質問日:令和4年2月28日(月)
質問者:竹内 英明 議員
質問方式:一問一答方式
1「一木一草」の知事の覚悟とワークライフバランス、知事居宅と危機管理対応について
先日16日の議会開会日の提案理由説明の中で齋藤知事は「大切にすべき価値観」として「一木一草」の言葉を引用された。太平洋戦争末期の沖縄戦で、県民と苦難を共に殉死した本県出身の島田叡沖縄県知事のことを引き合いに、貝原元知事が「知事の責任は県民の命はもちろん県土の一木一草にまで及ぶ」とその使命感を示す言葉として使われ、広く知られるところとなった言葉。斎藤知事は「私もしっかりと継承する」と決意を語った。
しかし、私に聞こえてきたのは、「ワークライフバランス」を高く掲げる齋藤知事の姿勢とこの「一木一草」に少し違和感があるという職員の声だった。2つの考えは矛盾せず二兎を追う時代になっているのかもしれない。しかし、違和感を覚えた人は私を含めて1人や2人ではない。提案説明で発言される前の週から既にざわついていた。
危機管理とプライベートという点で考えたい。危機管理として、知事がどこに住むかという点が議論になる。
齋藤知事は「車で20分程度かかるので、本当に歩くとすると、20分30分ではつかないと思う。初動の体制をどうするか、徒歩が無理なら自転車でいくなど」と記者会見で回答。住所やそこ住んでいる理由は「プライベート」を理由に明らかにしていない。
知事がよく比較される大阪府の吉村知事は、府庁から徒歩10分のところに住んでいるとのこと。
斎藤知事が会見で語った県庁の東、車で20分程度という話から推測すると、都市内の車移動を時速30キロで計算すれば、20分なら10キロの距離。徒歩で時速4キロとすれば2時間半かかる。吉村知事は一人で駆けつけるのは危機管理上駄目という話もしている。阪神・淡路大震災のときの貝原知事も職員の迎えをまって車で登庁し、発災から2時間半かかっている。これが後に大きな批判を受けた。
知事と世代が大きくかわらないある職員から「知事にもプライバシーやセキュリティ、お子さんがいるならなおさら公表したくない気持ちも分かる」という声がある一方、「やっぱり知事は県庁近くに住むべきだ」という声もあった。おそらく大半は後者だと思う。
防災部局の課長級以上の幹部職員は、原則待機宿舎に入居している。現に待機宿舎に住んでいる県防災担当幹部は「いまのところ知事が離れて住んでいるから困ったということはない」と政調会で語っていた。いまのところ、当然だろう。
近い将来に発生すると予測される南海トラフ地震などの際には、交通アクセスがいかなることになろうとも、県庁に駆けつけて陣頭指揮をとることができるようにしておくことが危機管理だと思うし、阪神・淡路大震災を経験した防災先進県たる兵庫県のリーダーだと思うがどうか。また、大規模災害時等に、県庁にどういった方法で何分くらいでかけつけ対応ができるので安心してほしいとここで説明してもらうことも必要だと思うがどうか。
2 兵庫県財政の見える化改革と知事の財政基金公約について
知事は兵庫県財政について「就任後、庁内協議を進める中で、本県の財政状況は外から見ていた以上に厳しいことが分かった」また「様々な関係者との意見交換を通じて、県には財政的な余力があるとの認識が広がっていると感じた。」と述べている。簡単に言えば、「県財政の実態は厳しいのに、県民からは余裕がある」と思われていると。
県債に投資するプロの機関投資家向けのIRにもこうした財政指標対策は書かれていない。一般県民が理解するのは難しいでしょう。過去に大阪府では実態よりよく見せる財政対策について、厳しい批判をした知事もいたが、齋藤知事はそれをしない。いろいろ思うところがあるだろうと想像するが。しかし、いま大切なのはそこではない。
「持続可能な行財政運営を行っていくには、就任直後の今だからこそ、財政の実情をきちんと見える化し、改革の姿勢を示さなければならない」と言われている。まさにその通り。
一方、県議会では2008年度から始まった全職員の給与カットを含む新行革プランにより2018年度に収支均衡が達成されたと喜んだ。新しく大型投資事業を検討するという段階になってきた、そんな雰囲気だった。なぜ突然、また行革???という声、金曜日の一般質問でも春名議員が嘆いておられた。
コロナの影響で行革をするのではない。過去の精算のため。今年度はコロナ禍でも企業業績は好調で、県税収入は当初予算から大きく上振れし、黒字分を活用して340億円の県債管理基金の積立ができることになった。税収を低く見積もっていたから。
来年度からは税収見込の前提となる経済成長率をベースラインケースに変更することになるが、前年にこの結果が出た。県税収入の見通しが楽観的で、毎年のように減収補てん債で財源対策をしている財政運営に私が初めて警鐘をならしたのは、2009年の予算特別委員会。13年前のこと。今回の措置を高く評価したい。
ここで兵庫県財政の歴史を振り、先人の戒めを紹介したい。
実は、兵庫県は1955年度から1960年度まで財政再建団体に指定されていた。遡れば、井戸、貝原、坂井、金井知事の前の阪本さかもと勝まさる知事の時代だ。63年前の今日1959年2月28日の定例県議会、阪本知事の2期目を迎えての初の提案説明である。
「この際一言申し上げておきたいことがあります。
御承知のとおり昭和35年度末には、財政再建計画が完了し、ことに待望久しき再建団体の指定から解放される日がまいります。
この秋こそ県が久方ぶりに光明をあびる慶賀すべき年でありますが、同時にまた最も戒心すべき微妙な転機でもあると考えます。
かつては雄県兵庫と自他ともに認めた本県が、いわゆる再建団体の境遇に沈淪ちんりんすること幾年、ようやくその指定から解放される日こそ、本県が再び過去の失敗を繰り返さざるよう固く決意すべきときなりと信じます。
県政における行政水準の維持向上の要請は、しばしば健全財政を犠牲にしてもいとわないほど強烈なものであります。ここに警戒を要する危険がひそんでいるのであります。それ故にこそ 過去の悲惨を回想しつつ、再建団体より解放後といえども、健全財政死守の最高命題を忘れざるよう、再選当初のこの機会に厳粛な気持で決意を披れきしておく次第であります。」
この提案説明は、ある県職員OBが何かの参考になればと先日、私に届けてくださったもの。いつもこれを手元において、折にふれ、この文章を読み返してきたそうだ。
財政規律は不要といった考えが支持を得たり、世界的にもMMT理論が出るご時世だが、現在でも十分に通用する考えだと思っていると言っておられた。
今年度のような税収の上振れが毎年あるわけではない。実質公債費比率の算定において基金の積立不足、ペナルティ加算の状態を残したまま、公約だからといって100億円を財政基金に積むのはデメリットのほうが大きく現実的ではない。現に今回の補正で340億円を県債管理基金に積まず、黒字決算とすれば公約は達成できたが、財政指標の改善にはならない。
その意味では公約ではあるものの、公表データではわからなかったことであり、他の課題も企業庁地域整備事業会計などの積み残しが残り、4年間での目標というのは現実的ではないと思われることから、そこは議会でもはっきりと難しいと説明されればどうか。私はその方が県民から信頼されるし、謙虚で誠実な姿勢だと思うが、どうか。
3 WHO神戸センター運営支援事業の行革検討について
WHO神戸センターについて県議会の議事録を調べると、兵庫県の行革で「アンタッチャブルの一つの代表的なもの」としてこのWHOの話が出てくる。アンタッチャブル。これは、2010年、今から12年前の予算特別委員会での神戸市選出、原亮介議員の質問だ。
後に現地調査を踏まえた現役議員の質問もあった。「WHO神戸センターについては、事業内容の必要性が伝わってこなかった。今までの経緯もあり、契約を打ち切れないと思うが、年間200万ドルは多額であるので、必要な額を精査のうえ支援していただきたい。」
これは伊藤いとう傑すぐる議員の2015年の健康福祉常任委員会での発言である。私も当時同じ委員会で規模を縮小すべきと発言したが、契約は大きく見直されることはなかった。
原先生の見直す時期だという話から12年。ようやくこうした意見が行革の実施検討項目、即ち改革の俎上に上がってきたことを遅きに失したとはいえ高く評価したい。
WHOは世界的な保健機関であり、地方自治体の負担で設置されるレベルの機関ではない。現在の県の財政状況から年間2億円以上の負担は重すぎる。何回費用対効果を説明されても県民には響かない。県の方針を早期に固め、交渉に入るべきだと思うがどうか。
4 知事の特別自治市制度についての考え方について
神戸市の久元市長と自民党市議団が2020年11月に、首相官邸で菅義偉首相と面会し、政令市の権限を強めて道府県から独立する特別自治制度の早期法制化などを要望したという報道を受けて、12月議会で井戸知事に質問した。井戸知事は「県としては、歴史的経過や特別自治市の課題も踏まえると、現行制度のもと、二重行政を避け、政令指定都市である神戸市と連携・協力して取り組んでいくことが望ましいと考えている」と答弁。明確に特別自治市に反対という言葉は使わなかったが、現状を変える必要はないという話だった。
他の政令指定都市を抱える道府県でも賛成している知事は静岡県知事くらいのもの。
神戸市が特別自治市制度の法制化を求めていること、また、制度化だけでなく、神戸市にはデメリットはないので、自らも特別市になろうと考えるのが自然だが、これについて知事はどう考えているのか、見解を伺う。
5 県立はりま姫路総合医療センターの開院時の残債受入と損失補償について
県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院との統合により、救急医療の空白地域となる可能性のある姫路市南西部の後医療要請とその県負担について取り上げたい。新病院に統合される製鉄記念広畑病院の借入が27.4億円あり、これを県病院事業会計が承継するという予算が提案されている。
また、姫路市南西部の後医療を県の要請を受けて行う社会医療法人 三栄会が広畑病院の建物等を買い取る資金33億円について、3億円を姫路市が補助するとともに、金融機関から融資を受ける30億円については、市の利子補給に加え、県が金融機関に対して損失補償を実施するということだ。これも債務負担行為として予算に計上されている。
県が純粋な民間法人の借入に対して損失補償を行うことは異例のことである。しかし、広畑病院が完全になくなり、後医療がなくなってしまうことは避けなければならないのは当然である。後医療を県が三栄会に要請した経緯から考えれば、一連の会計処理はやむを得ないと考える。ただし、議会や県民への説明責任は必要である。
これまでの経緯も含め開院時における会計処理の状況について伺う。