。また施設の運営予算は、年間500万ユーロ(約5億円)であり、施設職員65名(内獣医5名)で運営され、年間約8500匹の動物が持ち込まれるという報告を受けた。

施設の活動内容は、兵庫県動物愛護センター等で行っている飼い主捜しや新たな引き取り手の募集のためのイベント開催、犬の躾等々活動内容はほぼ同様だが、その規模と市民全体を巻き込んだ自主的な活動・運営全般において大きな差異があり、彼等が行っている行動は、「他人からやらされている」のではなくて「自らがやらねばならない」という真のボランティア精神が根本にあり、動物愛護に対する国民意識の大きな違いを認識せざるを得なかった。

また、「動物愛護」に関する諸施策をほとんど行政に任せ切っている兵庫県の現状と、行政が側面からの協力のみで、民間団体が主体的意志で全ての取り組みを遂行・完結しているドイツの実態を比べた時、今後の兵庫県の動物愛護施策において、ボランティア等を巻き込んだ官民一体となった取り組みの構築を図らねばならないと強く感じた。

次にドイツにおけるペット税(犬のみ課税)だが、ミュンヘンにおいては、税がどのように使われているか施設の責任者さえ知らないということ。当初、視察前、このペット税を原資として、ドイツにおいては「殺処分ゼロ」の取り組みを推進しているものと考えていた。

聞き取りによれば、ペット税の目的の主たるものは、一匹目が年間100ユーロ強、二匹目が200ユーロ強を超える税をかけることによって、その地区の犬の数が爆発的に増えるのを防ぐことにあるということで、今後、ドイツ各市におけるペット税の使途を詳しく調査・研究する必要性を強く感じた。

また、日本と違いドイツでは、「犬の法律」が細かく定められ、飼い方や散歩の仕方まで決められ、違反すると罰せられる。一方、公共のバス、地下鉄も子供料金を払えば犬も同乗できるし、各都市の自治体では、都市に最低一つは犬を鎖なしで遊ばせることのできる所も確保することも法律で定められている。さらに、日本でも大きな問題となっている「多頭飼育崩壊」を防ぐため、犬の繁殖業者に関しては、頭数や飼育環境に厳しい規制がかけられている。

以上、今回の視察を通して、国民意識の違いはあるにせよ、「動物愛護」は同じ「生」有るものとして動物を守るため、最大限尊重され遂行されるべきものという考えを再認識することができました。

今後、施策を行政の責任として一方的に押しつけるのではなく、民間愛護団体等との協力・連携を通して、より確かな施策を構築していくと同時に、県民自らのこととして行動する「動物愛護」に関する意識啓発も強く図らねばならず、兵庫県においても「殺処分ゼロ」実現を目指す思いを強くした視察だった。

【視察先⑦】クラインガルテンセンター協会/Kleingartenverband Muenchen e.V(クラインガルテン(市民農園)について)
調査日時:7月6日(金)14:00~15:30
応対者等:協会長対応
調査目的:都市緑化、高齢者の生きがいづくり、子育て世帯の環境教育など、さまざまな目的で各地に広がる市民農園について、利用者組織であるクラインガルテン協会を訪問してその運営方法などについて説明を受ける。現場見学も行う。

ドイツと日本における市民農園の歩み(参考)

クラインガルテンの歴史は、1832年に失業対策事業を兼ねて市民の手で開墾させた農園から始まるとされ、1919年にクラインガルテン法が制定された。食糧自給の目的もあり、1944年に解約保護法が制定され、多くのクラインガルテンが市町村有として永久的緑地となっており、時期により増減はあるものの現在に至るまで地域社会のシステムとして機能している。

一方、日本の市民農園開設は、1924年に京都で始まったとされ、その後、大阪や東京等をはじめ都市部で市民農園が開設されるも、戦後は全て消滅。法律上の制約がありしばらく停滞したが1969年に改めて神戸と東京で市民農園が開設、都市部を中心に市民農園が開設される中、1975年に国がレクリェーション農業として市民農園を認めたことにより開設の動きが加速し、1990年には、「市民農園整備促進法」が制定され、自由に市民農園が普及できるようになった。

ドイツのクラインガルテンの特徴と視察結果

①区画が大きい:1区画の平均約150㎡~300㎡あり、野菜のみならず果樹や花卉、芝生など庭的利用がなされている。▲視察先のクラインガルテン(以下同)では1/3野菜類1/3花卉類、1/3小屋となっており、見た目も大変美しく手入れされており、都市緑化の役割を果たしている。

②小屋がある:区画内に屋根投影面積24㎡以下で平屋の小屋(ラウベ)が建つ。このラウベには、簡単なキッチンと休憩できるリビング等が完備されており、利用者が自分達で建設する。原則として宿泊は禁止で電気や電話ない。▲週末は宿泊可能とのこと。視察中利用者がくつろいで過ごしている姿が散見された。

③クラブハウスが附帯する:敷地内に利用者および一般市民が利用できるクラブハウスが建ち、このクラブハウスは、原則として利用者が共同で建設する。▲協会長から説明を受けた会場であるクラブハウスは約40人前後収容可能で施設も整っていた。ビールの用意があるのはドイツらしいところか。

➃長い利用契約:賃貸期間が25年あるいは無期限となっているが、配偶者以外にその権利は譲渡できない。

▲賃貸期間が長い故にラウベの建設も可能となる。また、長いスパンでの庭造りや、結果として緑地維持が可能なのであろう。

⑤利用者による管理運営:個人が借りている区画だけでなく、園路や共有地を含めて全てを利用者全員で自主管理し運営も行う。▲開設者ではなく利用者が協力することにより連帯感が醸成されているように感じた。

⑥公共の場がある:子供の広場や緑地広場が必ず中央付近にあり、園路と共に一般市民に開放されている。

▲園路はよく整備され解放されており、気持ちよく散歩できるように感じた。

⑦安価な利用料金:利用料金が年間3万円前後で、人々が利用し易い料金となっている。(ラウベは個人資産)

▲ミュンヘン市内は1㎡あたり34ユーロセント、最高でも1㎡あたり60ユーロセントと法律で決まっている。ミュンヘン市内で仮に300㎡のクラインガルテンの賃料を支払えば102ユーロ。約1万円。その他、クラインガルテンセンター協会への会費が年間50ユーロ、水道・保険代が450ユーロが必要であるが、合計でも約1万5千円である。

⑧利用者の制限:集合住宅の二階以上に住む人等に限定されている。庭を所有する集合住宅の一階住民や戸建の住民は利用できない。▲現在1千人程の利用待ちがあるとのこと。基本的に申し込み順であるが、最近では年金生活者や失業者、家族のある家庭やシングルマザー家庭等に優先枠がある。

⑨居住地に立地:クラインガルテンの利用を希望する人は、居住する行政区のクラインガルテナー協会が管理するクラインガルテンしか利用できない。
▲この他、基本的には所在するクラインガルテンから5㎞~10㎞の居住者が対象で駐車場等はない。

⑩環境に配慮:都市内の緑地であることから、農薬や肥料の使用が制限されており、実の成る潅木などビオトープの整備、雨水利用や堆肥等による循環が行われている。▲都市型農園で問題になる農薬等の環境問題をクリアしている。なお、臭い等も全く気にならなかった。

日本の市民農園とドイツのクラインガルテンとの比較

まず、利用土地が日本では農地であるのに対し、都市緑地である、利用期間が日本では概ね5年以内であるのに対し、ドイツでは長期間、農園の運営・管理が日本では開設者であるのに対し、ドイツはクラインガルテンセンター協会という利用者団体の協会であること(日本にも生まれつつあるが)等は市民農園に対する考え方の大きな違いである。賃貸料金についても日本(兵庫)では1区画30㎡前後で1万~2万というところが多く、概ね1区画がドイツの1/10の広さでドイツと同じ賃貸料ということになる。日本の都市型市民農園の形態は、基本となる畑区画のみが多いが、最近では各区域内に宿泊できる小屋のある滞在型市民農園も増えてきた。滞在型市民農園についてはネットで検索すると利用者の生活圏域から数時間離れた山間地に立地し、都市農村交流や長期滞在を意識しているところが多いようである。ドイツと概ね同規模の滞在型市民農園で賃料設定が40万円~60万円程度と高めでドイツのクラインガルテンとは考え方に相違がある。

日本の市民農園の特徴

日本で主流であった都市型市民農園(特に旧市街地)は広くはない農園が点在し、都市緑地にはなりえず、また、1区画も狭いので家庭菜園の域を出ないが、生活圏に存在することから利用する希望者は老若男女を問わず多く、市民農園が不足している状態である。これは郊外と比較し、集合住宅が多く、戸建ても手狭であることから希望者が多いものと思われる。最近の自然志向の強まりから、宿泊施設のある滞在型市民農園も増えてきた。 これらは民間事業者と行政の半官半民での運営も多く見られるが、主に都市農村交流型や長期滞在を目指すものであり、利用者年配の方が多い等、利用者の範囲は限られる。

今後の日本の市民農園のあり方について

ドイツのクラインガルテンは市が土地を貸し出し農園賃料収入を得た上で市民に緑化機能維持の一端を担わせているのは、行政が一方的に税金を支出し都市公園を運営し、緑を維持する日本と比較すると非常に合理的である。その一方で歴史の古いドイツであるから広大なクラインガルテンの場所を確保出来ているのであり、日本で今から市民農園の土地を都市部に確保することは難しい。従って都市緑化機能としての市民農園という考え方をそのまま日本に移行することは難しいが、参考にすべきことは多い。

①公共用地・休耕田の有効利用策としての市民農園:使用予定のない公共用地については売却することも税収を上げる手段ではあるが、都市緑化の一環として都市型市民農園として利用する。休耕田等については都市農村交流の推進、また、都市住民に需要の高い市民農園の充実に向けて、都市近郊の不利用地については積極的に市民農園化を推進する。できれば公共地化が望ましい。

②市民農園管理のNPO団体等の設立援助:ドイツでは利用者団体であるクラインガルテンセンター協会が会費収入で管理運営を行っている。先にも述べたように行政が管理運営するよりも利用者が自主的に行う方が合理的である。また、休耕田等のマッチングや広域団体としての連携を図っていくためにもそういった仕組み作りが必要である。

以上の2点を推進していくことは今後の市民農園の一つのありかであると思うが、日本の市民農園のあり方については、日本の市民農園の開設のあり方を考慮する必要がある。日本では特定農地貸付法、市民農園整備促進法、また、農園利用方式(農地法上の問題はない)により市民農園を開設している。市街化区域で農地を持っている農業者は宅地化農地か生産緑地の選択により宅地並み課税を受ければ農地として維持できなくなる現状がある(農地の宅地化で虫食いがおこる現状の是正は必要であろう)。今回の視察先であるドイツで行われているクラインガルテンの運営についても、日本では利用者が運営を行う場合のデメリットとして、農地の所有者個人の意向が変化すれば長期的な運営、利用の継続性が不確実であるということが起こり得るし、例え、NPO法人は財政基盤が弱くまだ現状では力を発揮しきれない等、日本の農地法については、やはり見直すべき時期にあるのではないかと感じる。しかし、例えば滞在型や日帰り型、体験市民農園等様々なプログラムが兵庫県内でも展開されつつあり、今後更に拡大されることが期待される。今回の視察において、まず一つには行政が持っている遊休地の利用方法の議論、そして、都市、または都市近郊にある農地の有効利用と農地利用の国への提言等が必要ではないかと改めて感じた。一つ一つ問題を解決していかなければならない。