議会の動き

石井健一郎議員が質問(決算審査・農政環境部)を実施

第310回9月定例会 決算特別委員会質問 (農政環境部)
2011年10月14日(金)

1 温暖化防止に向けた基本的な考え方について

 はじめに、温暖化防止に向けた基本的な考え方についてお伺いします。
 我が国では世界の環境政策をリードするべく、これまで環境立国をめざし、温暖化防止に向けた国民的取り組みを推進してまいりました。しかし、環境対策と生産・消費をはじめとする経済活動の両立は、経済活動が活発になり好景気になれば温室効果ガスは増大し、経済活動が鈍化すれば不景気になり温室効果ガスは削減されることから、環境対策と経済活動の両立は、全く相反する問題です。
 このことは、戦後の高度成長から産業公害をはじめとする環境問題が深刻化した歴史からも窺うことができますが、健康で快適な環境のもとで暮らす権利として、『環境権』が主張され始めたことや環境対策の技術進歩によって産業公害の問題が社会問題とならなくなってからは、環境対策と経済活動の両立の問題は、鳴りを潜めているように思われます。
 しかしながら、エネルギー効率化や省エネ等、環境対策の意識が高まった結果として、環境に優しい製品が作られてもその製品を大量に生産し消費すれば、大量の資源とエネルギーを消費することとなります。実際に日本のエネルギー消費が増え、CO2は一向に減少していません。
 もちろん、環境対策への一つ一つの取り組みは尊いことは言うまでもありませんが、CO2削減を進めるには我々の全ての活動について一定の制限や我慢を強いるということになるわけですが、温暖化防止を推進していくには避けて通れない、環境対策と経済活動の両立について、当局はどのように認識しているのかご所見をお伺いします。

2 太陽光発電の県施設への導入について

(1) 県施設への導入状況について

 2030年の総発電量のうち50%を原子力と想定した国のエネルギー基本計画は、東日本大震災と福島第一原発事故の発生を受けて現在見直しを進められています。その中では、太陽光、風力発電などの再生可能エネルギーと省エネ社会実現を2本柱とするとのことであり、脱原発に向けた動きの一環として再生可能エネルギーの導入促進がにわかに活発化してきています。なかでも、太陽光発電は、自然エネルギーも含めた再生可能エネルギーの中で、潜在的な利用可能量が多いことや、産業の裾野が広く、雇用創出効果が見込まれることから、(私はさほど期待しているわけではありませんが、)各方面からの期待は大きいように感じています。
 本県においても、二酸化炭素の排出量を削減するため、これまでに様々な県有施設への太陽光発電設備の導入を実施してこられているところです。
 本庁舎では、平成11年度には1号館屋上、渡り廊下屋根に324枚、平成15年度には1号館から3号館の南側の壁面を中心に1,105枚をそれぞれ導入され、年間16万kwhの電力が削減されています。これは、一般家庭約36軒分の削減量とのことですが、本庁舎への導入については、約5億円の経費を投入され、費用が嵩んだのは、設置場所の形状、面積に合わせてパネルが特注だったことや設置箇所が分散しているため据付工事に費用がかかったとのことであります。
 また、自治体の庁舎としては国内最大規模を誇る西播磨総合庁舎への導入についても、年間50万kwhの電力が削減されていますが、導入には約2億6千7百万円の経費が投入されているとのことです。
 そこでまずは、太陽光発電施設の県施設への導入に要した経費や設置による発電量など導入状況について、お伺いします。

(2) 県施設への導入効果について

 県施設への導入状況に引き続き、県施設への導入効果についてお伺いします。
 先ほど、申し上げたような本庁舎や太陽光発電設備の設置に県が率先して取り組むことには、普及啓発には、一定の効果があったとは思いますが、県が取り組む以上、費用対効果にも配慮していく必要があり、たとえ、シンボリックなものとして設置する場合にあっても、このような多額の費用を投入しなくても、メガソーラーを誘致するなど別の方法があったのではないかと感じていますが、これまでの県施設への導入効果についてどのように評価しているのか、お伺いします。

(3) 今後の県施設への導入について

 この質問の最後に、今後の県施設への導入についてお伺いします。
再生可能エネルギーについては、「国が定めた単価で、一定期間電力会社が買い取ることを義務化するいわゆる「全量買取制度」とか「固定価格買取制度」と呼ばれている制度の導入が来年7月から実施されることが決定しています。
 仮に、現在のエネルギー基本計画の2020年の目標値である再生可能エネルギー導入割合10%を目指した場合であっても、全国では、1,000万世帯への太陽光発電設備の設置が必要と試算されており、国と本県の将来世帯数で按分すると約42万世帯への導入が必要になります。これに対して本県での太陽光発電施設の住宅への導入実績は2009年度で約27,000件に過ぎず、目標値を達成するのは、困難であるいわざるを得ない状況であります。私は、これまで同様「着実な」推進でよいのではないかと感じています。
 県施設への導入についても、(先ほどのご答弁にもありましたように)普及啓発には一定の効果があったとは思いますが、普及率はともかくとして、県が多額の資金を投じて普及啓発していく段階ではないことは言うまでもありません。
 そこで、太陽光パネルの性能も日々進化していることもあり、今後は、県施設への導入にあたっては、普及啓発よりも採算性の確保や経費削減の観点が重要になっていくと考えますが、太陽光発電設備の県施設への導入について今後どのように取り組まれようとしているのか、ご所見をお伺いします。

3 農業施策における県の食料自給率の意義について

 農業施策における県の食料自給率の意義についてお伺いします。
 食料自給率は、国内の食料消費が国内の農業生産でどの程度賄えているかを示す指標であり、国家の安全保障の要として農業政策を考える上でも一つの指標とされています。
 食料自給率には、国内生産量、輸入量など、その食料の重さそのものを用いて計算した自給率として「重量ベース自給率」、重さが異なる全ての食料を足し合わせて計算するためにその食料に含まれるカロリーを用いて計算した「カロリーベース自給率」、カロリーの代わりに価格を用いて計算した「生産額ベース自給率」があります。
 2010年度の国全体の食料自給率は、概算値で、カロリーベース自給率は39%、生産額ベースで69%となっています。一方、本県の食料自給率は、2009年度概算値で、カロリーベースで16%、生産額ベースで38%、重量ベースで24%となっています。
 食料自給率は、主食のコメを中心とした食生活から、副食中心の食生活に食料消費が変化したことに伴い、自給率の高いコメの消費が減り、自給率の低い畜産物や油脂の消費が増えてきたことにより低下してきていますが、本県では、出荷量で全国順位の上位を占める農林水産物が多い印象がありましたが、必ずしも自給率には反映されていないようです。
 一番よく使われているカロリーベース自給率には、比較的低カロリーである野菜やくだものの生産がより的確に反映されませんが、生産額ベース自給率の維持には貢献しています。一方で、米や穀類などの高カロリーの作物については、カロリーベース自給率の維持に貢献されることとなるうえ、地域別の食料自給率についても、高カロリーの作物の生産割合が高い地域のカロリーベース自給率が高くなるものと考えられます。
 また、畜産物については、生産額ベースの自給率は集約生産額から飼料の輸入額を除いて算出しますが、良質な価格の高い畜産物を生産していることから、生産額ベースの自給率には貢献していますが、カロリーベースの自給率を算出する際には、飼料自給率を乗じて算出するため、輸入飼料をほぼ使用することからカロリーベースの自給率には反映されないことからカロリーベース自給率と生産額自給率に開きが生じています。
 カロリーベース自給率は、国の食料政策を考えるうえでの指標とすることは、一定の理解を示すものでありますが、兵庫県の農業の現状を正しく捉えるものとはなっていないように感じます。また、自給率の低さが最近では特に注視され、不安を煽っている側面もあるように感じています。
 そこで、県の食料自給率の意義をどのように捉え、本県の農業施策を進めていく中でどのような役割を果たしているのか、ご所見をお伺いします。

4 県産野菜の産地育成・振興方策について

 次に、県産野菜の産地育成・振興方策について、質問いたします。
 2010年3月に閣議決定されました「食料・農業・農村基本計画」では、2020年度の食料自給率を50%へ引上げるという目標が設定されました。
 一方、本県では、先ほどの質問でも触れましたが、食料自給率はカロリーベースでは、16%にとどまっていますが、品目別にみると、2008年度では、野菜は43%と高くなっており、中でも県特産のタマネギ、レタスは100%を大きく上回っています。
 野菜はカロリーが少ないため、カロリーベース自給率に反映されていませんが、水田や畑を代表とする広い土地を必要とする農業と違い、ハウス栽培等や複数の棚による栽培など、一年に複数回作付けできることや限られた土地を有効に活用することからも有効です。また、手間暇かけて品質を追求し付加価値を上げるという意味でも期待が持てます。
 近年、輸入野菜に対する不信が広がっていることから、県民には安全安心で新鮮な地元野菜を求める動きが強まってくるものと思われます。
 本県は、神戸・阪神地域の大量消費地を抱えるだけではなく、都市近郊の立地条件や食品製造業等の関連産業が集積する強みを活かすことにより、外国産野菜のシェアを奪い、県産野菜の自給率をさらに高めていくことが可能であるのではないかと考えられます。
 そこで、県産野菜の計画的かつ安定的な供給を確保するとともに、近畿圏の大消費地に隣接する立地条件等の強みを最大限に発揮できるような野菜産地育成・振興について、これまでどのように取り組まれてきているのか、今後の展望と併せてお伺いします。

5 環境ロードプライシングについて

 平成13年11月より、国道43号・阪神高速3号神戸線の交通量を減らし、沿道の大気環境改善を目的とした、阪神高速5号湾岸線の環境ロードプライシングが実施されています。またこれと合わせて、灘区から始まる「環境の保全と創造に関する条例」によるディーゼル自動車等運行規制により、神戸線摩耶ランプから湾岸線住吉浜ランプまで5号湾岸線への乗り継ぎが行われているところますが、その結果として乗り継ぎ経路である神戸市道灘浜住吉川線は渋滞が恒常化しています。この周辺は戸建住宅や一般集合住宅が増え、恒常的な渋滞による住環境の悪化も懸念されているところです
 この問題は、県土整備部で以前にとりあげましたが、ハーバーハイウェイ料金や大阪湾岸道路西伸部の早期事業化等の問題と相俟って解決しておりません。
 そこで、こうした環境政策によって新たな環境問題を引き起こすことにもなりかねないことについて、県の環境部門のご担当として、どのように認識されているのかお伺いします。