議会の動き

黒田 一美 議員が代表質問を実施

質問日:平成27年12月4日(金)

質問者:黒田 一美 政務調査会長

質問方式:分割方式

【分割箇所:1(1)、(2)、2(1)~(2)一括、3~4一括、5~6一括】

1 兵庫における医療・介護の充実について

(1)地域包括ケアシステムの現状と課題について

今から10年後の2025年には、団塊の世代が全員75歳以上になり、65歳以上の高齢者人口が3,500万人(人口比30%)に達するいわゆる「2025年問題」が懸念されている。それに伴い、慢性的な疾患を抱える高齢者や要介護人口も約1.5倍になると予想され、医療や介護の受け皿整備が大きな課題となっている。

そしてこのような事態に対応するため、昨年、いわゆる医療介護総合確保推進法が成立し、病院機能の適切な発揮だけでなく、在宅等での医療・介護を推進する体制、地域包括ケアシステムが動き出した。

県では、2025年を見据え、効率的かつ質の高い医療提供体制を確保するため地域医療構想の策定に向けて取り組んでいる。本年8月の医療審議会保健医療計画部会に提出された資料によると、高度急性期の病床数が約1,000床、回復期は12,000床ほど不足、急性期と慢性期についてはそれぞれ約10,000床、3,000床過剰であるとの見込みである。

もとより、議論を進めるスタート台の数値であり、議論が進むにつれて変わっていくものとは思うが、私が危惧するのは、大幅な病床不足が見込まれる回復期の患者への対応である。回復期とは、急性期を脱し、在宅・生活復帰へ向けた支援を行う段階であり、条件が整えば、在宅等での医療・看護へ移行していく。国も、昨年度の診療報酬改定で、在宅復帰促進の要素を盛り込んでいる。また、要介護となっても自宅や子どもの家等での介護を希望する人が多い中、在宅医療・介護の必要性は今後ますます高まっていくだろう。そうであれば、その受け皿となる在宅医療・介護の条件整備はどのような状況にあるのか、県としても不断に把握していく必要がある。

今後必要な病床数や介護施設数などの具体的な数値は、平成30年の保健医療計画と介護保険事業支援計画(県老人福祉計画)の同時改定に向けた作業の中で検討されていくが、そもそも、その数値的な目標が達成されるためには、在宅医療・介護を支える地域包括ケアシステムが円滑に機能していることが重要な前提条件となる。しかしながら私が知る限りでも、訪問看護・介護の現場では、医療機関や介護施設と同様、看護師や介護士不足の状況にあり、体制を維持するのが難しいとの声がある。また、ケアマネジャーにとっては医師との連携をよりスムーズにする必要があるとの意見もあるようだ。

そこで、現在県で把握されている在宅医療・介護を実現する上での地域包括ケアシステムの課題と、今後その解消に向けた方策の展開について、どのように認識されているのか、当局の所見を伺う。

(2)療養病床・介護施設等の確保について

私は在宅医療・介護を推進する一方で、核家族化が進む中、在宅での医療・介護を受けることができない人のために、医療機関や介護施設等の確保も重要であると考えている。これらが一定数確保されることによって、今大きな問題となっている、介護離職の減少につながっていくためであり、先日政府も「介護離職ゼロ」実現のため、現行の介護保険事業計画等に基づく特別養護老人ホームの整備の加速化と、介護施設及びサービス付き高齢者向け住宅、いわゆるサ高住の整備を前倒し・上乗せすると発表したところである。

本県においても、先に述べたとおり、医療機関については、地域医療構想の策定の中で慢性期の病床数を把握しているほか、介護関係では、第6期介護保険事業支援計画に基づき、特養や介護老人保健施設等の整備を計画的に推進している。また、県内に264件あるサ高住のさらなる展開のため、整備費の助成を今年度から拡充したところである。

一方で、国は要介護1以上の高齢者が入居できる介護療養型医療施設(療養病床)を、平成29年度末までに廃止するとの方針を打ち出している。特養への入居が原則として要介護3以上となった今、この施設の存在は大きいはずである。なお、県内に45施設あり、定員は2,150人であるが、これが実際に廃止されるとなると少なからぬ影響があると懸念している。

このような国の動向を見据えつつ、また地域包括ケアシステムのもと、在宅医療・介護を推進しつつも、他方で療養病床や介護施設等の必要数の確保を行っていくことが2025年問題の解決のためには必要だと考えるが、当局はどのような認識を持たれているのか、所見を伺う。

2 TPP大筋合意による県内畜産業及び水産業への影響と対策について

(1)畜産業の対策について

兵庫の力強い農林水産業の展開については、これまでに多くの議員から質問が出されてきた。

先日のTPPの大筋合意によって、これまで以上に多岐にわたる分野で、取組み・支援強化を図っていかなければならないが、今回お聞きしたいのは、国の影響評価で懸念されるとしている品目のうち食肉、特に但馬牛以外の牛及び豚についてである。畜産の中でも、鶏については、TPP不参加国であるブラジルからの輸入が9割を占めるということから、今回は質問しない。

さて、今回の影響評価では、牛肉について、和牛やその交雑種、中でも高品質なものについては、品質・価格面から輸入品との競合は少ないと予想されている。これは、世界ブランドである神戸ビーフを擁する本県にとっては、一見影響が限定的であるように思われるが、県内で肥育されている肥育牛はもちろん但馬牛ばかりではない。TPPにより輸入が増加するアメリカ産やオーストラリア産牛肉と競合する価格帯の乳用種、つまりホルスタイン種、ジャージー種等は県内33戸で1,630頭、交雑種、これは品質による分類を行わない場合の統計となるが、62戸で6,580頭が現在肥育されている。今後、これらの比較的安価な牛肉を生産している畜産家への長期的な影響が懸念される。

また、豚肉についてであるが、差額関税制度の維持により当面、輸入の急増は見込まれないものの、長期的には低価格部位のみの輸入増加による国産豚肉の価格の下落が懸念されている。本県においては、養豚業者は32戸と全国30位の飼育戸数であるが、現在ひょうご雪姫ポークのブランド化を進めるなど販売促進の取組みを強めているところであり、影響は避けなければならない。

TPPの合意による対策として、国際競争力の強化というと、本県ではどうしても但馬牛の品質向上対策に目が行くが、一般消費者にとっては、普段から手が届きやすい価格帯の牛肉や豚肉への影響の方が、生活に直接響く。地産地消推進の面からも、この価格帯の牛肉や豚肉が国際競争に敗れ、外国産に置き換わってしまうことは避けなければならない。

そのためには、どのような対策を講じることが効果的なのか。政府のTPP関連政策大綱は発表されたばかりであるが、現時点で検討されている支援の方向性について、当局の所見を伺う。

(2)県産水産物の消費拡大について

次に水産物への影響についてお聞きする。

水産物についての影響評価では、海藻類は韓国や中国といったTPP不参加国からの輸入が大半であることから影響は限定的、そのほかの水産物についてはすでに関税率が低いものの、長期的には畜産物と同様、価格下落が懸念されるということである。

しかし、このほかに、もう一つ懸念される影響がある。それは畜産物、つまり肉類の関税撤廃による価格下落により安く出回り、さらなる魚離れが進むことである。国レベルで見ると、平成18年に国民1人1日あたりの肉類の消費量が魚介類を上回っており、その後その差が拡大する一方である。TPPを契機に、それがさらに拡大する事態は防がなくてはならない。

本県においては、魚離れ対策として、水産物の消費拡大のため、県漁連とコープこうべの協働による、ひょうご地魚推進プロジェクトなどの取組みを進めている。しかし、このような取組みは、もともと魚をよく食べる消費者には比較的届きやすいものの、問題はふだん魚を食べない消費者にいかに魚を食べてもらうか、ということである。

魚離れについて、以前私は地元の神戸市漁業協同組合から対策の相談を受けていた。そのときは漁協の若手で構成される水産研究会で議論を重ね、県内の学校給食に地元産ののりやいかなごを活用してもらうことを提案し、献立で取り上げられる回数を増やしてもらった。学校現場では地場の水産物のおいしさを伝えることができると好評である。

このように好き嫌いが定着する前に、魚のおいしさを伝える取組みは一定効果があると感じるが、魚を食べる消費者層の拡大とそれに伴う地産地消の推進について、これまで以上に力点を置いて取り組まなければならない今、どのような方針で県産水産物のさらなる消費拡大を図ろうとされているのか、当局の所見を伺う。

3 個性あふれる「ふるさと兵庫」の地域活力の再生―移住・定着の促進について

ここでは地域創生に関連し、東京一極集中の是正にもつながる取組みの一つである、移住・定着の促進について伺いたい。

本県の場合は、昨年、10代・20代で4,941人、30代でも1,151人の東京圏への転出超過となっており、大学入学、就職や転勤、転職などが主な理由と推察される。なお、大阪府に対しても、2011年以降転出超過となっており、昨年は20代で2,128人の転出超過があった。

一方国全体で見た場合、昨年12月に策定された国の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」によると、35歳未満の若い世代で約10万人の東京圏への転入超過となっている一方、35歳以上は若干の地方への転出超過となっているとしている。また、東京都在住者の約4割、特に10代・20代男女の47%、50代男性の51%が地方への移住を検討したいと回答している。

そこで、社会増対策の一つとして、実際に移住を検討している人への相談体制の整備はもちろん、潜在的移住希望者への働きかけや掘り起こし対策に着目していくべきではないかと考える。

また、その掘り起こしにあたっては、都市部と多自然地域が比較的近接しているという本県の特徴が大きなPRポイントになると考える。正直、首都圏における兵庫の印象は、どうしても神戸のイメージが強いことから、兵庫の他の魅力を伝えることができていないように感じる。そして都市部住民は多自然地域に魅力は感じても、いざ移住しようとなると、仕事と生活の両面に不安を感じる人が多い。しかし、通勤圏内で都市部では味わえない豊かな自然を楽しむことができるとなると、心動かされる人も出てくるだろう。効果的なPRを行うことで、潜在的移住希望者の心理的なハードルを下げ、関心を兵庫に向けてもらうことが大切だ。

本県では今後移住・定着対策を本格化し、カムバックひょうご東京センターを設置するという。地域創生戦略によると、今年から平成31年までの5年間で、25,700人の人材流入増加を目標としている。この目標達成のため、若者に対しては仕事の創出を、ファミリー層や壮年層へは魅力の情報発信を行うとのことであるが、いずれにせよ大都市部の住民の心に響くような情報発信が不可欠である。心に一度響けば、長期間好印象を与えられる。潜在的移住希望者の掘り起こしと本県への誘導について、どのような展望の下、いかに取り組んでいくのか、当局の所見を伺う。

4 郊外型住宅団地再生の推進について

ここではいわゆる「オールドニュータウン」の再生について伺いたい。

そもそもオールドニュータウンという言葉の明確な定義はないということであるが、一般的には昭和30年代から40年代に開発された、1,000戸以上3,000人以上の居住が計画されたエリアで、周辺の地域と比べて人口減少や高齢化が進んでいる箇所のことであり、県内には約60箇所ある。このようなエリアでは、同世代の一斉入居及び同時期の画一的な住宅の大量供給が行われたことで、居住者の高齢化と施設の老朽化が一気に進み、建替えや、バリアフリー工事などの居住者ニーズに合わせた改築、住み替えが困難となり、大きな問題となっている。

私は、この問題について、地元にオールドニュータウンの象徴とされる明舞団地があり、住民の方とともに様々な課題に取り組んできた。明舞団地では、平成16年以降地域再生計画の対象地区として、明舞まちづくり委員会の運営や商業施設の開業・改修、学生シェアハウスなど、多角的な施策が展開されてきたが、目指す「再生」への道のりはまだ遠い。

明舞団地には、県営住宅をはじめとする公的賃貸住宅、戸建て住宅、そして分譲団地と様々な形態の住宅がある。私はかつて公社が分譲し老朽化が進んだ住宅へ、改修などの何らかの「手入れ」をすることが必要なのではないか、その手段として何か考えられないかと思っていた。しかし、分譲され、個人の資産となっている集合住宅へ、県などの行政機関が直接的な支援を行うことは実際には難しい。また例えば、高額のリフォームを提案したところで、高齢の居住者は二の足を踏んでしまう。そのような中、明舞団地では今年度、県が近隣大学の学生や地元企業を対象に自己負担10万円から30万円程度で可能な改修プランなどを募集し、選定された事業者等により4住戸のモデルルームの改修が行われた。これは、古くなってしまった物件に、再度資産としての付加価値をもたらすとともに、地域の大学や企業とも連携できる間接支援の良い事業だと思う。このような新たな視点での取組みを、県内で同じような課題を抱える団地へと広げていくことが大切だ。

県では、今後さらに課題が山積していくこのようなオールドニュータウンの問題に対応するため、大和団地(川西市)、緑が丘団地(三木市)等をモデルとして、郊外型住宅団地の再生の方向性や具体的な展開施策を盛り込んだ、郊外型住宅団地再生モデルプラン(仮称)をこの27年度に作成するとしている。

このプランの作成にあたり、先行して手がけてきた、明舞団地再生事業の経験をどのように評価し、どのような点を生かしていこうと考えているのか、所見を伺う。

5 世界に飛躍する兵庫の中小企業(オンリーワン企業)の創出について

私の地元の企業である有限会社大谷造園は、県内の中堅・中小企業の優れたものづくり製品や技術を顕彰する昨年度の「ひょうごNo.1ものづくり大賞」において、選考委員会特別賞を受賞した。受賞理由は、本業で発生する剪定枝葉を活用した植物性堆肥でありながらも、これまでの植物性堆肥の弱みである、土壌中の微生物の多くが生存できなくなる窒素過多の状態になることの改善などによるもので、大変先進的な技術が評価された。

このように兵庫県には優れた中小企業が多数存在し、経済を下支えしている。

そして本県経済の目指すべき姿を示すシナリオとして、昨年(平成26年)3月に策定した「ひょうご経済・雇用活性化プラン」では、兵庫の強みであるものづくり産業とサービス業のバランスのとれた産業力の強化、県民の多様な潜在力と政労使一体となった取り組みを生かした人材力の強化、国際化を先導してきた兵庫のネットワークを生かした国際力の強化、この3つの戦略としている。これらを着実に推進し、兵庫の産業の元気と県民の豊かさの創出につなげていかなくてはならないわけであるが、私は、この3つの戦略の目指すものは、まさに世界に飛躍する兵庫の中小企業・オンリーワン企業の創出であり、今こそその取組みを強化していくべきだと考える。

と言うのも、先の質問のとおり、TPP大筋合意によって県内の農林水産業へはマイナスの影響が懸念されるものの、工業品については、8割以上の品目の関税が即時撤廃となり、30年目までにほぼすべてが撤廃されるため、これまで中国などからの安い工業品に押されていた我が国の、特に製造業にとっては、輸出拡大の道が大きく広がる、まさに追い風となるためである。また、播州織など、本県が高い品質を誇る地場産品についても、今後の輸出展開が期待されるため、幅広い分野にわたる強力な支援が必要である。

現在の県の地域創生戦略の中でも、オンリーワン企業の創出は、地域の元気づくりの施策に位置づけられ、今後検討を進めていく主なKPI(重要業績評価指標)として、5年間で2割増加させるとしている。

9月定例会においては、中小企業振興条例も制定された。TPPも大筋合意となった。これまでも県では成長期待企業への支援などの取組みを行っているところであるが、このような中小企業へのいわば期待の高まりを背景に、海外展開のできる強いオンリーワン企業のさらなる創出を目指していく必要があると思うが、当局の所見を伺う。

6 義務教育における不登校児童等への対策について

私は以前より不登校対策に関心を持ってきた。特に義務教育の段階においてはたとえ1人であっても不登校の児童・生徒を出すべきではないという信念を持っており、このたびお伺いする。

文部科学省によると、不登校の定義は、年間30日以上欠席した児童生徒のうち、病気や経済的な理由を除き、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること、ただし病気や経済的な理由によるものを除く」とされている。

昨年度の本県の義務教育課程における不登校児童生徒数は、小学校で820人、全児童に占める割合では0.27%、中学校では4,099人で、全生徒に占める割合は2.57%という状況である。これに加えて、文部科学省の定める不登校の定義に満たない児童・生徒、つまり欠席が年間30日には達しないものの、不登校傾向の児童や生徒を加えると、その数は明らかに5,000人を越えると考えられる。

そして、不登校児童・生徒の割合の推移を見ると、平成22年度からの5年間での比較では、小・中学校ともにほぼ横ばいとなっている。

この間、本県ではどのような対策が取られてきたのか。

学校現場においては、不登校担当教員等による対応のほか、スクールカウンセラーを平成17年度から全公立中学校へ、平成18年度からは、小学校へ配置を拡充して対応にあたってきた。また、学校外施設としても今年度創設20周年を迎えた県立但馬やまびこの郷において、不登校児童生徒の学校復帰に取り組んできたところである。

しかしながら、もう少し見える形での状況の改善に結びついていかない理由として、県の対応以上に児童生徒側の変化が大きいのではないかと考える。

平成26年の公立校で不登校となったきっかけの本県調査を見ると、小中あわせて最も多かったのが「無気力」で27.0%、次いで「不安などの情緒的混乱」が22.7%、次に「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が14.0%となっている。文部科学省も全国的な傾向として同様の分析を行っており、学校に行くことに対する家庭の意識の変化や、無気力な児童生徒が増えていることを挙げている。

このような児童生徒側の事情・状況の変化を、学校現場であれば学級担任などがきめ細かく関わり、家庭とも連携しながら不登校を未然に防いでいくのが、本来のあるべき姿だとは思うが、先日の決算特別委員会においても我が会派が質問を行ったとおり、現場の教職員は日々、様々な事務に対応されるなど大変多忙であり、児童生徒の細かな変化や兆しをすくい取るのが難しい局面もあるだろう。

今後インターネットの普及等により、ますます社会の変化の速度が速まると予想されるため、さらに不登校になる要因も複雑・多様化していくと思われる。学校現場の教職員の定数には限りがある中、いかに効果的な不登校対策を取るべきか。県では最近の学校現場における問題の複雑化に対応するため、スクールソーシャルワーカーを含めた学校支援チームを平成19年度から展開しており、市町からの需要も高まっていると聞くが、その活用なども含め、これまでの実績を踏まえた、当局の所見を伺う。