議会の動き

越田 謙治郎議員が質問(決算審査・財政状況)を実施

決算特別委員会 [ 10月10日(水)財政状況・越田議員 ]

財政状況に関しては、過去から議会としても積極的に取り組み、すでに多くの先輩議員によって議論をされてきたわけではありますが、私としても「次の時代につけを残してはいけない」という強い思いをもって、質問をさせていただきたいと思います。
なお、今回の財政状況の質問をするにあたって、私は「世代」というテーマを設定させていただきました。
もちろん、今日の主題は平成23年度の決算状況であり、昨年度1年間の財政状況に対する質疑、質問となるのですが、財政状況は必ずしも1年だけで見るものではなく、過去からの財政運営の一つの成果であるとともに、この1年間の財政運営は、その後何十年にもわたって影響がある問題であるという視点にたって、以下大きく4点、7項目にわたり質問を行います。

1 財政状況の県民への説明責任について

  平成23年度は、国の中期財政フレームにより地方一般財源総額が平成22年度水準に抑えられているという厳しい環境の中で県政運営が行われました。
これからの兵庫県政の展望を考えたとき、知事が委員会開催時にご挨拶をされた通り、施策の「選択と集中」が重要になってきます。
ただ、言葉でいうほど「選択と集中」ということは簡単なことではなく、「なぜこの事業が選択されたのか?」「なぜこの事業が選択されなかったのか?」 ということに対し、県民に対してより一層の説明責任が求められるからです。
「財政健全化という総論は賛成だけど、うちの事業は削減されたくない」というのは、財政議論の中でよくある話です。そのような前提条件の中、その選択に理解を得るためには、何より財政状況に対し県民の皆さんに対し、正しい認識を持っていただくことが重要であり、行政としては、いかに県民に正しい財政状況を伝えるかということが重要な要素です。
説明責任を果たす、県民の皆さんに財政状況を理解していただくということは、財政健全化の第一歩であるということです。
そのような観点から、私が平成23年度の財政状況、ならびに財政運営に対し問題意識を持っている二つの点について、「本来あるべきではないかもしれないが、現実的な対応として行っている」という認識のもと、そのことの是非を蒸し返して議論するのではなく、どのように県民に説明をし、理解を求めていくのか」という趣旨で質問を行います。

(1)借換債平準化について

ここで、決算書に目をむけてみます。
平成23年度の決算において、実質公債費比率は単年度で16.6%、健全化判断比率となる3か年平均で19.5%となっております。
この数値は、前年度に比べて単年度で3.2%、3か年平均で1.5%改善しています。財政構造改革推進方策実施状況報告書で示された単年度21.5%、三か年平均21.6%という目標数値も、ともに大幅にクリアしており、一見すると、兵庫県の財政状況が好転しているかのような印象を受けます。
確かに、実質公債費比率が数字上好転しているということは、過ちではありませんし、財政運営を考えると喜ぶべきことではありますが、決算書や監査報告書等でも指摘されている通り、今回の数値状況の改善は、あくまでも「借換債の平準化」による影響が大きいということです。
つまり、実質公債費比率の改善は、必ずしも財政状況を正しく反映しているとはいえません。
なお、当初1328億円の発行予定であった借換債が、2月議会の中で1814億円へと増えたことなど、借換債平準化のそのものの是非等については、すでに予算委員会の中でも議論されておりますし、私自身も8月に行われた総務常任委員会の中で行いましたので、あえて異議を唱えるものではありません。
ただし、私たちが県民に知らせなければならないことは、表面的な数字ではなく、あくまでの実質的に財政状況がどうであったかということです。
そこで、「借換債の平準化」による、影響について、とりわけ財政指標への影響についてそれぞれに明らかにしてください。
また、今後、県民に対し「借換債の平準化」を含めた財政状況について、どのように説明をするのか、お考えをお聞かせ下さい。

 

(2)財源対策について

平成23年度決算は、当初予算で示された855億円の財源不足が見込みより大幅に改善され、681億円まで減額されました。非常に厳しい財政状況の中予算編成を行ったうえに、さらに執行段階にあたっても経費の節減等に取り組んでいただいたことと一定の評価ができると考えています。
実質単年度収支が黒字ということなので、何か兵庫県はお金が余っているような印象を与えますが、これも財源対策を行った結果であり、財政状況が厳しいことに変わりはありません。
行政改革推進債、退職手当債の発行、県債管理基金の取り崩しによる約686億円の財源対策は、財政運営における世代間の受益と負担の関係、世代間の公平性を考えるならば本来行うべきではないのは言うまでもありません。
ただ、本県の財政状況が、この2、3年で大きなヤマを迎えることや、財源対策を行わないことで生じる県民生活等への影響を考えると、一定の財源対策は現実的な対応であり、財政当局としても、苦渋の決断の中での財政運営を行っていると推察いたします。
しかし、兵庫県の将来負担比率は350%を超えて5年連続で全国ワーストという状況です。これからの財源対策は、将来世代に対して少なからず影響を残しているということとも、向き合わないといけないと考えています。
われわれが現時点で味わっている財政運営の厳しさの原因が、必ずしも現代の責任でなかったとしても、それを受け止め、次の時代へのツケを残さずに対応するというのが私たちの世代の責任だからです。
そのうえで、財源対策を行うのであれば、少なくとも後年度に対しどのような影響を与えるのかといことを明らかにするべきだと考えています。
とりわけ、退職手当債、行革債は、発生する利子等を考えると、後年度に与える現在の負担は発行額にとどまりません。これを県としてどのように把握し、県民に対してどのように説明をしていくのか?
当局のお考えをお聞かせ下さい。

2 行財政改革の取り組みについて

本県においては、行財政構造改革推進方策に基づき、県民の皆さんや職員の皆さん一人一人のご協力により一定の成果を出してきました。
しかしながら、長期間にわたる景気の低迷、税収の伸び悩み、高齢化による社会保障関係費の増大など、当局の皆さんの歳出削減に向けた努力が、一瞬で吹き飛ばしてしまうような厳しい状況に、皆さんの中に、ある種の無力感や厭戦ムードが出てくるのではないかということを危惧しています。
しかし、地方財政を預かる現場としてこれから生まれてくる子供たちのためにも、たゆまざる努力、知事のいうところの、スクラップ・スクラップ・アンド・ビルドの精神で取り組まなければなりません。
さて、行財政改革といったときに、喫緊の課題として、目の前の財政健全化に向けた歳出削減=「量的な改革」に取り組む一方で、「持続可能な行財政体質」の構築という、いわば「質的な改革」も同時に取り組まなければなりません。

とりわけ、人口減少社会を迎えた今、何もしなくても「今年より来年のほうが何か良くなっている」ということはありえず、中長期的な視野に立ち、常に身の丈に合った財政運営を行うために、事業の見直しができる体制を構築しなければなりません。
このような視点で、中長期的に「質的な改革」を進めるために、3つの視点で質問をしていきたいと考えています。

(1)市町との役割分担の見直しと二重行政の解消について

「行財政構造改革推進方策実施報告書(平成23年度)」では、「第二次行革プランに基づき、事業の必要性、県と民間・市町との役割分担等の観点から見直しを行うなど、選択と集中を徹底することで、一般事業費及び政策的経費について、平成23年度実績としては、平成22年度から88億円(一般財源で44億円)の見直しを行った」としている。
しかしながら、県の事業の中には「本当に県がするべき事業なのか?」「二重行政ではないか?」と思われる事業も依然として散見されます。
私は、それらの事業が「県民にとって不必要な事業」や「税金の無駄遣い」ということは申し上げませんが、より効率的な税金の使い道を果たしていくためには見直しが必要であると考えています。
なぜならば、本県においては大幅に縮減されたとはいえ、1年間で686億円の財源対策を行っており、「身の丈に合った仕事なのか」「借金をしてまでする必要があるのか?」といことを考えなければならないからです。
今後の県・市町との役割分担の見直しの方針、さらには二重行政の見直しなどについて、当局の見解を求めます。

(2)各種補助金等の見直しについて

   行財政構造改革の中では、政策経費として平成23年度は対前年度比9500万円の削減がされております。
行財政構造改革の中で、補助金等の見直しに関しては、事務費相当分10%削減と同時に、「先導的な役割を果たした補助金は見直す」と書かれています。
しかし、これから持続可能な行財政体質を構築するためには、このように「補助金を個別に見直す」「見直しをしないところは、事務費相当分10%削減」という手法ではいずれ限界が出てくると考えます。
そもそも、一律減額という措置は、短期的にやむを得ない措置であったとしても、県が標榜する行革の基本的な指針である「選択と集中」と矛盾する印象さえ受けます。
そこで、補助金等の見直しについて、この一年間でどのような検討をされ、今後どのような取り組みをなされるのか?

(3)業務改善について

平成23年度において、人件費は約5691億円計上されており、歳出にしめる割合が27.4%割合を占めています。
職員人件費は、昨今の景気低迷、民間給与の引き下げの影響などから、県民の非常に厳しい目が向けられています。
本県でも、給与の削減、定員の削減などが行われており、給与に関しては、職員平均で年間に32万円の削減が行われる一方で、定員に関しても、平成30年度には、平成19年度比で定員3割削減に向けて削減が進められています。
職員の皆さんのお話をお聞きすると、「これ以上、定員を削減されたらやっていけない」というような悲鳴に似た声をお聞きもします。
しかし、残念ながら今後大幅に職員数を増やすということは考えられず、「行政サービスを低下させず、少なくなる定員の中で業務を行っていくのか?」という非常に大きな課題を解決しなければなりません。
その際必要なのは、通常の業務の中で「無駄な業務はないのか?」という視点で業務の見直しをすること、さらには職員の皆さんの一人ひとりの業務効率を向上させていくことです。 
本年3月には、総務省「地方公共団体の職場における能率向上に関する研究会」が「ワークスタイルを変革する10のワークプレイス改革」と名を打った報告書を作成しました。
おそらく、今までも業務改善には取り組んできたと思いますし、報告書の内容には「すでにやっている」というものもあるでしょう。
ただ、この中で指摘されておる中には、より取り組みを推進するべきものもあると感じています。そのような観点から、県の業務改善に取り組む方針をお聞かせください。

3 人事構成の中長期的な視野に立った改善について

人件費の削減は、給与の削減と定員の削減によってなりたっています。
先ほども指摘のとおり、給与の大幅削減が続いている一方で、採用者数を抑制することによって、定員の削減も続いています。
現在の地方公務員法の枠組み、また公務員だけではなく日本の雇用環境や慣習から考えると、現時点ではやむをえませんが、そのことにより中長期的には大きな問題点が潜んでいると考えています。
それは、職員の皆さんの年齢構成です。実際に、一般行政部門の職員の年齢構成は、平成24年4月1日現在ですが、20代で545人、30代が1373人に比べ、40代が2523人、50代が2146人となっています。
 組織の中で若い世代が少ないということは、新陳代謝が十分に行われず、組織活性化の観点から問題あるということは、組織論などの世界ではよく言われていることです。平均年齢が高い組織ほど、仕事のやり方が保守的になるという危険性も指摘されています。今後様々な問題を引き起こす危険性が潜んでいます。
短期的にはこの問題を解決することは困難ではありますが、中長期的な視野に立って年齢構造の見直しを図らなければなりません。
また、このいびつな状況を改善していくことはもとより、このいびつな人事構成を前提として、積極的なモチベーションの向上策の展開、採用の見直しなどにより、組織の活性化に図る必要性を強く感じています。今後、このようなアンバランスな組織構成が続く中、いかに中長期的な視点で組織の活性化に取り組んでいくのか?

4 ライフ・サイクル・コストを意識した投資事業改革について

厳しい財政状況下、平成23年度は平成22年度の12月補正予算と合わせた16か月予算として、投資事業全体では平成22年度なみの投資水準を確保しています。しかし、この10年の推移を見てみた場合、平成14年度の3690億円からこの10年間で2/3程度まで投資事業規模が削減されています。
そのような中、兵庫県においても、投資事業改革に関しては、「つくる」から「つかう」へと重点をシフトしているのに加え、公共工事においても様々な経費縮減に取り組んでいます。
ただ、これからの人口減少社会であることを考えたときに、これだけでは不十分でさらに一歩踏み込んだ対応が必要だと考えます。
今後、人口減少社会を見据えた中で必要なのは、事業を始めるにあたって、「つくる」ときの費用だけではなく、「つくる」際に発行した公債の利子、維持管理や更新に関する「つかう」コスト、さらには「こわす」ときのコストというまでを含んだ、広い意味でのライフ・サイクル・コストを明らかにしたうえで、事業に取り組むべきです。
とりわけ、今後も厳しい財政状況の中ですが、政権の枠組み次第では、防災などへの投資事業が行われる可能性は高まっています。
たとえ必要な事業であったとしても、一定規模を超える公共投資に関しては、ライフ・サイクル・コストと、それによる県民利益を明らかしなければ、再び未来の世代に大きなツケを残してしまうことにもなるのです。
現在、兵庫県としては総合事業等審査会などで10億円以上の事業に関しては、費用対効果も含めて事業の必要性について審査が行われています。
兵庫県として、一定規模以上の投資事業に関しては、ライフ・サイクル・コストを明らかにしたうえで、事業を実施するという取り組みが必要だと考えますがいかがでしょうか?