議会の動き

黒田 一美議員が質問(予算審査・病院局)

平成31年 平成31年度予算特別委員会(病院局)

日 時:平成31年3月5日(火)

質問者:黒田 一美 委員

1 神戸陽子線センターの利用向上について

(1)陽子線治療への保険適用について

陽子線治療は一般的にがん治療に用いられるX線と比べ、陽子線のエネルギーによって体内に到達する深さをコントロールできることから、がんに集中して放射線を当てることが可能となり、その結果、陽子線治療だけであれば通院で治療ができるなど、患者の生活環境に大きな影響を与えない、負担の少ない治療である。

全てのがんが陽子線治療に向いているわけではないが、頭頸部腫瘍や脳腫瘍等の原発性がんに加え、単発性の転移性腫瘍(肺・肝・リンパ節のみ)、白血病を除く小児がん、骨軟部腫瘍などのがんを得意としており、これらのがんであれば、患者のクオリティ・オブ・ライフに配慮した治療が可能である。

しかしながら、大部分が先進医療であることから、健康保険の適用が限られているといった課題がある。治療費は「陽子線治療技術料」と診察検査などの「一般診療」の合計金額となるが、公的医療保険の対象となる一部の小児がんや頭頸部腫瘍、骨軟部腫瘍と前立腺がん以外の「陽子線治療技術料」は288万3千円で自己負担となることから、非常に高額となり、優れた治療であるものの、限られた人しか利用できないといった実態がある。

これまで2016年には小児がん(限局性の悪性腫瘍)が保険適応となり、更に昨年4月には頭頸部腫瘍、骨軟部腫瘍、前立腺がんなど一部の部位の治療に対する陽子線治療が公的医療保険制度の給付対象となるなど、少しずつではあるが適応範囲が広がっているが、多くの患者に利用してもらうには、保険適応となるかどうかが非常に大きな鍵となる。

そこで、保険適応に向けての現状と課題に加え、今後の保険適応の拡大の可能性について伺う。

(2)患者確保に向けた取組について

神戸陽子線センターは隣接する県立こども病院と連携した小児がん患者への治療提供を重点とするほか、あらゆる世代の県民に対する身体への負担が少ない粒子線治療を行う粒子線医療センターと一体となったがん医療に取り組むため、平成29年12月に開設した。

また、開設にあたっては、小児患者だけでなく成人患者への陽子線治療の提供として、神戸大学や神戸市立医療センター中央市民病院等近隣の医療施設との連携も進めると言われていたと思う。

これら近隣の医療機関との連携等により、患者は徐々に増加しているものと考えているが、近隣府県において、大阪府では大阪陽子線クリニックが、また岡山県ではがん陽子線治療センターなどがあり、神戸陽子線センターの優位性をしっかりと把握し、積極的にPR等をしていかなければ、実績をあげていくことは難しいのではないか。

そこで、平成30年度当初予算における患者確保数の目標は小児と成人患者で260人とのことであるが、実際の見込みはどうなっているのか、またあわせて現状の課題と今後の取組の考え方について伺う。

(3)今後の運営方針について

前の質問にも関連するが、実績を上げていくには他の医療機関との連携が重要となる。小児患者に対しては、隣接する県立こども病院と渡り廊下で直結し、物理的にも非常に連携しやすい状況であることに加え、神戸陽子線センターは通院が可能で交通の便も良いことから、近隣の医療機関との連携もしやすいのではないかと思う。

特に、当初は神戸大学や神戸市立医療センター中央市民病院等と連携し、化学療法・手術等との組み合わせによる高度な治療を提供すると言っておられたが、神戸陽子線センターでは陽子線治療に向いているかどうかを含めて相談が可能ともお聞きしており、そうであれば、患者の確保の点からも、地域の診療機関も含めて連携していくべきだと考える。

また、このような連携を図るためには、医療機関の連携だけでなく、実際の治療に携わる医師の連携も非常に重要となってくるのではないか。

そこで、他の医療機関との医師の連携はどのようにされているのか、また連携により行われた治療の実績と、今後、神戸陽子線の特色を生かしどのように運営を行っていくのかについて伺う。