議会の動き

迎山 志保議員が代表質問を実施

質問日:平成28年6月7日(火)

質問者:迎山 志保 政調副会長

質問方式:分割方式

【分割箇所:1~3、4~5、6~7】

1 市町のBCP策定支援について

今回の熊本地震では、行政職員が救援物資管理、避難所運営など目前の課題に場当たり的に対応した結果、優先されるべき業務が滞ったり、通常業務に支障をきたすなどの問題が指摘されている。特に市町村では県や支援協定先への被害状況の報告が遅れることで、人的・物的支援の要請を行うことにも困難をきたした。このような事態を防ぐための有事の際の業務継続計画、いわゆるBCPの策定状況は、熊本県ではどうだったのか。実際、策定済みの自治体は37%だったと聞く。

翻って兵庫県ではどうか。昨年12月の調査によると、策定済みの市町は17市町と、全体の41%にとどまっており、熊本県と大差がない。

各自治体の規模感、財政状況など様々な要因で、県下においてもBCPの策定状況はまちまちだが、一般的に策定率が低いといわれる小規模自治体ほど、有事の際の指針の有無がその後の復旧復興を大きく左右する。特に想定される南海トラフ地震では広範囲に被害が及ぶため、BCPの有無で自治体間の災害対応力にかなりの差が出ることが予想される。

BCPの策定には部局を横断しての調整作業や他事業との優先順位の関係、専門知識不足、マンパワー不足など多くの困難があることは容易に予想がつくが、それを克服する過程で課題が洗い出されるものと考える。筋書き通りにいかないのが災害対応だが、だからこそBCPを策定し、それに基づいて訓練を繰り返すことで職員の危機意識の維持が図られ、課題を洗い出し続けることで受援体制の構築にもつながっていく。県は17市町にとどまっているBCPの策定を積極的に支援し、自治体の災害対応力の底上げを図るべきではないか。またBCPの策定と併せ、平成27年に県が策定した「災害時応援受入れガイドライン」についても、被災市町の初期対応の手がかりとなることから、熊本地震での反省点等も踏まえ、より実効性を高めて利活用するよう促すべきである。

今後様々な自然災害リスクが想定される中、市町へのBCP策定支援は、わが県の安定性確保と信頼性向上につながる重要な取り組みと考えるが、当局の所見を伺う。

2 適切な土木事業の執行について

(1)土砂災害対策について

6月に入り、梅雨の季節となった。長雨や豪雨による被害は最近増加しており、一昨年、広島や本県丹波市で大規模な土砂災害が起こったことは記憶に新しい。

そのような状況の中、わが県の土砂災害警戒区域は「土石流」が6,936箇所、「急傾斜地の崩壊」が13,541箇所、「地滑り」が271箇所の合計20,748箇所と、全国で指定が進められる中において、平成28年3月末時点で4番目に多い状況にある。この警戒区域の指定はほぼ終了しているものの、特別警戒区域については、指定済み箇所は511箇所にとどまっている。今後は平成31年度までの特別警戒区域指定に先立つ基礎調査完了を目指して作業を急ピッチで進めるとしている。また、それに合わせ特別警戒区域の指定作業も推進すると聞いている。しかしながら、特別警戒区域の指定総数は警戒区域約20,700箇所の半数を超える見込みと聞いており、26年度からの2ヵ年で510箇所という実績から考えると、今後の年間目標の必達はかなり厳しい状況なのではないかと思われる。

また実際、進捗状況を見てみると、これから指定を進めるエリアは阪神間など人家が密集した地域で、より周知、説明、理解が困難なことが容易に予想される。そのため、指定を進めていく上では、今まで以上に丁寧な周知、説明等の対応が求められ、それに係る事務が増大すると懸念される。

特別警戒区域に指定されると、建築物の構造の規制や特定の開発行為に対して許可を要するなど土地利用における制約が生じることから、ただでさえその指定は難しいとされている。そこで、今後住民へのリスクや自衛手段の周知などに配慮しつつ、今後どのように指定を進めていくのか、当局の所見を伺う。

(2)土木系技術職員の確保について

このように安全・安心を担保する施策の展開により、技術系職員の業務が増大する中、現場からは特に土木系技術職員が不足しているとの声を聞く。それに加え、年齢構成の偏りや、それに伴う技術継承の難しさも高まっている。実際、人数ベースでは行革開始前の平成19年4月には、総合土木職は988名在籍していたところ、今年度4月には752名とこの9年間で23.9%の減、また年齢構成は昨年度末で、10代・20代が8.9%、30代が20.7%、40代が34.7%、50代以上が35.6%となっている。

職員の定数減や年齢層の偏りの問題は、他の職種にも見られることでもあるが、土木職には、さらにほかの技術系職種とは異なる課題がある。それは採用難の問題だ。平成27年度では、総合土木職の競争倍率は3.0倍。他の職種では建築が3.7倍、電気9.0倍、機械5.0倍であり、最も低い倍率となっている。この「土木系」の受験者数の減少傾向は、他県においても見られるようで、前倒し採用や県市共同試験、基礎自治体への長期派遣、インターンシップの実施など工夫を凝らして対応しているところがある。

一方、市町では、老朽インフラの点検の必要性の高まりなどにより、これまで独自採用をしていなかったところでも技術系職員に対する需要が高まり、積極的な採用に乗り出している。また昨今は民間の求人意欲も高く、自治体が優秀な人材を確保することがますます困難な状況になっている。しかしながら、いざ災害が起きた際など、専門的な技術や知識を持った自治体職員の役割は非常に大きく、常に一定の人員を確保しておく必要がある。そのためには、イメージが固定化されがちな土木の魅力を伝え、工業高校や大学の土木系学部への進学希望者を増やすなど、土木系技術職員の潜在的候補者を増やす取組みも必要になるのではないか。

このように、土木系技術職員に対するニーズが高まる一方で志望者が少ないという状況の中、県民の命と財産を守るのに必要な職員数や円滑な技術継承実施の考え方及び志望者を確保するための取組みについて当局の所見を伺う。

3 県契約における適正な労働条件の確保について

これまで我が会派では、労働者のセーフティネット構築の観点から、県が発注する工事などにおいて、受注業者が、雇用者の賃金や労働条件等の最低条件を遵守するよう、監視体制の整備を求めてきた。そのような中、この6月1日から、県契約に関わる労働者の最低賃金以上の賃金の支払いなど適正な労働条件を確保するための、「県契約における適正な労働条件の確保に関する要綱」が本格運用された。県契約全般に渡り労働者保護を求めるこのような要綱の制定は全国で初めての取組みと聞く。

さて、この要綱の定めるスキームの最大のポイントは、200万円超の契約について元請業者はあらかじめ県に、下請業者は元請業者に法令遵守等の誓約書を提出させ、労働者保護の実効性を担保させていることである。そして契約行為開始後、労働者から最低賃金以上の賃金が支払われていない等の県への申し出があれば、労働基準監督署に通報、意見照会を行い、違反の可能性がある旨意見を受けた場合は、受注者に対し、早期の改善や是正など適正化の要請を行う。そして県が報告を求めたにも関わらず、受注者が県への報告を怠ったり、虚偽の報告を行った場合などには、契約解除ができる仕組みだ。

しかしながら、このスキームが作用するためには、労働者一人ひとりがこの仕組みの存在を知り、声を上げる環境が整っていることが前提となる。また、労働者による申し出は制度上実名でなされなければならない。それゆえに、もともと立場の弱い労働者、特に下請負者に雇用されている労働者や派遣労働者は、後の不利益を恐れて、そもそも法令遵守違反を言い出しにくいのではないか。そして結局は労働者の泣き寝入りといった事態も起こってしまうのではないか。現に同じような問題は、平成18年度から始まった公益通報者保護制度でも指摘されているところである。

そこで、どのようにして全ての労働者にこの要綱の存在を周知、浸透させるのか。

あわせて、最低賃金が払われないなどの申し出を行おうとする労働者の保護について、どのような考え方で対処し、このスキームの実効性を真に高めていくのか、当局の所見を伺う。

4 女性の活躍推進について

今年4月1日に女性活躍推進法が全面施行されたが、いざ蓋を開ければ、労働者301人以上の企業に義務付けられた、行動計画の策定と届け出がなされていない企業の割合は全国で約3割。都道府県ごとの届け出率は、秋田の95.1%から広島の51.4%と大きな開きがあった。施行から1か月後には、策定状況は全国平均で85.0%にまで上昇したものの、兵庫においては対象企業523社中、届け出済みの会社は423社と80.9%に留まっている。

策定が遅れている県内企業の現状にも多少の危惧を感じるが、私はそもそもこの法律の定める計画策定と届け出の実効性には疑問を持っている。というのも、目指すべき水準が明示されていないほか、省令が企業に状況把握を求めている、管理職に占める女性労働者の割合や一月当りの労働者の平均残業時間、男女の平均継続勤務年数の差異などの情報も、全て公表する必要はなく、事業主が選択した項目を公表すればよいといったような義務付けの方法では、女性活躍社会の実現は担保されず、この法律の求める企業像と現場で働く女性との距離間はなかなか縮まらないと考えるためだ。

この法律の真に目指すところ、つまり真に女性が活躍できる企業づくりを兵庫県で実現するためには、県内企業の状況を分析し、産業別・規模別などでの具体の指標・目標を設定する必要があると考える。その上で一番肝心なことは、その指標・目標をクリアすることが、男女を問わず働きやすい職場を実現し、優秀な人材を確保できることで、将来成長が見込まれ、企業価値も高まることにつながることを、企業も社会も納得して取り組むことである。皆が納得感を持てないままでは、女性活躍の推進は不可能どころか、従来の長時間労働を是とする企業文化の中で、数値目標達成のためにポジションを引き上げられた女性の働き方は硬直化し、彼女たちのワーク・ライフ・バランスは成り立たなくなる。それによってせっかくの活躍の機会が巡ってきても尻込みする女性が増えたり、がんばって活躍しようとする女性を逆に追い詰めることにもなりかねない。

本法律については、国において改善がなされることを望むものであるが、兵庫県が目指す女性活躍社会とはどのようなものなのか。またその実現に向けてどのように取組むのか、とりわけ企業や社会とどのように認識を共有し、その取組みを進めていこうとしているのか、当局の所見を伺う。

5 結婚・子育てへの希望醸成について

5月24日に政府がまとめた少子化社会対策白書では、様々な興味深い調査結果が出ている。その中で子育て世代を対象にした日本と近年出生率が回復傾向にあるイギリス、フランス、スウェーデンの4か国の意識調査を紹介する。

「結婚に不安を感じること」では、日本で多かった回答の1位と2位が『結婚生活にかかるお金』『お互いの親の介護』でともに4割近い。現実的というか何というか。それに対し日本以外の3か国では『二人の相性』『お互いの間で起こる問題解決』と夫婦間の事柄が上位にきている。また育児について「夫も妻も同じように行う」のが日本は33.2%と最も低く、最も高いスウェーデンは93.9%がそう回答した。

そのような育児環境の中、「希望する人数まで子供を増やしたい」と答えた人の割合は、日本46.5%、フランス60.6%、スウェーデン63.9%、そして最も高かったのがイギリスの73.8%であった。日本では実に半分以上の夫婦が希望する人数の子供を諦めているという結果だ。実に寂しい結果なのだが、その背景を想像するに、就活・婚活・妊活・保活から始まり介活、果ては終活までという言葉が表すように、人生を切れ目ない活動と捉え、必要以上に気負いすぎているのではないかと思える。もっと人生を楽しもうという気持ちや、肩の力を抜くことが必要ではないかと言いたくなる。

そのような気持ちになるためには何がポイントになるだろうか。健康や経済的安定など個人の属性に関わる要因も大切だが、社会的には子育て世代が気負いをなくすための温かい雰囲気づくりが欠かせないだろう。

国の少子化社会対策大綱の数値目標の中には、結婚・妊娠・子育てに対して温かい社会に向かっていると考える人の割合を現状の19.4%から2020年には半数の50%にするとある。目標が低すぎて驚く。先ほど述べたとおり、希望を持って結婚し、安心して子供を持てるようにするには若い夫婦、生まれてくる子供を温かく見守り迎え入れる空気の醸成が必要だ。保育園が迷惑施設だと言われ建設が中止になったり、保育園に入れなかったから「日本死ね」といったきつい言葉を吐き出すような厳しい子育て環境ばかりがフォーカスされていては希望が持てるはずがない。実際に結婚して築く家庭の温かさや子育ての喜びが身近にあふれていればその意識も変わるだろう。昨年9月の代表質問の中で我が会派の栗山議員も結婚し、子供を産むことに対して、社会全体でもっと喜んであげないといけないのではないか、そのようなムードや文化、風潮を作り出していくことが、今、重要ではないかと述べている。まさにそのとおりだと感じる。

希望する誰もが安心して結婚し、子育てができる社会-それを実現するためには子育て施策の質・量の充実といった対症療法と雇用環境の改善といった根本治療に加え、結婚・出産・子育てに温かい目線が向けられるような雰囲気づくりが必要である。結婚・出産・子育てを希望する人々皆の希望が叶う社会づくりに向けて、今、県としてアクションを起こすときだと考えるが、当局の所見を伺う。

6 教員の業務改善について

教員の多忙化の解消については、我が会派も定例会や特別委員会でたびたび取り上げ、その都度必要性が議論されてきた。

教員の多忙化と言えば、特に義務教育現場において、保護者対応や地域対応、度重なる会議、報告書の作成などの業務に追われ、授業準備や成績処理といった通常業務を夜間や早朝にこなさなければいけない上に、児童生徒と向き合い指導するという最も大切な時間の確保が難しくなっている。そんな現場からは、教頭二人制、事務職員の複数配置、複数担任制、部活顧問の外部委託などを求める声も聞いている。しかし、教員の新たな加配などは財源上の問題から容易ではないのが現実だ。

それならば日々の業務を見直すことにより、児童生徒と向き合う時間を増やそうと、平成20年度から県教育委員会や教育事務所、市町教育委員会が主体となって、研修・調査・事業の見直しや廃止、業務改善モデル校の調査研究、教職員の勤務実態調査の実施など、さまざまな取組みが行われてきた。県内公立小学校・中学校・高校・特別支援学校合わせて133校、約4,000人を対象に1週間あたりの勤務実態を調査した平成24年度の勤務実態調査によると、平成20年度・平成24年度間は、実質的な超過勤務時間は、ほぼ横ばいであるが、事務処理等、児童生徒と直接かかわらない業務時間や学校行事に要する時間が減少し、授業準備に要する時間が1日あたり小学校で17分、中学校17分、高校24分、特別支援学校42分増加する等、変化が見られた。

また、持ち帰りを含めた2日間の休日の労働時間が約2時間から約50分へと1時間10分減少したとの変化があった。

一方で、業務改善を進める中で、学校間格差、地域間格差が見られるようになったと聞いている。そこで、今年度は担当参事を設置して精力的に教員の勤務時間の適正化を目指すということであるが、これまでの取組み結果の分析を伺うとともに、今後どのように教員の業務改善を進めていこうと考えているのかお聞きする。

7 多様な業務に対応するための警察組織体制について

今度は県民の命と生活を守る警察官の業務改善についてお聞きする。

県条例上の警察官の定数が昨年度は39人、今年度は40人増え、本年、兵庫県民の安全を守る警察官の人数は11,921人と定められている。ところが実際の警察官は4月1日現在、当日警察学校に入学した約300人を含めても240人を超える欠員が生じている。過去10年を見ても、新規採用後の最も人員が充実しているこの時期で200~400名を超える欠員を抱えてきた。この恒常的な欠員のしわ寄せは一体どこにいっているのだろうか。

県警はこれまで、近年刑法認知件数は低下傾向にあるものの、警察として関わらなければならない多様で複雑な事象が増加しており、警察業務の多忙化が緩和されることはない、という認識を示している。この状況での欠員は業務環境を厳しくする要因の一つになっているのではないかと懸念する。

特に他の公的機関が手薄になる夜間、休日では、虐待の被害に遭うなどした児童の保護、認知症などで行方不明になった方の発見保護など、ありとあらゆる事案が警察に持ち込まれ、現場に過酷な勤務環境を強いているのではないか。今年は、県内の情勢だけ見ても、日本最大の暴力団組織分裂を巡る抗争事件や9月には神戸で保健大臣会合の開催がある。それに加え、熊本地震に伴う被災地支援など、想定の範囲を超え、兵庫県警察の力が求められている。県民の安全を守る質の高い確実な業務の遂行のためにも、現場の人員確保、勤務環境改善が求められる。

先日、暴力団対策強化の波及効果として当該地域の治安向上が報道された。今年1月~4月の犯罪件数が、前年同月比で4割も減ったということである。これは、一人一人の現場警察官は具体的な取り締まり、事件捜査の要員であるだけでなく、犯罪の大きな抑止力となっているといえる。

そこで気になるのが本部、警察署それぞれの定員と充足状況はどうなっているのかということである。万一、本部の定員が必要以上に手厚く、そのことで現場に大きな欠員負担がかかっているようなことがあれば看過できない。現場の人員不足のために案件が置き去りになる、丁寧な対応ができないということが決してないよう、定員を充足していない、あるいは案件が急増している警察署へは柔軟に本部からの人的支援を行うことなどで、各人のパフォーマンスが最大限発揮できる、県民にとって頼もしい警察組織であってほしいと心から願うところだ。

そこで、業務が複雑多様化する中での現場業務の現状に対する認識、それに見合う人員配置の考え方にあわせ、そもそもの定員確保の取組みについて、警察本部長の所見を伺う。