議会の動き

◆13年12月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方 討論

代表質問  大塚 たかひろ議員
一般質問  盛 耕三議員・掛水 すみえ議員

代表質問

(大塚 たかひろ 議員)[発言方式:一括]

1 第3次行革プランの策定に向けて
2 地域エネルギーの確保について
3 市町における地域包括ケアシステムの構築に対する支援について
4 県内各地域への海外誘客の促進について
5 農地を維持していくための今後の農業政策について
6 安全・安心が確保された農畜水産物のブランドイメージ向上について
7 人口変動を見据えた県立高等学校の教育改革の方向性について

質問全文

平成25年12月 第320回定例県議会 代表質問要旨案

質 問 日:2013年12月6日(金)

質 問 者 :大塚 たかひろ 議員

質問形式 : 一括方式

1 第3次行革プランの策定に向けて

質問の第1は、「第3次行革プランの策定に向けて」である。
県民の要請に的確に対応できる持続可能な行財政構造を確立するために、県では、平成20年10月に新行革プランを策定して以降、これまでの6年間で、行財政全般にわたる改革を推進してきたところである。

このたびの3年目の総点検にあたっては、我が会派としても、ワーキングチームを立ち上げ、県民本位・生活者重視の視点に立ち、あらゆる角度から今後の改革の方向性について議論してきた。

今年9月に示された課題と検討方向に対しては、県民の理解と協力なくして行革は成り立たないという基本姿勢のもと、持続可能で将来を見通した兵庫県の姿を示し、本来あるべき県民サービスを提供していくために、一つには平成31年度以降の数値も一定の年度に亘って長期の財政フレームを示すこと、二つには県民に対して事業の優先順位を明確にすること、三つには今後の社会情勢を見据え、改めてゼロベースで見直していくこと、四つには現場の声、つまり県民や職員の声を大切にすること以上の4つの視点から、各施策について課題を提起した。

先般、企画部会案が提示され、今後5年間の取り組みの方向性等が示されたところであり、行財政構造改革は、概ねプランどおり進捗しているものと一定の評価はできるが、今年度の当初予算においても未だ735億円の収支不足額があるなど、引き続き、厳しい財政状況にある。

このため、我が会派としては、今後5年間の方向性や取り組みを具体的に示したうえで、さらなる行財政構造改革を進めていく必要があることから、昨日、この企画部会案に対する知事申し入れを行ったところであり、県民の生活と生命に直結する医療・福祉、教育、雇用、治安などは、一律削減の対象にはなじまず、限られた財源の中で、優先順位を見極め「選択」と「集中」をより明確にしながら、第3次行革プランを策定するよう主張した。

次期プランの策定にあたっては、持続可能な行財政基盤を確立し、財政規律を守ることはいうまでもないが、それとともに、この行革が、施設の整備や維持管理、公社等の見直しなど社会情勢の変化に応じて見直すべきものと、本来は負担を求めるべきでない職員給与の削減や県民サービスの見直しが同じ枠組みの中で成り立っていることを鑑みれば、改革期間である平成30年度を待たずともできる限り早期に、財政目標を達成すべきと認識することが重要である。

また、財政目標を達成した暁には、県民が豊かさを実感できるよう県民サービスの更なる充実に向けて取り組んでいく姿勢を持つことは言うまでもない。
そこで、現在、行財政構造改革調査特別委員会においても、様々な検討がなされており、引き続き、行革を進めていくには、県民の理解と協力が不可欠であると考えるが、この代表質問において、改めて知事の決意を伺う。

2 地域エネルギーの確保について

質問の第2は、「地域エネルギーの確保について」である。
東日本大震災での原発事故を教訓として、原子力に依存しない新たなエネルギー源として、各地でメガソーラーなどの太陽光発電や風力発電、さらには温泉熱を利用した地熱バイナリー発電など再生可能エネルギーの確保に向けた様々な取り組みが進んでおり、行政としてもこうした動きを後押しする形で用地の確保や融資制度などの支援をしている。

一方、県内では、「あわじ環境未来島構想」において、島民一人ひとりが参画する取り組みとして、今年7月に県が県民債を発行して島民から発電施設建設資金を調達して、来年3月から発電・売電事業を行う住民参加型太陽光発電事業が始まった。また、先日、宝塚市の住宅地において、地域住民などが主体になって、自分たちが使う電気は自分たちでつくるという考えのもとに、停電時の非常用電源などの地域内で消費する電力源として太陽光パネルを設置したことが報道されていた。

海外に目を移せば、近年、ドイツやオーストリア、スイスといった欧州中部の国々では、地域のエネルギー自立運動が盛り上がりを見せている。
地域内で消費するエネルギーについては、域内で生産される再生可能エネルギーを持って充てるというエネルギーの自立地域が増えている。

この計画の実施にあたっては、省エネ対策を伴うことや、地域の行政と住民が一体となって取り組むことが重視されており、エネルギー自立を地域発展戦略の中心に据えて取り組む自治体が増えてきている。
仕組みは違うがいずれも、地域の住民が参加するという点で共通しており、エネルギー自立地域へ向けた取り組みであると言える。

このように、地域の再生可能エネルギー資源等を利用した地域エネルギー事業を地域活性化の手段としてとらえ、地域で富を生み出し、地域の課題を解決するための手段としてとらえることが重要である。

一昨年の本会議の一般質問においても、再生可能エネルギーは、国民一人ひとりが参加できる参加型エネルギーであり、国民の参加により、エネルギー問題への意識や関心を高め、ひいては社会のあり方までを変えていく可能性のある取り組みであることを述べた。

そこで、県としても、地域内の資金や事業者を活用し、事業から生じた利益を地域が享受するこの地域エネルギー事業を推進することによって、地域経済の活性化、再投資や雇用創出にもつなげていく必要があると考えるが、今後より一層、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギー発電、熱利用の組み合わせなど地域の特性を生かしたエネルギーの地産地消を促進し、地域の自立を図っていくための方策について、当局のご所見を伺いたい。

3 市町における地域包括ケアシステムの構築に対する支援について

質問の第3は、「市町における地域包括ケアシステムの構築に対する支援について」である。
少子高齢社会を迎えた我が国では、今後、急速に高齢化が進み、65歳以上の高齢者数は、2025年には3,657万人となり、2042年には3,878万人とピークを迎えることが予想されている。

本県においても、2050年には県下全体で65歳以上の高齢者の割合が40%を超え、神戸地域をはじめ但馬や淡路地域においても同様に40%を超えると予想されている。
国では、今後、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度の要介護状態になっても住み慣れた地域で暮らし続けられるために、地域内において住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を目指している。

地域包括ケアシステムは、市町村が介護保険法に基づき、3年ごとの介護保険事業計画の策定・実施を通じて、地域の特性に応じた体制を構築することとされており、具体的には、市町村の設置による地域包括支援センターが、システムの中核的な支援機関として、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員を配置して、高齢者の総合相談、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助を行っている。県内では、この地域包括支援センターがサブセンター、ブランチを含めて、県下全ての市町に全部で299カ所設置されている。

先日、国において、社会保障制度改革国民会議での意見を踏まえ、特別養護老人ホームの入所基準を、原則、要介護3以上に限定する方針が提案された。これまで、特養の入所待ちを余儀なくされていた要介護4,5の重度の人にとっては、より専門的な介護サービスを受けることができるようになる。

一方で、要介護1,2の軽度の人については、自宅等を中心とした介護サービスを実施していくことになり、今後ますます、この地域包括ケアシステムの役割が重要になってくる。
そのためには、医療・介護・生活支援の関係機関の相互連携の強化が不可欠である。

また、あわせて国では、症状の軽い要支援者の介護予防給付のうち、訪問介護、通所介護については、全国一律の内容や単価等の要件によるだけでなく、市町が地域の実情に応じ市町の判断でより柔軟に取組ができる地域支援事業の形に改めることとしている。このように社会保障制度を巡る見直しの動きについては、毎年度1兆円規模で自然増加が見込まれる社会保障費を考えると、負担と給付のバランスを図る観点から避けて通れない問題である。

特に、要支援者に対する要介護にならないための予防給付を含めた介護予防は、健康寿命を延伸し、社会保障費を抑制するという観点からも重要な取組であろう。しかしながら、市町によっては、介護・医療支援や生活支援を行う人材の不足や、市町単独の圏域では、関係機関の体制が十分に整っていない等の課題もあるのではないか。

県としては、市町間の地域格差による相対的な位置付けの把握など、市町に対する後方支援や、広域的かつ中長期的な視点に立った介護人材の確保と育成など、市町・関係機関・地域団体等と連携・協働によって、より効率的・効果的な事業の実施を図るべきと考える。
そこで、特に超高齢社会に対応できる介護予防給付や地域支援事業を見直して地域包括ケアシステムを構築していくためには、今回の見直しにあたって、地域格差が生じないよう努めていく必要があると考えるが、県としてどのような支援をしていくのか、当局のご所見を伺いたい。

また、少子高齢化や財政状況など地域の実情を踏まえると、今後、行政サービスのみに頼るのではなく自助、互助によるシステムを早急に構築していかなくてはならない。地域防災に関しては、自主防災組織や自治会、NPOなどが、災害時におけるそれぞれの役割を意識が進んでいるのと同様に地域包括ケアシステムにおいて、地域の公共を担ってもらうよう意識の醸成が必要であると考えあるが、あわせて、当局のご所見を伺いたい。

4 県内各地域への海外誘客の促進について

質問の第4は、「県内各地域への海外誘客の促進について」である。
日本政府観光局の調べによると、今年10月の訪日外客数は、前年同月比31.5%増の92万9千人となり、今年1月~10月の累計では、866万人となった。

国別では、韓国、台湾、中国で全体の6割を占めており、次いで、米国、香港と続くが、今後は、タイやマレーシアにおいても、ビザなし渡航が適用されたことにより、イスラム文化圏も含めた東南アジア地域からの観光客の大幅な増加が期待される。

今までの中国・韓国中心であった海外誘客対策をさらに広いエリアに拡充できる機会でもあり、行政としても経済的、文化的側面の支援による誘客受け入れの環境を整備する必要があると考える。

国では、今年6月に閣議決定された日本再興戦略において、ビジット・ジャパン事業として、本年中に訪日外国人旅行者数1,000万人を達成し、2030年には3,000万人を超えることを目指しており、国をあげて海外誘客の促進に取り組んでいくこととしている。

一方で、訪日外国人を含めた観光客の訪問先は、アクセスの良さもあるの
だろうが、やはり圧倒的に東京、大阪などの都市部に集中しており、県内でも神
戸・阪神間に偏る傾向が見られ、なかなか、神戸からその先の淡路や但馬、丹波
への宿泊を含めた外国人観光客数が伸びていないのが現状である。

今後とも、増加が見込まれる外国人観光客を日本はもとより兵庫県そして、県内の各地域へ、いかにして足を運んでもらうかが、地域経済・雇用の観点からも重要な課題である。このことは、平成24年の観光庁による全国観光入込客統計における本県を訪れる宿泊観光客の観光消費単価をみても、日本人が一人一回あたり約26,000円であるのに対して、訪日外国人は約67,000円と日本人の約2.5倍にあたり、地域経済の活性化に大きな期待がかかる。

平成23年度から25年度までの3年間を対象期間とする「ひょうごツーリズム戦略」によると、本県のツーリズムの特徴として県内客が過半数を占め、そのほとんどが自家用車による日帰りであり、本県を訪れる観光客のニーズが鑑賞型や行楽型・スポーツ型が中心であることから、今後は、外国人にも訴えかけやすい自然体験等を通じた滞在型の宿泊客を増やしていく取組が必要であろう。

また、現状、外国人の宿泊数が少ないことから、今後は、外国人来訪者のニーズと市場特性に応じたツーリズムメニューの開発とともに、特に増加が見込まれる東南アジア諸国へのプロモーションの充実強化を図っていく必要がある。

一方、先月調査に訪れたアジアの諸団体との意見交換会では、「人口700万人の香港からの訪日観光客は60万人と人口の約1割近くにあたる。さらにリピート率は7割を超え、紅葉や雪などの景勝地を観光するなど、日本人観光客と変わらないニーズがある。」

また、「タイでは、訪日観光客数では香港に及ばないが、傾向としては、知名度の高い影響力のある者が、情報を発信することで一気にその観光地の知名度が上がるなどの特徴がある。」などと聞く。

そのためには、但馬、丹波や淡路地域などでは、外国人観光客向けに豊富な地域資源を活用した新たなツーリズムを展開するなど、魅力を広く発信していくことも重要である。例えば、各地域の重要文化財や歴史的遺産、自然公園を周遊するツアーなどを通じて日本の文化や伝統、くらしについて理解してもらえる取組も必要かと思う。

各国で状況は様々で、今後は、国別あるいは地域別の訪日外国人観光客のニーズの把握ときめ細やかな情報発信も必要ではないか。
先月、関西地域での開催が正式決定した「ワールドマスターズゲームズ2021」については、国内外から5万人が参加し、経済効果は140億円と見込まれている。
本県においても、各地域の観光資源を活用した多彩なスポーツツーリズムを提供していく好機となるのではないか。

そこで、まだまだ成長が期待される観光産業において、特に、外国人観光客をいかにして県内各地域へ誘客し、宿泊してもらうのか、その戦略について当局のご所見を伺いたい。

5 農地を維持していくための今後の農業政策について

質問の第5は、「農地を維持していくための今後の農業政策について」である。
TPP交渉では、農業分野の関税撤廃の年内妥結に向けた動きが加速するなか、国内農業についてもその対応に迫られるなど、ここへきて国では、日本の農業の国際競争力を高めるため、米の減反制度廃止や農地中間管理機構の創設等の方針を相次いで打ち出した。

1970年代に始まった減反制度は、現在では国が生産数量目標を定め、都道府県を通じて農家に生産数量目標を割り当てているもので、近年の少子高齢化や食の多様化などにより、年々、米の消費量が減り米の供給過剰による値崩れ防止を狙った生産調整制度である。

この現行制度の下では、減反に協力した農家には、その経営規模にかかわらず米の直接支払交付金(15,000円/10a)が交付されてきたが、この制度の廃止により、今後は、より農家の経営判断で自由に生産できるようになるとしている。

しかしながら、将来的には、米づくりの過当競争が進み、基盤の脆弱な中小・零細農家は農業をあきらめて農地を手放すことにより、耕作放棄地が増えてくるのではないか懸念される。

また、国では、所有者が手放さないことにより集積が進まなかった農地を担い手へ集約するために、全国に農地中間管理機構を設け、地域内に分散して飛び地となっている農地や耕作放棄地を集約して借り受け、大規模農家や農業参入企業など今後の農業の核となる担い手に貸し付けることとしており、非効率な農地利用のあり方の抜本的な見直しが期待されるが、大規模化が優先され、既存の小規模農家の経営存続が危ぶまれること、更には耕地面積の大規模化が困難な中山間地域では集約が進まないといった問題点も予想される。

一方で、本県の農業構造を見ると、販売農家の農業就業人口の7割が65歳以上で、平均年齢は67歳を超えており、高齢化は全国平均を上回っている。また、販売農家1戸当たりの経営耕地面積も全国平均を下回る0.86haと、本県の農業は高齢者による小規模経営が主体となっている。更には水田が農地の9割以上を占め、中山間地域も多い本県では、今後、後継者不足により農家が減少し、耕作放棄地のさらなる増加が懸念されており、これら、国が進めようとする減反廃止政策のもとでは、米づくりをやめる農家が増え、さらにこの流れが加速することが懸念される。

このような状況の中で、いかに農地を持続的に利用し、農業生産を維持発展させていくかが大きな課題である。
そこで、現在、県では、「ひょうご農林水産ビジョン2020」に基づいて、農地の有効利用や多様化する消費者ニーズに対応した農産物の生産などの取り組みを推進しているところであり、これら国の進める政策に課題はあるものの、この方針のもと、地域の理解と協力のもとに積極的な農地の利用と集積の対策が図られ、競争力のある農業の推進を目指すべきと考えるが、県として、持続的に農地を維持し利用していくために、今後どのように取り組んでいくのか、当局のご所見を伺いたい。

6 安全・安心が確保された農畜水産物のブランドイメージ向上について

質問の第6は、「安全・安心が確保された農畜水産物のブランドイメージ向上について」である。
今年10月、大阪市に本社を置く阪急阪神ホテルズが運営する系列のホテルで提供された料理が、実際にはメニューと異なる食材を使っていた不適切表示問題が表面化して以来、その後、本県を含め、全国各地のホテルや旅館などでも同様の問題が次々と発覚し、大きな社会問題となっている。

食材によっては、味や食感では区別がつかないものがあるなど、消費者にとっては提供された料理を信用するほかないのが実情だろう。
今回メニュー表示と違う食材を使用したことは、消費者の信頼を大きく裏切る行為であり、ましてや、一部のホテルでは数年以上前から不適切な表示をしていたことは、食材についての認識不足では済まされない組織的な関与があったのではないかと疑いを持つ。

さらには、本県においても、富久娘酒造が純米酒に醸造アルコールを混ぜる等、消費者の信頼を裏切る問題を起こしており、全国ブランドである「灘の酒」のブランドイメージを損ないかねない事態となっている。

過去においてBSEや鳥インフルエンザの発生、食品の偽装表示等食の安全を揺るがす問題が発生し、県民の食品への安全性に対する不安感や不信感が高まり、県産食品が持つ本来のおいしさ等が十分に評価されにくい状況となったため、こうした状況に対応するために、平成16年7月に「ひょうご食品認証制度」を創設し、安全・安心で個性・特長がある食品を認証する取組を進め、食品に対する消費者の信頼の確保に努めているところである。

このような様々な取組により、県民の間には、少々値段は高くてもより安全な食品、地元ブランドを好むなどの傾向が見られ、食の安全・安心への関心が高まっていると言える。
県はこれまでトレーサビリティを指導監督し、流通上の監視を強化しているところである。一方、現在、県が認証している「ひょうご安心ブランド」は、587件、「ひょうご推奨ブランド」は1,063件であるが、消費者が食に対して大きな不安を感じている今こそ、これを好機と捉えて、より一層、これらの認証制度を推進していく必要がある。

また、本県では、農林水産業経営者が生産から加工・販売までを一体的に行う6次産業化や農商工連携などの取組を推進していることから、今後、他にはない個性的な県産加工食品も増えてくることを考えれば、あわせて、これらの加工食品の安全面における優位性をPRしていくことにより、ブランドイメージはさらに向上するのではないか。

そこで、食の安全・安心をより一層確保するためには、生産者である農林水産業者、加工業者、実際の提供者である販売業者において、自らチェック機能を強化すべきことは言うまでもないが、松葉ガニや神戸ビーフ、山田錦など全国的にも有名な農畜水産物を数多く有する本県にとって、これらの食の安全・安心を確保したブランドイメージをさらに向上していくために、今後、どのように取り組んでいくのか、当局のご所見を伺いたい。

7 人口変動を見据えた県立高等学校の教育改革の方向性について

最後の質問は、「人口変動を見据えた県立高等学校の教育改革の方向性について」である。
県では、国際化、情報化、少子・高齢化等に伴う様々な課題に対応するために、平成12年2月に「県立高等学校教育改革第一次実施計画」を策定し、学びたいことが学べる魅力ある学校づくりを目指してきた。

その後の「県立高等学校教育改革第二次実施計画」の策定にあたり、学識経験者や学校教育関係者等で構成される「県立高等学校長期構想検討委員会」から、

①魅力ある学校づくりの推進、

②県立高等学校の望ましい規模と配置、

③入学者選抜制度・方法の改善等について、

生徒数の動向や地域の実情などを把握しながら改革を進めていく必要があるとの提言がなされた。

この提言を踏まえ、21年度から25年度までの5年間を計画期間として策定された「第二次実施計画」では、普通科での幅広い分野にわたる特色ある類型の設置や大学との連携、全ての学科での就業体験の推進など魅力ある学校づくりを進めるほかに、県立高校の適正規模について、普通科は6~8学級、総合学科は4学級以上、職業教育を主とする学科の単独校で3学級以上としている。

この計画のもと、具体的には、経済・雇用情勢の変化やグローバル化の進展など学校教育を取り巻く環境の変化に対応して、特色ある専門学科等の設置や特色選抜などの実施に加え、生徒の多様な選択肢を確保するため、平成27年度から現行の16学区が5学区に再編されることになっている。

このように、社会情勢の変化に対応して、絶えず高校の教育環境を改革していくことは、社会へ出るための準備期間である高校生活を送る生徒達にとって非常に重要である。改革は大事だが制度が変わることへの県民の不安、懸念に対して制度の変更する場合などは、経緯、目的、意義、それによって得られる効果などについて県民に向けた丁寧な説明も必要であろう。

一方で、現在、検討が進められている第2期「ひょうご教育創造プラン(兵庫教育基本計画)」の策定に向けて、県立高等学校の教育改革を推進するにあたっては、複雑化した入学者選抜制度・方法の改善や、少子化が進む中での望ましい学校規模の確保と配置の適正化などが課題として上がっている。

現在、県内の市立を含めた公立高校数が160校で、全日制の県立高校に通学し
ている生徒数は87,755名となっている。私立高校を含めると県下212校の高校
に約14万人の生徒が学んでいる。

しかしながら、長期的に見ると、国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、本県の将来推計人口は、2040年には総数で467万人と2010年の558万人に比べて91万人も減少しており、15歳~19歳の人口も17万人と2010年の26.9万人に比べて10万人近く減少するという結果が出ているように、子どもの数は県内全域で減少し、特に、淡路、但馬、西播磨地域では人口減少が顕著となる。

今後の高校教育改革にあたっては、人口変動、つまり子どもの急速な減少に伴う環境の変化を念頭においた改革が必要になってくる。
公教育の一翼を担う私学との共存も図りながら、高等学校の適正規模を考えると統廃合を進めていかざるを得ないのではないか。

このように、将来的に人口減少は急速に進んでいくことから、次期計画の策定に当たっては、この点を踏まえ、10~15年程度の長期的な視点に立った改革の方向性を示していくことも必要ではないか。
そこで、県内人口は、急速な少子化とともに、さらに地域による人口偏在が顕著になると予測されているが、今後とも、子ども達が安心して学びたいことが学べる魅力ある学校づくりを推進していくために、将来的な見通しとして、県立高等学校の教育改革の方向性について、当局のご所見を伺いたい。

大塚 たかひろ
(神戸須磨区)

一般質問

(盛 耕三 議員)[発言方式:分割]

1 子どもの貧困について
(1)県内の現況について
(2)子どもの学習支援について
(3)家庭への支援について
2 1~4歳児の死亡率低減について
(1)小児の重篤患者に対する適切な医療の提供について
(2)幼児における不慮の事故の防止について
3 家庭的保育の推進について

質問全文

平成25年12月 第320回定例県議会 一般質問要旨案

質 問 日:2013年12月9日(月)

質 問 者 : 盛 耕三 議員

質問形式 : 分割質問・分割答弁方式

社会保障・人口問題研究所の日本の将来人口推計(中位推計)によると、平成22年に1億2,800万人の日本人口は、50年後には8,674万人へと32,3%減少。経済を支える15~64歳の生産年齢人口に至っては46%も少なくなり、65歳以上の高齢者の比率は40%近くになります。OECD(経済協力開発機構)諸国で、平成11年以降、生産年齢人口と労働人口が減少してきたのは、日本だけです。内閣府が29~49歳男女を対象に平成22年に行った国際意識調査では、北欧・米仏では子どもを増やしたい者が80%近くかそれ以上だったのに対し、日本では50%以下でありました。

先進工業国で出生率を引き下げる大きな要因は、経済発展に伴う女性就業の一般化に、子育てと就業を両立させるに必要な制度・慣行・政策が付いていけないことにあります。昭和45年頃から日本でも女性の就業が普及し始め、女性就業率の上昇、女性の初婚年齢の上昇、出生率低下という悪循環に陥りましたが、両立支援体制が整い、明日は今日よりも良くなると期待できれば、子どもを持ちたい者も増えると考えられます。

出生率が2.0近くになった大方の国では、家事と育児の両立を支援する家族政策にGDP(国内総生産)の3%前後を投じています。現在の日本に北欧・英仏並みの予算を望んでも非現実的ではありますが、少子化を食い止めたフランスの場合は、出産・幼児教育に重点的に財源を振り向けている事実があります。

保育と就業の両立支援が必要なのは、それが未来への投資であり、先進工業国では人口と就業人口の増減が長期的には国の活力を左右するからであります。労働に従事し、税金を納め、消費を促進していくことが出来る割合を増やすことが肝要であります。ただでさえ数が少なくなっていく子どもたちがそれぞれの潜在能力を存分に発揮し、社会に貢献する機会が与えられなければ、日本の活力はますます衰退して行くでしょう。それは兵庫県としても同様であります。

少子化問題への対応として現在いろいろと進められているのは、出生率を上げることへの直接・間接的な施策であります。しかし、すでに生まれてきている子どもたちが健やかに育ち、それぞれの能力に応じて社会に貢献できるようになってもらうための施策も重要ではないかと考えます。
そのような観点から以下の質問を分割にて行います。

1 子どもの貧困について

(1)県内の現況について

まず、第一の質問は、「子どもの貧困について」であります。
子どもの貧困は、その子にとっても不幸ですが、社会にとっても大損失であります。ところが、18歳未満の子どもの貧困率は、年々増えているという現状があります。厚生労働省の調査では、相対的貧困率が昭和60年の10.9%に対し、平成12年は14.5%、平成21年は15.7%に増えたとのことです。

また、大人が2人以上いる世帯の場合は、12.7%に止まっているのに対し、一人親世帯では50.8%と2世帯に1世帯を占めています。これは、OECD(経済協力開発機構)加盟の34ヵ国中、日本の子どもの貧困率は11番目に高く、一人親家庭ではデーターのある32ヵ国中2番目に高い。生活がやっとの家庭では、子どもの教育に十分お金をかけることが出来ず、それが子どもの学習や進学に影響し、そのため社会に出ても有利な職に就くことが出来ずに貧困状態に陥るという貧困の連鎖になりがちです。

そのような中、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が本年6月19日に成立しました。第8条で「政府は、子どもの貧困対策を総合的に推進するため、子どもの貧困対策に関する大綱を定めなければならない。」とし、第9条で「都道府県は、大綱を勘案して、当該都道府県における子どもの貧困対策についての計画を定めるよう努めるものとする。」、第10条では「教育の支援」、第11条では「生活の支援」、第12条では「保護者に対する就労の支援」、第13条では「経済的支援」、第14条では「調査研究」、それぞれについて必要な施策を講ずるものとする、と定めています。

しかし、貧困率を改善するために有効な数値目標が法律には盛り込まれず、対策の具体的な計画については、都道府県の努力規定に止まってしまいました。
そこでお尋ねします。1点目、県内の現況についてどのような認識を持っておられますか。また、県として子どもの貧困対策についての計画を策定する予定はあるのか、併せてお伺いします。

(2)子どもの学習支援について

次に2点目、兵庫県は現在、学習支援事業に取り組んでおられます。子どもが貧困であることによる多岐に亘る悪影響を断つためには、医療・住居・生活安定など多くの施策が必要でありますが、根本的に貧困から抜け出す力をそのような状況にある子どもが持つためには、教育の機会均等、特に義務教育が保障すべき「最低限の教育」を身に付けることができる環境を整えることが必要であります。

その目標は、格差の解消ではなく、全ての子どもが社会に出て「自立して生きていく」ための基礎としての教育を身に付けることと考えます。
このため、学校では、すべての子どもたちに一定の学力が身につくよう、理解が不十分な子どもへの個別指導や補充学習などをはじめ様々な支援が行われています。

しかしながら、生活保護世帯の子どもは、一般世帯より進学率が低く、学校での取組だけではなく、学校外での学習支援も必要ではないかと考えます。
経済的な理由で塾等に通えない子どもたちへの支援として、生活保護世帯の子どもたちを対象に、教員OBや大学生などを活用した学校外での学習支援の取り組みが全国的に進められており、本県においても、こうした取組を支援し、拡げていく必要があります。

そこで、貧困家庭の子どもたちの学校外での学習活動への支援にかかる考え方や方向性について、当局のご所見をお伺いします。

(3)家庭への支援について

次に3点目、学習支援をしているからと言って「貧困対策をしている」とはならないのはご承知の通りです。特に親の就労と切り離しては、子どもの貧困は解決できません。子どもを入り口として家庭を支援していくことが求められるわけです。つまり、奨学金・学習支援・親の就労支援などに優先順位をつけて財源を充てる必要があります。

そこで、子どもへの貧困対策を行っていく上で、家庭への支援の必要性についてどのように認識しているのか、当局のご所見をお伺いします。

2 1~4歳児の死亡率低減について

(1)小児の重篤患者に対する適切な医療の提供について

第二の質問は、「1~4歳児の死亡率低減について」であります。
日本は、平成22年の1~4歳児の死亡率が、人口10万人当たり22.3人となっています。これは先進国19か国の中で、ワースト3位と高い値であります。因みに最下位はアメリカです。また、WHOのデーターでは、先進国の平均を大幅に上回る状態が、過去20年間続いています。新生児と乳児の死亡率の低さは、世界でそれぞれ1位と3位であるにもかかわらずです。

このちぐはぐさの背景には、従来の小児科医療が、小規模な病院に支えられてきたことにあると言われています。厚生労働省の調査では、亡くなった1~4歳の幼児の多くは、重症例を扱うことが少ない病院で亡くなっているとのことです。平成24年の1~4歳児の死因の1位は先天性によるものですが、2位は交通事故や誤って風呂で溺れたりするなどの「不慮の事故」です。

心肺停止に陥った子どもには、速やかな蘇生処置を講じる必要がありますが、小規模な病院の小児科では、重篤患者への対応が不可能である場合が多いとのことであります。重篤の子どもを救うためには、小児科医と小児専門の看護師、小児集中治療室(PICU)を備えて、24時間365日対応できる体制が必要です。一般的に救命救急センターは、成人中心に考えられており、勤務する医師も成人中心の先生が多く、子どもの診断治療は苦手で対応できないのが現実とも言われています。

そこで重要なのは、医師同士の連携とドクターヘリなどの搬送体制の整備であり、それにより地域格差を解消することも可能になります。平成23年度に千葉県は、小児重篤患者に対する適切な医療の提供を目的に、「小児救命集中治療ネットワーク」を、「ちば救急医療ネット」を充実する形で構築しました。

一次救急から三次救急へはそれなりに流れていますが、三次救急から一次救急へはなかなか流れていかない現状があります。成人でも起こっていることですが、入院患者が上位の病院に滞留し、医療機関が目詰まりする現象を起こしています。

小児は成人よりもさらに酷く、医療体制や設備を少々強化してもたちまち目詰まりする性質を持っています。(超急性期→急性期→慢性期)というように患者がスムーズに流れていけば、上位の医療機関の機能が常に高いレベルで維持できますが、成人でも大きな課題で、小児の方が下流医療機関の体制は貧弱で、物理的に全く足りない状況です。

つまり、上流医療機関の整備充実よりも下流医療機関の整備拡大が急務と考えられます。下流医療機関は、救急医療の足腰に例えることができ、下流医療機関の整備により、上流医療機関の機能回復を図るのが、遠回りのようですが、長期的には有効と考えられます。

そこで1点目、県の1次、2次小児救急医療体制に対する支援状況、また、現在、県内に整備されているPICUの活用状況やドクターヘリの運用状況などから、小児の重篤患者に対する適切な医療の提供について、今後どのように進めていこうとしているのか、ご所見をお伺いします。

(2)幼児における不慮の事故の防止について

2点目は、幼児における不慮の事故の防止についてであります。
死亡率低減のための対策には、不慮の事故や虐待、病気など背景の把握が必要であります。今年6月の産経新聞の記事によると、日本小児科学会と国立成育医療研究センターは、子どもの死に関する詳細な情報を収集し、不慮の事故など背景の把握を通じて再発防止につなげる「子どもの死亡登録・検証制度」導入に向け、試験調査を開始しました。

 東京都、群馬県、京都市、北九州市の2都県2市の医療機関を対象に、過去1年間に経験した5歳未満の死亡事例を分析し、年内に結果を取りまとめるとしています。目的は、死亡診断書では掴めない死亡の背景を明らかにすることです。例えば、溺死の場合は海や川、浴槽などどのような場所で発生したか、直前に子どもや保護者が何をしていたかなどを調べる。また、あざなど虐待が疑われる形跡の有無を医師が確認したか、児童相談所への通報など適切な対応が取られていたか確認する。

そして、救急搬送受け入れを断った病院の有無、受け入れ先決定までに要した時間も把握する。小児救急の整備状況が子どもの死にどう影響するかを検証し、将来的には、全国で検証制度を整備し、子どもの死亡率低減に役立てたいとのことであります。

一方で、家庭における事故防止とともに、転倒や転落、タバコの誤飲、熱湯による火傷などの事故が起きた場合に、救急隊が現場に着く前に実施される家族による応急措置も死亡の防止に重要です。先天性によるものを除くと不慮の事故が死因の一位なら、まずなすべきことは、親に対する家庭における事故防止の啓発と起きた場合の応急措置の周知です。
事故防止の啓発と起きた場合の応急措置の周知についての当局のご所見をお伺いします。

3 家庭的保育の推進について

第3の質問は、「家庭的保育の推進について」であります。
保育者の自宅等で主に3歳未満の子どもを預かる保育形態である「家庭的保育」は、地方自治体が独自に制度を作り実施してきました。国は平成12年度に国庫補助事業として家庭的保育事業を開始し、平成22年度から児童福祉法上の事業として位置づけ、現状は、国庫補助事業と県単独事業が並存しています。

平成21年度、家庭的保育全体に占める国庫補助事業分は、保育者全体の約2割、利用児童全体の約3割となっております。これまでわが国では保育所を整備することで保育需要に対応してきたため、家庭的保育を利用する児童は少ないのが現状です。

例えば、認可保育所を見ると、平成22年度時点で全国に約2万3千ヵ所あり、利用児童数も約208万人と多いのに対し、家庭的保育は、国・地方単独を合わせても、平成21年度時点で、保育者が約1,200人、利用児童数は約2,700人(3歳未満児の約0.08%)に過ぎません。また、諸外国と比較しても、家庭的保育を利用している割合は、フランスで29%、スウエーデンで4%、ドイツで2%と、いずれも日本より高い割合を示しています。

「子ども・子育てビジョン」によると、国は、家庭的保育事業の利用児童数を、平成26年度に1万9千人まで増やす目標を掲げています。待機児童対策として期待されるのは、待機児童が多い3歳未満児を預かる保育サービスであることに加えて、居宅等で行うために保育所よりも設置・運営コストが低いからです。子ども1人当たりの月額運営費は、認可保育所の場合0歳児で約28万円、1・2歳児で約17万円に対し、家庭的保育の場合約12万円と言われています。

しかし、家庭的保育の存在意義は本来、待機児童対策ではなく、家庭的という保育所とは異なる保育を提供することにあります。乳幼児の中には、集団生活よりも家庭的な環境が適する子どもがいます。また、東京都「インターネット福祉保健改革モニターアンケート2008年」によると、保育を利用する場合、0~1歳までは家庭的保育が最も良いと考える者は5割強に上るということです。集団保育と異なるニーズの受け皿として、家庭的保育の普及が求められています。そのためには、次の3点がポイントとなります。

①子どもの預け先を探す段階から、保護者が保育所と家庭的保育を比較検討できるように、自治体の窓口で紹介を行うこと。
②子どもたちの交流範囲を拡げたり、事故等のリスク対策のために、家庭的保育と保育所との連携を一層推進することが必要。

③家庭的保育の可能性を拡げるために、新しいタイプの保育サービスを提供していくこと。
例えば、賃貸物件において3人の保育者が9人まで、保育者にそれぞれ補助者がいる場合には15人までの子どもを預かる家庭的保育の事例です。これは複数の保育者が相互に協力しながら保育にあたることが出来る形式です。

ところで、家庭的保育は「人で質を担保」するのに対し、保育所は「システムで質を担保」しています。現在保育士不足が深刻であるため、力量・経験がある家庭的保育のなり手を発掘することは容易ではありません。県では、家庭的保育事業を実施するために必要な改修、研修等費用の一部を補助しており、加えて、潜在保育士の就職や活用支援を行っています。
県の目標に対する現況を鑑みて、家庭的保育が持つメリットを思う時、より積極的に普及を進める施策が必要と考えますが、ご所見を伺います。

盛 耕三
(選挙区:相生市)

(掛水 すみえ 議員)[発言方式:分割]

1 「新しい公共」のしくみづくりについて
(1)円卓会議を活用した障がい者雇用・就労の促進について
(2)地域で担う生活困窮者への支援について
2 ピア・サポートについて
(1)がん対策におけるピア・サポートについて
(2)精神障がい者によるピア・サポートについて
(3)学校教育におけるピア・サポートについて
3 癒しの川づくりについて

質問全文

平成25年12月 第320回定例県議会 一般質問要旨案

質 問 日:2013年12月10日(火)

質 問 者 : 掛水 すみえ 議員

質問形式 : 分割質問

1 「新しい公共」のしくみづくりについて

(1)円卓会議を活用した障がい者雇用・就労の促進について

早速ですが、通告に基づき、以下3項目6問にわたり、知事並びに関係当局に質問をいたします。
質問の第1は、「『新しい公共』のしくみづくりについて」2点お伺いします。この項目の1点目は、「円卓会議を活用した障がい者雇用・就労の促進について」お伺いします。
知事は、今任期の始まりにあたり、将来の課題を見据え事前対策を計画的に進めるために「県民の知恵と力を結集する参画と協働の推進」を基本姿勢の一つとして掲げられています。

阪神・淡路大震災を契機に「参画と協働」の理念が生まれました。その後、1998年にはNPO法が施行され、15年の年月が経過した現在では、県内のNPO法人は2,000団体を超える状況となっています。財政基盤や人的基盤が脆弱なNPOもまだまだあるものの、若い社会起業家の活躍やNPOに若者が携わるようになるなど、新しい公共の兆しを感じています。

このようななか、多様なステークホルダーが社会責任を分かち合い社会課題を解決する円卓会議は、自助・共助の意識の高まりつつある兵庫県にとって大きな推進力となるものです。
今後、新しい公共の仕組みづくりを着実に進めていくべきと考えます。

特に、障がい者の雇用・就労においては、その仕組みを早急に構築していくべきであります。法定雇用率が今年の4月より引き上げられ、常用雇用労働者50~56人未満の企業にも障がい者の雇用義務が発生しています。また2015年には、法定雇用率未達成に伴う納付金の対象が常用雇用労働者100人超の企業にまで拡大されるなど、今後も引き続き改正障害者雇用促進法が順次施行されていきます。特に障がい者雇用の経験の乏しい中小企業にとっては、法制度や雇用管理の理解が急務となります。

障がい者の雇用に積極的に取り組んでいる中小企業の事例を見ますと、障がい者の雇用自体を経営改善のための積極的方策として捉えています。具体には、専用機器の導入による訓練や作業工程の見直しにより、改善プロセスが確立されています。このことにより、従業員の働き方が変わり、個人の生産性の向上につながるだけでなく、組織の生産性の向上へもつながり、さらなる雇用を生み出す結果となります。

また、このような企業は、普段から社員・地域社会・顧客・学校など大事な利害関係者とのコミュニケーションを大事にしてているように感じています。
コミュニケーションを行うことにより、障がい者の雇用に対して二の足を踏んでいる企業は障がい者に対する理解が進むだけでなく、障がい者の側にとっても、自身の状況と照らし合わせて、企業に受け入れてもらうにはどのような能力が求められているのかを理解することができます。

県においても、今年の3月に障がい者の雇用及び就労対策の総合的な調整・推進を図る全庁的な推進体制として対策本部を設置され、各種取り組みが進められていますが、障がい者の雇用は必ずしも順調に運んでいるとはいえません。その要因の一つとして、関係者とのコミュニケーションが不足しているのではないかと感じています。

そこで、以上の点を踏まえ、県においても、地域の課題が複雑・多様化する中で、NPOをはじめとする民間団体や企業・市民など地域で活動されている方で構成される円卓会議を活用し、広く実態を聞く機会を持つことにより障がい者の雇用・就労の現状を理解し、施策に反映させていくべきと考えますが、現状認識についてご所見をお伺いします。

(2)地域で担う生活困窮者への支援について

この項目の2点目は「地域で担う生活困窮者への支援について」です。
生活困窮者に対する自立支援については、今年の6月定例会のわが会派の代表質問において、複合的課題への対応が困難であることから、総合的な支援体制の構築が必要である旨の質問を行ったところ、社会福祉協議会やNPO法人との民間団体とのネットワークづくりを進め、ワンストップ型の相談支援体制の構築を図るとの答弁がありました。

生活困窮者自立支援法は、生活保護に至る一歩手前の人たちを支援し、就労に導くことを目的として今年の5月に生活保護法の一部改正案とともに国会へ提出されましたが、審議未了のうえ、一旦廃案となりましたが、現在、開催中の国会に両法案を再提出し、先週末にようやく可決されました。

法案の内容を見てみますと、①就労その他の自立に関する相談支援や事業利用のためのプランを作成する自立相談支援事業の実施や②離職により住宅を失った生活困窮者等に対して「住居確保給付金」の支給が、福祉事務所設置自治体が必ず実施しなければならない必須事業とされている一方で、①就労準備支援事業、②一時生活支援事業、③家計相談支援事業、④学習支援事業については、任意事業とされており、福祉事務所設置自治体に裁量を委ねています。

従いまして、自治体の取り組み方の違いにより地域差が生じることとなります。
このほか、就労準備のための支援を受けても一般就労へ移行できない方を対象として、事業者が就労の機会の提供を行い、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等を行う就労訓練事業を実施する場合には、その申請に基づき一定の基準に該当する事業を都道府県知事が認定する仕組みが設けられました。これは、一般就労への追い込みではなく、いわゆる中間的就労と呼ばれるもので、たとえ部分的であってもしっかりと社会参加できる手だてを確保していこうとするものであり、私も大変評価しているところです。

法案の基礎となった社会保障審議会の報告書にも『個々人の事情と段階に応じ、想いに寄り添った支援は、社会福祉協議会、社会福祉法人、NPOや社会貢献の観点から事業を実施する民間企業などのいわゆる社会的企業、民生委員・児童委員その他様々なインフォーマルな支援組織など、民間の柔軟で多様な取組が活かされ、国や自治体がこれをしっかり支えることで可能になること、加えて、すでに地域ごとに多様な民間団体が活動を展開しており、その達成は新たな生活支援体系においても継承されていくべきである』ことが記載されています。  既に今年度より、全国68自治体でモデル事業が始まり、兵庫県においても神戸市で実施しています。

法案が成立し、予定どおり施行されれば、2015年度より県を含む全国900の福祉事務所設置自治体で事業が実施されることとなり、本県においても、遅くとも来年の夏頃までには、少なくとも取組の方向性について、明確にしておくなど、準備をする必要があります。

そこで、経済的に困窮状態にある者や、社会的に孤立状態にある者など、生活困窮者に対しては個別の状況に応じた生活再建支援が求められるものでありますが、地域社会が崩れつつある中、地域で担う生活困窮者への生活支援体系の構築に向けて、どのように進めていこうとされているのかご所見をお伺いします。

2 ピア・サポートについて

質問の第2は、「ピア・サポートについて」であります。
最近、「ピア・サポート」という言葉をよく耳にするようになってきています。ピア・サポートとは、同じような立場にある仲間である「ピア(peer)」によるサポートで、家族や専門家によるサポートのように「支援する人」と「支援される人」が明確な関係であるサポートとは異なったアプローチによる支援で、注目されつつあります。

今回は、その中でも、活動が盛んになりつつあります①がん対策、②精神障がい者、③教育の3分野におけるピア・サポートについて、順次質問してまいります。

(1)がん対策におけるピア・サポートについて

はじめに、「がん対策におけるピア・サポートについて」お伺いします。
医療技術が進歩し、治療方法が多様化する一方で、情報端末の多様化に伴い多くの情報が溢れ、患者やその家族が治療方法の選択に迷う場面も多くなってきています。これまでは、拠点病院を中心に相談支援センターが設置され、患者や家族に対する不安や疑問に対応してきたところであります。

本県でも、今年の3月に改訂されました「兵庫県がん対策推進計画」では、「拠点病院の相談支援センター等は、相談支援に十分な経験を持つ患者団体等と連携し、ピアサポーターによる実体験を活かした相談を実施するよう努める。」とし、ピアサポーターによる支援も視野に入れた取り組みがなされているところです。

また、国においても、2012年6月に改訂されたがん対策推進基本計画において、学会、医療機関、患者団体、企業等を中心として、がん患者サロンや患者と同じような経験を持つ者による支援(ピア・サポート)などの相談支援や情報提供に係る取組も広がりつつあるとされています。しかしながら、その一方で、相談支援センターの実績や体制に差がみられ、こうした差が相談支援や情報提供の質にも影響していることが懸念されている現状が指摘されているとともに、取組むべき施策として、「がん患者の不安や悩みを軽減するためには、がんを経験した者もがん患者に対する相談支援に参加することが必要であり、国と地方公共団体等は、ピア・サポートを推進するための研修を実施するなど、がん患者・経験者との協働を進め、ピア・サポートをさらに充実するよう努める。」と明記しています。

 計画に基づき、公益財団法人日本対がん協会では、2011年度より厚生労働省から委託を受け、がん患者またはその家族の方が行うピアサポーターなどの相談員に対し、ピアサポーターとしての質を確保するため、ピア・サポートの目的・内容・守るべき事柄・基本の医療知識に関する研修プログラムを作成し、テキストや模擬相談を収録したDVDなどの提供を行っています。

兵庫県においても、2011年度から2年間ピアサポーターの養成をNPO法人に委託して行っており、がん患者には、治療のために離職を余儀なくされた方も多く、自身の体験を通じて活動できるピアサポーターが働く場の一つになればと願っています。

そこで、相談者の気持ちに寄り添い、必要に応じて医療の専門家につないでいくことできるピアサポーターには、今後相談支援体制の充実に貢献する役割が期待されているところですが、今後、がん対策におけるピア・サポートの充実に向けてどのように取り組んでいこうとされているのか、ご所見をお伺いします。

(2)精神障がい者によるピア・サポートについて

先ほどの、がん対策に引き続き、ピアサポーターの先駆けともいえる「精神障がい者によるピア・サポート」についてお伺いします。
有志の議員で構成している兵庫県議会議員精神保健研究会では毎年地域に出かけて調査を実施しており、昨年淡路地区の淡路障害者生活支援センターを調査した際には、施設案内をしていただいたのは精神障がいの体験がある方で、現在は、ピアサポーターとして活動しているとのことでした。

また、会派で訪れた富山型地域共生複合施設「にぎやか」でも、パワーポイントで説明していただいたのは施設入所者でもある精神障がい者で、有償ボランティア・ピアサポーターとして活動している人達であり、徐々にではありますが、ピア・サポートによる支援が拡がっている様子を実感しています。

これまでの精神障がい者への福祉サービスは、治療という名のもとで一方的なサービスを提供してきた結果、精神障がい者に、生活力をはじめ主体性や自尊心、そして生きる希望を失うなどの施設症という二次的障がいを生み出す結果となったことが指摘されています。

このような状況の中、厚生労働省が2004年9月にまとめました「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において、「入院医療中心から地域生活中心へ」という精神保健医療福祉施策の基本方針が示されましたが、ピア・サポートによる支援は、いまだ十分なものとはなっていません。

また、ピア・サポーターは、「当事者スタッフ」「メンバースタッフ」「ピアスタッフ」「ピア・カウンセラー」「ピア・ヘルパー」と様々な呼び方をされており、精神障がい者の雇用の場としても注目されています。

そこで、ピアサポーターとして支援する側だけでなく、支援を受ける側の精神障がい者も社会復帰し、地域において社会生活を営むことができるよう、積極的にピアサポーターを養成していくべきと考えますが、本県における精神障害者によるピア・サポートの現状並びに今後の取組の方向性についてご所見をお伺いします。

(3)学校教育におけるピア・サポートについて

ピア・サポート関連の最後に、「学校教育におけるピア・サポートについて」お伺いします。
昨今の社会構造や家族構成の変化に伴い、大人だけではなく、子どもたちの人間関係も希薄化しています。その結果、他者を思いやる気持ちや規範意識が低下し、人間関係がうまく築けずに悩む子どもが増加しています。その背景として、仲間集団であるピア・グループによる体験が不足していることがその大きな要因であると考えられています。

このような状況を受けて、子どもたち相互の人間関係を豊かにし、対人関係能力を育成するために、教師の指導援助のもと、各学校の状況に応じた学習の場を設定し、そこで得た知識やスキルをもとに仲間を思いやり、支え合う実践活動を行っているケースが増えてきています。

例えば、大阪府寝屋川市では、2009年度から市内の小中学校全校で、小学6年生と中学1年生を対象にピア・サポートによる学ぶ取り組みを実施しており、互いを思いやることができる人間関係を作りながら、児童・生徒同士に起こるトラブルの未然防止や問題が発生した時に自分たちの手で解決する方法などを身につけています。
また、今年の8月には、『情けは人のためならず』ということわざを初めて科学的に実証したとの報道がありました。

大阪大学大学院の大西先生の研究グループが米オンライン科学誌で発表したもので、大阪府内の保育園の5~6歳児70人を観察対象にし、うち親切な行動をよく取る12人を「親切児」とした。園児らが遊んでいる時に、親切児が他の子の服のボタンを留めたり、物を貸したりするなどした際、1メートル以内にいてこれを見た園児が10分間にどのように振る舞うのかを観察しました。

その結果、親切児が親切をした場合と、しなかった場合を約250回にわたり比較した結果、親切をした場合の方が、周りの園児が親切児を手伝ったりする頻度が高くなり、親しく話し掛け、体を触るなど他者を好ましく思う言動も増え、「親切が回り回って自分に返ってくること」が結論付けられました。

人が生きていくためには、他者との協力が不可欠であり、親切な行動を評価し、親切を周りから返してもらえる仕組みが進化の過程で備わったものであります。
兵庫県の学校教育においてもお互いの学びを高め合う活動が重視され、教育目標として「自立的に生きる力を培い、創造性を伸ばす教育に取り組む」ことが掲げられていますが、学習障害・困難を引き起こしている状況に対して、何とか手立てを講じて学業に専念できる手だてを考えていきたいと考える次第であります。「学校現場で困った子は困っている子」とある県立高校の校長先生の言葉が胸に残ります。

そこで、以上の点を踏まえ、友人からの温かい励ましが、やる気を失いかけた子どもに学習に対する自信を持たせ自己効力感を高めることなど、教育現場におけるピア・サポートの役割が各地で実証されていますが、本県の学校教育におけるピア・サポートの活用についてどのように認識しているのか、教育長のご所見をお伺いします。

3 癒しの川づくりについて

最後の質問は、「癒しの川づくりについて」です。
普段の川は、雄大な流れや綺麗な水面に自然の美しさを写し出し、各種の活動の場を提供してくれるとともに、癒しの空間としてやすらぎやくつろぎを感じさせてくれますが、一度、大雨が降ると一夜にして水の海に一変し、脅威へと変わります。

2000年に当時の東北地方建設局秋田工事事務所が実施した調査結果によりますと、入院中の患者の約90%が川を眺めると心が安らぐとしており、医療・福祉関係者の約70%が、川での活動によって心因性疾患の予防・治療・ケアにおける補助的効果が期待できるとしています。

また、秋田県の本荘第一病院の調査でも、秋田県子吉(こよし)川で、1日30分、10日間に亘って散歩する患者の表情・会話・反応・情緒安定を記録したところ、心の安定さが認められたとの結果が発表されています。その結果を受け、「高齢化社会における川づくり委員会」を利用市民の参画で立ち上げ、せせらぎ水路の整備、流域全体の癒しの川づくりへ向けた活動に発展しているようであり、医療だけでなく福祉・教育での効果も期待されています。

私の地元を流れる武庫川でも、「尼崎の髭の渡しのコスモス園」の美しさは格別であります。髭の渡しのコスモス園では、地域の力により維持されており、震災後20年近く経過した今も続いていることに感動し、散歩をしながら癒されている心地よさを楽しむことができます。このように普段は心地よく楽しむことができる武庫川ですが、約1.5キロ離れた県立芸術文化センターの建設の際には、武庫川の川砂に残された弥生時代の足跡が見つかり、暴れ川だったことが判りました。

今年のような相次ぐ台風等による大雨や集中豪雨、局地的大雨が頻発する状況にあっては、防災・減災としての河川整備は欠かすことができません。
これまでより、川を支配するのではなく、川をなだめながら治めるという考え方に基づき、人が川と向き合いながら治水を行ってきましたが、局地的大雨により河川内の親水公園で水遊びをしていた子供たちなどが流されて亡くなる事故もあり、危険性がクローズアップされる現下の状況を鑑みれば、川から人を遠ざけ、人が川から離れてしまい川の効用の一つである「癒し」の部分が削がれてしまうのではないかと懸念しています。川は平時にあっては、身近な自然環境の一つであります。

そこで、県でも、治水・利水や親水等に関して、「ひょうご・人と自然の川づくり基本理念・基本方針」を策定し、その具体的な推進方策を2002年にとりまとめられてから10年の年月が経過した現在、治水・利水面が重要視されますが、本県において親しみがある癒しの川づくりを今後どのように進めていくのか、ご所見をお伺いします。

掛水 すみえ
(選挙区:西宮市)