議会の動き

竹内 英明議員が質問(農林水産部)を実施

令和4年度決算特別委員会 【農林水産部】

質問日:令和5年10月11日(水)

質問者:竹内 英明 委員(ひょうご県民連合)

1 (公社)ひょうご農林機構(旧兵庫みどり公社)の分収造林事業の抜本的見直しについて

(1)先送りがもたらした多額の金利負担について

「公社等については、第三者委員会による専門的見地からの点検・評価のもと、スピード感を持って見直しに取り組みます。とりわけ、ひょうご農林機構の分収造林事業は、包括外部監査において、多額の債務超過に陥る可能性が指摘され、検討委員会であり方を検討しているところです。委員会の検討結果を踏まえつつ、現実的な収支見通しに基づき、抜本的な見直しを進めます。」9/20に本会議で知事が今後の方針について発言した。

公表されている(公社)ひょうご農林機構の貸借対照表では、2022年度決算で、25億円の資本があるとされているが、債務超過に陥るとはなんなのか。原因は資産・森林の価値668億円の価値が簿価であり、過去に支払った金融機関に対する利子が含まれているからである。

668億円の内訳を教えてほしい。

[資料1](公社)ひょうご農林機構の貸借対照表(2022年度決算)

(2)齋藤知事の求める「抜本的な見直し」と「分収造林事業のあり方検討委員会」の今後について

齋藤知事はこの分収造林事業について、過去に総務省が発行を認めた有利な起債「第三セクター債を発行して整理しなかったことが失敗だった」と言っておられるそうだ。

第三セクター債とは正式には第三セクター等改革推進債のことで、特別交付税措置がある有利な起債であった。あったというのは2013年度までの5年間のみ発行が認められた。その対象経費は何だったのか。

第三セクターの場合、地方公共団体が損失補償を行っている法人の法的整理等を行う場合に必要となる当該損失補償に要する経費、とされている。

1法的整理 – 破産手続、特別清算手続、再生手続及び更生手続

2私的整理 – 一般に公表された債務処理のための準則等が該当

つまり、知事の考えは、分収造林事業を法的整理等すべきという姿勢だと判断される。だから抜本的な見直し、と議会で敢えて表明されたと私は理解している。

一方、昨年8月にスタートした「分収造林事業のあり方検討委員会」の資料や議事録を見たが、大変失礼ながら抜本的な見直しという話にはなっていない。今日は直近の資料も提出させてもらったが、再造林を誰がやるとか広葉樹を入れると良いとか、そもそも経営の抜本的な見直しをしてくれという試問があって議論している感じでもない。

事務局は農林水産部とひょうご農林機構の幹部だけ。県の財政支援や公社のあり方、金融機関との関係といった重要事項を判断できる会議体とは思えない。ここで抜本的な見直しの議論と言われても困るのではないか。現在の検討委員会は今後どうなるのか。

[資料2]第三セクター等改革推進債(総務省HP)

[資料3]「分収造林事業のあり方検討委員会」(第3・4回 資料)

2 県が損失補償をしていない金融機関からの貸付371億円を県資金により公社が返済し、現在の将来負担率想定以上の負担を県が行う可能性について

(1)今後、県による追加貸付が焦げ付いた場合や追加の損失補償の履行を求められた場合の対応について

この分収造林事業、これまで金融機関だけは金利で儲けてきたということが先の答弁でもわかったが、これを断ち切るならば県が代わりに無利子で貸付をすれば良いということになる。しかし、公庫貸付分については元利金の損失補償を県が行っているほか、繰上償還等も認められていない。借り続けることになれば、ずっと利息を払い続けなければならない。つまり法的整理等を行うしか出血を止める方法はない。

兵庫県と同じように経営の厳しかった群馬県の林業公社、(社)群馬県造林公社は、2011年に民事再生法の適用を申請して解散した。負債総額は165億円、うち群馬県の負債は150億円で第三セクター債を活用して公庫へ損失補償を実施した。(一財)広島県農林振興センターも同様に2013年に民事再生法を申請、第三セクター債を活用して債務を整理し、事業を県の特別会計で引き受けた。いずれも「公庫」の負債を処理するために法的整理をおこなった。

先日議会に示された資料では、「現在の木材価格・施業コストは、現計画と大幅に乖離した」と記されている。

[材 価]スギ 29,600円/㎥(現計画) → 8,667円/㎥(実勢)

[施業コスト]皆伐 4,000円/㎥(現計画) → 6,169円/㎥(実勢)

実際には木を切ってそのままという訳にもいかず再造林等の追加コストもかかるので実際には現金化すること自体も簡単ではないというのが私なりの結論である。

これまで300億円以上も金融機関に払って、もう伐採売却も難しい。今後も毎年4億円の利息だけを払い続ける。金利が上がる可能性もある。知事のいうように外部借入をなくすために法的整理等を行い、あとは、この事業を特別会計で実施するとかして、2078年まで利息を払い続けるような現計画は破棄すべきだと思う。

いずれにしろ知事の姿勢から法的整理等を採用する可能性が既にあるということ。

公社には金融機関に返済する自己資金がないし、過去には2014年度までオーバーナイト融資で決算を乗り切ってきたことも知られているくらい、経営状況が良くないことは公表資料からも明らか。そんなときに融資に乗り出した金融機関は流石に自己責任である。まさか貸借対照表に基づいて資本超過だから損失補償なく貸したという論理は、森林の担保価値を調べればこれが費用の積み上げに過ぎず、実際の価値と関係がないことはすぐわかる。

そんな中で、公社が金融機関に借りている資金を優先して返済するために県が追加で公社に貸付けをしたとする。県にはその資金は帰ってこない可能性が高い。また同じ意味を有することだが、金融機関からの現在についての融資に対して県が追加で損失補償を求められた場合も同様である。法的整理等を検討していると思われる現時点からは追加の貸し付け等は慎重にすべきであると思うがいかがか。

[資料4]0911県議会説明資料(分収造林)

(2)知事への求償の可能性について

予算書にある農林水産資金特別会計・債務負担行為も資料として提出しているが、現段階で県が利子の損失補償しか行っていない貸し付けがある、そこを融資の元本部分まで支援しよう、そのために追加支援をするというのであれば、金融機関への支援であることは明らかであるから、それが焦げ付いた場合は、当然、オンブズマン等による知事個人への求償へとつながる可能性がある。県による追加の損失補償も同様。こうしたことはあくまで可能性であるが、そう思わないか。

[資料5]農林水産資金特別会計(2023当初)債務負担行為で翌年度以降にわたるものについての前年度末支出(見込)額及び当該年度以降の支出予定額等調書

[資料6]ひょうご農林機構の将来負担額