予算特別委員会質問(産業労働部)
平成25年3月5日(火)
1 労働条件審査の導入推進について
最初の質問は、「労働条件審査の導入推進」についてです。
行財政構造改革の進展により、公共事業の民間委託が拡大するとともに、地方自治体の財政難により、一般競争入札においても更なるコストカットが求められており、本県においても同様の状況にあります。度重なるコストカットのしわ寄せは、成果物の質の低下や、人件費をはじめとする労働条件の悪化を招きかねません。
しかし、県が業務を委託する企業で、賃金をはじめ適正な労働条件の確保がなされているかについては、これまであまり顧みられて来なかったのが事実ではないでしょうか。県からの業務委託により、低賃金や不安定雇用の拡大を招くことがあってはなりません。
そもそも、県の業務を委託され、現場で作業をする業者は、関係法令を遵守するとともに、企業としての社会的責任をしっかり果たし県民から信頼される企業であることが求められます。また、そのことが業務委託を受ける企業にとっても、社会的に信頼される企業として評価されることにつながり、プラスになります。
そのため、委託者である県の責任として、業務委託を受ける企業が労働基準法などの関係法令を遵守しているかを審査し、公共事業を担う民間事業者に、コンプライアンスを徹底する必要があります。
低賃金、長時間労働、社会保険未加入などの不適正な労働条件では、従業員も生き生きと働くことができず、「良い仕事をしよう。良い成果をあげよう。」という意識も低下し、結果的に良質な住民サービスを提供することが困難となります。
この点、労働者の権利保護の観点から、専門家である社会保険労務士が、公共事業の委託を受けた企業において、労働基準法などの関係法令が遵守されているか、労働者が生き生きと働ける職場環境にあるかを調査する「労働条件審査」というシステムがあり、一部の地方自治体では、その導入が進められております。
そこで、本県産業労働部としても、労働者の権利保護に取り組む中で、関係部局等と連携を図りながら、この「労働条件審査」の導入を検討していく必要があると考えますが、当局のご所見をお伺いします。
2 労働者の権利に関する県民意識の向上について
質問の第2は「労働者の権利に関する県民意識の向上」についてです。
近年、県民の方々の雇用形態は多様化しております。正社員のみならず、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員など様々なものがあります。
このような雇用形態の違いにより、個々の労働者が行使できる権利については違いがありますが、たとえパート、アルバイトであっても、6ヶ月以上働けば有給休暇を取得する権利が与えられます。また、労災保険については、労働者災害補償保険法の定めるところにより雇用形態の如何に関わらず強制適用されますし、雇用保険や社会保険等についても、一定の要件を満たす場合には被保険者となります。更に、育児休暇、介護休暇についても、1年を越えて雇用契約を締結している場合には、パートやアルバイトの方であっても、その取得を申請できます。
一定規模以上の企業で正社員として働いている人にとっては、このような権利行使はごく当然のことと捉えられているかも知れません。しかし、例えば中小企業に勤めておられる方や、パート・アルバイト等の雇用形態で勤めておられる方の中には、長引く不況の中で、関係法令で認められたこれらの権利保障が十分になされていない方もおられるのではないでしょうか。
バブル景気の崩壊後、コスト削減を第一に考える企業経営体制が当然のこととなり、業種や雇用形態に関わらず、従業員に過重な心身の負担や極端な長時間の労働など劣悪な労働環境での勤務を強いて改善しない、いわゆる「ブラック企業」といわれる企業も出て来ております。雇用側が故意に関係法令等に違反する、このような事案は論外ですが、中には、雇用側、労働者ともに関係法令等やこれに基づく各種制度等の内容を十分に認識しないまま、結果的に労働者の権利が阻害されている事例も見受けられるものと思います。
そこで、労働者の権利を保障し、適正な労使関係のもとで、誰もが生き生きと働ける労働環境を実現することを目指し、県としても、関係機関等と連携しながら、労働者の権利に関する県民意識の向上に取り組んでいくべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。
3 ひょうご仕事と生活センター事業の拡充等について
最後の質問は、「ひょうご仕事と生活センター事業の拡充等」について、2点お伺いします。
(1) ひょうご仕事と生活センターにおける取組について
1点目は「ひょうご仕事と生活センターにおける取組」についてです。
県では、企業に人材確保や業務効率の向上をもたらし、勤労者に働く意欲や働きがいをもたらす「仕事と生活のバランス」の取組を全県的に推進する拠点として、連合兵庫、兵庫県経営者協会との協働により、ひょうご仕事と生活センターを開設し、積極的に各種の取組を進めておられます。
内閣府のワークライフバランス憲章によれば、「ワークライフバランス = 仕事と生活のバランス」が取れた社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」を指すものとされております。
少子高齢化が進み、人口が減少していけば、これまで以上に仕事と仕事以外の役割(子育て・介護、地域活動等)の双方を担う人が増えていきます。また、労働人口の減少に伴い、企業としても、女性や高齢者を含め、多様な人材をより柔軟に活用していく必要にも迫られます。そのためには、働き方を見直し、多様な働き方を可能とする必要があり、今後、「仕事と生活のバランス」が取れた社会の実現は、喫緊の課題だと考えます。
この点、ひょうご仕事と生活センターでは、平成21年の開設以来、様々な取組を進めて来られ、3年間の集大成として昨年11月には「3周年記念フェスタ」を開催し、有識者等による講演・パネルディスカッション、先進的な企業の表彰等を行うなど、仕事と生活のバランスに取り組むことの大切さを、積極的に情報発信されております。私も、同センターのこれまでの取組を評価するとともに、今後の取組に大いに期待しているところであります。
そこで、同センターがこれまでに積み重ねてきた様々な取組の成果を踏まえ、更なる充実を図っていくため、来年度、どのように取り組んでいくのか、お伺いします。
(2) 育児・介護離職者再雇用助成事業の拡充について
2点目は、「育児・介護離職者再雇用助成事業の拡充」についてです。
育児・介護により離職したされた方は、再就職の門戸は狭く、私も多くの相談を受けますが、なかなか就職先が見つからないのが現実です。
しかし、人口減少社会を目前に控え、企業においては多様な人材をより柔軟に活用していく必要があることは先ほども申し上げたとおりです。
この点、県では、育児・介護等を理由に一旦離職された方々を対象に、再び元の職場で働きキャリアアップできるよう再雇用した企業に対して奨励金を支給し、再雇用を促進する「育児・介護等離職者再雇用助成事業」に取り組んでおられ、私はその取組を大いに評価するものであり、今後とも、より一層の支援を行っていくべきだと考えております。
そこで、同事業に係るこれまでの実績についてお伺いするとともに、来年度における同事業の取組の方向性についてお伺いします。