議会の動き

上野 英一 議員が代表質問を実施

質 問 日:令和5年2月17日(金)

質 問 者:上野 英一 議員

質問方式:分割方式

1.齋藤知事が目指す兵庫の姿と実現に向けたプロセスについて

(1)公民連携について

公民連携の手法を活用した取組について、改めてお聞きしたい。

最近の知事の会見等を見れば、2025年の大阪・関西万博を見据え、「フィールドパビリオン」構想や、大阪湾・瀬戸内海を舞台にした水上交通観光の実証実験、空飛ぶクルマの振興を通じた地域創生の取組・「HYOGO空飛ぶクルマ研究室」の創設、兵庫水素社会推進構想、ユニバーサルツーリズムの推進、スタートアップ支援の強化、県立学校の施設整備に6年間で300億円等々、夢や希望を感じる取組を発信されており、県が主体的に取り組むこれらの主要施策を通して、県政の進むべき方向性がうかがえる。

これらの実効性をより高めていくためには、公民連携の手法が重要と考える。そこで、2021年10月に設置した「公民連携プラットフォーム」におけるこれまでの取組の評価と、今後、県が主体的に取り組む主要施策も含めて、公民連携の手法をどのように取り込み、どういった展開をしていくのか、当局の所見を伺う。

(2)教育予算について

年明けから、小池東京都知事が子供手当5千円/人を18歳まで所得制限無しで支給すること、岸田首相が異次元の子育て政策を行うことを表明した。そして知事は、1月5日記者会見で記者からの質問に答える形で、「子育て施策は、岸田首相が発表したように、国として実施していくこと。兵庫県として特にこどもに関する予算で大事なのは、教育だと思っています。特に高校教育、県立学校教育の充実、投資を来年度しっかりと増やしていきたい。具体的な予算については、当初予算編成の中で議論になっていきますが、イメージは、令和5年度から10年度ぐらいで、県立学校教育への投資の充実を集中的にしていきたい。予算規模としては5年程度を目途に300億円程度の予算を投入していきます。」と述べられている。財政厳しい本県では、選択と集中で教育に投資をすることには大賛成である。やはり厳しい時代だからこそ人への投資である。しかし、本当に人への投資、将来を背負っていく人づくりという観点では、少し寂しく感じる。もちろんハードの整備も重要だが、子供たち一人一人に向き合い、心身ともに育てていくことが重要かと考える。特に、昨今のスシローペロペロや資(すけ)さんうどん事件や闇バイトに応じる等の若者がいることに驚きを感じる。

社会全体に責任はあるが、子ども達が「生きる力」を身につけるためには、子供たちと向き合い、心を通い合わせることができる教育環境を作ることが必要である。そのためにも、知事の公約である30人学級を具体的に進めて頂きたいと思う。

昨年度の9月議会で我が会派の木戸議員からも質問した、知事の公約である30人学級など少人数学級のさらなる推進について、どのような取り組みを進めていくのか、所見を伺う。

2.新型コロナウイルス対策について

(1)「5類」に引き下げられた場合の医療体制の確保について

国内で、最初の新型コロナウイルス感染者が確認されてから3年となった。現在の流行「第8波」では、コロナ感染による全国の死亡者数が過去最高を更新するなど、予断を許さない状況が続いている。ワクチン接種により重症化のリスクが軽減しているとの見方の中で死亡者数が多くなっているのは、把握されている感染者数よりもはるかに多くの感染拡大が起きているのではないかと考える。

そのような中で、岸田首相は1月20日、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを、今春に季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げると表明した。「5類」に引き下げられると、多くの行動制限や感染者・濃厚接触者の感染待機が撤廃される。さらに、医療提供体制や公費負担、患者負担の支援は段階的に引き下げられる。また、限られた発熱外来で実施していた検査や診療は規定上、一般の医療機関に広がるがそれがどうなるか。限られた診療が幅広い医療機関で可能になり、患者の受け入れ先が増えるとの期待の一方で、小さな病院では院内感染の対策が難しく、ほかの重症者がいる場合、受け入れは難しいことになりうる。入院調整がなくなる中で患者が増えれば、搬送先が見つからない事態も起こりうる。苦しむのは高齢者や基礎疾患のある人たちだ。

そこで、「5類」に引き下げられた場合に医療提供体制の確保をどのようにするのか伺う。

(2)今後のワクチン接種について

「5類」に引き下げられても、インフルエンザと同じようにワクチン接種による予防を厚労省は引き続き進めると考える。「8波」の現状は先に述べたとおりだが、4・5回目ワクチン接種率は伸び悩んでいる。その原因として、副反応が辛かったことやワクチン接種後に死亡したなどの例が、身近な人に、あるいはネット上を賑している等のためと考える。正しい情報を把握・発信することが、安心してワクチン接種を進めることになる。

厚労省のホームページは、副反応の把握状況やリスクについて詳しく掲載している。県では厚労省ホームページをリンクしていると同時に、ワクチン接種を進める動画・リーフレット・絵本等が作成されている。特に、『小児(5~11歳)新型コロナワクチンUP DATE【意義・有効性・安全性】』はよくできている。しかし、問題はどれだけの県民が見ているかだし、そもそもワクチン反対派の人も多くいるなかでどのように受け取っているか。どちらも、我が子の命を守りたいとの思いは同じである。

女性セブン2月2日号では、『「新型コロナワクチン大国」日本が「感染者世界一」「死者激増」ひどすぎる理由「打てば打つほどかかりやすい」という愕然』 と題して、新潟大学名誉教授で医師岡田正彦さんや名古屋大学名誉教授で医師小島勢二さんのコメントを掲載している。アメリカの「疾病対策予防センター」、WHO、「ウオール・ストリート・ジャーナル」等のデーター・記事も掲載、「そもそも、変異を繰り返すウイルスにワクチンで対応し続けるのは、無理があるのです。」(小島教授)

『日本ではコロナ感染による死者数も急増している。昨年12月からの1か月で、コロナによる死者は1万人を超過。パンデミック当初からのコロナ感染死者数は6万人であることを考えると、実に6分の1がこの1か月で亡くなっていることになる。ワクチン接種が進み、本来なら死者も減るはずだが、逆に亡くなる人が増えている現状をどう見るべきか。「現在は流行初期のように、肺炎が重症化して死亡するケースは減っている。しかし、感染そのものを予防できなくなったいま、コロナに感染してしまい、体力を消耗して死亡する高齢者が増加していると考えられています」』(小島教授)

では、まだ続く感染拡大にどう立ち向かっていけばいいのか。岡田教授が言う。

「医療界では変わり者扱いされていますが、“コロナのワクチンは効かない”と強く指摘したい。そればかりか、接種をやめないと、変異株の発生も促進し、さらに感染を広げ続けることになります。接種をやめれば、感染者も減らせると考えています。」 ワクチンを打つか打たないかは個人の判断だが、ワクチン接種が始まった2021年とは状況が大きく異なっていることを理解しなければならない。

このような内容の記事だが、影響はかなり大きいのではないか。過去に子宮頸がんワクチンの副反応が問題化して、日本では、平成25年(2013年)6月から、副反応問題のため接種の積極的勧奨の差し控えが約9年続いた。しかし、ワクチンの効果と安全性に関する多くの知見が得られたため、令和4年(2022年)4月より定期接種の積極的接種勧奨が再開されている。

このようなことにならないためにも、厚労省には国民が納得する啓蒙・啓発が必要と考える。県としてどのように取り組んでいこうとしているのか所見をうかがう。

3.土地利用型農業の展望について

4年連続代表質問でポイントを変えて農業問題を取り上げている。要は土地利用型農業にどうやって展望を見出すのかということだ。

令和4年度兵庫県水田農業収益力強化ビジョンをみると、Ⅰ.地域の作物作付の現状、地域が抱える課題として、水田は県耕地面積全体の90%以上を占め(66,900ha)、米が県農業産出額の 31%を占めるなど、(1)水稲主体の農地利用と記されている。

また、本県の農業構造についてみると、一戸当たりの経営耕地面積が全国の 半分以下、米の生産費は全国より高く、生産性は全国より低いといえる。また、農業就業人口の平均年齢、65 歳未満の世帯員がいない副業的経営体数の割合は、全国より高くなっている。今後、後継者が確保できず、高齢化がより一層進むと、本県農業は、持続的な発展が困難となる等、(2)生産性、持続性の低い農業構造と記されている。

課題では、全国的に大規模な生産調整が進められてきた。これまで以上に水田をフル活用して、生産者の経営安定と 収益力強化を図っていく必要があるとして、(1)主食用米の需要量の更なる減少への対応 (2)生産性の向上 (3)担い手確保 と記されている。この間、圃場整備と農地の大区画化、大型機械やスマート農業の導入、集落営農への組織化、又はその法人化、農地の集積、と生産性を高める取組は積極的に進められてきた。しかし、人口減少はさらに進み、米の消費は減少を続ける。

これまでの答弁では、収益性の高い野菜、麦、大豆、飼料用米などと組み合わせて栽培をする複合経営の転換、生産者やJAの生産部会と実需者との間で情報交換を通じて需給のマッチングを促進、担い手や兼業農家が役割分担して農業経営や農地管理を行う地域協働体制づくり等であった。

また、今回事前ヒアリングでその経営モデルを聞いた。

1つは、福崎町でもち麦、水稲、小麦、1つは、たつの市で、醤油用小麦、水稲、大豆、1つは、豊岡市でのコウノトリ米、作業受託の複合で、個人、集落営農法人、個人経営の例である。いずれの場合も、利益が一定確保されている。しかしそれらは、収穫量や作業効率など立地条件も含めて最高の条件でのことと考えられる。特に麦などは立地条件が大きく作用する。実需者とのマッチングもすべての経営体で確保できるかの課題もある。集落営農形式では、作業効率を高めることにも課題がある。また、経営が厳しくなればなるほど、組合長など役員の成り手不足が生じてくる。企業の定年延長もそこに加わってくる。

食の安全保障の確立も重要であるが、多くの集落営農法人にとって存続できるかどうかはここ10年が勝負と考える。そこで、持続可能な農業経営について、県としてどのように考えるか伺う。

4.地域公共交通について

(1)JR西日本、国、県・市町の動き、議論の方向について 

JR西日本は、R4年4月11日に「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」として、大量輸送という観点で鉄道の特性が十分発揮できていない輸送密度(平均通過人員)2,000人/日未満の線区の収支率を開示した。兵庫県では、山陰本線 城崎温泉~浜坂、浜坂~鳥取間、加古川線 西脇市~谷川間、姫新線 播磨新宮~上月、上月~津山間、播但線 和田山~寺前間 が上げられた。さらに地域の皆様との対話に向けて、地域のまちづくりや線区の特性・移動ニーズをふまえて、鉄道の上下分離等を含めた地域旅客運送サービスの確保に関する議論や検討を幅広く行いたい。としている。

それに対して兵庫県では、R4年6月24日に第1回JRローカル線維持・利用促進検討協議会を沿線代表市長、JR西日本、交通・観光事業者、有識者、近畿運輸局等で開催した。趣旨は、地域住民の日常生活や観光・交流による地域活性化に欠くことのできない鉄路を維持するため、駅周辺の活性化や観光(DC・万博等)と連携した利用促進等を官民連携で検討。検討の方向性として、1 日常利用の促進 マイカーから鉄道利用へ転換を図る。に加えて、2 観光需要等の増進 を示している。これまでも利用促進について、県・市町・地域住民はハード・ソフト両面から様々な取り組みを展開してきた。検討協議会では、さらに利用促進を図ることを重点に、路線維持に向けた国の積極的な関与、JR赤字路線への支援制度の創設 等の国等への要望活動 を行うことを確認した。

国土交通省は令和5年1月17日、地域公共交通の再編に向け、通常国会に提出する関連法(地域公共交通活性化再生法や鉄道事業法、道路運送法)改正案の骨格をまとめた。その中身は、地方鉄道の存廃を話し合う再構築協議会を、国が主導して設置することが柱。路線を維持するため、地元との合意を条件に、運賃を値上げできる仕組みも設ける。人口減や新型コロナウイルスの影響で経営的な厳しさが増す中、財政支援と併せ移動手段の確保につなげる考えだ。

私は、神河町寺前地区に住んでおり、播但線の現状・課題は把握している。他の路線も共通した課題だと考える。JR播但線維持・利用促進ワーキングチーム報告書も見せて頂いた。どれも的確な現状・課題、利用促進策の提言となっている。しかし、すべてを実施したところで、大幅な利用者の増はなかなか達成できないと考える。JRローカル線維持・利用促進検討協議会が求める「利用促進を図ることを重点に、路線維持に向けた国の積極的な関与、JR赤字路線への支援制度の創設 等」が必要だ。一方で、JRは「鉄道の上下分離等を含めた地域旅客運送サービスの確保に関する議論が必要」と言っている。そこで、通常国会に提出する関連法案の動向も踏まえ、今後、路線維持に向けて、どのような議論を進めていくのか伺う。

(2)利用促進を図る上での手段、および2次交通の重要性について

2次交通を充実することが、公共交通の利用促進につながることは間違いがない。交通弱者の移動手段確保のためにも、バス・タクシーを持続可能にしていくことが必要と考える。

路線バスからコミュニティバスへの移行が多くの市町で行われているが、利用者が少ないために維持が困難なものもある。定時定路線の場合は、利用者から、ステーション(バス停)まで行くのが困難、買い物など荷物を持ってではなおさらとの声や1日1・2便では利用し辛いとの意見を聞く。ステーションを定時運行するバスは路線を絞るべきであり、デマンド型乗合交通へのシフトを行うべきである。

駅からのタクシー利用についても、神崎郡内では、鶴居・新野・寺前・長谷駅で利用が困難な状況となっている。神姫タクシーの神河町粟賀営業所があるが、ドライバーの配置上の問題で夜間は電話に応答されない。神崎交通もタクシーを運行しているが、福崎営業所から鶴井駅まで10km、寺前駅まで15kmの距離がある。今の制度では、迎え料金を付加することは、全営業区域で付加しなければならなく、一部区域だけで付加することができない。また、依頼を拒否すれば乗車拒否として営業停止となると聞いている。駅からの2次交通としてタクシーを活用できるようにするためには、市川・神河町が、鶴居駅で待機車料を負担する必要があると伺っており、制度改正や費用負担の支援制度が必要と考える。

たつの市・西脇市・丹波市では、デマンド型乗合タクシーが運行されており、また神河町も2月1日から、コミュニティバスの1路線の一部時間帯をデマンド型乗合交通に変更する試験運行を実施している。

これらのことも踏まえて、デマンド型乗合交通の導入など、駅からの2次交通の充実に受けた考えを伺う。

5.医療法人財団兵庫錦秀会神出病院事件について

神出病院事件は、精神障害を持った患者に対して、およそ信じがたい虐待行為が日常的に繰り返し行われていた人権侵害であり、一部は刑事事件として取り扱われている。

神出病院を運営する医療法人が、この事件の原因を究明するために設置した第三者委員会により昨年5月に公表された報告書において、法人理事長が高額な報酬を受領している一方、神出病院では冬場でも満足な温水が出ず、天井にカビが生えているなど、設備投資や職員の処遇への投資が十分でなかったこと、また、法人の理事会や評議員会が形骸化していることが、虐待事件の温床となったことが指摘され、神出病院の監督権限を有する神戸市と、医療法人の監督権限を有する兵庫県に対し、対応の杜撰さを厳しく指摘している。

令和4年10月に兵庫県弁護士会・一般社団法人兵庫県精神保健福祉協会など7団体が、兵庫県に対して、神出病院における虐待事件等に監督官庁として法令に基づき、医療法人財団兵庫錦秀会及び神出病院に対する監督権限を適時適切に行使することを要請した。

それに対して県は、11月28日に回答書を団体側に手渡している。

回答書では、医療法人に対する監督権限行使の要件は、「医療法人の業務若しくは会計が法令等に違反している疑いがあり、またはその運営が著しく適性を欠く疑いがあると認めるときは、当該医療法人に対し、その業務若しくは会計の状況を検査させることができる。」と規定されているとし、「運営が著しく適性を欠く」場合とは、国の通知においては附帯業務に多額の投資を行うことによって法人の経営状態が悪化する等法人の附帯業務の継続が法人本来の業務である病院等の経営に支障があると認められる場合や法人の資金を役員個人又は関連企業に不当に流用し、病院等の経営の悪化を招いていると認められる場合等を言うものであるという国の解釈を示している。さらに、定期的な報告聴取では、本件法人の事業報告等は、これまで適正に提出されているとともに当報告書から確認できる運営内容については、収益が確保されているなど「運営が著しく適性を欠く」に該当する要件は認められないとしている。この回答を受けて、団体側では落胆の声が出ている。

第三者委員会の報告書では、法人が儲け主義の体質であり多額の役員報酬を取っているが故に、施設の設備改修や職員研修、職員の待遇に予算が回されず、今回の事件が発生したと捉えている。県の回答書では「運営が著しく適性を欠く」に該当する要件は認められない』とあるが、それは役員報酬を支払ってもなお、施設の設備改修や職員研修、職員の待遇改善ができるだけの収益が確保されていたとのことか、県としての認識を伺う。

神出病院の事件以降も全国で精神科病院等での虐待事件が後絶たない。このような事件が二度と起こらないように県として与えられた権限を全て行使しなければならない。法人自らの自浄作用やガバナンスが機能することには期待できないと私は考える。当法人に対する県の指導内容と法人のガバナンス等の是正が図られているのかどうかも併せてお聞きする。

6.主権者教育について

令和3(2021)年10月に実施された衆議院選挙での年代別投票率結果は、10代43.21% 20代36.50%、全体55.93%である。また、関心度調査のうち「全く関心がなかった」では、18∹29歳19.5% 30代12.2% 全体5.9%、投票に対する意識(投票義務感)のうち「個人の自由である」は、18∹29歳53.2% 全体32.5%である。投票率・関心度・投票義務感とも若い世代で低くなっている。さらに投票は個人の自由であるが、この数字が何を語っているのか考える必要がある。

選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が2015年6月17日に成立した。引き下げに伴い主権者教育の必要性がさらに高まったと考えている。文部科学省は、1969年の文部省初等中等教育局長通達を2015年10月に廃止し、新たに「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動について」(通知)を出した。この69年通達では、政治活動については、国家・社会は未成年者が政治的な活動を行うこと「期待していない」し、むしろ行わないよう要請するとしていた。また、政治教育については、生々しい論争問題を含む「具体的な政治的事象については取扱いに留意すべき」とされていた。一方2015年通知では、政治活動については、「高等学校等の生徒が国家・社会の形成に主体的に参画していくことがより一層期待される」となった。

新学習指導要領において、高等学校の新設科目「公共」が設置された。井柳静岡大人文社会科学部教授は「政治や社会の制度や仕組みなど知識偏重・暗記偏重だったかつての社会科から脱却し、能動的に社会に関わる将来の主権者を育てるという科目として、科目の理念を教育実践へと繋げていくことができるのであれば、重要な意味を持つだろう」と言っている。また、橋本福井大学教育学部教授は、『「公共」では現代社会の諸課題にかかわる具体的な「主題」を追究したり、解決する学習活動が求められている。その際、「主題」の追究や解決に当たって、その「主題」を捉えたり、分析したりといったように、解決のプロセスに重要な役割を果たすのが「見方・考え方」となる。公共における「見方・考え方」は、「幸福、正義、公正、人間の尊厳と平等、個人の尊重、民主主義、法の支配、自由・権利と責任・義務など」である。これらの「見方・考え方」を子供たちが働かせて、「主題」の追究や解決のプロセスを踏んでいくことで、生徒の「思考力・判断力・表現力」等の育成を果たしていく必要がある。』と言っている。

まさしく「公共」は、ひとりの人間として、人間社会の一員として、何をしていくかを自覚させていく教育と考える。国家の構成員の一人として自立し、社会を生きぬく力を身につけさせることを目指す主権者教育は重要である。そこで、主権者教育に対する当局の考え方、現在進められている教育内容・量について伺う